写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ニコンZfを使ってみました

 ニコンからヘリテージデザインと銘打った「ニコンZf」が7月28日に発売されました。早速、わがスポンサー氏の依頼により、ZfボディとニッコールZ28mmF2.8(スペシャルエディション)、ニッコールZ40mmF2.8(スペシャルエディション)の2本の交換レンズをいつものショップに発表と同時に予約しました。発売までの間には、セットレンズ付きは人気が高いため品薄になり遅れるとか情報が流れましたが、そこはいつものお店の配慮でしょうか、無事発売日には入手することができました。

 そこで、まず最初にニコンZfを理解しようと関連資料を読むと、『ヘリテージデザイン』という言葉があちらこちらに出現するのです。ヘリテージデザインとは、時代を超える普遍性ある伝統的なデザインということのようで、スペシャルエディションのニッコールZレンズは“ニコン FM2発売当時のマニュアルレンズに『インスパイア』された『ヘリテージデザイン』のフルサイズ対応の小型・軽量単焦点レンズ”ということのうです。さらには『ニコン FM2をベースとしたアイコニックなデザイン』だとか、幅広いユーザー層を対象にしているカメラにこのような外国語を連打するというのは、何だろうとついつい考えてしまいました。時代なのかもしれませんが、私も過去に幅広い方々に向けた雑誌を作ってきた人間としては、いかにわかりやすく書くかということが大切で、このような文章の連投は理解に苦しむところで、たまたまカメラ談義を行った友人の週刊誌ライター氏も同感だというのです。

 簡単にいえば、ニコンFMやFEの1970年代の一眼レフ時代を思い起こさせるカメラボディとレンズデザインだということになるのです。

ニコンZfボディとニッコールZ40mmF2、Z28mmF2.8》40mmF2はZfボディとのセットレンズ。Z28mmF2.8は単独で求めた。どちらもかつてのニッコールレンズのデザインを彷彿とさせられる。ボディに向かって右側に見える黒丸ボタンがレンズ着脱ボタンで左下はファンクションボタンで、どちらもデザイン形状的に同じなので、他社機を併用する人や乗り換えた人は、マウントの回転方向が世の中と逆なことなども含めて慣れが必要で、体でおぼえるしかありません。

《電池のセットと記録メディアのセット》Zfの特徴として記録メディアが2つ挿入できることがあげられます。1つはSDカードで、もう1つはマイクロSDカードです。写真ではSDカードは完全に差し込んでありますが、マイクロSDカードはスロットに挿し込んだ後に押し込み取り出せる状態にしてあります。マイクロSDカードは、バッテリーを取り出した状態で行うようにすすめられていますが、着脱はかなり細かい作業となります。バッテリーはZシリーズの物と同じ形状ですが、当初のZ7、Z6がボディ面に対して縦に置きグリップの中に収納させたのに対し、Zfでは横置きにしてグリップ部を事実上なくしたようなデザインとなっています。

《カメラを両手で保持した状態で軍艦部を見ると》右から、露出補正ダイヤル、シャッター速度ダイヤル、左はISO感度ダイヤルです。シャッター速度ダイヤルはB.T.X.1/3 STEPの時にはロックがかかり、ISO感度ダイヤルは感度自動可変のCポジションでロックがかかります。ざっと見た感じでは操作にあたっての難解さはないですが、一眼レフ時代のDf 譲りで設定操作は動きにくいようにとの配慮からでしょうか、硬めです。絞り値を示す液晶板はELではないのも残念。いずれにしても、今回私の周りで購入した方々は皆さん年齢が高く、それぞれの文字が小さいので見えるのだろうかと心配です。幸い私は近眼なので、眼鏡をはずして見ればOKなのですが、ちよっと気になりました。

《軍艦部操作部分のアップ》左:ISO感度ダイヤルの基部にはモード変換レバーがついていますが、指標表示レバーをもう少し大きくすれば、右手前の部分は省略でき、不要に干渉することはなくなるので、もう少しクリック感が柔らかいとうれしいです。右操作部は、カラー・モノクロがワンタッチで切り替えられるのはすこぶる快適です。ただ、やはりクリックが堅いのが残念だというのが個人的な考えです。さらに細かいことではありますが、人工皮革のシボ目が背面液晶裏蓋とボディ本体では微妙にピッチが異なるのが気になりました。いずれにしても写りには関係ないといえばそれまでのことですが、カメラが写真を撮る道具である以上、操作系はの感触は大切だと思います。

《背面液晶は回転収納式》リバーシブルの背面液晶はこのような状態ほか、前からも見ることができ、どちらかというと動画を意識した感じです。メニュー画面は、本機の特徴であるMC(モノクローム)、FM(フラットモノクローム)、DM(ディープトーンモノクローム)などを表示しました。

《使用したZレンズ2本》Z40mmF2とZ28mmF2.8です。どちらも、かつてのニコンFマウントレンズのマニュアルフォーカス時代を想起させるのデザインを採用したスペシャルバージョンです。どちらもブルーの部分が非球面レンズで、最後面のレンズは撮像素子に近くにフィールドフラットナーとして配置され、ミラーレスならではの設計であることがわかります。ボディ側マウント部が金属ですが、今回の2本のレンズはマウント部はエンジニアプラスチックであるために黒く見えます。

■Z40mmF2とZ28mmF2.8であちらこちらを撮ってみました

 まずは、いつもの英国大使館正面玄関です。

《いつもの英国大使館正面玄関》40mm:絞り優先AE、F5.6・1/800秒、ISO-Auto100、AWB、ピクチャーコントロールは以下すべて“A-Auto”です。いつもの、場所・天候・時間・絞り値での撮影ですが、この日は少し前までは天候はいまひとつでしたが、定位置に立ってカメラを構える直前にちょっとした偶然が起きました。ご覧のような青空になり、撮影中に屋根にはハトが10羽もいて、カラスが横切ったのです。ハトは屋根にとまっているのは今までも何度かありましたが、カラスが横切ったのは13年ぐらいの間で初めてです。きっと清水哲郎さんの“東京カラス”写真展を拝見したのが良かったのでしょう。さて画質のほうは、もはやいうことはないぐらいの高画質です。かつては、機種によっては壁面の調子が飛んでしまったり、左右の樹木の葉が流れたりということもありましたが、いまはそのようなことは各社のカメラに見ることはなくなりました。よって画素等倍トリミングは省略します。ニコンに関して言うならば、少なくともZfc、Zfはともに発色はよく、一眼レフ時代とは明らかに異なります。この点に関しては、このシリーズをさかのぼっていただければわかります(こちらです)。

《愛犬の瞳にAF》40mm:絞り優先AE、F5.6・1/800秒、ISO-Auto100、AWB。英国大使館正面玄関の撮影後に側道を歩いていたら、犬の散歩をしている女性がいたのでお願いして撮影しました。喜ばれましたが、〇〇ちゃんこっち向いてと声をかけるので飼い主の女性のほうを向いてしまうので、こちらに向いてくれません。正直なものです。それでも拡大してよく見ると、犬の瞳にしっかりピントが来ていることはわかります。F5.6と絞ってありますが、近距離なので路面はうまい具合にアウトフォーカスしていて愛犬を際立たせています。

《昼下がりの半蔵門公園・1》40mm:絞り優先AE、F5.6・1/500秒、ISO-Auto100、AWB。前のシーンと同じ絞り設定で紫の花にフォーカスしていていますが、解像、発色ともなかなかです。背後中心には、ベンチに女性が座って語り合っていますが、左右の植物群も含めてボケ具合はむらもなく自然です。

《昼下がりの半蔵門国民公園・2》40mm:AUTO、F11・1/160秒、ISO-Auto200、AWB。紅葉には少し早く、木々は緑ですが、芝から背景の樹木まで繊細で微妙な緑の違いを描写しています。露出のバランスも良く色彩的にも明るく描写されていて個人的には好みの発色です。このシーンで唯一気になるのは、このような場面で感度をISO200に上げて、絞りF11となるプログラムです。さまざまなカメラを使ってきたなかでもこのような絞りと感度の組み合わせは、写るから実用上は問題ないですが不思議です。この先、プログラムの組み合わせを注視することにします。

《小さな樹》40mm:絞り優先AE、F2・1/1000秒、ISO-Auto100、AWB。最近お気に入りの撮影スポットです。わずか15cmほどの小さな樹ですが、下から見上げるようにして撮影すると光が透過して美しく、緑の発色具合と背景のボケ具合を見るのには最適な被写体です。前ボケ、後ボケとも不満はありません。

《カラフルなより糸》40mm:AUTO、F5.6・1/8秒、ISO-Auto100、AWB。六本木から国立新国立美術館への道すがら見つけたビルの中のオブジェ。ガラス越しの撮影で、反射が入らないようにとガラスにレンズを近づけての撮影でしたが、みごとな発色とバランスの良い露出に感心しました。しかしいくら手振れ補正が入っていようとも、ガラス越しにカメラを構えたのを感知したかのようなスローな1/8秒のシャッター速度でした。壁や床が全体に薄くシアンがかっているのは、ガラスの色の影響を受けたようですが、いい感じで撮影できました。

国立新美術館》28mm:AUTO、F11・1/250秒、ISO-Auto140、AWB。ニコンF3マツダルーチェ、いすゞ117クーペなどをデザインしたイタリアのデザイナーであるジウジアーロの来日講演を聞きに来た国立新美術館ですが、たまたま作例撮影のために持参したのがニコンZfでした。それにしてもZfは天候に恵まれたカメラです。このカットもなぜISO140と上昇するか不可解です。

《銀座のいつものカフェ》40mm:AUTO、F5.6・1/25秒、ISO-Auto100、AWB。銀座に行くと必ずと言ってよいほどシャッターを切る場所です。ここで撮影するのは私だけでなく、写真界の大先輩である柳沢保正さんも好きな撮影スポットです。最初は、手前を歩く2人の外人のいないカットを選んでいましたが、いや待てよということで、あえてこのコマを使いました。それというのも不思議なのは、手前のカラーコーンにはピントが来ていて、さらに店の前にいる人たちにはしっかりとピンが来ているのに、歩いている2人はピントが合ってないというよりブレているのです。つまり、ISO100と感度はノーマルで、シャッター速度は1/30秒はブレてもしょうがないのです。やはり露出のプログラムの組み方(考え方)が他社というか私の考えと違うのです。どうしたものでしょうか。

《深夜のニコン旧101号館跡》28mm:AUTO、F5・1/13秒、ISO-Auto6400、AWB。新築中のニコン新社屋ビルです。何も考えずにAUTOでシャッターボタンを押しましたが、見た目には暗闇の空間ですが、明かりは信号と街燈さらには工事中ビルの上部の赤色灯だけですが、走行中の自転車がぶれているのは1/13秒というスローシャッターが生み出した結果ですが、最大口径F2.8と明るいレンズでF5絞り込んでいるのが不思議です。昨今のレンズは絞り開放からしっかりとした描写をするはずなので、主要被写体までの距離などを考慮しても、F5に絞り込む意味は不明です。見た目は暗いシーンでも、写した結果は、みごと昼間のように明るく写っているのが正に写真の適正露出ならではの面白しろさです。

《歌舞伎町のハロウイン・1》28mm:AUTO、F4・1/60秒、ISO-Auto1600、AWB。西大井から流れて着いた先は新宿歌舞伎町。10月31日、時はまさにハロウインの最中、Zfの実力を探るのには最適な場所です。AUTOポジションのまま撮影しましたが、文句なしによく写ります。プログラム露出の値も納得いく範囲です。レンズとしては、解像性能はいうまでもなく、背景のボケ具合もF4という絞り値のせいでしょうか、周辺の雰囲気を残しつつ、適度なボケが効いて手前の主題の2人が浮き出ています。肩から提げたカメラはフィルム用のミノルタα9です。2人ともいい顔してます。

《歌舞伎町のハロウイン・2》28mm:AUTO、F2.8・1/125秒、ISO-Auto1800、AWB。さらに奥に入り、歌舞伎町の広場にて。少なくともハロウイン期間中は、入口から広場まで海外の人でにぎわっていました。絞り開放ですが、ピントはよく見るとお腹に合っています。背景の人たちは適度なボケをもっていて、その場の雰囲気は十分に伝わってきます。

《歌舞伎町のハロウイン・3》28mm:AUTO、F2.8・1/125秒、ISO-Auto2000、AWB。ロボットの前で順番待ちで撮影していたら、同時に2人が左右から出てきて左の男性が遠慮してどこうとしたら、一緒に撮ろうと腕を引かれて気炎を上げていました。2人ともノリノリ、すごく盛り上がりましたが、右の方は国籍不明です。こちらも文句ない写りです。

《土壁》40mm:AUTO、F11・1/25秒、ISO-Auto400、AWB。川崎市にある川崎市立日本民家園でのカットです。決して、レンズの歪曲ではありません。もともとの柱がゆがんでいるのです。土壁は見た目にはもう少し黄色みあるような気がします。ピクチャーコントロールは“A-Auto”にセットしたままですが、少し色ぬけした感じになりました。このカットも晴天下の露出ですが、プログラムの組み方がよく理解できません。

《紅葉とかやぶき屋根の家》40mm:絞り優先AE、F2・1/3200秒、ISO-Auto100、AWB。F2と、あえて選んだ絞り値です。やはりかやぶき屋根の色が少し見た目と違います。また、大きく拡大するとかやぶき屋根の部分が2線ボケ的な描写を示しますが、特別に大きくプリントしない限り気になるようなことではありません。

《ススキの穂》40mm:AUTO、F7.1・1/200秒、ISO-Auto100、AWB。季節的にはこれからというススキの穂をあえてクローズアップしてみました。F7.1と絞られましたが、背景のススキ、かやぶきの民家とも気持ち良くむらなくボケています。

《枯れ葉》40mm:絞り優先AE、F2・1/250秒、ISO-Auto100、-0.7EV、AWB。中央の枯葉を狙い絞り開放で、前ボケと後ボケを見てみました。中央の葉の調子が飛ばないように少し渋めに出したかったので、-0.7EVの露出補正をかけてみました。

《かやぶき屋根》40mm:AUTO、F11・1/125秒、ISO-Auto250、AWB。F11まで絞っているせいか、画素等倍まで拡大すると萱の1本1本が十分に解像していますが、2400万画素より、もう少し高画素であってもいいのかなと思いました。やはりこのシーンも晴天下なのにどうして感度アップするの?という、プログラム露出でした。

■3種のモノクロームモードは何が違うのか?

《カラーとモノクローム3種のモノクロームモードはどんな描写を示すのか、カラーとモノクローム(MC)を試してみました。被写体はいつもの枯葉と最初は考えましたが、誰でもがわかる記憶色から見てみようと、コダックのカラーセパレーションガイドとグレイスケールを基準としました。左はカラー(ピクチャーコントロールはA-Auto)、右はその状態で右肩レバーをMC位置にセットして撮影しました。カラーは、色再現としてはチャート通りという感じで、グレイスケールのステップは14段まで認識できます。一方、MCでは、やはり14段まで認識できますが、カラーもそうですがどちらもうなって見ていると15段を認識できます。このあたりが目視の限界ですが、モニターなどによっても変わる要素もあります。ただ、私は同じモニターで一貫して見ていますので、それなりの変化は認識することはできます。

《FMとDM》左:フラットモノクローム。右:ディープトーンモノクローム。フラットモノクロームは色の再現はMCと同じだが、グレースケールはB(16)まで識別できるので調子を軟調化させてるようで、まさにフラットモノクロームです。ディープトーンモノクロームでは、カラーチャートのシアンが黒く落ち込んで、さらにイエローがス抜けのようになり、上段の薄い部分ではイエロー・レッド・マゼンタが同じように再現されて分離して見えません。階調としては、グレースケールの15段まで認識できます。色をいじっているのはディープトーンモノクロームだけで、青空を黒く落とし込みたいようなときに設定すると良いと考えられます。いずれも私が勝手に考え出した識別法による判断であることをご理解ください。

■とにかくよく写るけれど

 今回使用したニコンZfは、Zレンズとの組み合わせで、大変よく写ることは確かです。発色も良く、同じミラーレスでもZ7時代とは明らかに異なる色傾向です。これは、たぶんZfc以来の処理エンジンを発展させて搭載しているからだろうと考えるわけですが、その一方で、再三書いているようにプログラムの組み方が従来の考え方では理解できない挙動を示すのです。おかしいおかしいと思って、Zfではボディ側に手振れ補正機構を組み込んだからだととも考えましたが、ボディ内に手振れ補正機構のないZfcの時のレポートを見てみると、私はやはり同じようなことをつぶやいているのです。ZfcからAEのプログラムを組む人間が、それとも露出に対するニコンの考え方が変わったのでしょうか、機会があればニコンの開発担当の方に聞いてみたいのです。プログラムの組み方は長年培ってきた各社のノウハウの積み重ねだと思うのですが、こういうプログラムを組むと、写真教室の先生方は困るのでしょうね。

≪機械式レリーズを装着とスペシャルエディションレンズについて≫ 左:やっていいとかいけないとか書かかれていなかったで、あえてやってみました。もちろんシャッターは切れませんが、レリーズ穴を突き抜けるというようなことも通常の押し込み圧ではありませんでした。本来はソフトレリーズシャッターをねじ込む穴ですが、本当に機械式シャッターレリーズが使えればマニアックなユーザーは喜んだのかもしれません。

 そこでもう1つ。右:スペシャルエディションのニッコールZレンズは“ニコン FM2発売当時のマニュアルフォーカスレンズに『インスパイア』された『ヘリテージデザイン』のフルサイズ対応の小型・軽量単焦点レンズ”ということですが、ここまでボディデザインをFM2時代にこだわるなら、レンズにも絞り環を付けるぐらいの勢いが欲しかったです。使い勝手がよくなることは言うまでもなく、FM2時代の『インスパイア』された『ヘリテージデザイン』のMFレンズをうたうなら、ぜひということです。写真はシグマfpと同時に発売された手動絞りリングのついた45mmF2.8 DG DNコンテンポラリーレンズですが、このようになるとキャッチフレーズにより近づくと思うのです。同様な絞り環機構はソニーの一部レンズにも採用されているので、ないものねだりではありません。

 さて、いよいよこのレポートの締めとなりますが、Zf、2本のZレンズを購入して最初に向かったのは、販売店近くの写真機(ギャラリー)居酒屋なのです。ここで多くの人たちは、発売初日に集い開封の儀と称して皆で発売を祝い、カメラを開封し愛でるのです。この場で不思議なことが起きました。開封してバッテリーを入れてもうんともすんとも言わないのです。その場には午前中にZfを手にした知人がいましたので、その方のPD対応バッテリーを借りて、はやる気持ちを抑えて、ある程度充電して数値がでたときに電源スイッチをONにしてシャッターを切ったのですが、カラーモードなのにモノクロになり、さらに5コマ/秒のH連写で切れてしまうのです。そこで、電池を抜いてやり直し、さらにその方のバッテリーを接続して長時間放置して充電したら普通に動くようになったのです。以後暴走は起きなく問題なく作動していますが、いわゆるこれが世間で騒がれた暴走だったようです。

 ニコン製品に妙に詳しいIT技術者によると、Zfはバッテリー0で出荷されるということで、電圧が不安定だと暴走することがあるけれど、充電がしっかりとされていればそのようなことは起きないというのです。これは、ちょっと理解できますが、今までは30%ぐらい充電された状態で出荷されるのが各社のやり方だと聞いていましたし、さらに完全に放電されゼロにするとバッテリーにむりがかかるとも聞いていましたので、どうなのでしょうか。私は、ある程度電圧が低下すると、制限をかけてストップさせているのではないかと思いますが、これもニコンの技術者に聞いてみなくては真偽のほどはわかりません。ただはっきり言えることは、出荷時にはCタイプのUSBコード(UC-E25)はついていても充電器はついていないのです。したがってZfを購入してもPD(パワーデリバリー)対応の充電器か充電バッテリーがないと充電できないのです。Zfのカタログには、別売のバッテリーチャージャーMH-34か、ACアダプターEH-8P(USBケーブルUC-E25併用)または本体充電ACアダプターEH7Pが「撮影をもっと楽しくするアクセサリー」として紹介されていますが、簡単にいえばPD対応の充電器がないと充電できないのです。

ニコンZfの取説の充電に関するページ》使う前にはフル充電してくださいとは取説には書いてありますが、フル充電の充電時間は2時間40分だそうですが、Zfを購入したユーザーが早くシャッターを切ってみたいと考えるのは致し方ないことであり、このあたりをどのように折り合いつけるかは難しいと思うのです。取扱説明書は、A6判・1色で中綴じ16ページ仕上げですが、他社がペラ1枚折畳みというようなところもあるので、立派なものです。

 つまり、もしAPS-CのZfcを使っていて良いからと、グレードアップしてフルサイズのZfをいきなり買っても同じようにそのままでは使えないのです。Zfcの時は、簡単にいえば100円ショップの充電器や車やホテル、新幹線のUSB端子からも充電できましたが、Zfではそうはいかないということです。

 もともとニコンキヤノンはフルサイズミラーレス機を発売した時からこのような対応でしたが、Zfcになったらそのような制限がなくなり良かったと思ったら、また後戻りしたのです。このあたり家電系ですとソニーパナソニックもOKなので、技術というか考え方が異なるようです。ついでに言うならば、ZfのバッテリーはEN-EL15Cで、Z7の時のEN-EL15bバッテリーは電流値は違いますが、どちらも互換があり使うことはできました。ただしZ7で使えたサードパーティのROWA社の互換品は、Zfでは使えなくなったのでセキュリティーが高くなったようです。このあたり、記録メディアやインクジェットプリンターの互換インク、果ては車のバッテリーやタイヤなどとの関係などと照らし合わせて考えると難しい問題です。

 ニコンZfcが2021年7月23日に発売されて好評をもって迎えられ、さらに2023年10月に発売されたニコンZfも発売日に予約した人は納品は5月だといわれたそうで、来年の中ごろまで受注を抱えるほどに好調なのですが、最も気になるのは、ニコンFM2の時代というと、すでに50年以上前のデザインなのです。当時、20歳だった若者はすでに70歳になっているわけです。事実、私の周辺でZfを購入したのはすでにリタイアした人とか寸前の人が多く、その余裕で購入している人が多いのですが、2013年11月に発売されたニコンDf以来、過去の一眼レフスタイルをデザインともども踏襲して、Zfのカタログを見ると若者向けに仕立て上げられていますが、実際このまま売れ筋として若い人たちに受け入れられるのかというのも、大いなる興味です。

 私自身は「写真は、つねに時代の最先端技術を採り入れて撮影領域を拡大してきた」というように認識してきましたが、カメラとレンズの中身は最先端でも、カメラデザインは50年前にとどまっていて良いのかというのが素朴な疑問です。もちろんZ9、Z5、Z7Ⅱなどの存在はわかっていますが、どちらがニコンのカメラに対するハウスデザインなのでしょうか。このあたりはお客さんが購入という形で答えを出していくのでしょうか、それともカメラを作る側のニコンが新しい方向を生み出していくのかはわかりませんが、時間が経つと明らかになってくるでしょう。 (^^)/