写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ポラロイドI-2を使ってみました

 ポラロイドといえば、かつてはインスタントカメラとフィルムの代名詞でした。1948年に最初の黒白、カラーのピールアパート式のフィルムとカメラに引続き、1971年に魔法のカメラアラジンとも呼ばれた一体型の「SX-70ランドカメラ」を1972年に発売して以来、不思議な会社で時間の経過とともにカメラ技術としてはなぜか低下していったというのが正直な印象で、どういうことだったのだろうかといつも考えていましたが、結局、2008年12月に倒産してしまいました。その原因はということはさておいて、その後ポラロイドというブランドは売りに出され、デジタルカメラ、サングラスなどさまざまな商品が売り出されました。

 2008年10月26日、インポッシブル(Impossible)社は、市場にある元ポラロイド社のカメラ約1億台のために、ポラロイド社のオランダ工場フィルム製造装置の13ラインをが買い取り、建物は10年のリース契約でスタートさせました。モノクロ乳剤はイルフォード(ハーマンテクノロジー)、カラーはアグファをスピンアウトした技術者の会社から調達。ユニオンカーバイト社製のポラパルスバッテリーも間もなく製造終了しましたが代替品が見つかり、フィルムパックは10枚から8枚撮りとなったのは、バッテリーの厚みに関係しているとされています。当初は旧ポラロイド社の技術スタッフを入れてSX-70タイプから8×10インチ判まで作る計画を発表していましたが、なかなかうまくいきませんでした。そもそもポラロイドの感光乳剤は、歴代デュポン、コダック、小西六、富士フイルムなど専門企業が提供していた経緯がありますが、オランダ工場は塗布されたフィルムのパッキングを行う工場で、一番重要な乳剤を塗る工場(アメリカ・マサチューセッツ州ボストン郊外)は2004年で生産終了し、2005年には太陽電池パネルの製造会社に売却済みでした。

 私の記録によりますと、2008年にポラロイド社が破産した後、ポラロイドブランドのカメラはSummit Grobal社が、フィルムはTHE IMPOSSIBLE PROJECTなどが手がけてきましたが、2013年ごろにはアメリカのSAKAR(サカール)が加わるなど、各社がポラロイドブランドへ参入しましたが、その後いくつかの社を経て2018年にはインポッシブル社はPOLAROIDの商標を使う権利を得て、POLAROID ORIGINALS と社名を変えて、旧ポラロイドフィルムとカメラを復刻しています。最後に詳述しますが、今回の「ポラロイド1-2」はこの時期に端を発するカメラなのです。

 

《新しく開発発売された「ポラロイドI-2」》ミニ三脚は旧ポラロイド社が600シリーズを発売した時のもの。新型の「ポラロイドI-2」は、充電式のバッテリーを内蔵して、オートフォーカス機構を採用し、ボディの触感も良く、さまざまな撮影機能が加わった最新インスタントカメラとして仕上がっています。

 

《ポラロイドI-2カメラの化粧箱とカラーiタイプフィルム》左:化粧箱の上にはもう1枚ケースがありますが、基本はこの箱です。右:iタイプフィルムは、8枚撮り2パックと3パック入りが発売されています。このフィルムには、電池入りと電池なしの2種類あり、電池入りは旧ポラロイド社のカメラに使うことができます。

 

《ポラロイドSX-70(1971)とポラロイドスペクトラプロ(1986)》旧ポラロイド時代の自己現像型フィルムを使うカメラです。インポッシブルが今回発売した「ポラロイド1-2」は、ポラロイドスペクトラプロに匹敵するシリーズ中の最高級機となります。

 

《ポラロイド1-2カメラの底面》Do not undertake a project unless it is manifestly important and nearly impossible Edwin Land(明らかに重要で、不可能に近いプロジェクトでない限り、着手しないこと、エドウイン・ランド)とプリントされています。

 

《左:ボディ左肩部の操作部、右:ファインダー内情報》丸い電源スイッチをONにすると、モード切替、絞り値、シャッター速度、B.撮影、セルフタイマー表示、ストロボON、フィルム残枚数、バッテリー容量などがマルチに直感的にわかりやすいように表示されます。

 

《ポラロイドI-2とSX-70の撮影とファインダー光学系》左:カメラ上部に反射ミラーが入っていて、フィルムに露光する。撮影レンズは98㎜F8で、前面のカバーグラスを除くと、3群3枚構成のトリプレットです。フィルター径は49㎜Φ。ファインダーは、正像が得られる実像式で、ファインダー内情報としてAFポイント、撮影モード、露出、ストロボなどの設定状況を示しています。右:SX-70の光学系、折り畳み式で一眼レフ方式であることがわかります。

 

《ポラロイドI-2でシャッターを切ると》ポラロイドI-2でシャッターを切ると、写真のように黒いベロがでて、排出されたフィルム(プリント)を直射光からカバーしています。これはインポッシブルのフィルムでは、旧ポラロイドフィルムと同じように現像ポッドから遮光液と現像液がローラーで押し出されますが、乳剤そのものへの遮光性が現状では弱いために、一時的に光線を少しでも遮断する工夫のようです。このような、遮光用ベロが全体をカバーし停止(静止)するのは、旧ポラロイド時代の自己現像型カメラにはありませんでした。乳剤の完成度が低いとかありますが、環境への配慮などから有機溶剤が使えないなどの要因があるようです。

 

《カラーiタイプフィルムを使いポラロイドI-2カメラで撮影》4枚は自然光下で、2枚はストロボを発光させての撮影です。もともとポラロイドのフィルムは、色鮮やかな環境でしっかりとライティングして撮影するのが上手に撮影するためのコツでしたが、ライティングにより右下2枚のようにハイキーな感じにも、高コントラストの調子にも仕上がるのです。旧SX-70フィルムはシャッターを押してから画像が浮かび上がってくるのは早かったですが、新しいインポッシブルのカラーiタイプフィルムの画像の出現はスローで、安定するには時間がかかります。なお、私は、1972年に撮影した旧SX-70フィルムのプリントを所有しいてますが、カラー画像の変化はほとんど感じさせません。なお、撮影は私のいつもの最初の撮影場所である英国大使館正面玄関を同じ位置から撮影しましたが、98㎜F8レンズは水平画角から見ますと35㎜判フルサイズの焦点距離35㎜相当にあたるのがわかります。いずれの撮影も露出補正は行っていません。なお、実写プリントの掲載にあたっては、当初はフラッドベットスキャナーにプリントを並べ黒バック紙を背景にスキャンしようと考えましたが、強い光源がプリントにあたると、影響がでてはいけないだろうとテーブルに並べて集合で複写しました。

■ポラロイド1-2カメラの設計技術者はオリンパスのOB

 ところで、なぜインポッシブルのインスタントカメラをいまさら取り上げたのかということですが、実は7月に“Green funding.jp”でポラロイドカメラクラウドファンディングが開始されたのです。目標額は1000万円で、33%引きの98,075円(フィルム付)で購入できるというのです。あっという間に目標額は達成されましたが、ほぼ同時期にAmazonでも発売126,579円(フィルム付)で販売が開始されたのです。ここで使用したカメラとフィルムはクラウドファンディングで購入したものです。

 その中で解説によると日本人光学技術者の小島祐介氏が関係したというのです。小島氏は1967年4月~2003年3月までオリンパスに在籍し、この間カメラの開発に携わり、2003年の4/3規格デジタルカメラ登場のころ、2003年4月にイーストマン・コダック社副社長として移籍し、そのうち日本コダック社長を2年務めたという経歴の持ち主で、写真業界では知られた人でありました。そこで、さっそく小島氏に連絡を取り、いくつか質問をさせていただきました。

 まず「ポラロイドI-2」開発にあたっては、2018年に小島氏の旧知であったインポッシブルの社長から開発の依頼を受け、小島氏ほか、かつて小島氏がオリンパス時代企画したアルミ製限定カメラO-productの設計者であった赤木利正氏を加えて、2018~2022年の間、総勢5人のオリンパスOBメンバーがそれぞれの居住地に近い八王子(橋本)にワンルームを借りてオフィスを構えて“ポラロイド1-2”を開発したというのです。このチームは、この「ポラロイドI-2」の他にもう1機種開発していますが、現在プロジェクトチームは解散しています。

 この間の開発ストーリーは、以下のYouTubeを参照ください。

 https://youtu.be/3nTs5idQvqE?si=NYhWmbNEhsk2J6MA

 こちらをご覧になればおわかりいただけると思いますが、レンズ周りAF・AE関係は日本、デザインと製造はポラロイド台湾チームが担当したということです。ポラロイド社側はPolaroid International B.V. としてオランダのアムステルダムにあり、ポラロイドチームのチーフは、ポラロイドインターナショナルの社長であるOscar Smolo Kowski氏が務め、オーナーは彼の父親だそうです。

 

「ポラロイドI-2」のフィルムカセットを取り出し口には細かい字で社名や製造国が記されています》下の白い丸い棒は、現像液袋をつぶすローラー。

 ここで、私が注目したのは、細かな操作を簡単に目視的に行える、コマンド操作とその表示ですが、このほかにAFはLIDARと呼ばれるレーザー測距技術で、この最新技術をカメラに応用したことは素晴らしいことです。1972年のSX-70の時は超音波によるソナーAFシステムが採用され、盲人用の杖としての応用なども伝えられましたが、LiDARセンサーはLight Detection And Rangingの略で、光を使用して物体や環境の距離や形状を計測する技術を指し、リモートセンシングなどの地形の測距から今は車の衝突防止センサーの主流になっています。

 

SX-70のソナーAFの超音波発信部と電子回路部分とソナーAFの原理

     ☆   ☆   ☆

 また最初に触れましたが、旧ポラロイド社はなぜつぶれたか、改めて当時の資料を探ってみると、その1つとして、1997年にシャオ(i-zone)をトミー(現タカラトミー)からの熱いラブコールに押し切られる形で発売して大ヒットしましが、当時はフィルム製造をメキシコで手作業で行っていたのを、1999年にスコットランドに年産600万本の自動化工場を作るものの、完成直後の稼働前にブームが去りお蔵入りになったこと。

 その2として、2000年発売の「オリンパスCamedia C211Zoom」JoyCamプリンター内蔵のデジタルカメラシチズン製プリントエンジンとフィルムを掻き出す爪の不調でアメリカに出荷した44,000台全数を日本へShip backして再輸出したが全然売れなく40,000台を廃棄、仕掛品50,000台分は部品代だけ払って廃棄、などなどが重なった結果だとされていますが、意外にもここにも小島氏が関係していたのです。その小島氏が、新ポラロイド社の最新型インスタントカメラ「ポラロイドI-2」を作ったというのですから、不思議な縁を感じた次第です。 (^^)/

 

 

 

ソニーVLOGCAM ZV-E10Ⅱを使ってみました

 APS-Cサイズ、2600万画素裏面照射型CMOSセンサー搭載で動画に重点をおいたデジタルカメラソニーVLOGCAM ZV-E10Ⅱ」が8月2日に発売されたので、さっそく入手しレポートしてみました。最初にお断りしますが、私の写真的な志向からすると動画はあまり得意とする分野ではありませんが、せっかくわがスポンサー氏が購入後に試用のチャンスをくれたので簡単にレポートしてみることにしました。

 まずこのボディには黒と白があり、同時に標準域の電動ズームレンズ『EPZ16~50㎜F3.5-5.6OSSⅡ』も発売されされ、『E55~210㎜F4.5-6.3OSS』とのダブルズームキットも発売されたので、今回は黒のダブルズームキットを購入したのです。

《ダブルズームセットのソニーVLOGCAM ZV-E10Ⅱ》白ボディもありますが、55~210㎜F4.5-6.3が黒鏡筒しかないので、ダブルズームは黒のセットしかないようです。

 

《EPZ16~50㎜F3.5-5.6OSSⅡは電動式の沈胴ズーム》電源をONにするとレンズの沈胴部分が前に出てきます。アクセサリーシューの右の細かく穴の開いた長方形部分がマイクで、さすが動画メインのボディです。右下のスライドスイッチは、静止画・動画・S&Qと書かれているが、S&Qポジションにすると“SDXC U3 V30以上のメモリーカードを使うように”と背面液晶に警告が出でます。電動ズーム範囲はレンズの焦点域ですと、APS-Cで16~50㎜F3.5-5.6は、35㎜フルサイズ換算で24~75㎜相当画角となりますが、ボディ側のレバーやさらにレンズ側のズーム機能を使うとそのまま、さらに2倍までの電子ズームの機能が加わり、スチルでは実質フルサイズ換算24~150㎜画角をカバーすることなります。『E55~210㎜F4.5-6.3OSS』は、旧来型の回転式ズームで、フルサイズ換算82.5~315㎜相当の画角となりますが、電子ズーム機能を使うと630㎜相当の画角となります。なお、動画時の電子ズームは1.5倍までとされています。電子ズームとは、いわゆるクロップ撮影ですから画質的には当然低下するでしょうか、2600万画素で、この2本のレンズを使えばフルサイズ24~630㎜相当画角までカバーするというのですから驚きです。

《左:EPZ16~50㎜F3.5-5.6OSSⅡのレンズ側のズーム用ノブ、右:ボディ左側面に設けられた蓋を開けるとメモリーカードや充電用タイプCのUSBコネクターなどがでてきます》E PZ16~50㎜は名前が示すようにパワーズムですが、ノブの操作でズーミングを行えます。また鏡胴のズームリングを回転させることでも行うことができます。

《撮影時背面液晶の基本メニュー画面》だいたい見ただけで、何ができるのかわかりやすく、グラフィック・ユーザー・インターフェイスは好感持てます。モードを変更したいときは、その部分をタッチすればよく、たとえば、現在人物にセットされているアイコンをタッチすると人物⇒動物⇒鳥⇒人物と変更でき、実際の撮影時には、ピントを合わせたい部分をタッチすれば、その部分が合焦し、自動追尾(トラッキング)することもできます。(被写体は白い紙なので何も見えません。モアレの発生はたまたまうまく合致しただけです)

《風切り音防止のウインドジャマー》本キットにはウインドジャマーが付属しているのですが、最初に開梱したときはそのものがなく欠品かと思いましたが、箱の中に平たい白い封筒(左)が入っていてその中に隠れていたので、引き出しました(右)

《ウインドジャマーの装着》ニュースリリーズで見た時は、もふもふで良い感じだったのですが、自分で装着してみる(左)と、なかなかうまくいきません。右の写真はソニーからのニュースリーリス写真で、まるでソニにはヘアメイクさんがいるみたいです。

■あれこれと撮影

 まずはスチルでいつものように撮影を開始です。発売日の翌日は、この時期にしては珍しく青空、ラッキーでした。

 

《いつもの英国大使館正面玄関》EPZ16~50㎜F3.5-5.6OSSⅡ:焦点距離24㎜(35㎜判換算36㎜)、F11・1/200秒、ISO-Auto100。ふだんは、同じ位置から絞りF5.6に設定してから撮影しますが、今回はカメラを作った設計人の考え方を知りたいためすべて自動のポジションで撮影してみました。ピントはタッチパネルでエンブレムに合わせました。露出は、ハイライト部はぎりぎりですが飛ぶこともなく、シャドー部はつぶれることもなく、レンズはディストーションも感じさせませんし、解像感を含め安定した性能を発揮してます。

 

半蔵門国民公園・Ⅰ》EPZ16~50㎜F3.5-5.6OSSⅡ:焦点距離50㎜(35㎜判換算75㎜)、F7.1・1/250秒、ISO-Auto100。英国大使館の跡地であるからイングリッシュガーデン風の公園で、平日は近隣住民の犬の品評会?、勤め人のお弁当を食べる場所であったりとのんびりしてます。撮影結果からは、描写は画面全体にムラがなく、発色の鮮やかなことと、色の分離が良いことがわかります。

 

半蔵門国民公園・Ⅱ》EPZ16~50㎜F3.5-5.6OSSⅡ:焦点距離50㎜(35㎜判換算75㎜)、F7.1・1/250秒、ISO-Auto100。Ⅰの撮影条件と同じですが、ボケ具合がわかるように、花が咲きだしたばかりのラベンダーにピントを合わせて撮影しましたが文句ないボケです。

 

半蔵門国民公園・Ⅲ》EPZ16~50㎜F3.5-5.6OSSⅡ:焦点距離50㎜(35㎜判換算75㎜)、F7.1・1/250秒、ISO-Auto100。1輪の花をアップで撮ってみました。おみごとな描写です。

 

《英国大使館脇の遊歩道で》EPZ16~50㎜F3.5-5.6OSSⅡ:焦点距離50㎜(35㎜判換算75㎜)、F5.6・1/160秒、ISO-Auto500。一番町にある、最初の英国大使館は赤レンガ作りでしたが、1923(大正12)年の関東大震災で完全に倒壊しました。その時の赤レンガの破片が遊歩道のあちらこちらに顔を出していて、100年近い歴史を感じさせるので、好きな撮影ポジションです。

 

《いつもの場所で開封の儀》EPZ16~50㎜F3.5-5.6OSSⅡ:焦点距離50㎜(35㎜判換算75㎜)、F5.6・1/50秒、ISO-Auto6400。開封して1時間弱バッテリーを充電した後の、最初から3コマ目のカット。撮影はミノルタα以来のソニーαシリーズ愛用者のHさんだけに、さすがうまいといいたいのですが、だいたい顔に向けると目を認識してくれるので、気楽にシャッターを押してもうまくいくのです。

 

《バリ舞踏・Ⅰ》東京・阿佐ヶ谷神明宮能楽堂「バリ舞踏祭にて」、EPZ16~50㎜F3.5-5.6OSSⅡ:焦点距離16㎜(35㎜判換算24㎜)、F4・1/60秒、ISO-Auto160。EPZ16~50㎜F3.5-5.6の最ワイド側です。CAFで1コマ撮影(連写してません)

 

《バリ舞踏・Ⅱ》EPZ16~50㎜F3.5-5.6OSSⅡ:焦点距離50㎜(35㎜判換算75㎜)、F5.6・1/60秒、ISO-Auto2000。EPZ16~50㎜F3.5-5.6の最テレ側です。2人が横に並んでいるので1人の瞳にピントが合い、2人ともうまい感じで撮れました。CAFで1コマ撮影(連写してません)ですが、動く被写体に対して、シャッター押してピント、手振れ補正、露出などまったく問題を感じさせません。以下同様です。

 

《バリ舞踏・Ⅲ》E55~210㎜F4.5-6.3OSS:焦点距離210㎜(35㎜判換算315㎜)、F6.3・1/400秒、ISO-Auto4000。E55~210㎜F4.5-6.3OSSの最テレ側です。この場では瞳というより顔に合わせましたが、うまくピントが合ってます。CAFで1コマ撮影(連写してません)。ここからのカットはすべて望遠ズームでの撮影ですが、撮影環境としては夕方17:00からの開演でしたので、照明は足元に2灯あるものの高輝度化ということではありませんので、ISO感度の上昇による粒状感、色再現の具合など見て欲しく、さらにレンズの絞りはすべて開放のF6.3なのです。

 

《バリ舞踏・Ⅳ》E55~210㎜F4.5-6.3OSS:焦点距離138㎜(35㎜判換算207㎜)、F5.6・1/250秒、ISO-Auto2000。E55~210㎜F4.5-6.3OSSの中間テレ側です。右から2人目の人の瞳に合って、トラッキングしてました。CAFで1コマ撮影(連写してません)

 

《バリ舞踏・Ⅴ》E55~210㎜F4.5-3.3OSS:焦点距離210㎜(35㎜判換算315㎜)、F6.3・1/250秒、ISO-Auto4000。E55~210㎜F4.5-6.3OSSの最テレ側です。瞳に合って、トラッキングしてました。CAFで1コマ撮影(連写してません)

《バリ舞踏・Ⅵ》E55~210㎜F4.5-6.3OSS:焦点距離178㎜(35㎜判換算267㎜)、F6.3・1/320秒、ISO-Auto4000。E55~210㎜F4.5-6.3OSSの中間テレ側です。右の人の瞳に合って、トラッキングしてました。CAFで1コマ撮影(連写してません)

 

■本来の機能である動画で撮影してみました

 動画主体のカメラなのに、動画を撮影しない手はないだろうと、たまたま東京・阿佐ヶ谷の神明宮という神社の能楽堂で「バリ舞踏祭」に撮影席を確保してもらいましたので、臨時記録員として撮影をさせてもらいました。レンズは『E PZ16~50㎜F3.5-5.6OSSⅡ』と『E55~210㎜F4.5-6.3OSS』の2本を使いましたが、当然のこととしてウインドジャマーを取り付けてです。撮影はすべて手持ちですが、周囲のビデオカメラの撮影の人たちは三脚に固定して、ズームもしないで固定記録撮影でしたが、私は初めてでしたが、あれこれと振ったり、ズームしたりということで何とか収めましたが、撮影は何とかなりましたが、PCも変わり編集は久しぶりで、下手で納得できませんがご勘弁ください。

 動画画面は音入りで、YouTubeにアップしましたのでご覧ください。

  

《ソニーVLOGCAM ZV-E10Ⅱ》- YouTube

 

 いかがでしたか、ほとんどの素人が、カメラのオートのままで、手持ちで、これだけ撮れてしまうのですから、価格を含めカメラならびにレンズ技術は進歩したものだと再認識した次第です。さあ、どうしようという感じです。 (^^)/

 

ペンタックス17 を使ってみました

 リコーイメージングから、35mmハーフサイズのフィルムカメラが「ペンタックス17(イチ・ナナ)」として去る7月12日に発売されたので、早速使ってみることにしました。ところで国内のカメラメーカーから、本格的なフィルムカメラが発売されなくなってからどのくらい経つのでしょうか。さかのぼると、2011年3月に発売された「フジフイルムGF670Wプロフェッショナル」が最後だったと私は記憶していますが、もう13年も前のことになるのです。同じようにペンタックス最後のフィルムコンパクトカメラは、いまから23年前2001年の「エスピオ140V」ということだから、どちらにしてもかなり以前ということになります。

 写真は、カメラしてもフィルムにしてもどちらも工業技術製品ですから、その時代時代における最新のテクノロジーが導入され撮影領域を拡大してきたことは事実ですが、一度停止された製造技術を復活させるのは難しく、過去にSシリーズを復刻したニコン、コンパクトカメラの後にレンズ交換式で距離計連動のヘキサーRFを作ったコニカの例などと同様に、リコーイメージングの「ペンタックス17」の場合も同じくさまざまな苦労があったであろうことは十分に察しますが、まずは使いもしないでいろいろという前に、少なくとも過去60年以上前からカメラに親しんできた人間として、リバイバルフィルムカメラの「ペンタックス17」を納得いくまで使いこんでレポートしてみました。

■まずは外観から

 化粧箱から取出してみると、縦画面のハーフサイズといってもボディは横型で、極端に小型ではなく、適度なカメラらしい大きさがあるのは良い感じです。その反面、手にした人は軽ーいというの多いが、これは上下カバーはマグネシウム合金で作られているものの、その他外装、内部は樹脂で成型されている部分が多いのです。見た目よりは軽く感じるのはそのせいだと思います。撮影時にカメラを持つときにどのように保持するかは意見の分かれるところですが、そもそも本機がハーフ判の縦位置撮影が基本となっていることと、一眼レフカメラとは異なりレンズ部分が小さいので、レンズ部分を持って保持するというのは難しいのです。とはいっても、ファインダーをのぞいたまま、下部のゾーンフォーカスマークを見ながらピント合わせをすることもできるので、実際の撮影は縦・横位置の撮影もあるでしょうから、構え方はそれぞれでしょう。

ペンタックス17》いわゆる斜め姿写真ですが、今回はリコーイメージングが発表したニュースリリース写真がさまざまな角度から、ビシッと撮れているので、レポートする側としてはそれ以上の情報を提供しようと苦慮しましたが、私なりの1枚です。ついでにいうなら、この外観撮影はGRⅢで行いました。

 カメラは撮影のときも大切だけど、持ち歩きのときも重要です。カメラとセットに付属してくる最短撮影距離25cmの長さのハンドストラップも近接撮影という目的を持っているときはよいですが、コンパクトタイプの「ペンタックス17」はカメラは重量感がないので、個人的には首からぶら下げるネックストラップが好みです。ペンタックス17の場合は、ストラップによっては横吊りのほか、縦吊りもできるようになっていますが、私は胸元への横吊りが好きです。

 

《横吊りのネックストラップをつけてみました》今から50年以上前に、一部ライカユーザーのあいだで流行ったストラップですが、なかなか良い感じです。

 外観は前掲の写真を見ていただければお分かりのように、特別に奇を衒ったという感じはしなく、私としてはカメラを両手で持った時のトップカバーのデザインが好みです。特に中央部の黒色部分は、その形状は一見するとペンタ部のよう、もしくは外付けファインダー頭部のようにも見え、オールドペンタックスファンならグレーで刻まれた“AOCO” マークが好きということになるのでしょうが、黒地にPENTAX、CRAFTMANSHIP by PENTAX、FILM CAMERA、 フィルム位置マークなどの配置が、それとなくメカニックな感じがするのです。

《トップカバーのお気に入りの部分》外装は、上下カバーは射出成型されたマグネシウム合金でLXのチタンカラー仕上げ風に、フィルム巻上げレバーはオート110から、レンズキャップはペンタックスQから、巻戻しクランクはLXからのというように往年のペンタックスカメラのイメージをあちらこちらに流用するなど、らしさを打ち出していますが、基本的には樹脂ボディなので手に持った感じは意外と軽いのです。

《バッテリーはCR2を1個使います》グリップ部のネジをコインで回すと止めネジが外れますが、電池蓋と簡単に分かれてしまうので、なくさないように注意が必要。歳くうと意に反して、このようなネジを入れるのも難儀ですし、落下したとき拾い上げるのも一苦労です。電池は、ストロボの発光などにより寿命は変わるでしょうが、せっかくだからタイプCのUSB充電式のリチウム電池だと、あまり維持費を気にしなくては良いのではと思いました。

■フィルムの装填

 フィルムの装填は難しいことではありません。とはいってもこれは、さまざまなカメラを何十年も触ってきた私の世代だから言えることであって、最近の若い人、とりわけデジタルカメラスマホしか扱ったことがなかった人にはどうでしょう。

《裏蓋を開けました》フィルム巻戻しクランクを引上げると裏蓋が開くというメカニズムは過去の各社のカメラと大きく変わる部分ではありません。ただし、135フィルムにあったDXコード接点には対応していません。昨今のフィルムは、パトローネにDXコードがないものが多く、ISO400とか書いてあっても実効感度は100程度というカラーフィルムもありますので、現在のフィルム環境だと現実的にはこの方がマッチしているのでしょう。

《フィルムを詰めてみました》いわゆるフィルムのベロを適度に引き出し、裏蓋を閉めて、フィルム巻上げレバーを巻き上げればよいだけの、イージーローディング方式です。このあたりのメカを見ると他社の方式にも似ているような感じもありますが、わが家に眠っていたペンタックスズーム70と見比べると巻上げ軸の部分は似てる感じでした。アイピース右側の穴は電気レリーズ用の2.5㎜Φのミニミニジャック用ですが、このボディからすると穴が大きく、ゴミや水が入るということではなくても、ここには気持ちとしてカバーキャップが欲しいところです。

 

《距離指標》上から見ると6点のゾーンフォーカスマークが刻まれています。この刻み具合だと、私としてはメートル距離表示のほうがわかりやすいのです。焦点距離F値など、過去の例から見ると3~4点ゾーンぐらいが妥当です。何でこんなに細かいのだろうと、下から見ると、メートル、フィートとそれぞれ6ポイント目盛られているので、ここからくるのだとわかりました。なお、ファインダーをのぞくと、レンズ鏡胴上部に刻まれているゾーンのマークが読み取れます。個人的には、m表示が上に来ていたほうがわかりやすいのですが、皆さんはどうなのでしょう。レンズ構成は、3群3枚のトリプレットタイプ、3群4枚のテッサータイプに比べるとどうなのでしょうか。一般的には、トリップレットは構成枚数が少ないだけに色ヌケが良く、中心部がシャープだといわれていますが、最新の光学設計とコーティング技術により、どのような描写を示すかが楽しみです。

 なお、フォーカシングは目測ですが、シャッターボタンを半押しするとレンズがピコッとわずかに前後するので、いわゆるヘリコイド回転による距離合わせと異なり、直進的に前後するアクチュエーター方式を採用しているのが新しさを感じます。ただこの方式が製造上のメリットからくるのか、次期モデルへの布石なのかはわかりません。

《左:裏蓋を開いた背面》ファインダーアイピース右わきには、充電完了・警告などを知らせるLEDランプがあり、さらに中央下にはPENTAXと書かれています。シャッターはビハインドレンズシャッターであることがわかります。また、暗箱内部はかなり入念にフレアカットの遮光版が付いています。フィルムガイドレールは樹脂でして、磨き上げたという感じはありません。シャッターは、ビハインドレンズシャッター式で、B.4~1/350秒の秒時。レンズ背面には固定絞りが設けられていて、その背後(フィルム面側)にシャッター羽根が設けられています。作動させてみるとプログラム式でティアドロップ式の2枚の羽根を開閉させて露出を制御する機構のようで、フィルム感度の情報を得て、シャッタースピードの制御を行うプログラム式のようです。このあたりの技術は、明らかにされていないことと、あえて細かく聞いていませんので、あくまでも個人的な判断でしかありません。

《右:裏蓋を閉じた背面》ファインダーをのぞくと視野枠が見えますが、近接時のパララックス補正はかなり下に降りているので撮影時は要注意です。さらにアイピースのネジはマイナスネジを使ってます。このあたりもクラシックを意識したのでしょうか。さらによく見るとネジの摺割が大昔の木製カメラのようにそろっているのです。さすがクラフトマンシップカメラと思ったのですが、改めて正面のネジを見るとバラバラなので、そこをもってクラフトマンシップということではないようです。

 なお、カメラ各部の操作に関しては、人それぞれの考えがあるでしょうが、まずはでき上ってきた商品には、使用者自身がそのカメラの操作に慣れることが大切だと思うのです。

■フィルムは何を使うか

 さっそく撮ってみようと、フィルムを調達することになります。ここで一気に20数年前に戻されてしまいました。フィルムには、黒白、カラーリバーサル、カラーネガと3種類あるのです。かつては、撮影前日まで何のフィルムを持って行くか大いに悩んだものでしたが、昨今のフィルム事情などを考えて、カラーリバーサルをまず外し、黒白かカラーネガかとかあれこれ考え、せっかくフィルムを使うなら、現像からプリントまでデジタルの介在がなく純粋にアナログで通せるようにと黒白フィルムをメインにして選びました。撮影はいつものご近所と、せっかくだからと秩父まで出向いてみました。実写は近接から無限までといろいろですが、シャッターを切っていて、つい失敗がないようにと、1場面に3~4カットぐらい切ってしまいました。このあたりは、カメラになれがないからでしょうね。

■現像に出してみました

 まず、フィルム現像に出しました。実は身近な環境でフィルム現像とプリントができるのですが、今回は現像・密着プリントまでいくらかかるのか知りたくて、駅前の大きなカメラ店に出してみました。カラーは翌日上るのですが、黒白は1週間かかるのです。以下が、現像・密着プリント(ベタ焼き)の結果です。

《ベタ焼きから大きく伸ばすコマを決める》せっかくやるならとまずはベタ焼きにして、さらにsmcペンタックスフォトルーペ5.5×でのぞいて判断しようというわけです。ざっと見ていただいてお分かりのようにコマ間隔はそろっていますし、露出はすべてAUTOポジションで(これは私の主義で、どんなカメラでもその会社の設計思想を知るためにまずはオートで撮ります)、露出補正はかけていませんから、濃度のバラツキもありません。なお撮影モード:AUTOポジションは、フルオートという意味で、露出のほかピントもパンフォーカスになるというのです。ハーフ判で焦点距離25㎜ということだとほとんどの撮影はパンフォーカスで問題ないと考えますが、念のため撮影時には距離リングをそれらしい所にセットして行いました。

 仕上がったベタ焼きから、各コマを細かく見ようとしましたが、ルーペがフルサイズ用の5.5倍では微細な部分の判断がつかないのです。これは、ハーフ判によるせいもありますが、ピントを細かく見るには10倍ぐらい欲しいのです。そこで10倍のルーペを使い、引伸ばすカットを決めましたが、実はここまでくるのには大きなビックリがいくつかありました。まず、イルフォードのHP5+36枚撮りが1本1,500円、現像代が1,230円、4切密着プリントが3,590円なので合計6,320円なのです。これを2本撮り、さらにカラーネガを36枚を1本撮り同時プリントしましたが、フィルム代が3,000円、現像代が930円、L判プリント@56円で、74枚プリントだと4,144円、何と総計で8,000円かかったのです。ここまでかかると総計するのは、止めました。ここで個人的には悲鳴を上げ、以下は周りの方々に助けてもらいました。

 なお、このイルフォードHP5+には、黒白フィルムなのにフィルム自体にDXコードがサイドプリントされているのです。DXコードは、パトローネのテレンプの下にある市松模様(撮影可能枚数、感度、ラチチュード)、フィルムのベロの部分、フィルムのエッジ部分に規格当初は制定されていましたが、フィルムエッジ部分から種別を読み込むのはカラーネガフィルムの自動プリンター用であって、黒白フィルムにプリントされているのは初めて見ました。同様な例としてはかつて3M社(イタリア・フェラニア社)のカラーリバーサルフィルムであるスコッチクロームにもDXコードのエッジプリントがなされていたのを見ていますが、他にはありませんでした。

《今回のプリント作業の結果》完全にアナログプロセスで通した黒白写真ですが、それぞれをノートリミングで6切印画紙を1/2にして余裕を持たせてプリントしましたが、結局はブログに載せる時点でフラットベットスキャナーでデジタル化されるのです。

いつもの場所で撮ってみました

 私のカメラレポートの実写はいつもここから始まるのです。

《英国大使館正面玄関》ペンタックス17のレンズは、トリプレットの25㎜F3.5。35㎜フルサイズに換算すると37mm相当の画角となり、もともとこの場所はフルサイズ35㎜を想定して設定してあるので、ジャストフィットとなりました。撮影モード:AUTO、距離設定:∞、フィルム:ILFORD HP5プラス(ISO400)、現像:アートラボ、引伸機:富士B、印画紙:ILFORDシルバークロームRCペーパー(2.5~3号相当に設定)、145×105㎜(余白を除く)、引伸ばしプリントをフラットベッドスキャナーで読込み、レタッチソフトでトーン・濃度を整えました。撮影は、いつものように午前10:00ごろ。天候は青空ですがわずかに薄っすらと雲がなびいています。

 仕上がり結果からすると、このような場面で一般的にはコントラストを高めるためにY2フィルター(40.5㎜Φ)をかけるのが従来でしたが、ここ25年ぐらいはフィルターを使わずに私は撮影してきたので、フィルターなしの撮影となりました。ネガフィルムをルーペで覗いた状態とプリントからの印象としては、ISO400という高感度のせいでしょうか粒子が粗いような感じがします。これは、フィルム自体の性能なのか、現像条件からくるものなのかは、サンプル数が少なくわかりません。ただ、絞り・シャッター速度はいくつかわかりませんが、明確にわかることは、左右の樅ノ木の葉がしっかりと解像していないのはパンフォーカス撮影だからでしょう。

《シカのイルミネーション》撮影モード:AUTO、距離設定:1.7m、その他条件は英国大使館正面玄関と同じです。夜になると網状に作られたシカにLEDランプが埋め込まれていて点灯するのですが、奥武蔵のホテルの庭園は夜にはクマがでるかもしれませんので写真は撮れません(笑)。プリントを直にみると画面全体が白っぽくフレアがかって見えましたので、デジタイズした時に、トーンとコントラストを見た目でよい感じになるようにレタッチソフトで調整しました。撮影距離は目測でゾーンの人間2人(1.7m)に合わせましたが、下の芝目を見ておわかりのように、シカの下の芝にピントがきてることがわかり、かつて目測のカメラをたくさん使いこんだ時の勘というか経験がまた生きていることが証明されたとうれしいです。しかし、撮影モードはAUTOなので距離設定に依存しないのでしょうが、芝目からすると距離設定は働いているようです。ついでながら、露出に関する勘もまだまだ健在なはずなので、絞りとシャッター速度を自分で決められれば、写真の露出の原理がわかっていいのにとも思いました。

長瀞豆腐ずくめランチ》撮影モード:AUTO、距離設定:0.5m(やはり距離設定は多少効いているようです)。料理のナイフ・ホーク位置で撮影しましたが、35㎜判37㎜相当画角では、テーブルの上に乗った食事全体をカバーできませんでした。かつて海外旅行が流行ったときに人気だったフィルムカメラは、機内食のトレイを席を立たずに撮影できるのがポイントでした。今回は屋外のテーブルに置かれたトレイを前に立って真上から撮影しました(長瀞にて)

秩父武甲山撮影モード:AUTO、距離設定:∞(この状態から見るとパンフォーカスのためなのかなとも感じます)。秩父に来ると必ず寄る定点撮影ポイント。全体的に柔らかく描写されていて、古い時代の黒白写真を彷彿とさせます。画質は、カメラ、フィルム、画面サイズ(ハーフ判)、撮影、現像、プリント、スキャニングなどすべてに関係した結果なので、ここに写真撮影技術、処理のうまい・へたなどが関係してくるので簡単に断定はできません。

《廃校になった小学校の卒業記念モニュメント》撮影モード:AUTO、距離設定:1.2m。かつての卒業生たちが残していった手作りの人形や顔型ですが、薄暗い場所で感度400、絞り値はどのくらいかわかりませんが、焦点距離25㎜のパンフォーカスではこんなところなのでしょう。

《酒瓶とドクダミの花》撮影モード:AUTO、距離設定:1.2m。2本撮影した中で選んでプリントした中で、左斜め後ろから太陽光があたり、階調、黒の締まり、解像感など一番良かったカットです。デジタイズした時に残念ながらその感じは失われました。やはり黒白フィルムはオリジナルプリントで見るのが最高ですね(小鹿野宿にて)

 

《BOKEHモードとAUTOモード絞り開放となるBOKEHモードの効果を見るためにAUTOモードと同じ時間と同じ場所で撮影し、2コマ同時にプリントました。撮ったときは、左がAUTOモード、右がBOKEHモードですが、昼過ぎの炎天下では差がでません。わずかに露出的にはBOKEHモードのほうがオーバー気味に露出がかかっているようで、プリント濃度に違いがあるものの、描写にはその差はわかりません。

■カラーネガフィルムで撮ってプリントを作る

 やはり現在は、カラープリント、それもネガカラーフィルムからがスタンダードかと考え、カラーネガフィルムで撮ってみました。ここではカラーネガを36枚を1本撮り同時プリントしましたが、先述のようにフィルム代が2,000円、現像代が930円、L判プリント@56円で、74枚プリントしたら4,144円というわけです。つまり、ネガカラー36枚撮りフィルムを1本使うと7,000円近くかかるというわけです。0円プリント時代にハーフサイズの同時プリントを頼むと500円ぐらいで仕上がりましたから、その時代を知る私にとっては、ただただつらいです。

半蔵門国民公園にて》撮影モード:AUTO、撮影距離:1.2m。L判プリントをフラットベットスキャナーで読み取ってのデータですが、拡大掲載となりますが、特に問題なくきれいに描写されています。右上の枯葉からはボケを感じさせます。

《バラの花》撮影モード:AUTO、撮影距離:1.2m。上と同じ条件で急いで撮影したために、背後の葉にピントが合ってしまいました。バラの花がベターッとして赤いのはピントが外れていることもありますが、カラープリンターの特性で緑1色の中に対抗色の赤があると、極端に赤が強調されベタッとした再現になります。同じようなシーンでは緑1色の芝生の中などでも起きます。理想的には、上のカットのようにさまざまな色が混ざっているほうがプリント時の色判断がしやすいのです。こういうのを専門用語でカラーフェリア(赤メクラ)と呼んだようなこともありますが、40年ぐらい前の話ですね。この一連のプリントの裏面を見るとNNN +1とか+2、+3とかでわずかに濃度を操作しているようですが色は標準のそのままのようです。

■カラーネガで撮ってデジタルデータに変換

 結局、昨今のフィルム好きの若い人たちは、カラーネガで撮り、現像に出して現像済みフィルムは持ち帰えらず、デジタルデータだけを受取るとも聞きますが、半分理解できる半面、それではフィルムで撮る価値はないでしょうというのが私の考えです。そこで見つけたのが、ペンタックスファンのフォトグラファー中村文夫さん。同じようなことでテストしていたので、資料提供の協力を申し入れ快諾を得られたのです。

 以下は、中村文夫さんからのデータによります。今日、フィルムからのデジタイズは、一般的にはフィルムスキャナーを使うのが簡易ですが、ここでのネガとリバーサルのデジタルデータ化は中村文夫さんの方式によりました。

《ネガカラーフィルムの像》中村さんはこのカットをデジタルカメラで複写したのです。カメラ:ペンタックスK-1MkⅡ、露出:1/20秒、ISO400、7360×4912ピクセルで取り込み(撮影・デジタイズ:中村文夫氏)

《カメラを使ってネガ像をポジ画像に変換》一部のカメラではカメラ内でネガ-ポジ変換できますが、レタッチソフトを使ってもネガ-ポジ変換できます。カメラ:ペンタックスK-1MkⅡ、露出:1/20秒、ISO400、7360×4912ピクセルで取り込み(撮影・デジタイズ:中村文夫氏)

《カメラ屋さんのプリンターでデジタイズ》現在一般的には、カメラ店、現像所のプリンターを通してデジタルデータ化するのが一般的でしょう。これは、中村さんのお住まいの近くの大型店で処理してもらったデータです。Exifからノーリツプレシジョン社のQSSプリンターでデジタイズされたことがわかりました。取り込みデータ量は2903×2040ピクセル写真屋さんのカラープリントは安全を見込んで周辺がトリミングされます。発色の違いは、レタッチソフトやカラープリンターの修正範囲です。(撮影:中村文夫氏)

■カラーネガフィルムで撮影しデジタルデータでもらう

 結局、あれこれやって、経済的にも納得できるのは、カラーネガフィルムで撮影し写真屋さんでデジタルデータ化してもらうのが、現在フィルムを使って画像を作り出すのには最もコストパフォーマンスが高いとなるのです。

 若いフィルムカメラファンが、ペンタックス17を使って24枚撮りで、ある全国チェーン店に出したら、現像・プリント・データで3,110円(税込)だったようです。ちなみにフィルムは3年前に購入したフジカラーN100で、その時には1本737円だったようです。

《全国チェーン店のネガカラーフィルムからのサービスの種類と価格》それぞれ価格が設定されていますが、色調補正に、「カラフル:色鮮やか・楽しい雰囲気」、「レトロ:ノスタルジックな世界観」、ハイキー「ふわっと・淡い印象」と別料金ですが、やはり若い人たちを顧客としてつかもうとすると、このようなプリントのバリエーションがあってもおかしくなく、スマホへのデータ転送サービスなども含めて、時代の動向をしっかりつかんでいるといえるでしょう。

■カラーリバーサルフィルムで撮ってみました

 中村文夫さんが、カラーリーバーサルフィルムで撮影したというので拝見し、さらに拡大撮影したデータをいただきました。カラーリバーサルフィルムの現像は大型店で1本2,000円だったそうで、これにフィルム代1本4,000円ぐらいを加えると、やはりバカになりません。

《現像後のスリーブをライトボックスに載せて撮影しました》リバーサルらしくわずかに露出アンダー気味な感じもしますが、大きく伸ばすにはちょうどよい濃度に上がっています。今は、フィルムスライドプロジェクターもありませんし、スライドマウントもありません。やはりデジタルデータ化して使うほかは用途はありませんね。

《観光バス》東京北の丸公園武道館の向かいにある駐車場に停まっている観光バスです。デュープカメラ:ペンタックスK-1MkⅡ、レンズ:50㎜マクロ、露出:1/20秒、ISO200、7360×4912ピクセルで取り込み。かなり良い感じで複写できています。アスファルトの路面がマゼンタ発色するのはフィルム時代にはよくありましたが、デジタルで補正はできる範囲です(撮影・デジタイズ:中村文夫氏)

《逆光の銅像銅像は、北の丸公園の旧近衛師団本部の脇にある北白川宮能久親王の騎馬像。デュープカメラ:ペンタックスK-1MkⅡ、レンズ:50㎜マクロ、露出:1/20秒、ISO200、7360×4912ピクセルで取り込み。逆光なのに、ゴーストイメージやフレアの出現を感じさせません。やはり最新のHDコーティングの成果でしょうか(撮影・デジタイズ:中村文夫氏)

 かつてカラーリバーサルフィルムといえば、スライド映写、印刷用の原稿として多用されましたが、また、プリントするためにはチバクロームコダック14RCタイプのポジ-ポジカラーペーパーを使ったり、インターネガ(カラーネガ)フィルムで複写して引伸ばしプリントするなどいくつかの材料とテクニックがありましたが、それらに向けた感光材料はすでに遠い昔に廃止となっていて今は、デジタル化しかありません。

フィルムカメラのむずかしさを改めて知る

 今回のペンタックス17の試用にあたっては、フィルム全盛時代の正統のやり方を現在可能な限りな方法で試してみました。もし黒白フィルムを何が何でもアナログ処理を通そうとするなら自家処理か一部のプロラボに持ち込むしかなく、さらにカラーネガフィルムを引伸機で面露光でプリントしようとすると一部プロラボ(例えば、東京赤坂のフォトグラファーズラボラトリー: 03-3583-1607)しかありません。カラーリバーサルフィルムも同様で、現像も富士フイルムか、上記プロラボぐらいしかありません。

 それと厄介なのは、かつてのメジャーなフィルムメーカーの商品ラインナップも少なくなり、街には未知のわからない名称のフィルムが氾濫しています。一部にはカラーネガフィルムの場合には、既存の現像ラインに流すと、組成が異なるため大手ラボ系列でははっきりと受け付けないことを明言しているのも現実です。またカラーネガフィルムの一部では、Cine、昭和レトロ、〇〇〇70sとか、×××80sなどと名記したものもあり、それぞれが昭和のレトロな色再現であったり、さらには1970年代に撮ったカラーネガのプリントが退色した感じに仕上がったり、80年代のとかいうわけで、つまりかつてカラー写真に求めた忠実な色再現などへの意識は希薄なのです(自動プリンターを通すとその色調も補正されてしまうのでは?と思うのですが)。そのあたりに対して前掲のチエーン店のプリントオーダーリストには、時代にマッチさせた色再現注文ができるのも素晴らしいことです。また、一部フィルムにISO400と銘記されていても、実行感度が100相当しかないのもあり、なかなか難しいです。

 業務用のカラープリンターもデジタル化され、フィルム画像をどのような解像度で読み取り、出力しているかは、アナログ時代とは大きく異なるのです。逆にデジタル化により救われているのも事実であり、従来だとカラーネガフィルムの場合-1段から+2段ぐらいが適正に焼ける露出許容範囲だったのが、かつて私が試した富士フイルムのフロンティアの場合には、-3段、+5段ぐらいまでは普通にプリントできてしまうのです。これだと、実効感度が100でも、ISO400にセットしてもプリントできてしまうのです。一方でこのような高価な現像・プリントシステムは一般小売店では維持することができなくなり、店内での処理はインクジェットのプリンターによるようになったりと、大きく変化してきています。また、黒白やリバーサルは現像料金や処理への所要日数も地方へ行くことにより高く、時間もかかるというのも現実です。

 簡単にいえば、フィルム全盛期の時代から考えると、収集から処理、デリバリーまでしっかりと複数確立していたのが、システムとして成立しなくなったのです。

 上に掲載したグラフは、私が今から18年ぐらい前に東京工芸大学でイメージングマーケットというテーマで授業をしていた時に使った黒白フィルムと印画紙の生産の推移を示したパワーポイントの画面ですが、何と1966年がピークなのでして、2006年にはほとんど消え入るような状況になっていたのです。これにカラーフィルムとペーパーの生産を加え、さらにデジタルカメラの伸張・推移、さらにはスマートフォンの台頭などを加えると写真全体の推移がわかります。昨今は明らかに写真を楽しむ層が増えてきたのは事実ですが、高度に進化してきれいに写るデジタルカメラの画像に飽き足らなくなった人たちが、自分だけの表現技法としてシャッターチャンスよりも、8×10インチ判の大型フィルムカメラや古典印画法へと向かうのも自然な動きかもしれません。そのようなムーブメントの延長線上に若い人たちの間でフィルムカメラへのニーズがあるのでしょう。

ペンタックス17に思うこと

 今回の使用レポートには、いろいろと逡巡があり、かなりの時間をかけました。その第1は、揺れ動く写真という画像システムの中で、かつての自分自身の考え方を簡単にあてはめて良いのだろうかということで、カメラもしかりでした。それでも、やはり個人的に思うには、絞り・シャッター速度・感度・ピント合わせが、わかるようなカメラであると、次のステップに進めるだろうし、写真を基本から学ぶことができると思うのです。日本のカメラ産業は戦前から多くの企業が手掛けてきて、フィルムカメラも2002年に生産、金額的にデジタルカメラに主流の座を譲ってから、早くも20年以上経つのです。この時点でフィルムカメラを再起させるためには、リコーイメージングも大きなリスクを抱えてのスタートだったと思うのです。その点において、最初の出荷は予約で完売だったと報じられていましたが、私の周りではいくつかの場所で早速購入した人たちを複数知っていますが、かつてこのようなことはあまりありませんでした。やはりそれだけフィルムカメラに対する期待が大きいのだと改めて知ったわけです。

 ただ、今回私の周りの購入層はわりと高年齢層だったのですが、20~30歳前後の若い人(女性3、男性2)に触ってもらい聞いてみると、やはり買いたいというのです。ただそのための購入費が8万円ぐらいだということは別にしても、写真を作っていく道具として、縦位置画面のハーフサイズというのはどうなのでしょう。スマホの画面が縦位置だから縦位置にしたというのは苦しい弁解です。やはり横画面で、世の中のテレビ、PC画面、劇場画面は横位置の画面が常ですから、横位置のしかもライカ判フルサイズというのが画質的にも最もなじむのではないでしょうか。すでに、次が模索されているようですが、ぜひそのあたりで探って欲しいと思う次第です。 (^^)/



キヤノンミラーレス用RF交換レンズを専業メーカーにライセンス

 4月23日の午後1時にタムロンからキヤノンRFマウントの交換レンズを開発・発売の発表のニュースが届き、追っかけで1時20分にシグマからやはりキヤノンのRFマウント交換レンズ開発発表がなされました。

 タムロンは、11-20mm F2.8 Di Ⅲ-A RXD (Model B060)を2024年内に発売を予定していて、シグマは18-50mm F2.8 DC DN|Contemporaryを2024年7月に発売し、2024年秋以降順次、10-18mmF2.8DC DN|Contemporary、16mmF1.4DC DN|Contemporary、23mm F1.4 DC DN|Contemporary、30mm F1.4DC DN|Contemporary、56mmF1.4 DC DN|Contemporaryを発売していく予定だというのです。

 日本の交換レンズメーカーとしては、すでにコシナキヤノンRFマウント用として2023年10月に「ノクトン50mmF1Aspherical」、2024年1月に「ノクトン40mmF1.2アスフェリカル」、2024年4月に「ノクトン75mmF1.5Aspherical」を発売してきていました。コシナの場合には、マニュアルフォーカス専用のレンズですが、電子接点を持ちボディとレンズ側で情報をやり取りし、Exif情報の書き込み他、ボディ内手ブレ補正(3軸)に加え、3種類のフォーカスアシスト機能(拡大表示、ピーキング、フォーカスガイドに対応しているなどの特徴を持たせています。この点において、キヤノンコシナがMF専業であるからあえて製造のライセンスを与えたのかと私は考えました。そこでAF対応としている交換レンズメーカーのタムロン、シグマにはどのように対応するのだろうかと、ひそかに注目していました。

■カメラマウントと交換レンズ

 カメラボディと交換レンズの関係は、過去にさかのぼるといろいろありますが、古くはライカスクリューマウント(L39)、プラクカスクリューマウント(M42)などドイツ製カメラのマウントと規格を同一にすることにより、日本の交換レンズとカメラは戦後の輸出産業としてその拡大に大きく寄与してきました。ところがM42マウントでは、ペンタックススクリューマウントのように本家をしのぐボディがあったり、さらには技術の発展過程でさまざまな機能(機構)付加されることにより、互換性がなくなったり、結果としてバヨネットマウント化へと進み、その過程ではシャッター速度優先・絞り優先、プログラムAEなどの3モードのAE化、さらにはAF化などの新機能も加わり、それぞれのマウントは各社なりの工夫がなされ、当然そこには必然的に自社の知的財産権(パテント)が生じ、交換レンズメーカーにとっては、同等の結果が得られるようにそのパテントを回避するか、そこを無視して使うか、さらにはライセンスを受けて製造するかなど、一眼レフ時代においてはさまざまな、係争やライセンスのクロスがありました。

■ミラーレス一眼のマウント

 ミラーレス一眼時代の到来にあたって、最初に名乗りを上げたのはM4/3規格のパナソニックDMC-G1で2008年10月のことでした。マウントはM4/3(マイクロフォーサーズ)規格ということですから、オリンパスと共同の規格となります。またソニーのEマウントが誕生したのは、2010年のAPS-C判の「NEX-3」と「NEX-5」からで、2013年にはフルサイズのα7シリーズが投入され交換レンズもFEマウントとなりました。このなかで特徴的なのは、ソニーのミラーレス一眼用のEマウントに関しては、そのマウントそのものの機械的な寸法の技術開示を当初から行ったことで、ボディ発売後マウントアダプターの製造にわずか1年強で60社以上が参入するというもので、フランジバックの長かったライカMマウントや過去に消滅した社を含めて、各社一眼レフ用の交換レンズがマウントアダプターを介することにより、ソニーα7ボディで使えることになり、新しいカメラというかレンズ需要層が掘り起こされたのです。

 ところがこの技術開示はマウント形状だけであって、AFを行う電子接点を介した情報を得るためにはロイヤリティーを支払はなくてはならないということでしたが、海外企業においてはどのように守られたか実態は不明です。このマウント寸法の積極的開示は、同様にして2012年の富士フイルムのXマウントでも行われ、さらに2017年に登場したデジタル中判のGFXも同様で、サードパーティーのマウントアダプターに電子接点のある他社35mm用交換レンズを装着すると、GFXで35mmフルサイズに切り替わるような機能を持たせたりというわけで、どのような契約内容であるかは不明ですが、前向きに技術開示を行っていたことは確かです。ここで前向きに技術開示を行った4/3グループ、ソニー富士フイルムは、簡単にいえば一眼レフ時代から引き継ぐレンズ資産が希薄で、やはり仲間づくりというか、サードパーティーのマウントアダプターや交換レンズを早期に取り組むことが、新規ユーザーとシェアの獲得には手っ取り早い手段だったのでしょう。こう書くとミノルタの流れをくむソニーはどうかということですが、2011年に発売した「LA-EA2」、2013年「LA-EA4」などのマウントアダプターは、ミノルタ時代のボディ内モーターのAFレンズをそのまま駆動させるようにしたアクチュエーターを3つも組み込んだAFマウントアダプターでした。同じボディ内モーター方式を採用したニコンでもFマウントからZマウントへの変換でもなしえなかったマウントアダプター技術で、ソニーにとってはいかにミノルタ一眼レフ時代のユーザーを引き留めるかが大切であったかがわかります。

 CP+2024の時点で明らかになっていたサードパーティのミラーレス機対応のに加え、キヤノンマウントにシグマとタムロンが加わったことにより、新たな展開を展開を迎えることになりますが、改めて各社の対応マウントを整理してみました。

・シグマキヤノンRF(APS-C)、ソニーE、富士フイルムX、ニコンZ、M4/3、Lマント

コシナキヤノンRF、ソニーE、富士フイルムX、ニコンZ、M4/3

タムロンキヤノンRF(APS-C)、ソニーE、ニコンZ、富士フイルムX、M4/3

トキナーソニーE、富士フイルムX、M4/3

 ここで注目されるのは各社ともそれぞれのミラーレスマウントに対応させていますが、キヤノンRFのシグマ、タムロンに対してのAPS-C判だけのライセンスというのが気になります。これから先、いつかはフルサイズモデルの生産もライセンスされるでしょうが、いつになるのでしょうか。

■CP+2024の周辺で

 実はCP+2024が2月22日から開催されたときに、いくつか目についたのがミラーレス機用の交換レンズでした。その時点では最新だったコシナフォクトレンダーノクトン50mmF1 Asph. 、シグマ15mmF1.4、シグマSportsライン500mmF5.6、サムヤンAF35~150mmF2-2.8L、LAOWA 10mmF2.8 ZERO-Dを自分の持参したカメラで試写させてもらいました。

ソニーα9Ⅲに装着したコシナフォクトレンダーノクトン50mmF1 Asph. と絞り開放実写作例。絞り優先AE、F1・1/500秒、ISO-Auto250、手前右側の緑の葉に合焦させています》

ソニーα9Ⅲに装着されたシグマ15mmF1.4DG DN|Artと作例、プログラムAE、F2.8・1/60秒、ISO-Auto250、気持ちよい歪曲です

ソニーα9Ⅲに装着されたシグマ500mmF5.6DG DN OS|Sportsと作例、プログラムAE、F5.6・1/500秒、ISO-Auto12800、手持ち撮影、かなりシャープであることがわかります

《サムヤンAF35~150mmF2-2.8L。左:ケンコー・トキナーのブースにあったサムヤンAF35~150mmF2-2.8Lを持参のソニーα9Ⅲに装着、中:シグマブースにあったLマウントのサムヤンAF35~150mmF2-2.8L、右:ソニーα9Ⅲに装着した状態で試写、焦点距離35mm、プログラムAE、F4.5・1/80秒、ISO-Auto250、テーブルを見る限りワイド側でも直線性が良いようです》

 実写はしませんでしたが、新たにライカLマントアライアンスグループに入った韓国サムヤン初のLマウント交換レンズレンズ「AF35~150mmF2-2.8」が、国内販売代理店であるケンコー・トキナーのブースでなくLマウントアライアンスのシグマブースにあったのが興味をひきました。いずれにしても、各種マウントボディを持ちあるくほどの体力はありません。現状で交換レンズメーカー各社に合致の確率が高いのはソニーだというわけで、最新のα9Ⅲを持参してみたわけです。

ソニーα9Ⅲに装着されたLAOWA 10mmF2.8 ZERO-Dとその実写。プログラムAE、F4.5・1/80秒、ISO-Auto250。Exif情報の書き出しには対応している》

 また、LAOWA初のAFレンズだというLAOWA 10mmF2.8 ZERO-D、11mmF4.5、14mmF4の話を会場にいた男性スタッフに話を聞いていると、どうも話し方に自信のほどをうかがわせたので、あなたはLAOWAの社長ですかと聞いたところそうだというのです。LAOWAの社長(李大勇氏)はかつてデジカメWatchの取材記事に応じていたのを覚えていたので、改めて私自身の名刺をだしましたが、李社長はその日は名刺を持ち合わせていないというのでしたが、さらに突っ込んでいくつか気になる点を聞いてみることにしました。10mmF2.8 ZERO-Dは、ソニーEとニコンZマウントをAF化しているのですが、その実施にあたってはソニーニコンからライセンスを受けているのかと伺うと、受けていないというのです。それで日本でビジネスしていけるのかと聞くと、他社それぞれのレンズのAF化は各カメラメーカーからは技術的な開示がなくても自社でやっているというのです。しかもライセンスを受けた会社は開示された技術に従ってやっているけれど、LAOWAは独自技術で対応させたのだから、それで問題ないはずだというのです。一瞬、聞くと納得できるような答えですが、そうはいかないではと尋ねると、もし先方から何か言ってきたら、話し合いには応ずるというのです。なるほどです。李氏は北京理工大学を卒業後、日本のタムロンに11年いて光学設計などを担当してきて独立したという経歴の持ち主です。しかもオフイスは現在も大宮に構えていて、スタッフは自分1人だそうですが、そこから安徽省合肥にあるLAOWAの工場に指示を入れているのだというのです。ライセンスを受けていないのはソニーニコンの両社なのでしょうが、キヤノンのRFマウントには手を出していないところが気になりました。LAOWAの製品ラインナップは、他社にない独自技術路線だと理解していましたが、AF化にあたっては残念な考え方です。このような考えでいつまでやっていけるか気になるところです。

■これからの交換レンズ事情は

 カメラマウントの特許関係に関しては、私個人の志向からすると大変興味あるところで、これはかつてこの方面の権威であった東大生研の故小倉磐夫教授の薫陶を受けたところが大であり、過去のミノルタ・ハネウエル特許係争のときミノルタへの取材にはすべて立ち会ったため必要以上の知識を持たされています。そんなこともあり、より個人的にはソニーFEマウントの韓国のサムヤン35mmF2.8AFを8年ほど前に、最近ではニコンZマウントの中国製TTartisan32mmF2.8AFを入手しては、動作確認のために時々思いだしては使っていますが、どちらも小型・軽量の短焦点レンズですが、通常に使う範囲では特に問題なく作動していています。

 このうちサムヤン35mmF2.8AFは電子接点がオリジナルのソニーより2つ多いので、ソニーの関係者に新技術を先に流しているのかと聞いてみると、先方が勝手に作ったのでわからないというのです。とはいえ、最初期のα7Rから最新のα9Ⅲまで普通に動作しているからご立派なものです。サムヤンの交換レンズはケンコー・トキナーが日本での代理店をやっているので6万円ぐらいでした。また、ある時期にサムヤンはキヤノンRFマウントのAF交換レンズをだしていた覚えがありますが、現在は見当たりません。何らかの話し合いがあったのでしょうか。ニコンZ用のTTartisan32mmF2.8AFは、代理店の焦点工房で数量限定でわずか23,000円ぐらいでしたから驚きです。こちらはライセンスを受けて製造しているのか焦点工房を通して聞いてみましたが、受けていないというのでした。そのあたりが数量限定の意味を含ませているのでしょうか。それぞれの事情に関しては、ユーザーレベルではわかりません。

 また、機械的なマウント図面を開示したとしても、AFへの特許権はそれぞれのカメラメーカーにあると思うのですが、私の知る限りの情報では、たとえばレンズ基部に絞りリングがあるのは、また別の社が特許を取得しているというのです。このほか、焦点工房の扱う、七工匠(7artisans)ではAF50mmF1.8(ソニー用、絞りリング付き)、銘匠光学(TTArtisan)では、AF35mmF1.8(フジX)、AF56mmF1.8(ソニーE、フジX、ニコンZ)、AF27mmf2.8(ソニーE、フジX、ニコンZ、絞りリング付き)などもあります。なお、LAOWAの製品は、ケンコー・トキナー傘下のサイトロンジャパンが扱っていますが、同社はやはり中国のCamlanというブランドの交換レンズも扱っていますが、その詳細は不明です。いずれにしても、中国における交換レンズの製造は、ライカMマウント型ではもっと複数の企業が行っているわけですから、今後の成り行きが気になるところです。

 今回の遅まきながらのCP+2024のレポートで分かったことは、韓国サムヤンがLマウントアライアンスに参加したことともに、ソニーとも何らかの契約を結んだので改めて新製品として登場したのではないかということです。また、キヤノンが、シグマ、タムロンにフルサイズの交換レンズ製造のライセンスはいつ与えるのか、同様にサムヤンにもライセンス供与の時期はくるのだろうか、ということでした。

 おまけとして、ソニーα9ⅢはプログラムAEで使うとと、かなりの確度でISO250で使われることが多いのは、やはり従来のCMOSとグローバルシャッター組み込みのCMOSでは基準感度が異なるようですが、ユーザーにはわからないことです。 (^^)/

ソニーα9Ⅲを使ってみました Ver.3 final

 ソニーから35mm判フルサイズのグローバルシャッターを搭載したミラーレス一眼が1月26日に発売されました。発表時に即予約してあったので、早速ということで夕方にいつものお店に受け取りに行ったのですが、前回の機種では4箱ほど入った大箱がいくつか置かれ、そこから引き出して、ハイヨッという感じで手渡されましたが、今回はあまりお店はざわついてません。前日の25日に銀座ソニーへ写真展を見に行ったついでにショールームに顔を出し、カタログをもらいに行ったのですが、4ページのペラ物しかないというのです。少しは分厚いカタログを期待していたのですが残念でした。すでに予約している旨を伝えると、受け取りは朝から混みますよと言われ、いや20年来のお付き合いのある店から買いますと伝えると、ありがとうございますということで、翌日いつもの店に出向き、文頭に戻るのです。このとき予約していない“プロの撮影をサポートする”という縦位置グリップVG-C5も取り寄せられていましたが、私もわがスポンサー氏もそのような撮影をするわけではなく、縦位置グリップVG-C5はその場でキャンセルして、近所のいつもの店に行き開封の儀を執り行いました。時間に余裕がありましたので、同梱されてきた専用のバッテリーチャージャーから30分ほど充電して、あらかじめ用意してきたソニーカールツァイス・バリオテッサーFE16~35mmF4を装着して皆で空シャッターを切り、無事終了。この時、何を撮ろうかと話題になったのですが、ソニー愛用者のHTさんがFE200~600mmF5.6-6.3G OSSを貸すから、カワセミを撮ったらというのです。確かにうれしい申し出ですが、その組み合わせを軽々と振り回すには、私にはそこまでの体力はないということで、ありがたくお断りしました。

ソニーα9Ⅲ》レンズは手元にあったツァイス・バリオテッサーT*FE16~35mmF4 ZA OSS。このレンズはソニーα7シリーズができた時の最初期のもので、ソニー製ツァイスレンズはすでに製造を終えていますが、使用上はまったく問題ないと判断しました。

《ボディ背後から見た各操作部と背面液晶板を開いてメニュー画面を表示》ソニーユーザーならばだいたいの操作部はおわかりいただけると思いますが、基本的には同じですが、タッチセンサー式のメニューをダイヤル式のセットといかに組み合わせて行うかがポイントになると思いますが、タッチセンサーですべて設定を行わせる方向に行ってるようです。あと、モード切替ダイヤルなどに設けられたボタン押し込み式のロック機構がさらに強固となった印象で、以前はロックボタンを押して、設定したり、解除できたのが、ボタンを押したままダイヤルを回さないと設定ができないのです。このあたりはプロ用機として、過酷な実践現場からの声を拾い上げての設定方式だと考えます。

《取り扱い説明書》最近のカメラで気になるのは、取り扱い説明書が必要以上に簡素になってきたことです。α9Ⅲも例外でなく、1枚の用紙を折ってB7判(128×91mm)にして表裏で16面に1色で刷ってあります。内容としては、①電池の充電しカメラにセット、②メモリーカードの入れ方、③レンズのつけ方、④初期設定の手順、⑤静止画の撮影法、となっています。確かにこれで写真が撮れるのですが、今回最初に設定したかったレンズ交換時にシャッター幕が下りる設定は、なかなか探せなく、結局私の書いた「α1の使用記」を読んで設定を完了させました。あれもこれもできるだけに、探し出すのには苦労します。なお、今回発売日前日にもらったα9Ⅲの4ページのカタログには仕様が省かれていて、Webの製品ページを見るようにとのことですが、Web情報は時間の経過で省略されたり、消去されていくこともあるので、しっかりとカタログという形で紙に残してもらいたいです。

《記録メディアスロット》記録メディアのスロットは、過去にレポートした機種としてはソニーα1と同じで、蓋を開けると「CFexpressA/SD」とプリントされたSLOT 1と2が見えます。左にはSDカード1枚を軽く挿してあります。右はカード斜め上から挿入口見てみました。きわめてわずかな隙間の間にSDカードかCFexpressタイプAを差し込めるという細かい機構です。これはカメラが電気的な回路部分だけではなく、微妙な機械細工もまだまだ大切だということを示す好例なのでしょうが、CFexpressタイプAはソニーしか使っていなく、記録メディアを企画・製造しカメラを作るメーカーとしてのうまみなのかは私にはわかりません。プロには必要な機能なのでしょうが、私にはSDカードだけで十分です。

《バッテリーの充電》ボディには専用のバッテリーとBC-021が同梱されているのです。写真の左のオレンジ色LEDが最初に点灯し、緑色ランプは3段階に分かれていて3つが点灯して完全フル充電の状態になりすべてが消灯します。右は、ボディ左側面のUSBタイプCからの充電中を示しますが、PD対応の充電器から可能です。たまたま手元にあったニコンの充電器EH-7Pがあったのでつないで充電しましたが、市販のPD対応のUSBタイプC・タイプA端子を持つ中国製の安価な充電器でも可能でした。ソニーはPD対応でなくても充電できたのにと覚えていましたが、手軽さがなくなったのは残念です。

■まずはいつもの場所で普通に撮影

 α9Ⅲの有効画素数は約2460万画素です。2460万画素がフルサイズのデジタルカメラにとって多いか少ないかはすでに議論するまでもなく、一般的な撮影においては十分で、しかもスピードを重視するミラーレス一眼としては、とりあえずは妥当な画素数なのでしょう。ということで、まずはいつもの英国大使館正面玄関で最初の撮影を行いました。

《英国大使館の正面玄関》焦点距離35mm、絞り優先AE、F5.6・1/1600秒、ISO-Auto250。発売翌日の1月27日は晴天に恵まれました。春夏秋冬を通して10年以上前からこの場所で、朝10:15ぐらいから、定位置(ガードのフェンスがあり変わらない)から、焦点距離35mm(画角として)、絞りF5.6、フォーカス位置(屋根直下のエンブレム)と決めて撮影しています。この10年ぐらい前からは極端な小型センサーを使った機種を別にすると、各社とも過不足ない描写を示します。この間明確になったことは、2000万画素あれば通常の写真展時には問題なく使えることであって、ましてα9Ⅲは35mm判フルサイズであることからまったく問題なく、初のグローバルシャッター方式のイメージセンサーだということで何か違いがあるのだろうかと考えましたが、このシーンからすると特に描画に違いがあるようなことはなく、あえていうならダイナミックレンジが狭いとかいわれているからかもしれませんが、画面左下のシャドー部のつぶれが少し強くないかという気はするのですが、自然光下で季節が異なれば太陽の位置や照度の違いがあってもおかしくはないので、このカットから判断するのは難しいのです。ただこのカットからしてわかることは、シャッター速度が1/1600秒、ISO感度が250となっていますが、このような組み合わせは過去に例がないので、基準感度設定がISO250と高いのではないかと思うのです。

■グローバルシャッター方式センサーの違いを求めて

 ソニーのカタログによると、グローバルシャッター方式イメージセンサーは、従来の順次読み出し方式のローリングシャッター方式と異なり、全画素同時露光・読み出し方式であるために高速被写体の移動でも歪みのない画像が撮影できるというのが最大の特徴だというわけです。この機能に付随して、AE・AF追随の最高120コマ/秒撮影、1/80000秒の高速シャッター、全速ストロボ同調撮影可能、シームレスなブラックアウトフリー撮影、シャッターを切る前からの瞬間をさかのぼれるプリ撮影、8段のボディ内光学式5軸手振れ補正などがうたわれていますが、その違いをいくつかお見せできればと思います。

●ローリングシャッター現象ゼロの検証

 まずは、ローバルシャッター方式と順次読み出し方式のローリングシャッター方式との違いをどのように見せられるか考えました。ソニーα1キヤノンEOS R3の時は、コマ速度と裏面照射と積層型CMOSイメージャーのローリングシャッター現象の違いを知るためにプロスポーツ写真家の梁川剛さんに機材を渡し、サッカーの試合を撮影してもらいましたが、梁川さんには東京から関西から東北まで動いてもらって、かなりの負担と迷惑をかけてしまったのではないかと深く反省したわけです。もちろん今回も、お願いすれば快く引き受けてくれるのはわかっていましたが、そこは何とかない知恵を絞ってでも自分で解決しなくてはならないだろうと考えました。

 過去の例から、さまざまな場所での撮影を考えましたが、以下がその結果です。

《α7RⅣ》焦点距離35mm、コマ速度HI、C-AF、サイレント撮影、プログラムAE:F5.6・1/3200秒、ISO3200(固定)

 

《α9Ⅲ》焦点距離35mm、H+、C-AF、プログラムAE:F5.6・1/3200秒、ISO3200(固定)。注)右下がりなのは私のカメラの構え方が水平でなかったからです。

 

 あれこれと考えた結果の撮影です。駅のベンチに座り、画角的に同じようになるようにと焦点距離35mmにそろえ、感度をそろえた2台のソニーαをカメラをプログラムAEにセットして、ピントはホーム線路側縁に合わせて、8両編成の各駅停車が走り出してすぐのところでα7RⅣで連写した中の1枚です。さらに素早くレンズ交換して同じ条件でα9Ⅲで撮影しましたが、みごとその違いがでました。カメラから被写体まで約4mで、α7RⅣでは電車が走行しだしてから2~3両目の連結部で写真のようなローリング現象が、α9Ⅲではさらに加速された7~8両目でもまったく歪みはでていませんから、さすがグローバルシャッターだというわけです。

 でも鉄道写真をやっている人ならお分かりかと思いますが、このようなシーン設定で写真を撮るか?ということです。一般的に走行する車内から、車外をねらうと手前にある電柱などは歪みますが、少し距離をおいた被写体ではそのような現象は起きないのです。東海道新幹線が時速280kmで走行していると仮定して、車内から富士山を撮る人は多いですが、富士山が歪んで写ったという写真は見たことはありません。つまり、撮影距離、焦点距離(画角)、走行速度(角速度)によって変わるわけでして、よほどの条件でもない限り過去の梁川剛さんにお願いした「ソニーα1」や「キヤノンEOS R3」でのサッカーの試合もそうでしたが、写された実際の写真を見る限りあまり神経質になる必要はないと思ったのが本音です。

●さらにグローバルシャッター方式とローリングシャッター方式を比較

1)ダイナミックレンジの違いを2400万画素同士で夜景を撮影して比較

 同じ2400万画素で、2400万画素グローバルシャッター方式とローリングシャッター方式を比較してみようと考えました。何でそんなことをするのと思われるかもしれませんが、実は購入して開封するときはいつも販売店の近くのとある“とんかつ酒場”で行うのですが、α9Ⅲに関してはダイナミックレンジが狭いとカメラ好きのマスターが声を大にしていうので、どんなものかと調べてみることにしました。設定は、同じ2400万画素のソニーイメージセンサー搭載の機種を使い、感度は私としては実用的にはこんなとこだろうという感じでISO3200で固定して撮りました。

 

《撮影画面の全景》最初は、α9Ⅲとα7RⅣを同じレンズバリオテッサーFE16~35mmF4を使い、ISO感度を3200にセットして絞りをF5.6に固定した絞り優先AEで撮影してみましたが、基本的に夜景の点光源を見るのにはズームレンズではつらく、そもそも2460万画素と6100万画素で、ダイナミックレンジの違いを見るのにはむりがあるのです。

 どうにか考え出したのは、同じ2460万画素のフルサイズイメージセンサーのカメラを使い比較しようとなりました。ところが現在ソニーの2460万画素センサーのミラーレス機は手元にないのです。そこで引っ張り出してきたのが「シグマfp」です。メーカーが違っても大丈夫なのかとおしゃる方もいるかもしれませんが、過去のニコンD800とソニーα7Rとの関係においても、撮影条件を切り詰めていくとほぼ同じところに行きつくという経験がありましたのでので大丈夫だろうと考えました。ただ条件としてはレンズを同じにしなくては、センサーの違い以前にレンズ性能の違いが大きく出てくる可能性があると考え、マウントアダプターを介してソニーとシグマのどちらにも装着できるレンズとしては、私のアダプターの組み合わせではM42マウントしかないのです。そこで、あれこれ考えた結果、最近若い人に人気の“タクマー55mmF1.8”を使うことにしました。これならば専用レンズと異なりカメラ側から情報を得ることなく撮影できるので、何か違いを読み取ることができるのではないかと考えました。上の写真は、α9Ⅲとタクマー55mmF1.8の組み合わせで、絞り値をF5.6、ISO3200に固定してマニュアルでピント合わせして、遠景を撮影した全景です。中央部のビルまでは約4.5㎞あります。

 

《α9Ⅲ》焦点距離58mm、絞り優先AE:F5.6・1/4秒、ISO3200(固定)、-2EV補正。画面中央部のビルにピントを合わせてありますが、ほぼ画素等倍になるようにトリミングしてあります。

 

《シグマfp》焦点距離58mm、絞り優先AE:F5.6・1/3秒、ISO3200(固定)、-2EV補正。上と同じく画面中央部のビルにピントを合わせてあり、ほぼ画素等倍になるようにトリミングしてあります。

 

 この2つのトリミング画像からわかることは、シグマの画像のほうがわずかに黄色味を帯びていて、シャープな感じがします。どちらも同じようなレベルとも考えられ、これはノイズキャンセルなどの画像処理の企業間の考え方に起因するものなのかどうなのかわかりませんが、明確にわかることは、ビルの赤い航空障害灯の光芒がシグマのほうが長く見えることです。これは撮像板のマイクロプリズムの形状や配列、それとも撮像素子そのものからくるものかは私にはわかりません。いずれにしても専門家に聞いてみたい部分です。

2)反射式のグレースケールを撮ってみました

 夜景を撮影した1)の方式ではいまひとつわからない感じでしたので、さらにだめ押しとしてコダックの反射式グレースケールを、正午の炎天下に引っ張り出してほぼ同時刻にα9Ⅲ(2460万画素)とα7RⅣ(6100万画素)でバリオテッサーT*FE16~35mmF4 ZAの同じレンズを使い、同じ角度から撮影し、各ステップをPhotoshop上の数値で比較して見ました。もちろん、モニターによっては視覚的にも確認できるぎりぎりのところなのですが、数値表示することにより明確となりました。

 

《α9Ⅲ》コダックの反射式グレースケールを実写し各ステップの反射値を測定。F5.6・1/12800秒、プログラムAE、ISO3200(固定)

 

《α7RⅣ》コダックの反射式グレースケールを実写し各ステップの反射値を測定。プログラムAE、F5.6・1/12800秒、ISO3200(固定)

 

 2つのチャートからわかることもこれもまた微妙ですが、視覚的にもα7RⅣのほうが、黒濃度の高い部分まで、境界がわずかに見えていますが、実効感度がどのレベルにあるかにもよりますが、少なくとも2機種ともの違いはどのような濃度を示すかでもわかります。そこでより具体的に可視化できないかと考えたのが、グレーチャートのR.G.B.成分を読み取ったのがエクセルで作成した表と棒グラフです。いずれにせよその差は少ないとはいえ、確かにグローバルシャッター方式のほうが濃度の再現域が高輝度側、低輝度側とも低いのがわかります。実写もそうですが数値のプロット、グラフを見て確かにそうだといえる範囲で、その差は通常の撮影場面では判別できないでしょう。ただしコマーシャル的な商品撮影のような微妙な場面ではグラデーションのような場面では何か差が出るかもわかりません。今回は手元にあった機材で間に合わせましたが、もしα7SⅢのように1200万画素の機種と、さらにはα9Ⅲ同じ2420万画素のα7Ⅲがあれば、画素サイズが異なるので、ローリングシャッター方式とグローバルシャッター方式の違いがもっとでてくるでしょうが、個人の趣味の範囲としては、ここまででご勘弁をです。このほか気になったのは、プログラムAEだと、どちらも高感度域なり、さらにシャッター速度も1/12800秒ということですが、これは前回レポートした「ニコンZf」もそうでしたが、高速、高感度というなかでプログラムを組んでいるようですが、フィルム時代の感度やシャッタースピードの概念はここ数年のデジタルカメラの技術進歩のなかにあっては考え方を変えなくてはなりません。

3)1/80000秒のシャッター速度の描写は?

 グローバルシャッターになり、完全にメカシャッターからの制約から解き放たれそのメリットとして8万分の1(1/80000)秒シャッター速度搭載がうたわれていますが、その効果のほどはと、同じレンズとしてバリオテッサーFE16~35mmF4を使い、試してみました。いずれも、水道の蛇口から池に放水されている部分をアップで狙いました。

 

《8万分の1秒の描写》シャッター速度優先AE、焦点距離35mm、F4・1/80000秒、ISO-Auto12800。

 

《8千分の1秒の描写》シャッター速度優先AE、焦点距離35mm、F4・1/8000秒、ISO-Auto2500。

 

 この2つの撮影結果を見ると、2つの露出成果の違いから背景の濃度が違うのです。これは、どちらがどうだというような場面でなく、単純に8万分の1秒のほうが濃度が濃く見えますが、Exif情報から見る限り同じシーンでもシャッター速度8万分の1秒のほうが、アンダー気味に見えるのは、フィルムでいう相反則不軌のような現象でしょうか。それともAE露出に対してバリアブルK値(アンダー・オーバー傾向が逆ですが)のような考えが及んでいるのでしょうか、やはり私には説明できません。ただ明確に言えるのが、水の飛沫の状態が8万分の1秒のほうがわずかに細かく飛んでいるように見えるのです。ただこれも、この2枚の写真を比較してみて初めていえることであり、グローバルシャッターの最高速度の露出量に対してリニアに行かないのは、これからの課題となる部分でしょうか。

4)1/80000秒のシャッター速度でミルククラウンの撮影に挑戦してみました

 高速瞬間写真というと、われわれの世代ではアメリカMIT(マサチューセッツ工科大学)のエジャートン(Harold Edgerton)によるストロボ高速閃光による瞬間写真は有名であって、水を入れた風船やリンゴの実を弾丸が打ち抜く瞬間、さらにはミルククラウンなどの作品は1970年代にはイーストマン・コダック社がカラー印刷したポートフォリオとして配布したことなどもあって科学する写真として印象深く残っています。そこでストロボの閃光時間でなく、グローバルシャッターの8万分の1秒という超高速でミルクの滴下を撮影してみようと考えたのです。

 

《左:私が挑戦したミルククラウンと右:エジャートンが撮影したミルククラウンの写真》“Milk Drop CoronetHarold Eugene Edgerton,1957,Ektacoler Negative Film,MIT Museum

 

 私の撮影は、なるべく照度が欲しかったので、透明なガラスの窓際にテーブルと白いカップを置いて行いました。撮影の設定は、サイレント、シャッター速度優先AE:1/80000秒、ISO-AUTO、コマ速度H+(120コマ/秒)でしたが、撮影後のExifデータを見ると、F22・1/16000秒、ISO51200、-0.7EVとでてます。このあたりは、初期型のバリオテッサーFE16~35mmF4が指定の最新レンズでなかったためにソニーα9Ⅲの撮影機能を十分に発揮できなかったためだと考えましたが、仕様を詳しく読むと連写の場合には1/18000秒しかでなく、単写の場合に1/80000秒がでるのがもともとの設定だそうです。もう1つ、このシーンを撮影のためにセットしていて分かったことですが、ソニー専用のEFレンズなら8万分の1秒を設定できますが、マウントアダプターを通したレンズでは8千分の1秒までしか設定できないのです。当初はミルククラウンをマウントアダプターを介して50mmマクロレンズで撮影しようと考えたのですが、あきらめて手持ちのバリオテッサーFE16~35mmF4の焦点距離32mm近辺で撮影したのです。

 エジャートンが撮影したストロボによる高速度写真にほぼ近いものは撮影できましたが、当時のストロボの閃光時間はどのくらいだったのでしょうか、私の撮影ではミルククラウンとはいきませんでしたが、シャッター速度1/16000秒でミルクこけしのような撮影はできました。これはエジャートンが撮影したカットとほぼ同じで、反省点としては、黒いカップにすればよかったのではないかとも考えましたが、かつて写真学校で実験としてマルチストロボを使ってミルククラウンの撮影をしたという身近な人に聞いたら、ミルクは粘りのある練乳のほうが良い、高さ70cmぐらいから滴下すればよいということでしたが、改めてエジャートンの写真を見ても、バックグラウンドの色などから当時の苦労がしのばれます。

 そのほかカタログによると、シャッターを切る前の「プリ撮影」ができる、「全速フラッシュ同調ができる」などの特徴があげられています。「プリ撮影」はすでに他社のカメラにも搭載されている機能です。ストロボは、私個人としてはデジタルになって高感度化が進み使用が少なくなったこと、ストロボ光の閃光時間は、GN(ガイドナンバー)と撮像感度(ISO)、さらには被写体までの距離との兼ね合いで決まるので、どのような場面で有効かは判断が難しいでしょう。というわけで、グローバルシャッターとはというようなことばかり追いかけてきましたが、どうも写真を撮るという楽しみが失せてきてしまう気がしましたので、私の撮影するいつもの被写体を追いかけてみました。

■さまざまな一般撮影場面で使ってみました。

 やはり大切なのは普通に写真を撮ってみることだと考えますので、以下ランダムに撮影してみました。

 

半蔵門国民公園焦点距離16mm、プログラムAE、F8・1/1000秒、ISO-Auto250。レンズ性能に依存する部分が大だと思いますが、文句ない描写です。ただ16mmという超広角画角で撮ったからでしょうか、ビルの陰の部分の黒が強く見えますが、やはりダイナミックレンジ(ラチチュード)の狭さが関係しているのでしょうか。さらに多数撮ってみる必要はありそうです。

 

《英国大使館跡地の遺跡》焦点距離24mm、プログラムAE、F5.6・1/12800秒、ISO3200(固定)。半蔵門の英国大使館跡地の発掘現場から江戸時代、弥生時代後期の竪穴式住居跡、弥生時代の土器、縄文式土器などが発掘され、一般公開されました。写真は江戸時代の住居跡地で、富士山の宝永4年の噴火の時に火山灰を集めて埋めた穴も左に見える。ノーマルプログラムだが、シャッター速度と感度の高さは、最新のデジタルカメラならではのプログラムです。

 

《建築家 隈研吾氏がデザイン監修した喫茶店焦点距離16mm、プログラムAEF9・1/3200秒、ISO3200(固定)。わが町におしゃれな喫茶店ができました。もともとはシャッター街に近かった商店街の築52年のタバコ屋さんを隈研吾氏の監修デザインにより地元の板金屋さんがリノベーションしたのです。壁面は、広島廿日市の速谷神社の銅板屋根の吹き替えで交換したものを再利用、店わきには後楽園のベンチが置かれています。最初は軽い気持ちで夕方散歩がてらにスマホを持って撮影してきましたが、その銅板の色変わりが良いので、朝陽が当たると良いだろうともう一度α9Ⅲを持参で行きましたが逆光で、結果としては壁面の描写としては残念ながらサムスンの安物スマホに負けました。そこで意識したのは、シャッター商店街の雰囲気を出すために道路を入れて16mm超広角で朝陽が差しているいるところを狙いました。

 

《写真ギャラリーバー「こどじ」にて、㊧写真家・石川武志さんと㊨写真評論家・タカザワケンジさん》焦点距離16mm、プログラムAE、F4・1/30秒、ISO-Auto3000。奥のタカザワケンジさんにピントを合わせていますが、狭い店内ながらむりなく自然な遠近感で撮影できてます。もちろんこの部分はレンズの特性によるところが大ですが、露出も照明光のテカリ以外の部分には適切な露出が与えられていることがわかります。

 

《対称形に近いキヤノン25mmF3.5で撮影してみました》焦点距離25mm、絞り優先AE、F8・1/1000秒、ISO-Auto250。ミラーレス機の特徴は、マウントアダプターを使えばオールドレンズが使えることです。そこで1956年にキヤノンから発売された、トポゴンタイプの25mmF3.5を使ってみました。撮影地はいつもの所沢航空公園駅前のYS-11です。こちらもいつも、晴天の日の午前中に撮影しています。このシリーズでは過去にα9で同じキヤノン25mmF3.5で撮影していますので気になる方は参照してください。このレンズはフィルム最盛期の時代のものですが、日本の70年代に活躍された多くの写真家が愛用した名レンズですが、周辺減光の感じはα9Ⅲとフィルムでの減光はほぼ似たような感じです。レンズの描写としては素晴らしく、画素等倍に拡大しても背景のマンションのアンテナに色収差のようなものは発生していません。

 

《航空公園前のモニュメント》焦点距離32mm、プログラムAE、F5.6・1/2000秒、ISO-Auto250。ここに来るともうひとつ定点的に撮影する場所がこのモニュメントの前です。ここで何を見るかですが、機種によっては滑走路を模したカーブした面の白い部分が飛んだり、右背後の樅ノ木の葉が黒くつぶれてしまったりといろいろですが、少なくともα9Ⅲではそのようなことはありませんので、さすが最新機種といえます。

 

ムーミンパークにて・1》焦点距離22mm、プログラムAE、F5.6・1/2000秒、ISO-Auto250。建物と空のコントラストがいい感じでしたのでシャッターを切りましたが、完全な順光でないということなのでしょうか、それともレンズのせいでしょうか、シャドーの部分の色再現が見た目よりダークな感じがしました。これは露出がアンダーということではありません。

 

ムーミンパークにて・2》焦点距離35mm、プログラムAE、F8・1/250秒、ISO-Auto250。入間基地に向かうのであろう航空機を見上げた形でシャッターを切りました。拡大すれば、軍用機に詳しい人なら簡単に判別できるぐらいにしっかりと写っています。

 

秩父神社にて・1》焦点距離35mm、プログラムAE、F4.5・1/250秒、ISO-Auto250。α7シリーズがでた直後に発売された韓国のサムヤンAF35mmF2.8FEレンズですが、最初のα7Rから今回のα9Ⅲまで、特に問題なく使えています。

 

秩父神社にて・2》サムヤンAF35mmF2.8FE、焦点距離35mm、プログラムAE、F6.3・1/250秒、ISO-Auto250。結ばれたおみくじを外して供養するのだろうか。

 

《CP+2024ソニーブースにて》サムヤンAF35mmF2.8FE、プログラムAE、F4・1/80秒、ISO-Auto250。CP+の会場にはバリオテッサーFE16~35mmF4を装着すると大きく重いので、パソコンその他一式をもって歩くのには、サムヤン35mmF2.8だとフード・フィルターを装着してもわずか95.5gとと軽量なので、その小型さと軽さの誘惑に負けて、このレンズだけで通してしまいました。やはりこのような場面では24~105mmぐらいのズームレンズ1本が最適かなと思いました。

 

■これからの量産効果を期待しつつ

 今回のα9Ⅲのレポートは、交換レンズとのマッチングもありましたが、グローバルシャッターならではの特徴ある写真を撮ろうとして、電車の撮影に始まり、うまくいったーと思ったのですが、さらにその特徴を追いかけているうちになぜか新製品としてのワクワク感が薄れていくのでした。グローバルシャッターの搭載は、従来は工業生産品の製造工程において、ロボットの目として機能させることなどには大変すばらしく有効なことは理解できますが、その精密さ、正確さを持つグローバルシャッターのフルサイズイメージセンサーソニーが最初に民生機に搭載したのは技術的な大きな進歩であり、2024年のカメラグランプリ受賞は間違いなしといったところです。さすがデジタルカメラ用のイメージセンサーとミラーレス一眼のトップシェアを誇るソニーならではの他社よりも1歩先に行く(行かなくてはならない)必然性は十分に理解できます。

 ただ、現状の価格に対して、ダイナミックレンジの問題に加え、超高速シャッター速度、秒間120コマ/秒のコマ速度など、一般の写真を楽しむ人にとっては、どれだけメリットがあるものなのかと考えてしまいました。その点において現状では、まったく用途を特定したプロ用機なのです。かつてコダックデジタル一眼レフDCSプロフェッショナルが登場した1991年の価格は130万画素で約450万円。それが、時間経過とともに飛躍的に画素数と性能がアップし、価格も10万円を切るようになって、現在のミラーレス市場を作り上げているのです。グローバルシャッター内蔵の撮像素子も、量産効果があれば極端に安くなるのが電子カメラならではの特徴だと思いますが、そんなに急がないでも、ゆっくりじっくりと育て上げて欲しいという気持ちも正直あります。

 すでにレポートしたソニーα1キヤノンEOS R3のときは、サッカーのボールが確かにわずかながら歪んで見えたのですが、それがスピード感を表しているような感じがありました。カメラは写真を撮る道具であって、写真表現としてはかつては“ジャック=アンリ・ラルティーグのA.C.F.グランプリ・レース(1912)”では、ローリングシャッター現象を巧みに利用して後世に残る傑作を作り上げています。こういう形での表現が成立するのも写真ならではであって、デジタルの時代にローリングシャッター現象をうまく利用して作品に仕上げた写真家は豊田慶記さんしか身近には知りません。ラルティーグから110年近く経った豊田さんの作品にしても、カメラの未完成な部分を巧みに画作りに利用しているわけで、そこに写真の奥深さというか楽しさを見つけることもできるのではないかとも思うのです。

《ローリングシャッター現象を応用した作品。左:A.C.F.グランプリ・レース、ラルティーグ(1912)、右:孵化、豊田慶記(2021)》

 もちろん、グローバルシャッター機能を持った民生用カメラの登場を否定するものではまったくありませんし、むしろこの時期をスタートにしてカメラ技術の進歩がさらにあると考える次第です。

《左:スマホで撮った隈研吾のデザイン監修した喫茶店、右:α9Ⅲで撮影したモデルさん》茶店の写真は本文中にスマホに負けたと記しましたが、その違いはこの程度。また今回は全体を通してα9Ⅲで写した結果に発色に派手さがないなと思っていましたので、CP+2024の会場に「写真・映像用品年鑑」のために撮影させてもらったモデルのLUNAさんが明るい服装できてくれたので、トリミングしてアクセントとして加えてみました。それでも全体を通してみるとα9Ⅲの発色は、何となく季節か天候かレンズによるのか、全体的に彩度が低いような気がするのですが、どうでしょうか。

 今回の「ソニーα9Ⅲ」は、季節、天候、時間と限られた撮影環境での使用でしたが、時間が許すならばカワセミの飛翔ぐらいは押さえておきたいなと思いました。今後、残された時間のなかで新たな写真を追加できればと思うわけです。 (^^)/

《追記》

 例年になく雨の多い日が続きましたが、5月2日に写真仲間とボディとレンズのタイミングが合い、ようやくカワセミの撮影に出向けました。場所は、東京・国分寺市西恋ヶ窪にある姿見の池。この池は市の案内によると、鎌倉時代に遊女たちが朝な夕なに自らの姿を映してみていたという伝承に彩られた池だそうで、連休合間の平日でしたが、中学生たちの生物学習や幼稚園児たちの散歩に出会うなど、いわばビオトープ園といった場所です。中央線西国分寺駅から徒歩10分弱の場所です。まずは、撮影結果をお見せしましょう。

カワセミ、西国分寺 姿見の池にて》池のふちにある手すりから、現地到着後わずか5分で現れたカワセミをねらってみましたが、距離があるので35mmフルサイズで焦点距離840mmで撮影してもこの程度でした。よく見ると、クモの巣の糸の間にカワセミがとまっていますがそれだけ解像性能が高いということでしょう。

カワセミ撮影の機材》ソニーα9Ⅲ+ソニーFE200~600mmF5.6-6.3G OSS+1.4×テレコンバーター。シャッター速度優先AE:F9・1/1000秒、ISO-Auto2500、-1EV、小鳥の目・顔追従モード。現地到着後5分で姿を現したカワセミは、その後1時間半近く飛翔や入水の場面を撮りたいと粘りましたが、残念ながらそのような場面は現れませんでしたので当日の撮影は断念しました。Special Thanks to平田昭彦さん

 

■追加撮影していただきました 2024/07/18追補

 なぜか私の撮影では、α9Ⅲの能力を発揮していないようなので、ミノルタ以来の熱烈ソニーファンの平田昭彦さんに撮影を依頼してみました。

《花菖蒲》善養寺、小岩菖蒲園。FE70~200mmF2.8GMⅡ、焦点距離200mm、F8・1/800秒、ISO-Auto400。

《3羽のカワセミ水元公園、FE200~600mmF5.6-6.3G OSS+2×テレコンバーター。焦点距離1200mm。F18・1/800秒、ISO-Auto6400、-1/3EV補正。左のカワセミはくちばしに小エビをくわえています。30コマ/秒の連写。

カワセミの交尾》水元公園、FE200~600mmF5.6-6.3G OSS+2×テレコンバーター。焦点距離1200mm。F13・1/800秒、ISO-Auto5000。30コマ/秒の連写で、その前後もいろいろ興味あるカットが撮れていますが、選択が難しいです。

大賀ハス千葉公園。FE70~200mmF2.8GMⅡ、焦点距離200mm、F8・1/800秒、ISO-Auto250。

《ツバメの餌やりⅠ》JR幕張駅。FE70~200mmF2.8GMⅡ、焦点距離200mm、F8・1/500秒、ISO-Auto10000。親ツバメが口にくわえているのはトンボです。

《ツバメの餌やりⅡ》JR幕張駅。FE70~200mmF2.8GMⅡ、焦点距離200mm、F4・1/500秒、ISO-Auto8000。親ツバメが子ツバメの口にくちばしを入れて給餌した瞬間。これも30コマ/秒です。

京都鉄道博物館FE24~70mmF2.8GM、焦点距離24mm、F5.6・1/640秒、ISO-Auto250。

《今村知可さん》ニューサンピア埼玉越生。FE 24~240mm F3.5-6.3 OSS焦点距離119mm、F5.6・1/250秒、ISO-Auto400。わざとオーバー気味にするためにマニュアル露出。フラッシュなし。

 いずれも撮影は、平田昭彦さん。今回の撮影にあたっては、従来からのストロボから全速同調の新型に変えたそうで、ファインダーをのぞいたままシンクロしているのが見えるのが素晴らしかったということでした。

お疲れさまでした。