写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

超廉価なTTArtisanレンズ3本セットを使ってみました

 中国のTTArtisanレンズ3本を使って評価して欲しいとわがスポンサー氏から言われ、興味大で早速購入してみたのですが、まず最初に困ったのがこの「写真にこだわる」に掲載時のタイトルでした。そのレンズはいずれも単焦点で、銘匠光学(DJ-OPTICAL)のTTArtisan APS-C 17mmF1.4、TTArtisan APS-C 35mmF1.4、TTArtisan APS-C 50mmF1.2の3本なのです。注目点は、①7月23日のニコンZfc発売わずか1週間後にZfcのボディカラーに合わせて白梨地仕上げでだしてきた、②販売代理店の焦点工房は3本セットで33,000円という恐ろしく安い価格を設定、③最新の中国レンズの実力は、ということで何を表題に盛り込むかを悩んでしまったのです。結果として上掲のようにしましたが、どのようなタイトルにするかは、なるべく多くの方々に読んでもらうためには重要なことなのです。

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≪3本のTTArtisanレンズとニコンZfc≫ 左から、TTArtisan APS-C 17mmF1.4、TTArtisan APS-C 35mmF1.4、ニコンZfc(ニッコールZ DX16-50mmF3.5-6付)、TTArtisan APS-C 50mmF1.2。ニコンZfc発売わずか1週間後に発表されたといっても、TTArtisan APS-CレンズはすでにフジフイルムXマウント用に黒色で発売されていましたので、表面を梨地シルバーにしてニコンZfc用にしたのでしょう。17mmと35mmの鏡部分にはそれぞれのレンズ構成図がプリントされています。マウント部分の口径が大きいのはフルサイズと兼用のニコンZマウント用ならではのもので、光学系は同じと考えられるフジXマウントを始めとした他社APS-C判用はもう少し細くなるでしょうから、鏡胴部のくびれはここまで目立たないかもしれません。

■外観並びに操作感

 Zfcの発売に合わせて追いかけ発売したというだけあって、表面シルバーの感じはボディにうまくマッチしています。細かく言うと、TTArtisanレンズのほうがボディ、レンズとも梨地の色がわずかに明るく感じますが、ボディ、Zニッコールレンズの表面処理仕上げと仔細に比較してみてもその差は元素材の差異からくるものではないかと考えられるレベルです。装着しようとして、マウント側を見るとまったく電気接点がありません。マニュアルフォーカスレンズだから当然ですが、何もないからexif情報が撮影したファイルに書き込まれないのは当然のこととなります。

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≪マウント後部とレンズ鏡胴部≫ レンズマウント基部には電気接点はない完全なマニュアルレンズです。絞り環と距離リングの回転方向は注目していただきたい。

 レンズの距離リングの回転方向はカメラを構えたほうから見ると、右側が∞、左が至近寄りとなり、絞りリングは、左が絞り開放、右が最小絞りとなっていて、いわゆるライカ以来の基準です。一方、ニッコールレンズはレンズ交換、距離リング、絞りリングともRFコンタックス以来の方向ですが、AFになった現在それが気になる人はあまりいないようです。TTArtisanレンズは、ライカM、富士フイルムX、マイクロ4/3、キヤノンEF-M用もあるので、それぞれマウント部分だけを除いて部品を共用させるには当然のことでしょう。さて、このレンズカメラに装着して最初に感心するのが、ヘリコイド回転のトルク感がヌメッとしてムラなく重くも軽すぎる感じもないのです。さらにこのヌメッとした摺動感は絞りリングにも共通していて他に例を見ないのですが、操作感は半絞りクリックを含めてヌメッとしてなかなか感じ良いです。

 実際ファインダーをのぞいてフォーカシングしてみると、妙にピントの山がつかみやすいのです。いままでミラーレス機でマニュアルでピントを合わせるときには、それぞれの機種によって拡大倍率は違いますが、とりあえずはターゲット部分を拡大して細かくピント合わせしていましたが、ZfcとこのTTArtisanレンズでは拡大しないでもピントが合わせやすい(合う)のです。この要因としては、ZfcのEVFが良い、レンズが大口径だから、レンズの収差が良く補正されていて解像度が高いなどが考えられます。そこで、Zfcに他の大口径レンズを着けてマニュアルでフォーカシングするとここまでは分離が良くなく、TTArtisan50mmF1.2をニコンZ7に付けてピントを合わせるとほぼ近似した感じでピントの合わせができる、他の最大口径F2レンズをマウントアダプターを介してZfcに装着してマニュアルでフォーカシングすると拡大しないでピントを合わせることができるが素早くとはいかない、となりました。つまりレンズ性能に依存する部分は大なわけです。各レンズのヘリコイドと絞りリングの摺動感、マニュアルでのピント合わせは多くの人に試してもらいましたが、異口同音にすばらしいということでした。

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≪TTArtisanレンズのレンズ構成とMTF 左から、50mmF1.2、35mmF1.4、17mmF1.4、青色部分:高屈折低分散ガラス、赤色部分:非球面レンズ、絞りはいずれも絞り羽根は10枚、最短撮影距離は各0.5m、0.28m、0.2m。

■いつもの英国大使館正面玄関を写す

 いつもならフルサイズの焦点距離35mmを基準にして撮影していますが、ZfcはAPS-C判なので、標準画角に近いということで35mmF1.4を使うことにしました。35mmだとフルサイズ換算で画角的には52.5mm相当となりますので、いつもよりは狭角になります。撮影距離、時間、天候とも同じ条件で絞りF5.6で撮影してます。

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≪英国大使館正面玄関、TTArtisan APS-C 35mmF1.4≫ 52.5mm画角:F5.6・1/1000秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。ピントは建物屋根中央直下のエンブレムに合わせました。撮影時に空をたくさん入れるか、下の地面を入れるか悩みましたが、結局間をとって屋根は切れても左下の車止めのポールの発色具合が各社で微妙に異なる注視点なので、このようになりました。

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≪エンブレム部分を画素等倍に拡大≫ このところニコンZfc(ニッコールZ DX16-50mmF3.5-6付)、リコーGRⅢxとAPS-C判が続きましたが、比較して見ていただければお分かりのようにそれぞれがきれいに問題なく写っています。わずかにTTArtisan  35mmF1.4の場面がコントラストが高く立体感があるように感じますが、撮影倍率、晴天の度合い、日影などによっても 変わりますので、はっきりとレンズの性能からくるとは決めつけられない部分でもあります。

■近距離で絞り開放の解像とボケ味を見てみました

 3本のレンズを絞り開放で画面中央の葉にピントを合わせ、前後のツツジ葉のボケ具合でそれぞれレンズの性質を知ることができます。撮影は50mmをスタートに徐々に接近しています。

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≪50mmF1.2≫ 75mm画角:撮影距離約60cm、絞り開放F1.2・1/4000秒、ISO-AUTO125、AWB。ボケ具合を見ると撮影距離にもよりますが、前側に焦点深度が深く、後側は浅く感じますが、計算によると許容錯乱円を0.03mmにとると、前側は4.7mm、後側は4.8mmとなり、合計で9.5mmとなります。背後と前側をよく見るとゆるやかな円弧を描いていますが、一般撮影ではまったく目立たない程度です。画面全体で見ると柔らかなボケを期待できます。

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≪35mmF1.4≫ 52.5mm画角:撮影距離約50cm、絞り開放F1.4・1/4000秒、ISO-AUTO110、AWB。枯葉を同じような寸法で写るようにと10cmぐらい近づいて撮影しました。50mmF1.2同様に前側の被写界深度が深いのですが、後ろ側のボケはあまり方向性を感じさせません。画角的には52.5mmですから、主要被写体を手前に置き背後を大きくぼかすような撮影に向くような感じです。

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≪17mmF1.4≫ 25.5mm画角:撮影距離約40cm、絞り開放F1.2・1/4000秒、ISO-AUTO125、AWB。撮影距離40cmですが、主要被写体の枯葉にはもっともっと接近してよかった感じです。フルサイズの画角にすると25.5mmですから、かなりワイドです。背景のボケ具合を見ると、枯葉を中心に大きく円弧を描いているのがわかります。撮影対象によってはうまく利用すると面白い写真が撮れるでしょう。枯葉の表面を写した部分の解像感は高く画素等倍まで拡大すると葉脈が見えるほどです。

■ランダムな場面で使ってみました

 何を何ミリのレンズを使って何を撮るかということですが、せっかくの大口径レンズですから、なるべく開放に近い状態で撮影することにしました。すでにこちらのZシリーの交換レンズとしては、Zfc用にニッコールZ DX16-50mmF3.5-6があるので、絞り込んで使うならばTTArtisan レンズの価値がなくなってしまうのです。

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≪50mmF1.2、Ra Sikiさん≫ 75mm画角:絞り開放F1.2・1/80秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。写真家であり、アーティストであるRa Sikiさんの個展にお伺いしての1枚。ピントは彼女の右目に合わせていますが、撮影後画素等倍にまで拡大して見ても十分な画質です。Zfcボディには手振れ補正機能はなく、ニコンの場合レンズ側に手振れ補正のVR機能がついています。ということで、このレンズには手振れ補正機構など何もついていません。F1.2絞り優先AEの結果ですが、ISOオートで125となり、シャッター速度1/80秒で画素等倍まで拡大できるほど手振れの影響はなかったのです。ピントを合わせた部分のシャープさはかなりのものですが、画面右上の文字の部分を画素等倍にして見ると、ごくわずかに色にじみがありますが、これはきわめて少ない部類に入ります。

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≪50mmF1.2、とよけん先生・Ⅰ75mm画角:絞り開放F1.2・1/125秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。写真業界ではユーザー向けの技術解説を一手に引き受ける豊田堅二さんです。さすが日芸の写真学科で教鞭をとっていただけに、撮影をお願いするとさっと半身になりにっこり笑うというのはその成果でしょう。ピントは左目に合わせていますが、画素等倍まで拡大すると眉毛が1本1本崩れないで解像してます。Raさんの時のカットでは左背後のボケはどのような写真であったかまったくイメージできませんが、こちらのカットでは背後のボケも見たかったのであえて人物を配しましたが、癖のない柔らかなボケ味を確認できました。

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≪35mmF1.4、とよけん先生・Ⅱ≫ 画角52.5mm相当:絞り開放F1.4・1/125秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。せっかくですから、レンズ交換して52.5mm相当画角でも撮影させてもらいました。身の構え方、微笑み方などまったく50mmの時と同じなのはまるでプロのモデルを感じさせます。レンズの解像感は50mmF1.2と大きく変わる部分はありませんが、背景のボケ具合を見ると、それぞれが誰だかわかるのですが、人間の画像解析能力もすごいということですが、撮影シーンにもよるかもしれませんが、個人的には扱いやすさを含めて50mmF1.2が私の好みとなります。

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≪17mmF1.4、YS-11・Ⅰ≫ 画角25.5mm相当:絞りF5.6・1/800秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。いつもの場所からの撮影です。この位置からですと、28mmとか35mm画角が良いのですが、さすが25.5mm画角では広すぎます。空には青空が見えますが、天候としてはほぼ曇天です。それだけに光は柔らかく、ハイライトが飛ぶようなことはありません。(航空公園駅前にて)

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≪35mmF1.4、YS-11・Ⅱ≫ 画角52.5mm相当:絞りF5.6・1/500秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。画角52.5mm相当だとはみ出てしまいます。ピントは17mmも35mmも同じというか、他機種を含めいつもと同じようにプロペラ右にあるエンジンケースの表面に合わせていますが、画素等倍にしてみると、フルサイズの場合には文字がどうにか読めるのに、読めません。背後の建物の避雷針もそうですが、微細な部分がわかりません。これはレンズの解像力以前にAPS-Cで2,151万画素の画素数に依存する部分が大きく関係していると思われます。(航空公園駅前にて)

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≪35mmF1.4、路傍のオブジェ≫ 画角52.5mm相当:絞りF2・1/800秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。金属の光沢感と背後のボケ具合を見るための撮影です。アルミの鋳造品だと思いますが、アルミとしての質感は十分に再現されています。背後道路のグリーンベルトはムラなく軟らかくきれいにでていますが、左背後の焦点の紫色看板の文字が連続した固まりに見えるのがまずかに気になります。(航空公園駅近くにて)

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≪35mmF1.4、コスモス・Ⅰ≫ 画角52.5mm相当:絞りF1.4・1/2000秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。秋の風物詩といえば漢字で書くとわかるように“秋桜”でありコスモスなのです。35mmF1.4レンズでわりと周辺を入れ込んで、花を中央に配してめしべにピントを合わせてありますが、めしべの部分を画素等倍に拡大して見るとかなりシャープであることがわかります。中央の花を囲むように背景のボケは緩やかに円弧を描いているように感じますが、この種のボケ具合は方向性を感じさせないほうがベストなのでしょうが、ボケの具合いは撮影距離の違いや個人の受け止め方によっても評価は大きく変わります。(所沢航空公園・Ⅰ)

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≪35mmF1.4、コスモス・Ⅱ≫ 画角52.5mm相当:絞りF1.4・1/800秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。同じ35mm1.4レンズで、やはり絞り開放で花の中心のメシベに合わせましたが大変シャープです。背景も少しはすっきりした感じになりましたが、もともとコスモスの花の撮影はごちゃごちゃした葉や花を背景のボケに置くのでなく、青空の中に背景にして花を撮るとと、秋らしく撮影することができます。(所沢航空公園・Ⅰ)

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≪17mmF1.4、コスモス・Ⅲ≫ 画角25.5mm相当:絞りF2.8・1/1600秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。やはりコスモスは青空がいいということで、青空を確認し再度出向きました。ところが青空の下でF1.4のレンズは絞り開放だとZfcのシャッター最高速度1/4000秒では露出オーバーとなってしまうのです。やむなく安全を見込んでF2.8に絞っての撮影となりましたが、ピントを合わせたコスモスのメシベの描写は深度も深くなり、数段上った感じでシャープになりました。(所沢航空公園・Ⅱ)

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≪50mmF1.2、少年航空兵の像≫ 画角75mm相当:絞りF2・1/400秒、ISO-AUTO125、-1EV露出補正、AWB、手持ち撮影。背後の緑に引っ張られて像の表面のハイライト部分が飛び、露出オーバー気味になることを避けるために-1EVの露出補正をかけました。ピントは中央の少年の鼻のあたりに合わせましたが、左右640ピクセルにリサイズしてあるために、このカットからは像のシャープさはわかりません。背景の樹木の葉の間に見えるボケは特筆することもない普通の感じです。(所沢航空公園・Ⅰ)

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≪50mmF1.2、フリスビーを投げる≫ 画角75mm相当:絞りF2・1/400秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。少年航空兵の像を撮影後背後の広場でフリスビーをやっている2人を見つけ素早く近づきシャッターを切りました。投げるときは上半身を振るだけぐらいで大きく動きませんが、受け取るときにはフリスビーの投げられた方に走って行くので、体が大きく動かない投げるときに素早くピントを合わせシャッターを切りました。レンジファインダー機やAF以前の一眼レフでは当たり前のこととしてやっていた、マニュアルフォーカスでのスナップ撮影です。私はあまりやりませんが、17mmレンズでしたら少し絞り込んでパンフォーカス撮影も可能でしょう。(所沢航空公園・Ⅰ)

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≪17mmF1.4、大樹≫ 画角25.5mm相当:絞りF5.6・1/30秒、ISO-AUTO1600、-1EV露出補正、AWB、手持ち撮影。樹木の表皮部分と表面の苔がオーバーになり重厚感がなくなるのを避けるためにマイナスの露出補正を加えましたが、このVGAの左右640ピクセルでは重厚さを感じるのも難しいですね。(所沢航空公園・Ⅰ)

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≪17mmF1.4、戦闘機のエンジン≫ 画角25.5mm相当:絞りF2.8・1/30秒、ISO-AUTO720、+0.3EV露出補正、AWB、手持ち撮影。背景の色ライティングの関係で+0.3EVの露出補正を加えましたが、無視しても後でレタッチソフトでカーブを少し持ち上げる程度で済みます。金属の質感は十分にでています。(所沢航空発祥記念館

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≪35mmF1.4、大型ヘリコプター前部≫ 画角52.5mm相当:絞りF2.8・1/40秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。機種名は記録してこなかったので不明ですが、ヘリコプター操縦席の全部がパカリと観音開きになるのです。薄汚れた赤い開閉扉レバー、リベットの打ち込まれた黒色のヘッド部、それぞれの質感もいい感じで再現されました。(所沢航空発祥記念館

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≪17mmF1.4、ヘリコプターと小型機≫ 画角25.5mm相当:絞りF2.8・1/30秒、ISO-AUTO280、+0.7EV露出補正、AWB、手持ち撮影。ピントは黄色い小型機のプロペラに合わせてあります。撮影場所の関係で背景光が強いのとオレンジ色をきれいに出したかったので露出補正は+0.7EVとしました。拡大するとわかりますがプロペラはシャープにしっかりと描写され、機体の光沢感もよく出ています。(所沢航空発祥記念館

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≪17mmF1.4、ヘリコプターとHONDA小型機≫ 画角25.5mm相当:絞りF2.8・1/30秒、ISO-AUTO280、+0.3EV露出補正、AWB、手持ち撮影。背後からの自然光の影響を受けないように+0.3EV露出補正。ピントはヘリコプター機体わき腹の“JG-0002”に合わせました。(所沢航空発祥記念館

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≪35mmF1.4、シンボルタワー≫ 画角52.5mm相当:絞りF2.8・1/1600秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。やはり写真は青空の下で撮るべきですね。ということで晴天を確認して出向いてきて撮影した1枚です。絞りはF2.8と絞り込んでいますが、周辺光量の落ちも感じさせません。(所沢航空公園・Ⅱ)

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≪50mmF1.2、いつもの飛行機≫ 画角75mm相当:絞りF5.6・1/640秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。この飛行機は今までに複数のカメラで撮影してきましたが、かなり高画質に撮れています。(所沢航空公園・Ⅱ)

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≪50mmF1.2、英国大使館外灯≫ 画角75mm相当:絞りF2・1/3200秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。英国大使館から返還された皇居外苑工事の行われている門柱の上にある外灯の頭部の冠にピントを合わせ、背後の大ケヤキの葉のボケ具合を見てみました。(千鳥ヶ淵

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≪50mmF1.2、九段方面遠望≫ 画角75mm相当:絞りF2.8・1/4000秒、ISO-AUTO100、AWB、手持ち撮影。久しぶりの青空、75mm相当といえば準望遠クラスであるが、あまり絞り込まずに遠くのビル群を狙ってみました。画素等倍に拡大すると窓枠がひとつひとつきれいに分離して見えます。前ボケも気になることはありません。(千鳥ヶ淵

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≪35mmF1.4、黄葉≫ 画角52.5mm相当:絞りF2.8・1/400秒、ISO-AUTO125、+0.3EV露出補正、AWB、手持ち撮影。左手前に色づいた葉を配しピントを合わせ、右背後の常緑樹の葉をアウトフォーカスして丸ボケを作り出してみました。ピントを合わせた葉はセンターより外れていますが産毛のような感じと葉脈まで写り、絞りF2.8での解像感はなかなかです。(東村山北山公園)

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≪17mmF1.4、モミジ≫ 画角25.5mm相当:絞りF1.4・1/4000秒、ISO-AUTO100、AWB、手持ち撮影。レンズを前に写真仲間のHTさんと話していたら、逆光時はどうだろうというのです。何でもポートレイトでは逆光での撮影は多用されるというのです。そこで、紅葉前でしたがモミジの葉の下にもぐり撮影したカットです。絞りも開放ですから中央の少し色づいたモミジの葉の間から太陽を中央に配置してシャッターを切りましたが、フレア、ゴーストの類は見れなかったです。極端に太陽を左端においてファインダーをのぞいた時に薄くフレアが発生しましたが、もともと私は逆光で写真を撮るのは日の出と日没だけなので、あまり他のレンズを含めて気にならないのです。(東村山北山公園)

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≪35mmF1.4、ゴジラが戻ってきた≫ 画角52.5mm相当:絞りF1.4・1/200秒、ISO-AUTO125、-1EV、AWB、手持ち撮影、小雨。久しぶりに新宿に写真展を見に行った帰りにゴジラ通りをのぞくと歌舞伎町のゴジラに照明があたっていました。コロナ禍において、長い間消灯されていたのが再び点灯されたのです。小雨でしたが、カメラを取り出し撮影。ピントはゴジラの顔に合わせましたが、35mmという焦点距離は十分に深度内に入るのでしょうか、手前の看板まで含めてシャープでした。(新宿歌舞伎町)

f:id:ilovephoto:20211024002639j:plain≪画素等倍に拡大してみました≫ 左:マツモトキヨシの看板の左の看板、右:ゴジラの顔と歯。左の看板から、ゴジラまでは数十メートルあると思いますが、EVFでのピント合わせはしっかりとゴジラの顔をつかんでピントのずれを確認できました。それにしても、手持ちで絞り開放F1.4の描写、これだけの拡大に耐えるというのもすごいです。

■アウトフォーカス部の口径食を見てみました

 それぞれのレンズの口径食をいつもの場所で撮影してみました。手前の丸いポールの頭にピントを合わせていますが、焦点距離によって段階的に撮影距離を変えてあります。ふだんこのシーンの撮影ではマイナスの露出補正を加えるのですが、テスト撮影段階で露出補正なしでも問題ないと判断しました。

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50mmF1.2≫ 75mm画角:絞り開放F1.2・1/100秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影、撮影距離:約70cm。最近は“ボケフォト写真”と称して点光源のアウトフォーカス部分を玉ボケ、丸ボケ、シャボン玉ボケ、バブルボケ、レモンボケとか言って、うまく作画の中にこれらのボケを取り入れて画面を構成するのが流行っています。それぞれのレンズの焦点距離や絞りの設定値、フォーカス位置、点光源の位置などにより、その形状は変わりますが、その形状などによりそれぞれのレンズのもつ残存収差などがわかるとされています。このカットからは、左端にレモン(ラグビーボール)型をしたのがありますが、これはレンズが球面であるために中心部と周辺部から入る光が異なるために楕円になり、このような現象を口径食と呼んでいます。なおそれぞれの円の色は、元の光源の色に依存するわけでレンズ性能から導かれた色ではありません。この場面では、ビルから掲げられたネオンサイン、街灯、信号、車のテールランプなどが複雑に関係して描出されています。この円形はそれぞれをよく見るとエッジが強調されて見えますが、このような場合には2線ボケがあり、球面収差過剰補正型のレンズに現れるとされています。(新宿)

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35mmF1.4≫ 52.5mm画角:絞り開放F1.4・1/125秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影、撮影距離:約50cm。丸いポールはいつも人物の頭とか顔だと思って撮影しています。このような雑踏の中でのボケを生かしたポートレイト撮影もいいですが、一番簡単にきれいなボケが得られるのはクリスマスのイルミネーションを背景にするのが良いでしょう。(新宿)

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17mmF1.4≫ 25.5mm画角:絞り開放F1.4・1/80秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。撮影距離:約30cm。この丸いボケを小さくするには絞り込めば良く、焦点距離が短くなれば良いこともこれらの撮影結果からわかることです。このカットからは面白い像を見ることができます。右端のビルに紫色に矢印が重なったように見えますが、これはコマ収差が発生していると考えられます。この収差は絞り込むことにより解消されますが、APS-C非球面レンズを使い17mmF1.4とかなりスペック的に頑張ったためだと考えられますが、10万円以上さらには100万円以上のレンズでも発生を確認したことはありますのであまり気にすることではなく、日常にこのようなシーンの撮影はあまりないでしょうし、むしろ昨今のボケフォトブームにのって積極的に画作りに取り込んでいくのも面白いですね。(新宿)

■中国製レンズに何を期待するか

 発売からすっかり時間が経ってのレポートとなってしまいました。この間コロナ禍ということもあり、3本のレンズを持って遠くに撮影にでるようなことはできませんでしたが、仕事に出かけるときにはカバンの中にZfcと3本のTTArtisanを入れて機会あればと持ち歩きました。しかしなかなかシャッターを切るようなチャンスは巡ってきませんでしたが、興味ありそうな人にはカメラとレンズを渡して操作してシャッターを切ってもらいました。皆さんが口をそろえたように言うことは、ヘリコイドの摺動が滑らかで、ピントが合わせやすいということでした。機械加工の技術レベルの高さを知るわけですが、本質的なところでの画質はどういうレベルにあるかということになりますが、その点に関しても問題ないことは実写結果から十分にお判りいただけると思うのです。

 今回のTTArtisanレンズ3本の実写は、最初に撮影した英国大使館の撮影の時は晴天でしたが、以後天気の良い日と私の撮影できるタイミングがなかなかうまく合わないのです。それでも薄曇りで撮影を強行していたら、やはりしっくりこないのです。そこで所沢航空公園では改めて青空の日に撮影したのを加えましたが、やはり天候1つで写った写真の印象は大きく変わるのです。操作上のマニュアルフォーカスは致し方ないとして、画質はこれといって不満はないのです。

 中国製のカメラとレンズというと、私の手元にはクラシックカメラの位置づけで1960年代に製造された距離計連動機の「上海Ⅱd」があります。レンズは上海50mmF3.5ですが、純粋に中国企業が設計・製造したカメラとしてコレクションしています。以後フィルムカメラ時代には二眼レフや一眼レフのシーガルなど多くの機種があり、デジタルカメラの初期にはコンパクトカメラ分野に進出もありましたが、スマホの台頭によりコンパクトデジタルカメラの衰退とともにすっかり中国製カメラは影を潜めてしまいました。そのような中で徐々に顔を出してきたのがミラーレス機の登場に伴った中国製交換レンズです。今をさかのぼる2016年の2月に行われたCP+2016には、従来からのKIPONに加え、中一光学が出展していて、その時ちょっと使わせてと拝借して撮影したのが以下の2枚です。

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≪KIPON IBELUX 40mmF0.85≫ ルミックスG1:絞り開放F0.85・1/125秒、ISO-AUTO125、AWB、手持ち撮影。当時マウントアダプター製造メーカーであったキポンがレンズ分野に進出したばかりでした。ちょっと拝借してこれだけ撮れるのに驚きました。APS-CとM4/3用で販売価格は当時8万円ぐらい。(2016CP+にて)

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≪ミタコンSeed Master 135mmF1.4≫ ソニーα7R:絞り開放F1.4・1/320秒、ISO-AUTO1000、AWB、手持ち撮影。中一光学の試作品で、発売するなら受注で13万円ぐらいと伝えられ、やはり試作という50mmF0.95も借りて使いましたが、この時期改めて見直すとどちらもよく写っていて、いずれもその後発売されています。(2016CP+にて)

 この大きさではわかりにくいですが、どちらもピントは左目に合わせていて、拡大するとまつ毛がしっかりと解像しています。いずれにしても10万円前後はするものの、当時はよく写ると感心したものです。しかし、今回は少し事情が異なります。操作感が良好で、良く写るのは当然のこととして、とにかく価格が安いのです。それも光学ガラスには高屈折率低分散ガラス、非球面レンズまで使い、さらに白梨地仕上げの金属製となれば、昨今の各社最新レンズのうたい文句と変わる部分はありません。もちろんAFに非連動という問題は残りますが、最近はマニュアルでのピント合わせも気にならないという若者世代もいるので、話は難しいです。ただ写真を撮ることが趣味であり嗜好性の高いものですから、所有することによる満足感、もちろん高額だから、有名ブランドだから、逆に安いからと、価値観は人それぞれなわけですから一概には判断は下せません。

 そんな話をあるレンズ専業メーカーの役員を務めた方と話していたら、写真レンズだからまだ大丈夫な感じがしますが、工業用のセキュリティー分野のレンズは、かつては日本が圧倒的なシェアを持っていたのに、わずか4年ほどの間に中国企業に席巻されてしまったのが今だというのです。セキュリティー用レンズに対して、写真用は規模が小さいからビジネスとしてはうま味が少ないから参入はほどほどではないだろうか、それだけに写真用のレンズ分野に参入するためにはそれなりの志が必要だというのです。

 志といえば、日本のレンズメーカーもそれなりの歴史的経緯と企業理念をもって写真レンズを製造していると理解していますが、中国企業もいくつかそのようなことをアピールしているのです。最近ではズミクロン35mm8枚玉を現代に復刻させた“光影鏡頭實驗室 LIGHT LENS LAB”の周さん、また今回取り上げたTTArtisanレンズも、元はライカレンズ好きが7人集まって7 Artisan(7工匠)というレンズ会社を興し、さらにそこから分かれて独立したのがTTArtisanつまり銘匠光学(DJ-OPTICAL)と聞いていますが、設立からわずか数年の会社がこのようなレンズを作り上げる下地が中国にでき上っているのも驚きです。

 現在、ミラーレス機のAF対応の交換レンズは、ニコンキヤノンサードパーティーからのはなく自社ブランドだけですが、ソニー富士フイルムの交換レンズには国内外の複数のレンズメーカーが参画しています。もちろんこれはAF対応のレンズであって、その背景には何らかのライセンス供与の問題があるだろうということは素人でもわかることですが、その間隙を埋めているのがここで取り上げたTTArtisanレンズなど単焦点のマニュアルフォーカス式の交換レンズではないかと思うわけです。これからのレンズ交換式カメラが、どのように展開されていくかは未知数ですが、単に光学性能や製造技術だけでは語れなくなっているのがミラーレス機の交換レンズだと思うわけです。 (-.-)

おまけ:ほぼ1月以上マニュアルでのピント合わせで撮影を行ってきましたが、それなりに確実なピント合わせの撮影テクニックを会得することができました。まずファインダーをのぞき、ピントを合わせたい所にAFフレームを持っていきます。次にファインダーから目を離して拡大(+)ボタンを2回ほど押してから、再度ファインダーをのぞき目的のところでピントを細かく合わせてシャッターを切ります。シャッターを切るときの注意点は水平にカメラを構えることが大切です。本来ならば、もう一度フレーミングの確認を行いたいのですが、手持ち撮影では縮小(-)を押すと微妙にピントがずれるのでそのままシャッターを切ったほうが、しっかりとピントが合うのです。もちろん、絞り込んだり、三脚を使っての撮影ではこの限りではありませんが、マニュアルフォーカスで大口径を生かすには大変有効な撮影法だと思います。この方法に慣れるとかなり便利で、ニコンZfcだけでなく他のニコンZ機、キヤノンのEOS Rシリーズなどでも使えるテクニックです。