写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

TTArtisan 50mmF0.95レンズを使ってみました

 明るいレンズには夢があるとは誰が言ったか忘れましたが、大口径レンズは明るいがゆえに被写界深度が浅く、その独特な描写が人気を集めていますが、かつてフィルムカメラの時代には感度が低く暗いから明るい大口径レンズを使うという絶対的な命題があったのです。ところが最近はどうでしょうか、デジタルになり感度はISO1000や2000は当たりまえ、ときにはISO20000以上もというような超高感度も自在に使いこなせるのです。
 そのような時代にニコンからミラーレスのZマウントで『NIKKOR Z 58mmF0.95 S Noct』が2019年10月12日から発売されたのです。すでに私のブログではニッコールZ 58mmF0.95の実力のほどを紹介済みですが、抜群の光学性能と価格の高さ、さらにはその重さに驚いたのです。そのようなタイミングにまるで合わせたように中国のDJ-OPTICAL(銘匠光学)から『TTArtisan 50mmF0.95 ASPH』がライカMマウントで発売になったのです。価格はニッコールの約1/10、重さは約700gとなればどんな写りをするのか、大いに気になるところです。

■外観と操作感

 ライカMマウントで発売されているからライカM9に付けてみました。実際はどのように使うのかというと、F0.95という大口径を活かして使うなら、距離計連動ライカならフルサイズのM9から、さらにはライカを含むミラーレス機ならとばいうことで、ここでの外観写真はF0.95レンズをシステムにもつニコンZ7”に取り付けてみました。TTArtisanは、一連の製品をミラーレス用の交換レンズとして考えているようで、アダプターリングを使えばライカMマウントは各社ミラーレス機でユニバーサルマウント的に機能するために、自社ブランドのテーパー状デザインのマウントアダプターを販売しています。

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≪F0.95レンズをもっているカメラシステム、ライカM9ニコンZ7に装着≫ それぞれのボディに装着した状態で、ヘリコイドを操作すると∞から最短70cmまで繰り返し回転させてもムラはなく、適度な粘りがあり好ましい動きです。同様に絞りリングを回転させると半絞りクリック付きで違和感なくスムーズに操作できますが、よく見ると目盛りが等間隔でなく不等間隔に目盛られていることがわかります。このあたりは、以前レポートしたライカの8枚玉ズミクロン35mmを復刻した中国の「LIGHT LENS LAB V2LC 35mmF2」もそうでしたが、写りには影響ないという割り切りか、それとも今後の課題なのでしょうか。

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≪TTArtisan 50mmF0.95 ASPHのレンズ構成とMTF曲線≫ 日本での販売元である焦点工房の公開しているデータによると、レンズ構成は8群11枚、使われている硝材は特殊低分散、高屈折低分散、両面非球面とかなり贅沢な配分であり、構成としてはガウス変型といったところでしょうか、絞り羽根(14枚)が3枚目の後にくることから、絞り環を鏡胴前部に配置する距離計連動の手動絞りを意識した設計だと考えられます。またMTF曲線からわかることは、F5.6に絞り込むことにより高い画質が得られるようですが、この辺りは通常のレンズのもつ性格であり、実写で確認すればわかるでしょう。

■カメラボディの距離計をマッチングさせる

 距離計連動のライカボディを使う場合には、レンズを手にしてから最初に行う必要があるのが、カメラボディの距離計との調整を行うことです。もちろん出荷状態でそのまま使うことも可能でしょうが、F0.95と大口径な場合ピント位置はかなりシビアなものとなるので、絞り開放で使うときには調整をした方がよいでしょう。この時代に距離計連動のライカボディで使う人は少数派ですからほとんどこの調整は省いても問題ないのですが、私の場合にはライカMマウントであるものはまずは純正の使い方をしてみたいので、早速ライカM9に装着して調整を行いました。焦点調節の方法は以下のようになります。

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≪解像力チャートの配置とピント位置調整方法。前ピン、後ピンを読取り、徐々に合焦点にツメていく(図は取扱説明書から抜粋)≫

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実際の撮影結果、左右はノートリミングで、上下はカットしてあります。絞り開放F0.95でチャートの中心部分にピントを合わせ、撮影後に拡大して見ることによりピントの“前ピン・後ピン”がわかります≫

 調整の方法は特に難しいことではなく、同梱されてきた紙製の全長約45cmのチャートを写真上のように配置し、撮影してそのずれを読み取り、レンズ側の距離計のコロに接する部分を微妙に移動させるのです。私の場合はライカM9で行いましたが、画素等倍近くまで拡大してわずかに後ピンであることがわかりました。微細な6角ネジをわずかに緩め、連動カムの基板をずらすことにより調整できますが、いがいと作業は簡単に修正を終えることができ、実写での検討も良好でした。
 この調整ですが、ボディ側の調整を絶対的なものとしてレンズ側をいじるということになります。調整の方法はいろいろあると思いますが、交換レンズが複数あることを考えると、自分で使うレンズ側を調整するというのがベストだと思うのです。このあたりの方法は、Artisan系の大口径レンズでは前からやられていましたが、工場出荷時の調整の合理化なのか、それともボディ側の個体差を含めて最終的なピント調整はユーザーが調整することによりベストのピントをだすという、現実に即した進化形態と考えました。

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ライカM9での調整を終えたときの実写ピントテスト≫ F0.95・1/125秒、ISO160。M9は、1,850万画素CCDセンサーでありますが、ピントに関しては昨今のCMOSもCCDも変わるところはないでしょう。被写体は、ピント位置を明確にするために空中に浮いた感じに配置した陶器のミニカップとイノシシの人形です。この場面は室内の蛍光灯照明によるものですが、左壁面の上下端面は周辺光量が減光していますがF0.95という大口径からすると致し方ない部分です。撮影距離は約1mでした。

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≪上のカットのピントが合った部分を拡大≫ この写真を見ると「TTArtisan 50mmF0.95 ASPH」レンズの絞り開放F0.95の描写特性がよくわかります。このカットは、Photoshopで66.7%に拡大した状態ですが、この拡大でプリントすればほぼ原寸大という感じのサイズです。
 2012年にライカカメラ社がまだゾルムスにあるときに工場を訪れ、ライカM9ボディの距離計調整を奥行き15mぐらいある大きな三角の立体チャートで、至近、中間、遠距離など含めて多くの距離でピント調整していたのを見たことがあります。これはデジタルのライカが登場してから簡単にベストピントが簡単に分かるようになり、より高度なピント調節が工場出荷時に必要になったからだと聞きました。いずれにしても距離計連動機で「50mmF0.95レンズ」を絞り開放で人物ポートレートなど1m前後の近距離撮影で使うには難しさがあります。
 とはいっても、難しい難しいといってもこれはあくまでも距離計連動機の近距離撮影の場合で、マウントアダプターを介して最新のミラーレス機を使ってピント合わせをすればどの機種でも簡単に高い精度でピント合わせが可能となるのです。

■まずはニッコールZ58mmF0.95とTTArtisan 50mmF0.95と比較

 まずは気になるのがほぼ同時期に発売されたNIKKOR Z 58mmF0.95 S Noctとの禁断の画質比較に挑戦しました。撮影場所は井之頭公園の噴水で、Z 58mmF0.95を愛好する人が見つけ出したテストスペースなのです。その日は曇天の合間にところどころ日が差すというような条件ですが、この場所で天気が良いと噴水の水に虹のように色収差がでるというのです。ただしこれはRAWで撮影しカメラ側の補正を含まない場合ということで、私の場合の撮影はカメラ側の処理を含んだJpeg.撮影が原則なので、天候含みでしょうかそのような現象は出現しませんでした。

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≪TTArtisan 50mmF0.95 ASPH≫ ニコンZ7、絞り優先AE、F0.95・1/6400秒、ISO100、中央部重点測光。三脚をたてて同じボディでレンズ交換して同じ場所から噴水を狙って撮影しました。ピントはマニュアルですから、噴水の水しぶきの手前側に合わせてあります。

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NIKKOR Z 58mmF0.95 S Noct≫  ニコンZ7、絞り優先AE、F0.95・1/6400秒、ISO100、マルチパターン測光。50mmと58mmの画角差はいがいと大きいことがわかります。露出はexifで見るとどちらも同じですが、仕上がりの背景の見え方が異なるのは画角差に影響を受けていることも大ですが、中央部重点測光のTTArtisanは噴水の白さに引っ張られて周辺はアンダー気味に見え、ニッコールZはマルチパターン測光により周辺のシャドー部への露出が考慮されたと考えます。

さまざまなボディと場所で撮影してみました

 さてニッコールZ58mmF0.95とTTArtisan50mmF0.95とのリアル比較はここまでにします。
 本音を言いますと、2台のセットで5kgぐらいあるのを持ち歩き撮影するのは重量的にもむりがありますし、マウント口径がニコンZマウントの55mmφとライカMマウントの43.9mmφ、フランジバックニコンZマウントの16mmとライカMマウントの27.8mmと仕様的なハンディもあり、価格差約12倍であるわけですから、比較することはそもそも無茶かもしれません。このあたりでTTArtisan50mmF0.95の実力だけを紹介したほうが現実的です。f:id:ilovephoto:20201220161354j:plain≪TTArtisan50mmF0.95 ASPH≫ 左:ソニーα7RⅡにTECHARTLM-EA7アダプターを介して取付け、右:キヤノンEOS R5にKIPON ML-EOS Rアダプターを介して取付け。このうちTECHARTLM-EA7アダプターはライカのMFレンズがソニーαボディでAFが可能となり、被写界深度の浅い微妙な撮影にはシャッターボタンを押すだけでよくたいへん役に立ちました。最近はニコンZ用も発売されたので、ニコンZボディでライカマウントを始めさまざまなレンズでAF撮影が可能となったのはニコンZユーザーにとっては朗報です。

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彼岸花に落ち葉≫ ソニーα7RⅡ、AF、F0.95・1/1000秒、ISO100、AWB。午後の斜光が差し込むときでしたが全体的にホワッとして柔らかい描写です。ここは単に解像力が低いというように考えるより柔らかな描写特性を持つレンズなのです。むしろこの柔らかさを生かした被写体での活用を考えたほうが良いと思うのです。また、なぜいきなりソニーのボディで撮るのかと思われるかもしれませんが、「TechartのLM-EA7」はライカM用マウントレンズをソニーα7シリーズでAFで使えるのですごく便利なのです。(埼玉県・秩父_1)

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彼岸花畑を耕す人≫ ソニーα7RⅡ、AF、F2.8・1/160秒、ISO100、AWB。彼岸花が一面に咲き誇っている場面では少し前後のボケが大きくうるさい感じもありますが、ワンポイントとして背景にクワを振る人を入れて変化をもたせました。A3ノビ程度に拡大するとピントの合っている部分とぼけている前後部分が水平に分離して見え、感じが変わるだろうと期待した1枚です。(埼玉県・秩父_1)

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ソバ畑から見た武甲山ソニーα7RⅡ、AF、F2.8・1/1600秒、ISO100、AWB。少し花の盛りの過ぎたソバ畑です。ピントは2mぐらい先に合わせていますが、前ボケと共に後ボケも見えます。武甲山の山肌も柔らかくなってしまいました。(埼玉県・秩父_1)

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紅葉ニコンZ7、F0.95・1/5000秒、ISO100、AWB。右下にある紅葉の葉にピントを合わせましたがシャープです。近距離でF0.95では被写界深度が浅すぎる感じがしますが、背後のボケからするともっとボケても良いのでしょうが、F0.95のボケ具合は、だいたいこのようなイメージの独特な柔らかい描写といえます(埼玉県・秩父_2)

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≪落ち葉ニコンZ7、F2.8・1/8000秒、-0.3EV、ISO100、AWB。緑の雑草の葉の上に落ちた枯葉を狙ってみました。適度な周辺光量落ちが中央のメイン被写体部分を際立たせてくれました。画面上では縮小の関係から少し甘く見えますがシャープです。(埼玉県・秩父_2)

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植林された山肌ニコンZ7、F5.6・1/1000秒、ISO100、AWB。私はどのようなレンズでも、絞り込むときは開放から2段絞り込むようにしています。これは、exifの反映されないライカレンズを使う時によくやりますが、設定絞り値を忘れないようにということで、F0.95のこのレンズの場合には2段としてF2.8にして使うようにしました。この画面の写真はほとんど無限遠に近い距離にピント合わせしましたので、もう少し絞ってF5.6としました。左右640ピクセルでは解像感がなくなりますが、それぞれの樹木の枝や葉はしっかりと解像し、たいへんかなり立ち上がりの早いレンズでシャープです。(埼玉県・秩父_2)

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オートバイ≫ ニコンZ7、F2.8・1/6400秒、ISO100、AWB。自然の草花だけでなく少し人工的な光沢感がある被写体としてオートバイを狙ってみました。F2.8の絞りですが、金属の光沢感、タイヤの質感などいい感じです。(埼玉県・秩父_2)

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粋な黒壁≫ ソニーα7RⅡ、AF、F2.8・1/320秒、ISO100、AWB。“めし処 一貫”という小料理屋さんの壁です。2段絞ったF2.8の画像ですが、絞り込みによる立ち上がりが早く、このような微細な被写体でもシャープですが、必要以上に極端に画素等倍まで拡大して見るとつらさがでてくるのは仕方がないことです。最終的な拡大率にもよりますが、本来ならF5.6ぐらいまで絞り込むと良かったのでしょう。(埼玉県・川越)

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気になるお店≫ ソニーα7RⅡ、AF、F2.8・1/320秒、ISO100、AWB。2段絞ったF2.8の画像ですが、歩く人々をスナップ撮影してみました。AFならではですね。(埼玉県・川越)

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狐面≫ ソニーα7RⅡ、AF、F0.95・1/125秒、ISO125、AWB。立体的な紙のお面に白の無光沢な塗装がされていますが、このような場合には柔らかな描写に見えます。背景のアウトフォーカス部分の描写はかなりなめらかで柔らかですが、それでも左上に描かれた画像がわかるほど癖のない素直な描写です。(埼玉県・川越)

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大黒さま≫ ソニーα7RⅡ、AF、F0.95・1/1600秒、ISO100、AWB。皆がなぜてお参りするのでしょうか。大黒さまの全体がピカピカです。目の部分にピントを合わせていますが、光沢ある部分はシャープに感じます。また、露出オーバーで飛んでいるように見えますが、大黒さまの目の部分と同一平面にある胸の部分の1円玉には十分にピントがきて細かく解像しています。(埼玉県・川越)

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後ろ髪撮影中≫ ソニーα7RⅡ、AF、F2.8・1/640秒、ISO100、AWB。この日のために髪を結わいたところを友達が後ろから撮影しているところをスナップさせてもらいました。絞りF2.8で、手前女性の左肩にピントが合っていますが、下の砂利を見て深度の浅いこと、さらに癖のないボケであることがよくわかります。(埼玉県・川越)

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スマホソニーα7RⅡ、AF、F0.95・1/640秒、ISO100、AWB。トワイライトの薄明かり時に、パチンコ店の照明を受けてスマホを操作する女性を絞り開放でスナップ。絞りF0.95開放の描写はこういう時間帯がいいですね。(埼玉県・川越)

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クリスマスイルミメーションの前で≫ EOSR5、F0.95・1/80秒、-2EV、ISO100、AWB。COVID-19の影響を受けて、例年になく色彩に乏しいイルミネーションですが、アウトフォーカス部のボケを求めての撮影。左右640ピクセルではわかりませんが、拡大すると左右最周辺にはコマ収差ならではの描写ですが、ノクチルックスM50mmF0.95も似たようなものです。大口径レンズは、むしろこういうボケ具合を積極的に楽しんだほうがいいですね。(恵比寿)

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クリスマスツリー≫ EOSR5、F0.95・1/60秒、-0.7EV、ISO200、AWB。ピントは後ろ向きの女性に合わせていますが、右側の口径食が現れたボケは大きくなっていますが、左端はコマ収差としての形が弱くなりました。大きくしてみるとわかりますが、女性の髪の左上部の辺りは1本ずつ解像しています(恵比寿)

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アメリカ橋にて≫ EOSR5、F0.95・1/60秒、-1EV、ISO800、AWB。開店直前のバーの看板と背景のボケ具合を見てみました。ピントは左のドリンクのグラスに合わせてありますが、前ボケ、後ボケとも暴れていなく素直です。絞り開放F0.95は、やはりこういうダークな場面が似合うようです。(恵比寿)

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夜のスナップ≫ EOSR5、F0.95・1/100秒、-1EV、ISO100、AWB。恵比寿ガーデンプレイスからJR恵比寿駅までの帰り道、あえて動く歩道でなく一般道路を通った時の1枚。あらかじめ照明されたウインドウ内に露出とピントを合わせて待機していましたが、スマホしながら歩く女性と宅配便屋さんがカートを押してきたので、それぞれが画面内左右に入ってときに1枚、中央で交差したときに1枚、行き過ぎたときに1枚とシングル単写でシャッターを3回押し、雰囲気の良かった通り過ぎた所のカットを採用しました。念のためにいうと、宅配便屋さんこの写真では疲れているような感じですが、前2のカットは元気な感じで撮れています。(恵比寿)

人物ポートレイトがよい感じに

 今回一番苦労したのは、絞り開放F0.95を生かした撮影とはどのようなものかとさまざまな場面で、いろいろと撮りこみましたが、オールマイティーなレンズである反面、わりと低照度下の人物の撮影に向いているのではないかというのが、正直な印象です。以下、カメラをバックに入れ出先でちょこちょこと撮らせて(撮って)もらったカットです。いずれもAF撮影可能であったため大変便利でした。

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ポートレイト・HKさん≫ ソニーα7RⅡ、AF、F0.95・1/125秒、ISO800、AWB。営業写真関係の方なので、撮られ方が慣れているなという感じです。かつて大判写真のポートレイトにおいて片方の目だけにピントを合わせ、他の部分はソフトに描写されるレンズ、二コラペルシャイトのようなソフトフォーカスの描写をほうふつとさせます。

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ポートレイト・私です≫ ソニーα7RⅡ、AF、F0.95・1/125秒、ISO1000、AWB。こちらはお茶しながらのカットですが、レンズを見ていたYさんがシャッターを押してくれました。メガネの縁、額のハイライトが効いて画面に締まりを感じさせます(笑)。

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ポートレイト・MFさんソニーα7RⅡ、AF、F0.95・1/125秒、ISO1250、AWB。こちらも上と同じですがやはりメガネがピンポイントになっていますが、大きく伸ばすとひたいに垂れ下がった手前の髪の毛が1本ずつ解像しているのがわかります。

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ポートレイト・KRさん≫ ソニーα7RⅡ、AF、F0.95・1/125秒、ISO2000、-0.3EV、AWB。この場面では、メガネのようなシャープな部分がないために、カラーされた前側の髪がアクセントになり、全体的に柔らかくいい感じに撮影できました。背景の丸ボケもほどよいレモン形をしていますが、よい雰囲気にでました。

文化の違いを感じさせるレンズ

 最後に良いことばかりではなく、少し疑問に思った点を書きます。
 ひとつは、撮影時に小絞りまでなかなか設定しなかったのには理由があります。絞りクリックが等間隔でなく不等間隔であることは前にも述べて通りですが、写真を見てもらえればお分かりかと思いますが、絞り開放から絞りF4までの間が極端に幅広く、そこを乗り越えてF5.6にセットするのは感覚的に難しいのです。もちろん数値でしっかりと目盛られているわけですから問題ないといえばそれまでですが、カメラやレンズが写真を撮るための道具である以上、カメラをのぞいたまま絞りを変えるというようなこともあるわけですから、もう少し1.5段絞りたいというような、数字を見なくても移動量とクリック感で行えることも大切なわけです。ヘリコイドの摺動感、表面加工など十分に満足できる部分でありますが、機械部分の課題として、やはり絞りリングは等間隔目盛りとして欲しいです。

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≪左:絞りリングの目盛りの振られ方、右:ライカM7TTArtisan50mmF0.95を装着してフィルムアパーチャー側から見ると、金色に輝いているのは気になります≫

 もうひとつは、レンズ金物の後端部分が金メッキされピカピカしているのです、ここに採り上げたミラーレス機では問題を感じませんでしたが、ライカM9では撮影場面(光線状態)によっては内面反射を起こしてしまうような気がしてならないのです。ライカの暗箱部分は狭く、かつてフィルム時代には特定のレンズでベイリンググレアが発生してカブリが発生したようなこともありました。現在は距離計連動ライカで撮影する人はほとんどいないと思いますが、この部分はなるべく無反射状態にするべく塗装を施した方が良いと思うのです。今回の撮影にあたっては、私は目立つ金メッキ部分にマジックインクを塗って黒くしました。ただマウント部の金メッキ部分は銘匠光学側からするとセールスポイントなのです。この金色を大切にするのは、やはり製造国中国と日本の文化の違いともいえるのです。交換レンズを趣向品的にとらえるか、性能優先の工業製品としてとらえるかですね。かつて1970年代にヤシカが一眼レフのコンタックスを作り、ドイツのカールツァイスからレンズを仕入れたらレンズキャップはすべて無地の黒いポリエチレン製のキャップだったのです。ヤシカ側はこれでは日本では売れないとCONTAXとブランド名を入れた立派なキャップに切り替えて発売したのです。機能を満たせば飾りはいらないというきわめてドイツ的な発想だったのでしょう。TTArtisan50mmF0.95 ASPHのレンズキャップはというと、アルミ金属を厚みに削りだし、ロックのためにかなり細かな細工が施されていますが、その点においては日本と同じような考えを持っているのだと思った次第です。

 今回のレポートは、9月に彼岸花で撮影を開始して、12月のクリスマス イルミネーションまで入り込むというかなりロングランになってしまいました。その理由には、ほかの機材とオーバーラップしたことなどもありますが、やはり絞り開放F0.95、それもTTArtisan50mmF0.95 ASPHの描写をどれだけ良い意味で引き出せるかということでした。結果として、時間がかかりましたが、それだけのことはあったと思います。本文中、Artisan系のレンズと書きましたが、もともとはArtisan”というレンズがありましたが、会社が分裂して“TTArtisan”が登場したと聞きました。 (^^)/