写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

TTArtisan 50mmF0.95レンズを使ってみました

 明るいレンズには夢があるとは誰が言ったか忘れましたが、大口径レンズは明るいがゆえに被写界深度が浅く、その独特な描写が人気を集めていますが、かつてフィルムカメラの時代には感度が低く暗いから明るい大口径レンズを使うという絶対的な命題があったのです。ところが最近はどうでしょうか、デジタルになり感度はISO1000や2000は当たりまえ、ときにはISO20000以上もというような超高感度も自在に使いこなせるのです。
 そのような時代にニコンからミラーレスのZマウントで『NIKKOR Z 58mmF0.95 S Noct』が2019年10月12日から発売されたのです。すでに私のブログではニッコールZ 58mmF0.95の実力のほどを紹介済みですが、抜群の光学性能と価格の高さ、さらにはその重さに驚いたのです。そのようなタイミングにまるで合わせたように中国のDJ-OPTICAL(銘匠光学)から『TTArtisan 50mmF0.95 ASPH』がライカMマウントで発売になったのです。価格はニッコールの約1/10、重さは約700gとなればどんな写りをするのか、大いに気になるところです。

■外観と操作感

 ライカMマウントで発売されているからライカM9に付けてみました。実際はどのように使うのかというと、F0.95という大口径を活かして使うなら、距離計連動ライカならフルサイズのM9から、さらにはライカを含むミラーレス機ならとばいうことで、ここでの外観写真はF0.95レンズをシステムにもつニコンZ7”に取り付けてみました。TTArtisanは、一連の製品をミラーレス用の交換レンズとして考えているようで、アダプターリングを使えばライカMマウントは各社ミラーレス機でユニバーサルマウント的に機能するために、自社ブランドのテーパー状デザインのマウントアダプターを販売しています。

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≪F0.95レンズをもっているカメラシステム、ライカM9ニコンZ7に装着≫ それぞれのボディに装着した状態で、ヘリコイドを操作すると∞から最短70cmまで繰り返し回転させてもムラはなく、適度な粘りがあり好ましい動きです。同様に絞りリングを回転させると半絞りクリック付きで違和感なくスムーズに操作できますが、よく見ると目盛りが等間隔でなく不等間隔に目盛られていることがわかります。このあたりは、以前レポートしたライカの8枚玉ズミクロン35mmを復刻した中国の「LIGHT LENS LAB V2LC 35mmF2」もそうでしたが、写りには影響ないという割り切りか、それとも今後の課題なのでしょうか。

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≪TTArtisan 50mmF0.95 ASPHのレンズ構成とMTF曲線≫ 日本での販売元である焦点工房の公開しているデータによると、レンズ構成は8群11枚、使われている硝材は特殊低分散、高屈折低分散、両面非球面とかなり贅沢な配分であり、構成としてはガウス変型といったところでしょうか、絞り羽根(14枚)が3枚目の後にくることから、絞り環を鏡胴前部に配置する距離計連動の手動絞りを意識した設計だと考えられます。またMTF曲線からわかることは、F5.6に絞り込むことにより高い画質が得られるようですが、この辺りは通常のレンズのもつ性格であり、実写で確認すればわかるでしょう。

■カメラボディの距離計をマッチングさせる

 距離計連動のライカボディを使う場合には、レンズを手にしてから最初に行う必要があるのが、カメラボディの距離計との調整を行うことです。もちろん出荷状態でそのまま使うことも可能でしょうが、F0.95と大口径な場合ピント位置はかなりシビアなものとなるので、絞り開放で使うときには調整をした方がよいでしょう。この時代に距離計連動のライカボディで使う人は少数派ですからほとんどこの調整は省いても問題ないのですが、私の場合にはライカMマウントであるものはまずは純正の使い方をしてみたいので、早速ライカM9に装着して調整を行いました。焦点調節の方法は以下のようになります。

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≪解像力チャートの配置とピント位置調整方法。前ピン、後ピンを読取り、徐々に合焦点にツメていく(図は取扱説明書から抜粋)≫

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実際の撮影結果、左右はノートリミングで、上下はカットしてあります。絞り開放F0.95でチャートの中心部分にピントを合わせ、撮影後に拡大して見ることによりピントの“前ピン・後ピン”がわかります≫

 調整の方法は特に難しいことではなく、同梱されてきた紙製の全長約45cmのチャートを写真上のように配置し、撮影してそのずれを読み取り、レンズ側の距離計のコロに接する部分を微妙に移動させるのです。私の場合はライカM9で行いましたが、画素等倍近くまで拡大してわずかに後ピンであることがわかりました。微細な6角ネジをわずかに緩め、連動カムの基板をずらすことにより調整できますが、いがいと作業は簡単に修正を終えることができ、実写での検討も良好でした。
 この調整ですが、ボディ側の調整を絶対的なものとしてレンズ側をいじるということになります。調整の方法はいろいろあると思いますが、交換レンズが複数あることを考えると、自分で使うレンズ側を調整するというのがベストだと思うのです。このあたりの方法は、Artisan系の大口径レンズでは前からやられていましたが、工場出荷時の調整の合理化なのか、それともボディ側の個体差を含めて最終的なピント調整はユーザーが調整することによりベストのピントをだすという、現実に即した進化形態と考えました。

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ライカM9での調整を終えたときの実写ピントテスト≫ F0.95・1/125秒、ISO160。M9は、1,850万画素CCDセンサーでありますが、ピントに関しては昨今のCMOSもCCDも変わるところはないでしょう。被写体は、ピント位置を明確にするために空中に浮いた感じに配置した陶器のミニカップとイノシシの人形です。この場面は室内の蛍光灯照明によるものですが、左壁面の上下端面は周辺光量が減光していますがF0.95という大口径からすると致し方ない部分です。撮影距離は約1mでした。

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≪上のカットのピントが合った部分を拡大≫ この写真を見ると「TTArtisan 50mmF0.95 ASPH」レンズの絞り開放F0.95の描写特性がよくわかります。このカットは、Photoshopで66.7%に拡大した状態ですが、この拡大でプリントすればほぼ原寸大という感じのサイズです。
 2012年にライカカメラ社がまだゾルムスにあるときに工場を訪れ、ライカM9ボディの距離計調整を奥行き15mぐらいある大きな三角の立体チャートで、至近、中間、遠距離など含めて多くの距離でピント調整していたのを見たことがあります。これはデジタルのライカが登場してから簡単にベストピントが簡単に分かるようになり、より高度なピント調節が工場出荷時に必要になったからだと聞きました。いずれにしても距離計連動機で「50mmF0.95レンズ」を絞り開放で人物ポートレートなど1m前後の近距離撮影で使うには難しさがあります。
 とはいっても、難しい難しいといってもこれはあくまでも距離計連動機の近距離撮影の場合で、マウントアダプターを介して最新のミラーレス機を使ってピント合わせをすればどの機種でも簡単に高い精度でピント合わせが可能となるのです。

■まずはニッコールZ58mmF0.95とTTArtisan 50mmF0.95と比較

 まずは気になるのがほぼ同時期に発売されたNIKKOR Z 58mmF0.95 S Noctとの禁断の画質比較に挑戦しました。撮影場所は井之頭公園の噴水で、Z 58mmF0.95を愛好する人が見つけ出したテストスペースなのです。その日は曇天の合間にところどころ日が差すというような条件ですが、この場所で天気が良いと噴水の水に虹のように色収差がでるというのです。ただしこれはRAWで撮影しカメラ側の補正を含まない場合ということで、私の場合の撮影はカメラ側の処理を含んだJpeg.撮影が原則なので、天候含みでしょうかそのような現象は出現しませんでした。

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≪TTArtisan 50mmF0.95 ASPH≫ ニコンZ7、絞り優先AE、F0.95・1/6400秒、ISO100、中央部重点測光。三脚をたてて同じボディでレンズ交換して同じ場所から噴水を狙って撮影しました。ピントはマニュアルですから、噴水の水しぶきの手前側に合わせてあります。

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NIKKOR Z 58mmF0.95 S Noct≫  ニコンZ7、絞り優先AE、F0.95・1/6400秒、ISO100、マルチパターン測光。50mmと58mmの画角差はいがいと大きいことがわかります。露出はexifで見るとどちらも同じですが、仕上がりの背景の見え方が異なるのは画角差に影響を受けていることも大ですが、中央部重点測光のTTArtisanは噴水の白さに引っ張られて周辺はアンダー気味に見え、ニッコールZはマルチパターン測光により周辺のシャドー部への露出が考慮されたと考えます。

さまざまなボディと場所で撮影してみました

 さてニッコールZ58mmF0.95とTTArtisan50mmF0.95とのリアル比較はここまでにします。
 本音を言いますと、2台のセットで5kgぐらいあるのを持ち歩き撮影するのは重量的にもむりがありますし、マウント口径がニコンZマウントの55mmφとライカMマウントの43.9mmφ、フランジバックニコンZマウントの16mmとライカMマウントの27.8mmと仕様的なハンディもあり、価格差約12倍であるわけですから、比較することはそもそも無茶かもしれません。このあたりでTTArtisan50mmF0.95の実力だけを紹介したほうが現実的です。f:id:ilovephoto:20201220161354j:plain≪TTArtisan50mmF0.95 ASPH≫ 左:ソニーα7RⅡにTECHARTLM-EA7アダプターを介して取付け、右:キヤノンEOS R5にKIPON ML-EOS Rアダプターを介して取付け。このうちTECHARTLM-EA7アダプターはライカのMFレンズがソニーαボディでAFが可能となり、被写界深度の浅い微妙な撮影にはシャッターボタンを押すだけでよくたいへん役に立ちました。最近はニコンZ用も発売されたので、ニコンZボディでライカマウントを始めさまざまなレンズでAF撮影が可能となったのはニコンZユーザーにとっては朗報です。

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彼岸花に落ち葉≫ ソニーα7RⅡ、AF、F0.95・1/1000秒、ISO100、AWB。午後の斜光が差し込むときでしたが全体的にホワッとして柔らかい描写です。ここは単に解像力が低いというように考えるより柔らかな描写特性を持つレンズなのです。むしろこの柔らかさを生かした被写体での活用を考えたほうが良いと思うのです。また、なぜいきなりソニーのボディで撮るのかと思われるかもしれませんが、「TechartのLM-EA7」はライカM用マウントレンズをソニーα7シリーズでAFで使えるのですごく便利なのです。(埼玉県・秩父_1)

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彼岸花畑を耕す人≫ ソニーα7RⅡ、AF、F2.8・1/160秒、ISO100、AWB。彼岸花が一面に咲き誇っている場面では少し前後のボケが大きくうるさい感じもありますが、ワンポイントとして背景にクワを振る人を入れて変化をもたせました。A3ノビ程度に拡大するとピントの合っている部分とぼけている前後部分が水平に分離して見え、感じが変わるだろうと期待した1枚です。(埼玉県・秩父_1)

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ソバ畑から見た武甲山ソニーα7RⅡ、AF、F2.8・1/1600秒、ISO100、AWB。少し花の盛りの過ぎたソバ畑です。ピントは2mぐらい先に合わせていますが、前ボケと共に後ボケも見えます。武甲山の山肌も柔らかくなってしまいました。(埼玉県・秩父_1)

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紅葉ニコンZ7、F0.95・1/5000秒、ISO100、AWB。右下にある紅葉の葉にピントを合わせましたがシャープです。近距離でF0.95では被写界深度が浅すぎる感じがしますが、背後のボケからするともっとボケても良いのでしょうが、F0.95のボケ具合は、だいたいこのようなイメージの独特な柔らかい描写といえます(埼玉県・秩父_2)

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≪落ち葉ニコンZ7、F2.8・1/8000秒、-0.3EV、ISO100、AWB。緑の雑草の葉の上に落ちた枯葉を狙ってみました。適度な周辺光量落ちが中央のメイン被写体部分を際立たせてくれました。画面上では縮小の関係から少し甘く見えますがシャープです。(埼玉県・秩父_2)

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植林された山肌ニコンZ7、F5.6・1/1000秒、ISO100、AWB。私はどのようなレンズでも、絞り込むときは開放から2段絞り込むようにしています。これは、exifの反映されないライカレンズを使う時によくやりますが、設定絞り値を忘れないようにということで、F0.95のこのレンズの場合には2段としてF2.8にして使うようにしました。この画面の写真はほとんど無限遠に近い距離にピント合わせしましたので、もう少し絞ってF5.6としました。左右640ピクセルでは解像感がなくなりますが、それぞれの樹木の枝や葉はしっかりと解像し、たいへんかなり立ち上がりの早いレンズでシャープです。(埼玉県・秩父_2)

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オートバイ≫ ニコンZ7、F2.8・1/6400秒、ISO100、AWB。自然の草花だけでなく少し人工的な光沢感がある被写体としてオートバイを狙ってみました。F2.8の絞りですが、金属の光沢感、タイヤの質感などいい感じです。(埼玉県・秩父_2)

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粋な黒壁≫ ソニーα7RⅡ、AF、F2.8・1/320秒、ISO100、AWB。“めし処 一貫”という小料理屋さんの壁です。2段絞ったF2.8の画像ですが、絞り込みによる立ち上がりが早く、このような微細な被写体でもシャープですが、必要以上に極端に画素等倍まで拡大して見るとつらさがでてくるのは仕方がないことです。最終的な拡大率にもよりますが、本来ならF5.6ぐらいまで絞り込むと良かったのでしょう。(埼玉県・川越)

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気になるお店≫ ソニーα7RⅡ、AF、F2.8・1/320秒、ISO100、AWB。2段絞ったF2.8の画像ですが、歩く人々をスナップ撮影してみました。AFならではですね。(埼玉県・川越)

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狐面≫ ソニーα7RⅡ、AF、F0.95・1/125秒、ISO125、AWB。立体的な紙のお面に白の無光沢な塗装がされていますが、このような場合には柔らかな描写に見えます。背景のアウトフォーカス部分の描写はかなりなめらかで柔らかですが、それでも左上に描かれた画像がわかるほど癖のない素直な描写です。(埼玉県・川越)

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大黒さま≫ ソニーα7RⅡ、AF、F0.95・1/1600秒、ISO100、AWB。皆がなぜてお参りするのでしょうか。大黒さまの全体がピカピカです。目の部分にピントを合わせていますが、光沢ある部分はシャープに感じます。また、露出オーバーで飛んでいるように見えますが、大黒さまの目の部分と同一平面にある胸の部分の1円玉には十分にピントがきて細かく解像しています。(埼玉県・川越)

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後ろ髪撮影中≫ ソニーα7RⅡ、AF、F2.8・1/640秒、ISO100、AWB。この日のために髪を結わいたところを友達が後ろから撮影しているところをスナップさせてもらいました。絞りF2.8で、手前女性の左肩にピントが合っていますが、下の砂利を見て深度の浅いこと、さらに癖のないボケであることがよくわかります。(埼玉県・川越)

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スマホソニーα7RⅡ、AF、F0.95・1/640秒、ISO100、AWB。トワイライトの薄明かり時に、パチンコ店の照明を受けてスマホを操作する女性を絞り開放でスナップ。絞りF0.95開放の描写はこういう時間帯がいいですね。(埼玉県・川越)

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クリスマスイルミメーションの前で≫ EOSR5、F0.95・1/80秒、-2EV、ISO100、AWB。COVID-19の影響を受けて、例年になく色彩に乏しいイルミネーションですが、アウトフォーカス部のボケを求めての撮影。左右640ピクセルではわかりませんが、拡大すると左右最周辺にはコマ収差ならではの描写ですが、ノクチルックスM50mmF0.95も似たようなものです。大口径レンズは、むしろこういうボケ具合を積極的に楽しんだほうがいいですね。(恵比寿)

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クリスマスツリー≫ EOSR5、F0.95・1/60秒、-0.7EV、ISO200、AWB。ピントは後ろ向きの女性に合わせていますが、右側の口径食が現れたボケは大きくなっていますが、左端はコマ収差としての形が弱くなりました。大きくしてみるとわかりますが、女性の髪の左上部の辺りは1本ずつ解像しています(恵比寿)

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アメリカ橋にて≫ EOSR5、F0.95・1/60秒、-1EV、ISO800、AWB。開店直前のバーの看板と背景のボケ具合を見てみました。ピントは左のドリンクのグラスに合わせてありますが、前ボケ、後ボケとも暴れていなく素直です。絞り開放F0.95は、やはりこういうダークな場面が似合うようです。(恵比寿)

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夜のスナップ≫ EOSR5、F0.95・1/100秒、-1EV、ISO100、AWB。恵比寿ガーデンプレイスからJR恵比寿駅までの帰り道、あえて動く歩道でなく一般道路を通った時の1枚。あらかじめ照明されたウインドウ内に露出とピントを合わせて待機していましたが、スマホしながら歩く女性と宅配便屋さんがカートを押してきたので、それぞれが画面内左右に入ってときに1枚、中央で交差したときに1枚、行き過ぎたときに1枚とシングル単写でシャッターを3回押し、雰囲気の良かった通り過ぎた所のカットを採用しました。念のためにいうと、宅配便屋さんこの写真では疲れているような感じですが、前2のカットは元気な感じで撮れています。(恵比寿)

人物ポートレイトがよい感じに

 今回一番苦労したのは、絞り開放F0.95を生かした撮影とはどのようなものかとさまざまな場面で、いろいろと撮りこみましたが、オールマイティーなレンズである反面、わりと低照度下の人物の撮影に向いているのではないかというのが、正直な印象です。以下、カメラをバックに入れ出先でちょこちょこと撮らせて(撮って)もらったカットです。いずれもAF撮影可能であったため大変便利でした。

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ポートレイト・HKさん≫ ソニーα7RⅡ、AF、F0.95・1/125秒、ISO800、AWB。営業写真関係の方なので、撮られ方が慣れているなという感じです。かつて大判写真のポートレイトにおいて片方の目だけにピントを合わせ、他の部分はソフトに描写されるレンズ、二コラペルシャイトのようなソフトフォーカスの描写をほうふつとさせます。

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ポートレイト・私です≫ ソニーα7RⅡ、AF、F0.95・1/125秒、ISO1000、AWB。こちらはお茶しながらのカットですが、レンズを見ていたYさんがシャッターを押してくれました。メガネの縁、額のハイライトが効いて画面に締まりを感じさせます(笑)。

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ポートレイト・MFさんソニーα7RⅡ、AF、F0.95・1/125秒、ISO1250、AWB。こちらも上と同じですがやはりメガネがピンポイントになっていますが、大きく伸ばすとひたいに垂れ下がった手前の髪の毛が1本ずつ解像しているのがわかります。

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ポートレイト・KRさん≫ ソニーα7RⅡ、AF、F0.95・1/125秒、ISO2000、-0.3EV、AWB。この場面では、メガネのようなシャープな部分がないために、カラーされた前側の髪がアクセントになり、全体的に柔らかくいい感じに撮影できました。背景の丸ボケもほどよいレモン形をしていますが、よい雰囲気にでました。

文化の違いを感じさせるレンズ

 最後に良いことばかりではなく、少し疑問に思った点を書きます。
 ひとつは、撮影時に小絞りまでなかなか設定しなかったのには理由があります。絞りクリックが等間隔でなく不等間隔であることは前にも述べて通りですが、写真を見てもらえればお分かりかと思いますが、絞り開放から絞りF4までの間が極端に幅広く、そこを乗り越えてF5.6にセットするのは感覚的に難しいのです。もちろん数値でしっかりと目盛られているわけですから問題ないといえばそれまでですが、カメラやレンズが写真を撮るための道具である以上、カメラをのぞいたまま絞りを変えるというようなこともあるわけですから、もう少し1.5段絞りたいというような、数字を見なくても移動量とクリック感で行えることも大切なわけです。ヘリコイドの摺動感、表面加工など十分に満足できる部分でありますが、機械部分の課題として、やはり絞りリングは等間隔目盛りとして欲しいです。

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≪左:絞りリングの目盛りの振られ方、右:ライカM7TTArtisan50mmF0.95を装着してフィルムアパーチャー側から見ると、金色に輝いているのは気になります≫

 もうひとつは、レンズ金物の後端部分が金メッキされピカピカしているのです、ここに採り上げたミラーレス機では問題を感じませんでしたが、ライカM9では撮影場面(光線状態)によっては内面反射を起こしてしまうような気がしてならないのです。ライカの暗箱部分は狭く、かつてフィルム時代には特定のレンズでベイリンググレアが発生してカブリが発生したようなこともありました。現在は距離計連動ライカで撮影する人はほとんどいないと思いますが、この部分はなるべく無反射状態にするべく塗装を施した方が良いと思うのです。今回の撮影にあたっては、私は目立つ金メッキ部分にマジックインクを塗って黒くしました。ただマウント部の金メッキ部分は銘匠光学側からするとセールスポイントなのです。この金色を大切にするのは、やはり製造国中国と日本の文化の違いともいえるのです。交換レンズを趣向品的にとらえるか、性能優先の工業製品としてとらえるかですね。かつて1970年代にヤシカが一眼レフのコンタックスを作り、ドイツのカールツァイスからレンズを仕入れたらレンズキャップはすべて無地の黒いポリエチレン製のキャップだったのです。ヤシカ側はこれでは日本では売れないとCONTAXとブランド名を入れた立派なキャップに切り替えて発売したのです。機能を満たせば飾りはいらないというきわめてドイツ的な発想だったのでしょう。TTArtisan50mmF0.95 ASPHのレンズキャップはというと、アルミ金属を厚みに削りだし、ロックのためにかなり細かな細工が施されていますが、その点においては日本と同じような考えを持っているのだと思った次第です。

 今回のレポートは、9月に彼岸花で撮影を開始して、12月のクリスマス イルミネーションまで入り込むというかなりロングランになってしまいました。その理由には、ほかの機材とオーバーラップしたことなどもありますが、やはり絞り開放F0.95、それもTTArtisan50mmF0.95 ASPHの描写をどれだけ良い意味で引き出せるかということでした。結果として、時間がかかりましたが、それだけのことはあったと思います。本文中、Artisan系のレンズと書きましたが、もともとはArtisan”というレンズがありましたが、会社が分裂して“TTArtisan”が登場したと聞きました。 (^^)/

キヤノンRF600mm F11と×1.4エクステンダーを使ってみました≪Ver.02 完結編≫

 キヤノンからEOS R5とEOS R6の発表に合わせて、“RF600mmF11 IS STM”と“RF800mmF11 IS STM”が発表され、7月下旬に発売が開始されました。実は当方すでにキヤノンミラーレスの「EOS R」と「EOS RP」を購入してきたので、「EOS R5」はスルーすると書いたのですが、わがスポンサー氏が長年続けてきたのに休むのは良くないというので「EOS R5」とRF15~35mm F2.8 L IS USMを求めてレポートしましたが、さらに「RF600mmF11」は面白そうだからこちらも使ってみてくださいというのです。ということで、「RF600mmF11」と「エクステンダーRF1.4」を注文したのですが、なかなかエクステンダーRF1.4が来ないので、しびれを切らしてということもありますが、あまり時間がかかると熱が冷めてしまうので、とりあえずはレンズ本体だけ引き取ってきました。

 そこでとりあえずは600mmF11だけを手にしたので、「600mmF11」を単体で取り上げ、「エクステンダーRF1.4」がきた時点で追加してレポートすることにしました。

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≪EOS R5ボディに装着したRF600mmF11 IS STM≫ まずはボディであるEOS R5に取り付けてみました。このレンズのテクニカルな面は後述しますが、沈鏡胴を採用していて小型・軽量なのです。写真は撮影状態、つまり沈胴を引伸ばして撮影状態にあります。この状態で手に持って構えてみるとハンドリングも良く、何を撮ろうかと考えました。

 この時点で考えていた被写体は、動くもの、ステージ、花などを思いながら、外観写真と「何を撮るかな?600mmF11」と書きFaceBookに載せると、瞬時に「とりあえず月を」撮ったらと返信が、ある写真大学のS先生から返事をいただきました。なるほどです、その日は中秋の名月の翌日10月2日なのです。 早速、あれこれ設定を考え、わが家のベランダから撮影したのが下の写真です。この時期は、アマチュアから専門家まで多くの方が月の写真をアップしているので、皆さんのと比較してみると、かなりベテランの方が撮影したのに近い月の画像が1発目から撮影できたのです。これは驚きでした。実際下に載せた写真は、2回目に撮影した結果ですが、大きく変わるところはありません。先生に提案をいただいてからわずか5分ぐらい後のことでした。

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中秋の名月+1日≫ CAF、マニュアル露出、F11・1/2000秒、ISO 1000、AWB、手持ち撮影、レタッチソフトによるプラス側にトーンカーブ補正。最初は、CAF、絞り優先AEで、ISO-AUTO、-3EV露出補正で撮影しましたが、露出はオーバーでした。このためトーンカーブ補正で上に掲載したのと同じように見れるようにしましたが、もともとオーバーオーバー気味の画像を適正にするためにトーンカーブ補正を行うと、場合によっては白飛びする部分もでてくるだろうと、2度目の撮影では露出設定をすべてマニュアルにして、わずかにアンダーになるように露出を与えたのが上の写真で、オーバー側にトーンカーブ補正してあります。

 この月が撮像素子に写る大きさは、焦点距離600mmだと直径約6mmに写るので、同じ焦点距離ならAPS-C、マイクロ4/3、1型でもみな同じですから、撮像素子の寸法が小さくなるにつれて、徐々に周辺の黒いスペースが消えていくというわけです。ただ、エクステンダーを使って焦点距離を変えると、1.4倍のエクステンダーでは840mmで8.4mm、2倍のエクステンダーでは1200mmとなり月は撮像素子に直径12mmの寸法で結像することになります。合焦点までの距離はExifには4294967295m(この数値は後日無限遠を表すことが判明しました)とでました。中秋の名月の場合は地球から月まで約40万kmとされていますから、測定誤差の範囲かわかりませんが、昨今のカメラはすごいとなります。せっかくですから、今回の作例には合焦ポイントまでの撮影距離データをすべて掲載することにしました。

 さてこの月の写真が、カメラを構えファインダーをのぞいて押すだけで簡単に写ったのは驚異です。まさにこれがF11という暗いレンズであり、ファインダーは暗さを感じさせなく、AFに連動し、高感度に強いデジタルのミラーレス一眼ならではのことであり、さらにレンズ側とボディ側の協調により5段もの手振れ補正効果を得られるというEOS R5とRF600mmF11 IS STMでの成果であるわけです。どうしてCAF(コンティニュアスAF)モードで撮影したかというと、手持ち撮影で600mmという焦点距離では、手振れ補正が働くこととは別にして、たぶん小刻みに揺れているだろうと考えたからで、ONE SHOOT AFでは決められないと思ったからです。なお撮影はカラーで、ホワイトバランスはAUTOにしての撮影であって、モノクロ変換はしていません。

■小型・軽量の超望遠

 月の撮影が大変うまくいったことに気をよくして、実は翌日に朝から20分ほど屋外で撮影してみましたが、あっという間に面白い写真が複数枚撮れてしまいました。それをまず紹介したいのですが、ここはやはりどのような技術でこのようなレンズが製品化されたのか考えてみました。まずこのレンズは、鏡胴を沈胴式にして、光学系には2つの回折格子を密着させたDOレンズを使い色収差をはじめとした諸収差を補正すると同時に小型化を図っているのです。下には、従来のEFレンズとRF600mmF11の重量・寸法比較を示していますが、沈鏡胴とDOレンズの採用、さらには最大口径がF11であることに加え、鏡胴のエンジニアプラスチック化を大胆に進めたためだと思うのです。DOレンズは、かつては高級品でレンズ鏡胴前部に緑色の線を入れて、他レンズとの差別化を図っていましたが、このレンズでは線を省いていますが、それだけ回折格子を用いたレンズが一般化したということなのでしょう。

 この結果、RF600mmF11単体で約930g(800mmF11は1,260g)という軽量を達成して、バッテリー、カードを含めたボディの重さ約740gを加えても1.7kg未満となり、私でも首からさげて歩くのは特に苦になることはありませんでした。実際は同様の重さのカメラを2台首からさげて歩き回りました。このレンズのもう少し詳細な技術に関しては、発表の時に書きましたのでそちらをご覧ください

 

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 ≪EF600mmF4とRF600mmF4の比較とDOレンズの配置≫  800mmF11のレンズ構成は、DOレンズの前に凸レンズを配置した形で焦点距離を増しています。それぞれのレンズに×1.4のエクステンダーを付ければ840mmF16、1020mmF16、×2のエクステンダーを装着すれば、1200mmF22、1600mmF22となりそれでもAFが働くというのです。注文して未着の×1.4エクステンダーの到着が待ち遠しいです。なお、この時期ネット上の安値実勢価格でRF600mmF11が96,000円、RF800mmF11が112,000円、×1.4エクステンダーが63,000円、×2エクステンダーが74,000円強です。

 ■いつもの英国大使館とランダムな撮影

  薄日のさす朝でしたが、それでも十分とさっそく屋外に引っ張り出してみました。最初に向かったのはいつもの英国大使館です。撮影位置は鉄柱のバリケードがあるので毎回定位置ですが、いつもなら快晴の日の朝10時15分ごろ、35mm焦点距離レンズをF5.6に絞って、正面玄関屋根近くにある紋章にピントを合わせての撮影となりますので、画角比較をされたい方は「キヤノンEOS R5を使ってみました」をご覧ください。

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≪英国大使館エンブレム≫ F11・1/640秒、ISO-AUTO 3200、AWB、手持ち撮影、合焦点まで33.2m。いつもなら画素等倍に拡大しての画面ですが、ノートリミングでこの大きさですから、さすが600mmの画角、4500万画素の質感です。当然のことですが、このF11という開放値の描写も十分満足できるものです。

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≪Snap Back Photo≫ CAF、  F11・1/640秒、ISO-AUTO 1250、AWB、手持ち撮影、合焦点まで107m。道を歩く女性の後ろ姿が素敵だったので、だいぶ先まで歩いていくのを見届けてシャッターを切りました。もちろんAFはコンティニュアスなので、女性の姿を追い続けています。手前の歩道の障害物、奥の歩道の木々や歩いてくる男性などが、圧縮感とともに程よくボケていて狙った女性を浮き立てていますます。

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≪走る自転車≫ CAF、  F11・1/800秒、ISO-AUTO 1600、AWB、手持ち撮影、合焦点まで23.2m。ゆるやかな坂を下ってくる自転車を狙ってみました。撮影距離からするとしっかりと自転車を漕ぐ、こちらに来る人物を面白いほど追いかけています。

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≪走行する車≫ CAF、  F11・1/800秒、ISO-AUTO 1250、AWB、手持ち撮影、合焦点まで206m。遠距離を走行する車を狙ってみました。狙ったのは中央の白いミニバン。走行をしっかり追いかけていますが、運転手の顔も反射がなければ識別できるほどのAF追随能力です。動いている被写体を何のためらいもなくシャッターが切れるのは、すっごく楽しいです。

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≪大輪のダリア≫ CAF、  F11・1/400秒、ISO-AUTO 12800、AWB、手持ち撮影、合焦点まで4.3m。近接での描写を試してみました。F11という明るさだと、この程度の大きさの花だと手前から花芯までピントが合うのはなかなかいい。シャープさも必要十分だと思います。

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彼岸花 CAF、  F11・1/640秒、ISO-AUTO 8000、AWB、手持ち撮影、合焦点まで13.9m。中距離にある彼岸花の群生を撮影しました。この感じからすると600mmF11というレンズでも深度は浅いように感じました。計算すると、この距離だと29cmぐらいが深度です。

 ■×1.4エクステンダーRFがやってきた

 RF600mmF11と×1.4エクステンダーRFをいつもの販売店に注文したのは9月10日、RF600mmF11はその日のうちに確保されたのですが、×1.4エクステンダーRFはその時点では在庫はなく予約ということで10月21日に来たのです。当初は両方がそろったらということで待っていたのですが、×1.4エクステンダーRFがなかなかこないので、途中でしびれを切らしてRF600mmF11だけを受け取ってきてレポートしたのがこのセクションの前までです。ここでは、改めて本体600mmと×1.4エクステンダーRFを装着しての撮影に挑戦したのでご覧ください。

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≪EOS R5ボディと×1.4エクステンダーRFとRF600mmF11の配置≫ ×1.4エクステンダーは、4群7枚のレンズ構成で防塵防滴構造を採用しています。この×1.4エクステンダーをボディとレンズの中間に装着することにより、焦点距離840mm、明るさF16のレンズとして使えることになります。

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≪RF600mmF11と×1.4エクステンダーRFを付けたEOS R5≫ 合成焦点距離は840mmとなります。左は沈胴状態、右は70mmの沈胴状態を伸ばした使用状態。

■何を撮るか 1)遠くの風景、富士山

 さて何を撮るか、×1.4エクステンダーRFが手元に届くまで時間がありましたので、あれこれと考え、まずは最初に考えたのは、遠くの風景を撮ることです。いろいろと考えた末に、わが家から少し離れたところにある山口貯水池(狭山湖)から富士山を撮ろうと考えつきました。ところが、連日の雨でなかなかチャンスはめぐってきません。やっと晴れた日の午前中を目指して現地に向かいました。狭山湖畔の展望所で、×1.4エクステンダーを付け焦点距離840mm状態で富士山をのぞくと、優雅な姿の象徴ともいえる富士山の裾野がカットされ写りません。ならばとレンズ単体の600mmでと挑戦しましたが、やはり同じです。840mm、600mmのどちらにしても裾野がカットされるならと最終的には600mmの縦位置で撮影しました。これならば狭山湖の水面も写し込むことができ、撮影場所を活かした富士山となりました。

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≪左:840mmF16(1/1250秒、ISO640、AWB)、右:600mmF11(1/640秒、ISO200、AWB)≫ どちらも裾野がカットされていて写真的に見ると富士山のもつ優雅さがありません。一応、シャッターは切りましたが、自分的にはボツ写真です。いずれも手持ち撮影。

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 狭山湖畔から見たAM11:25の富士山≫ 距離の関係から600mm横位置では下の湖面が写りませんのであえて縦位置にしました。これにより狭山湖岸から写したことが表現できたと思います。キヤノンRF600mmF11、F11・1/800秒、ISO320、AWB、手持ち撮影。山口貯水池(狭山湖)から見てますが、地図上では約75km先にあります。合焦点までの距離はExifには4294967295mとでました。どうやら無限遠は、距離が“4294967295m”とでるようです。巻頭の月の写真では、中秋の名月の時期の月までの距離40万kmに近いので誤差の範囲かと思いましたが間違いでした。

■何を撮るか 2)動物園

 学生時代の後輩のカメラマン氏は、最近はいつも横浜のズーラシアで動物のさまざまな表情を撮影して、まるで生息地で撮影しているような感じで撮れています。もともと彼は音楽ライブの写真を撮影するのがここ数年来の日課でしたが、この春前から横浜ズーラシアでの動物撮影に切り替えています。なんでだろうと考えましたが、どうやら新型コロナウイルス感染の関係から、ステージの撮影ができなくなった結果だろうと謎ときしました。ならば私もズーラシアへ行けばいいのですが、身近な所でと東京都の多摩動物公園に出向きました。当然のこととして、RF600mmF11と×1.4エクステンダーRFを持参したのですが、ここでも狭山湖同様に600mmで十分ということになりました。

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≪シフゾウ。 CAF、600mmF11、1/640秒、ISO6400、AWB≫ 中国にいるシカ科の草食動物です。動物園の通路から最初はエクステンダーを付けて840mmで狙いましたが、アップすぎるのであきらめて600mmにして撮影しました。ここでは左右640ピクセルVGAにリサイズしてありますが、実際は長辺方向800~1200ピクセルくらいのほうがシャープな感じがつかみやすいです。ピントは目の部分に合っていますからこれでいいのでしょう。

 この日は平日ですいていましたので、さまざまな動物を撮影することができましたが、何か1枚となるとこのカットになったわけです。ところが不思議なもので、同日ほぼ同じ時刻に、写真で知り合ってるHさんが、同じ多摩動物園内で撮影していたのです。写真を拝見すると動物の顔のアップが多いのですが、レンズは80~200mmのズームでした。やはり動物園では600mmは長め過ぎるなと感じた次第。

■何を撮るか 3)疾走する犬を撮る

 もっと動的な写真を撮れないだろうかと考え、知人に協力してもらおうということでお願いし、快諾を得ましたので先方の住まいに出向いて2匹のラブラドール犬が疾走するところを撮ろうと考えたのです。当日は雨なら中止、曇天なら決行と決めて横須賀まで出向き広大な土地で2匹に走ってもらいました。ここでのチェックポイントは、動物(犬)の顔認識に加え、走る犬にピントが合わせ続けられるかということでしたが、フレーミングさえしっかりできれば、意外と簡単にクリアしてしまいました。ただここでの問題点は、焦点距離が長いと手持ち撮影では被写体を目で見ていて、カメラのファインダーにのぞき替えると、被写体(撮影ターゲット)を探してしまうことが何回かあったのです。下の写真は、犬に走ってもらい2回目ですが、これを10回近くやるとさすがのワンコも疲れてきたようで、ゆっくりと歩きだしてしまうのです。

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焦点距離840mm、F16・1/1250秒、ISO4000、AWB、合焦点距離33.2m≫ 黒の犬モモは5歳、茶色の犬チャイは15歳だそうで、もっぱら疾走役は若いほうの黒いほうのモモでした。このカットは2回目にうまくフレーミングできた最初のころのカットです。ただし残念なことにこのカットでは、大きく拡大すると茶色のチャイの目にピントが来ているのがわかります。少しでも色がある場所を選びましたが、背後に黄色く見えるのはセイタカアワダチソウです。

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焦点距離840mm、F16・1/1000秒、ISO2000、AWB、合焦点距離27.9m≫ 黒のモモが走ってくるコマの延長にあったカット。35mmフルサイズを各辺とも15%ほどトリミングして、モモが大きく見えるようにしてあります。このカットからモモの目にAFし続けていることがお分かりいただけると思います。フレーミングさえしっかりできれば、あとはシャッターボタンを押すだけなのです。それでこんな写真が撮れるわけですから驚きです。ちなみにこの写真を見た某社のカメラ技術者がおっしゃるには、黒い犬の顔・瞳認識は難しいそうです。

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焦点距離600mm、F11・1/640秒、ISO500、AWB、EOS R6≫ 数回繰り返すうちに、犬が疲れたようで撮影するのと、犬を押さえる役を交代したときのカットです。被写体は私と犬2匹ですが、発色、質感描写とも自然でいい感じです。

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焦点距離840mm、F16・1/1250秒、ISO840、AWB、EOS R6≫ 超望遠レンズとしての圧縮効果を狙ってみました。緩やかな坂に渋滞した車列に向かって走る人など距離感がなくなったところが面白いです。

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焦点距離840㎜、 CAF、  F16・1/250秒、ISO-AUTO 6400、AWB、手持ち撮影、合焦点まで206m≫ 西武新宿線で向かってくる小江戸号の撮影してみたのですが面白くないのです。それで下っていく小江戸号を狙っていたら、手前の踏切が開き人が渡りだしたので、シャッターを切ってみました。小江戸号までは206mあるようですが、超望遠ならではの圧縮効果でわずかしか離れていないように撮れました。

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焦点距離840mm、CAF、F16・1/250秒、ISO2500、AWB≫ カモが水に潜り、バシャバシャとすぐ先に顔を出すことを繰り返しやっていたので撮影。一連を高速連写で狙ってみましたが、水が跳ねるのは面白いのですが、ほとんど水しぶきでカモの表情がよくわかりません。そこでバシャバシャとやって再度水に飛び込む前のカモです。それにしてもカモの羽は水はけがすごく早いのにびっくりしました。

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焦点距離840mm、CAF、F16、手持ち撮影、合焦点まで無限遠4294967295m)飛んでいる鳥を撮影するのは至難の業です。このカットはわが家近所の自然公園にオオタカが営巣というので撮影に出向いて、らしき鳥を追い求めましたが、何度か挑戦してうまく飛翔する状態をキャッチしましたが、大きく伸ばしてみるとどうやらカラスでした。その時はるかかなた上空に飛来した飛行機が上の2枚の写真です。左は横田基地から飛び立ったアメリカ空軍機、右は入間基地から飛び立った自衛隊機というところでしょうか。掲載はどちらも機体中心にクロップしていますが、東京郊外でもこの程度は撮影できるのがEOS R5と600mmF11+1.4×テレコンバーターの実力です。プロペラが歪んで写っているのがローリングシャッター現象でしょうか。

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焦点距離840mm、CAF、F16・1/1000秒、ISO3200、AWB、手持ち撮影、合焦点まで無限遠4294967295m)さらにダイナミックに飛んでる飛行機を撮りたくなったので、Go toを利用して沖縄へ。朝東京を立ち、午後2:30に嘉手納基地わきの“道の駅かでな”の展望台へ到着。機材を持って帰りかけている人に聞くと、明日11月26日は祭日だから今日25日は午後から休みのようだというのです。何?と調べると11月26日は私の誕生日でもありますが、今年はアメリカの感謝祭の日なのです。5時の展望台クローズまで頑張って飛んだのはこれ1機でした。駐機場から動き出したところを狙いましたが、距離としては無限遠ですが背景の格納庫までを含めてシャープです。NAVYだから海軍の飛行機なのでしょうね。

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焦点距離840mm、CAF、F16・1/1250秒、ISO2000、AWB、手持ち撮影、合焦点まで無限遠4294967295m)最大出力で離陸したばかりです。エンジンから排出されたガスがモヤのようにして見えています。駐機場から出て、滑走路の端まで自走し、Uターンして速度を上げてから飛び立ちました。

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焦点距離840mm、CAF、F16・1/1000秒、ISO2000、AWB、手持ち撮影、合焦点まで無限遠4294967295m)駐機場から走行し、飛び立つところまでファインダー越しに追いかけるのはわりと楽な作業です。車輪はすでに収納されていますから、ある程度の高度がでていることがおわかりいただけるでしょう。ピントはしっかりと追いかけて合っていることがわかります。

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焦点距離840mm、CAF、F16・1/1000秒、ISO1000、AWB、手持ち撮影、合焦点まで無限遠4294967295m)翌日感謝祭の日は午前中に普天間飛行場の見渡せる丘に出向きましたが、この日はまさに感謝祭、当然のこととして1機も、1人も動いていない休日でした。宜野湾市にある普天間飛行場は、市街地の中にあり2004年8月には隣接する沖縄国際大学にヘリコプターが墜落したのは記憶に新しいです。そこで840mmでのぞいてびっくり。なんとオスプレイが20機ほど整然と駐機しているのでした。以前、こちらに訪れたときはタムロンの200~500mmズームでしたが、今回は840mmなので不足はありませんが、飛んでいるところを撮れなかったのは残念です。

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焦点距離600mm、CAF、F11・1/800秒、ISO250、AWB、手持ち撮影、合焦点まで無限遠4294967295m)≫ 屋我地島古宇利大橋展望所から古宇利オーシャンタワーを望む。沖縄本島屋我地島、古宇利島へはすべて橋でつながっています。青い空と青い海沖縄ならではのブルーです。フォーカスは橋の上の左側の車が走行している部分をねらっていますが、距離的には無限遠となるのでしょう。

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焦点距離600mm、CAF、F11・1/2500秒、ISO100、AWB、手持ち撮影、合焦点まで無限遠4294967295m) 本島の恩納村からのサンセット。黄金色に輝く海面が美しく、手前にはカヤックツアーの人たちがいたのですが、撮影時には左右に分かれてしまい画面内には入れることができませんでした。下に見えるのは残波岬灯台。完全に沈むまで待ちましたが、残念ながら下にあった雲の影に太陽は隠れてしまいました。

■楽しくカジュアルに使いこなせる超望遠レンズ

 このレンズ、最初に手にしたときは600mmを何に使うか持て余しましたが、使い込んでいくうちに徐々に面白さがわかってきました。それにしてもF11固定絞りで600mm、さらには×1.4エクステンダーと組み合わせて840mm、自分としては超望遠として未知な撮影分野に挑戦してみましたが、結果はご覧の通りです。そもそも焦点距離600mmか800mmか、エクステンダーは×1.4か、×2.0かとその選択に悩むわけですが、600mmを使って思ったことは、何でも長ければいいということではなく、しっかりとした撮影ターゲットが決まっている以外は、これ以上は長くても、倍率が高くても使う頻度が少なくなるような気がするのです。ちなみに、私の撮影と時を同じにして、北海道鶴居村でタンチョウを撮っている方に問い合わせると、焦点距離600mmぐらいがちょうどよいということでした。

 いずれもC-AFモードで、しっかりと撮影ターゲットをフレーミングできれば、あとは適切な撮影感度、シャッター速度が自動的にセットされ、ピントも露出も合うというわけですが、600mmF11、840mmF16という焦点距離F値で手振れもなく、しかも人物や動物の目にピントが合うというのですからすごいというのに尽きるわけです。これらはまさにデジタルカメラならではの最新技術を存分に発揮させたからであって、新しいデジタルカメラならではの境地を開いたからといって決して過言ではないでしょう。

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≪左:600mmF11のマウント後部からのぞいて振ってみると、最後群レンズがブラブラと動くから手ブレ補正ユニット部分であることがわかります。右:エクステンダー×1.4RFが加わってからは、仲間のEOS R6も加えて撮影を行いました。R6は、R5、Rと同様に、電源をOFFにしてレンズ交換するときにはシャッター幕が降りてCMOS撮像面がむき出しにならないので、レンズ交換するときには大変気が楽です≫

 このためには、光学的には従来は高価な光学素子であったDO(回折格子)レンズを組み込み、レンズ鏡筒には硬度の高い樹脂を大幅に採用して、しかもガタなくスムーズに70mmも伸縮する沈胴式として成型部品で構成するなど小型化と軽量化が図られているのです。またレンズ内部をのぞき込んでみると、内部は成型された樹脂そのものであって、特別に内面反射防止の黒塗装が施されているわけではないのです。この樹脂の仕上げは目で見るとグレーな感じにも見えるのですが、写真に撮ってみると黒くなっているので、なかなか高度な素材だと感じました。もちろん撮影時の露光条件によって変わるのはわかっていますが、なかなかだと思った次第です。

 いずれにしても、従来からのカメラ技術ではまったくダメダメであったものを、デジタル、さらにはミラーレスの特長を最大限に生かして気軽に超望遠撮影ができるようにした技術者の柔軟な発想にはただ驚くばかりした。今回は掲載しませんでしたが、室内の声楽のシーンでは譜面を持つことができないからプロジェクターでスクリーンに投影し、そのように暗い場面での撮影も600mmF11で/100秒でISO25600の手持ち撮影できたのもすごいことでした。室内でマスクした顔のアップでしたが、まるで屋外で撮影したようにきれいに写っていましたのも驚きです。これからも今までの写真の常識をひっくり返すようなカメラ技術の進歩のうえに、さらなる写真撮影の領域の拡大がなされることを大いに期待するものです。 (^^)/

 

ピューリッツアー賞の写真家たち

 日本カメラ博物館で11月3日より、ベトナム戦争を取材してピューリッツアー賞、世界報道写真展大賞などを受賞した報道写真家の澤田教一が使用した、カメラとヘルメット、ピューリッツアー賞・賞状、世界報道写真展大賞のトロフィーとメダル、ロバート・キャパ賞メダルなどの展示が開始されました。

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≪日本カメラ博物館の澤田教一コーナー≫
 ピューリッツアー賞は、ニューヨーク・ワールド紙の発行者であったJoseph Pulitzerの遺産によりアメリカ・コロンビア大学に1917年に設けられ、ジャーナリズム、文学、音楽の分野で優れた仕事をした人々に毎年与えられてきた賞です。受賞の報道は日本の新聞でも掲載されていますが、最近そのスペースは新聞報道でもわずか10行程度であり、注視していないとわからないほどです。過去、日本人の受賞者は、長尾靖(1961年受賞)、澤田教一(1966年受賞)、酒井淑夫(1968年受賞)の3人で、いずれも報道写真家であり、さらに受賞年代が1960年代に集中しているために、昨今の写真教育受ける大学生に聞いても賞の名前は聞いたことがあるけれど日本人受賞者の名前は知らないといい、一般文科系の学生は賞を知ってはいるけれどということで、日本ではピューリッツアー賞そのものがある意味、過去の話になりつつあるのではと考えるわけです。このような時期に沢田教一のカメラと受賞の記念品などが恒久的に日本カメラ博物館に収蔵され常設展示されるようになったのは、写真ジャーナリズム史としては大変意義あることだろうと考えるわけです。ここでは、たまたまこれら受賞写真家を知る方々から過去にお話を聞くことができたので、極めて個人的な部分をも含めて書きとどめておくことにしました。

■長尾靖(ながお やすし)
 ピューリッツアー賞を1961年に日本人で最初に受賞したのは毎日新聞写真部の長尾靖(1930~2009)です。長尾は千葉大学工学部の工芸化学科写真映画専攻を卒業していますが、当時の写真は化学であり、新聞社写真部には暗室があり現像やプリント作業にはそのような専門知識が必要だったのです。
 長尾の受賞作品は、1960年の10月12日に日比谷公会堂で開かれた自民、社会、民社の3党首による演説会に登壇した日本社会党浅沼稲次郎委員長が、学生服姿の17歳右翼団体少年に刺殺される瞬間を撮影したものです。この事件の起きたとき私は中学生でした。当時同級生に社会党本部に父親が勤めるKj君がいたのですが、放課後彼の住む団地の広場でKj君と仲間数人で話しているところに遠くから友人のN君が「大変だ、浅沼さんが刺されたぞー」とやってきたのです。その時代のことはほとんど忘れてしまったのですが、なぜかその数分のことだけは60年経った今もしっかりと脳裏に焼きついているのです。

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≪長尾靖、ピューリッツアー賞受賞作品。写真は、毎日ムック『戦後50年、POST WAR 50 YEARS』120ページより、1995年、毎日新聞社刊≫
 それから55年ぐらいたったある時、毎日新聞社の写真部にいたKさんとの雑談の中で長尾さんの当時の話を聞くことができました。私と同年でかつて「カメラ毎日」の編集部にいたときから50年来の知り合いです。Kさんは私と同年ですから、当然のこととして写真部の先輩方に話を聞いたということです。
 日比谷公会堂の現場で長尾さんの使っていたカメラは、当時の新聞報道の現場では主流であった4×5シートフィルムを使ったスピグラ(スピードグラフィック)で、撮影の現場では必ず1枚は未撮影のまま残して社に戻るという決まりがあったそうです。この日も各党首の並んだ写真を撮り、1枚を残してありました。浅沼委員長が登壇し演説が始まり、次の自民党までパックフィルムの交換を見計らっているときに事件は起きたのです。この瞬間は、共同通信東京新聞を始め各社が写していますが、これらの社の写真に対して毎日の長尾の写真が最も異なるのは、補助光にフラッシュバルブでなくストロボを使っていたのです。この現場写真は、最初は壇に向かって右から乱入した少年が浅沼稲次郎の左わき腹を刺し、この瞬間をとらえた写真は他社にもありますが、長尾の写真は刺された後に動く浅沼委員長に対しもう1度刺そうと立ち向かった瞬間だったのです。
 この結果、浅沼の腰は引け、顔は大きくゆがんで、メガネはずり落ちる瞬間で写っているのが決定的瞬間となったのです。このときに同じ場面を写した写真もありますが、よく見ると体と刃物が流れて写っているのです。当時毎日新聞社は、日本に入って来たばかりのハイランドのストロボを使っていたのです。したがって、撮影の瞬間はシャッタースピードで止められたのではなく、ストロボの閃光時間で止められたのでした。写真的に見ると、流れているほうがいいか、止まっていることがいいのかは意見が分かれますが、すくなくともこの場面はすべてが止まった瞬間の写真が良かったのです。この決定的瞬間は毎日新聞社からアメリカの通信社UPI(United Press International)を通じて世界中に配信され、ピューリッツアー賞と世界報道写真大賞などを受賞しました。
 長尾は受賞の翌年、1962年1月に毎日新聞社を退社してフリーランスのカメラマンとして独立しています。受賞後には国内外で講演の依頼が多数あり、仕事を休まなくてはいけなかったこともあったようです。88歳で亡くなるまで生涯独身を通し、晩年は伊豆に住み、死後数日たって訪ねてきた知人に見つけられ、後日遺族により遺品整理がされたときにピューリッツアー賞の賞状がでてきたとのことです。
(各社の浅沼稲次郎委員長刺殺現場写真は、Web上で見ることができますので、興味ある方は参照ください)

澤田教一(さわだ きょういち)
 澤田教一(1936~1970)は、1966年にピューリッツアー賞を受賞しています。澤田は、1936年2月に青森県に生まれました。1950年4月に青森高校へ入学し、卒業後の1954年、米軍三沢基地内の写真店で働きだし、のちに夫人となるサタさんと知り合い1956年に結婚。米軍のPXでポートレート写真を撮るようになりました。1961年に米軍将校の紹介でUPI通信社東京支社へ入社。1965年UPIで休暇を取ってベトナムの取材を行い、このときの自費取材が認められ7月にはUPI特派員としてサイゴン支局に赴任しました。9月「安全への逃避」を撮影。「安全への逃避」でハーグ世界報道ニュースグランプリ、USカメラ賞受賞、1966年4月には「安全への逃避」でピューリッツアー賞とアメリカ海外記者クラブ賞、「泥まみれの死」でハーグ世界報道写真展ニュース部門第1位、「敵を連れて」で同2位、USカメラ賞を受賞。1968年「フエ城の攻防」でUSカメラ賞などを受賞しました。1968年9月UPI香港支局に写真部長として赴任。1970年1月UPI特派員としてサイゴンに再び出向きました。10月28日、UPIプノンペン支局長とともに取材中のカンボジア国道2号線で狙撃され殉職、34歳でした。1970年にはロバート・キャパ賞、講談社文化賞、アサヒカメラ賞を受賞しています。(経歴は『二人のピューリッツアー賞カメラマン「戦場」澤田教一・酒井淑夫写真集』より、抜粋引用しました)

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澤田教一ピューリッツアー賞受賞作品「安全への逃避」。写真は、『二人のピューリッツアー賞カメラマン「戦場」沢田教一・酒井淑夫写真集』、91ページより、2002年刊、共同通信社

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≪左:澤田教一、右:酒井淑夫、写真は、『二人のピューリッツアー賞カメラマン「戦場」沢田教一・酒井淑夫写真集』より、2002年刊、共同通信社
 今回、日本カメラ博物館に寄贈されたのは、ライカM2(1965)、ローライフレックス2.8C(1953)、澤田教一使用M1スチールヘルメット(内側の頭頂部にはヒョウタンのお守りが仕込まれている)、アメリ国防省の発行したIDカード、世界報道写真大賞のトロフィーとメダル、ピューリッツアー賞の賞状(1965)、ロバート・キャパ賞メダル(1971)、このほか、澤田が撮影した数万点分におよぶフィルムや紙焼き写真があり、いま現在、整理と保存処理を開始したばかりで、これらの写真の展示は未定とされています。
 澤田教一と私は特に接点はありませんが、2000年の8月に当時共同通信社の新藤健一さんと、ニコンF2の元設計者であった佐藤昭彦さんとともに、澤田教一の弟さんと東京で会っています。このときは何でも澤田教一の残したフィルムとプリントの整理のために青森の弘前に皆で行くとかいうことで、弟さんには澤田サタさんが弘前市内の自宅で開いていた「レストラン澤田」の名刺をもらいました。しかし、なぜこの場に私がということですが、実はこの1週間ほど前にやはりピューリッツアー賞作家のエディ・アダムズが日本にお忍びで来ていたのです。このとき、これからエディ・アダムズと会いますよと新藤健一さんに電話したのに対し、後日改めて澤田教一の弟さんが上京したので私も一緒に会おうとなったのです。これは、いま考える不思議なもので、エディ・アダムズと会食後に写真を撮らせてもらった時の同じフィルムのすぐ後のコマに、撮影日は異なるのに新藤さんと澤田教一の弟さんが写っているのです。

■酒井淑夫(さかい としお)
 酒井淑夫(1940~1999)がピューリッツアー賞を受賞したのは1968年です。酒井は、1940年3月に東京で生まれました。1961年明治大学在学中にPANA通信社パン・アジア・ニュースペーパー・アライアンス、後に時事通信社傘下に)で暗室作業のアルバイトをしていました。1965年4月にUPI通信社東京支社に入社して、サイゴン支局に赴任しインドシナ戦争を取材して、6月雨季の南ベトナムで『より良きころの夢』を撮影したのです。1970年10月にカンボジアで殉職した澤田教一の遺骨を香港のサタ夫人に届ける。1971年2月、ケサン基地を拠点にしてラオス侵攻作戦を取材。5月、UPI社を一時退社してアメリカに渡りました。1973年、1月フリーカメラマンとしてサイゴンに入り、パリ和平協定による停戦を受けてタクハン川での捕虜交換などを取材、このとき一ノ瀬泰三が同行しています。UPIサイゴン支局に写真部長として復帰。11月、一ノ瀬泰三もカンボジアへ取材に行き行方不明となる。1974年12月フィリピン・ミンダナオ島モロ民族解放戦線を取材。1975年、陥落寸前のサイゴンカンボジアなどを取材後、9月ソウル支局へ赴任し、朴政権下の韓国を取材。1976年UPI社を退社し、フリーとなり、ニューズウイーク、タイム、ロイター通信社を媒体にして取材する。1986年AFP通信社(Agence France-Presse)東京支局写真部長に就任し、ソウルオリンピック天安門事件、フィリピン政変などを取材。1989年AFP通信社を退社し、ビデオ企画会社を興す。1999年、11月21日、鎌倉の病院にて死去、59歳でした。(経歴は、『二人のピューリッツアー賞カメラマン「戦場」澤田教一・酒井淑夫写真集』より、抜粋引用しました)

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≪酒井淑夫ピューリッツアー賞受賞作品「より良きころの夢」。写真は、『ピュリッツアー賞カメラマン「酒井淑夫写真展」』図録、8ページより、2001年、酒井淑夫写真展実行委員会(新藤健一ほか5名)刊、表紙デザイン西垣泰子≫ 酒井はこのような雨季の場面を何度も経験していて、写真を撮るのに雨の中で人物の肌を表すために、グリーンのフィルターをかけて撮影したと新藤さんに語ったそうです。なお、本書の刊行に合わせて、巻末には元APカメラマンであったエディ・アダムズがメッセージを寄せています。

■エディ・アダムズ(EDDIE ADAMS
エドワード・アダムズ(Edward "Eddie" Adams)は1933年6月、米国ペンシルベニア州ニューケンジントンエドワードとアデレード・アダムズの息子として生まれました。高校在学中に学校新聞の写真班一員として参加。卒業後米国海兵隊に入隊。戦争終結後の3年間にわたり戦闘記録写真撮影を任務として朝鮮に駐留しました。1958~62年フィラデルフィアのイブニング・ブレティン紙(The Evening Bulletin)に勤務した後、AP(Associated Press)通信社に入る。1972~76年タイム誌(Time)の写真部員として勤務した後、再度AP通信社に特派員として戻り、この期間に舟で逃避をはかるベトナム難民の状況を撮影しています。撮影された写真は全米各紙に広く掲載され、米国務省による議会への問題提起を促すことになり、これを契機として時の政権は20万人に及ぶベトナム難民を米国に受け入れる決定をしたのです。
20余年間にわたってアダムズはパレード 誌(Parade)の特派員として世界を駆け廻り各国政府首脳、その他各界著名人のポートレートを撮影。それらの多くは同誌表紙に名前入りで掲載されました。1988年には、フォトジャーナリストとしての自己形成を目指す若者に修練の場を提供することを目指して、エディ・アダムズ・ワークショップ(Eddie Adams Workshop)を開設。ニューヨーク州ジェファーソンヴィル村(Jeffrsonville)を拠点として、講師には世界的に知られた写真家、主要各紙誌の写真編集者を招きました。35カ国におよぶ人権擁護活動家を網羅したアダムズの写真は2000年、ケリー・ケネディー(Kerry Kennedy)著、“力あるものに対峙して真実を語る”(“Speak Truth To Power”;Umbrage社刊)に掲載されています。2004年9月19日、ALSで死亡。エディ・アダムズの写真は2009年にアーカイブとして、テキサス大学オースティン校の施設であるアメリカ歴史研究・ブリスコ-センターに収蔵されました。(エディ・アダムズの経歴は『EDDIE ADAMS VETNAM』の表紙カバーより抜粋引用しました)
 エディ・アダムズは1969年にピューリッツァー賞を受賞しています。「路上の処刑」は、1968年2月1日、ベトコンのグエン・ヴァン・レムを路上で処刑した警察署長のグエン・ン・グック・ローンの写真を撮ったエディ・アダムズの写真は社会的にさまざまな議論を呼びました。以下に、「路上の処刑」が載せられた2冊のエディ・アダムズの写真集を紹介します。

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≪エディ・アダムズのピューリッツアー受賞作品「路上の処刑」。写真は、『EDDIE ADAMS VETNAM』 150ページより、AN UMBRAGE EDITION BOOK、30.5x23cm判、223p.、2008年刊、ISBN -13:978-1-884167-72-0、US $ 50≫ こちらの書籍は、ベトナムでの写真で全体が構成されています。

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≪写真は、『EDDIE ADAMS BIGGER THAN THE FRAME』 208ページより、UNIVERSITY OF TEXAS PRESS, AUSTIN、27x25cm判、354p.、2018年刊、ISBN 978-1-4773-1185-1、US $ 60≫ 1枚のピューリッツァー受賞作品の前にはそこに至るまでの経緯を示すようにアダムズが撮影した連続した写真がどちらの本にも掲載されています。BIGGER THAN THE FRAMEには、1983年から2002年までのパレード誌の表紙写真、プレスカメラマンとして撮影したジョン・F・ケネディビートルズの写真なども掲載されています。

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≪エディ・アダムズ、2000年8月、神田神保町三省堂地下「ローターオクセン(放心亭)」にて、ライカM6TTL、ズミクロン35mmF2、NP400-PR、Photo by Y. Ichikawa≫

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≪エディ・アダムズと会食後に写真を撮らせてもらった時の同じフィルムのすぐ隣のコマに、撮影日は異なるのに新藤健一さんと澤田教一の弟さんが写っているのです≫

 ところで、なぜエディ・アダムズが日本なのでしょうか。少なくとも澤田教一、酒井淑夫とは、AP通信社、ベトナム戦争従軍カメラマンという共通点があります。『二人のピューリッツアー賞カメラマン「戦場」、澤田教一・酒井淑夫写真集』には、エディ・アダムズが『撮らなかった写真』と題して従軍カメラマンとしての立場から写真の必要性を1ページにわたって寄稿しています。

 エディ・アダムズにとって澤田教一とはどういう存在だったのでしょうか?それぞれの所属、出身国は異なっても各社の写真家は強い絆で結ばれていたといわれています。それは前線の兵士が日夜死の恐怖に直面していたのと同様、彼らも同じ状況の中で仕事をしていた必然でもあったのです。彼はそうしたさなかに澤田を失いました。エディ・アダムズは、澤田の作品を高く評価しており、3年先行した澤田の受賞を自分のことのように喜んだといわれています。Kyoichi Sawadaの名は、ベトナムで失った他の5人の仲間(ラリー・バローズ、アンリ・ユエ、ヒュン・タン・ミィ、ミシェル・ローラン、ケント・ポター;Larry Burrows, Henri Huet, Huynh Thanh My, Michel Laurent, Kent Potter)とともにエディ・アダムズ・ワークショップの広大な敷地の一角に据えられたテーブル形の石碑に刻まれています。

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≪ニューヨークにあるエディ・アダムズ・ワークショップの敷地の一角に据えられたテーブル形の石碑。背後はワークショップの建物(もとは酪農家の大型納屋とサイロ)。Photo by Hank Nagashima≫

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≪30年の時を経て苔むしていますが、石碑にはベトナム戦争で亡くなった澤田教一ほか、Larry Burrows, Henri Huet, Huynh Thanh My, Michel Laurent, Kent Potterら5人のカメラマンの名前が刻まれています。Photo by Hank Nagashima≫

 ■半世紀を過ぎた日本人ピューリッツアー賞作品は
 かつて日本人の報道写真家、長尾靖、澤田教一、酒井淑夫の3人がピューリッツアー賞の写真部門を受賞した1960年代から半世紀を過ぎました。今日まで、その間ピューリッツアー賞の授与は続いているのですが、調べてみると日本人でピューリッツアー賞をとったのはこの3人しかいないのです。いずれも、アメリカの通信社であるUPI(United Press International)とAP(Associated Press)通信に関係した写真が受賞したわけですが、この先、これらの作品がどのような形で継がれていくか興味あるわけです。今年2020年は、澤田教一没後50年であり、少なくともこの時期、日本カメラ博物館に澤田教一のカメラ機材、写真などが収蔵されたことにより、もう一度過去のピューリッツアー賞作品を呼び起こすことになったのは意義あることです。このようなことがなければ、私自身がピューリッツアー賞作品についてまとめることのきっかけになったわけで、ありがたいことだと思うのです。
 なお、ベトナム戦争を代表するもうひとり日本人の報道写真家として岡村昭彦(1929~1985)があげられます。岡村は1962年PANA通信社の特派員となり、ベトナム戦争を取材しライフ誌に掲載され、アメリカ外人記者クラブ海外写真部門賞を受賞。1963年にはUPI通信東京支局の沢田教一と出会っています。岡村のベトナム戦争関連の写真集は「これがベトナム戦争だ」(毎日新聞社刊、1965)を始め多くの書籍が出版されています。晩年ホスピスなどの問題に取り組み、現在は静岡県立大学に岡本の関連書籍・文献約18,000冊が収蔵され「岡村昭彦文庫」として開設されています。
 最後に本文をまとめるにあたっては、澤田教一と酒井淑夫2人の関連資料提供と話をしてくださった元共同通信社・新藤健一氏、エディ・アダムズと個人的に親交の厚かった元タムロンの長島久明氏にも資料提供並びに事実確認で大変お世話になりました。この場を借りて深く御礼申し上げます。 (^^)/

キヤノンRF600mm F11を使ってみました。≪進化するレポートVer.01≫

 キヤノンからEOS R5とEOS R6の発表に合わせて、“RF600mmF11 IS STM”と“RF800mmF11 IS STM”が発表され、7月下旬に発売が開始されました。実は当方すでにキヤノンミラーレスの「EOS R」と「EOS RP」を購入してきたので、「EOS R5」はスルーすると書いたのですが、わがスポンサー氏が長年続けてきたのに休むのは良くないというので「EOS R5」とRF15~35mm F2.8 L IS USMを求めてレポートしましたが、さらに「RF600mmF11」は面白そうだからこちらも使ってみてくださいというのです。ということで、「RF600mmF11」と「エクステンダーRF1.4」を注文したのですが、なかなかエクステンダーRF1.4が来ないので、しびれを切らしてということもありますが、あまり時間がかかると熱が冷めてしまうので、とりあえずレンズだけ引き取ってきました。

 そこで600mmF11を手にしたので、進化するレポートとしてアップしました。ご覧ください。

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≪EOS R5ボディに装着したRF600mmF11 IS STM≫ まずはボディであるEOS R5に取り付けてみました。このレンズのテクニカルな面は後述しますが、沈鏡胴を採用していて小型・軽量なのです。写真は撮影状態、つまり沈胴を引伸ばして撮影状態にあります。この状態で手に持って構えてみるとハンドリングも良く、何を撮ろうかと考えました。

■超望遠で何を撮ろうかな

 この時点で考えていた被写体は、動くもの、ステージ、花などを思いながら、外観写真と「何を撮るかな?600mmF11」と書きFaceBookに載せると、瞬時に「とりあえず月を」撮ったらと返信が、ある写真大学のS先生から返事をいただきました。なるほどです、その日は中秋の名月の翌日10月2日なのです。 早速、あれこれ設定を考え、わが家のベランダから撮影したのが下の写真です。この時期は、アマチュアから専門家まで多くの方が月の写真をアップしているので、皆さんのと比較してみると、かなりベテランの方が撮影したのに近い月の画像が1発目から撮影できたのです。これは驚きでした。実際下に載せた写真は、2回目に撮影した結果ですが、大きく変わるところはありません。先生に提案をいただいてからわずか5分ぐらい後のことでした。

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中秋の名月+1日≫ CAF、マニュアル露出、F11・1/2000秒、ISO 1000、AWB、手持ち撮影、レタッチソフトによるプラス側にトーンカーブ補正。最初は、CAF、絞り優先AEで、ISO-AUTO、-3EV露出補正で撮影しましたが、露出はオーバーでした。このためトーンカーブ補正で上に掲載したのと同じように見れるようにしましたが、もともとオーバーオーバー気味の画像を適正にするためにトーンカーブ補正を行うと、場合によっては白飛びする部分もでてくるだろうと、2度目の撮影では露出設定をすべてマニュアルにして、わずかにアンダーになるように露出を与えたのが上の写真で、オーバー側にトーンカーブ補正してあります。

 この月が撮像素子に写る大きさは、焦点距離600mmだと直径約6mmに写るので、同じ焦点距離ならAPS-C、マイクロ4/3、1型でもみな同じですから、撮像素子の寸法が小さくなるにつれて、徐々に周辺の黒いスペースが消えていくというわけです。ただ、エクステンダーを使って焦点距離を変えると、1.4倍のエクステンダーでは840mmで8.4mm、2倍のエクステンダーでは1200mmとなり月は撮像素子に直径12mmの寸法で結像することになります。合焦点までの距離はExifには4294967295mとでました。中秋の名月の場合は地球から月まで約40万kmとされていますから、測定誤差の範囲かわかりませんが、昨今のカメラはすごいとなります。せっかくですから、今回の作例には合焦ポイントまでの撮影距離データをすべて掲載することにしました。

 さてこの月の写真が、カメラを構えファインダーをのぞいて押すだけで簡単に写ったのは驚異です。まさにこれがF11という暗いレンズであり、ファインダーは暗さを感じさせなく、AFに連動し、高感度に強いデジタルのミラーレス一眼ならではのことであり、さらにレンズ側とボディ側の協調により5段もの手振れ補正効果を得られるというEOS R5とRF600mmF11 IS STMでの成果であるわけです。どうしてCAF(コンティニュアスAF)モードで撮影したかというと、手持ち撮影で600mmという焦点距離では、手振れ補正が働くこととは別にして、たぶん小刻みに揺れているだろうと考えたからで、ONE SHOOT AFでは決められないと思ったからです。なお撮影はカラーで、ホワイトバランスはAUTOにしての撮影であって、モノクロ変換はしていません。

■小型・軽量の超望遠

 月の撮影が大変うまくいったことに気をよくして、実は翌日に朝から20分ほど屋外で撮影してみましたが、あっという間に面白い写真が複数枚撮れてしまいました。それをまず紹介したいのですが、ここはやはりどのような技術でこのようなレンズが製品化されたのか考えてみました。まずこのレンズは、鏡胴を沈胴式にして、光学系には2つの回折格子を密着させたDOレンズを使い色収差をはじめとした諸収差を補正すると同時に小型化を図っているのです。下には、従来のEFレンズとRF600mmF11の重量・寸法比較を示していますが、沈鏡胴とDOレンズの採用、さらには最大口径がF11であることに加え、鏡胴のエンジニアプラスチック化を大胆に進めたためだと思うのです。DOレンズは、かつては高級品でレンズ鏡胴前部に緑色の線を入れて、他レンズとの差別化を図っていましたが、このレンズでは線を省いていますが、それだけ回折格子を用いたレンズが一般化したということなのでしょう。

 この結果、RF600mmF11単体で約930g(800mmF11は1,260g)という軽量を達成して、バッテリー、カードを含めたボディの重さ約740gを加えても1.7kg未満となり、私でも首からさげて歩くのは特に苦になることはありませんでした。実際は同様の重さのカメラを2台首からさげて歩き回りました。このレンズのもう少し詳細な技術に関しては、発表の時に書きましたのでそちらをご覧ください

 

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 ≪EF600mmF4とRF600mmF4の比較とDOレンズの配置≫  800mmF11のレンズ構成は、DOレンズの前に凸レンズを配置した形で焦点距離を増しています。それぞれのレンズに×1.4のエクステンダーを付ければ840mmF16、1020mmF16、×2のエクステンダーを装着すれば、1200mmF22、1600mmF22となりそれでもAFが働くというのです。注文して未着の×1.4エクステンダーの到着が待ち遠しいです。なお、この時期ネット上の安値実勢価格でRF600mmF11が96,000円、RF800mmF11が112,000円、×1.4エクステンダーが63,000円、×2エクステンダーが74,000円強です。

 ■いつもの英国大使館とランダムな撮影

  薄日のさす朝でしたが、それでも十分とさっそく屋外に引っ張り出してみました。最初に向かったのはいつもの英国大使館です。撮影位置は鉄柱のバリケードがあるので毎回定位置ですが、いつもなら快晴の日の朝10時15分ごろ、35mm焦点距離レンズをF5.6に絞って、正面玄関屋根近くにある紋章にピントを合わせての撮影となりますので、画角比較をされたい方は「キヤノンEOS R5を使ってみました」をご覧ください。

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≪英国大使館エンブレム≫ F11・1/640秒、ISO-AUTO 3200、AWB、手持ち撮影、合焦点まで33.2m。いつもなら画素等倍に拡大しての画面ですが、ノートリミングでこの大きさですから、さすが600mmの画角、4500万画素の質感です。当然のことですが、このF11という開放値の描写も十分満足できるものです。

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≪Snap Back Photo≫ CAF、  F11・1/640秒、ISO-AUTO 1250、AWB、手持ち撮影、合焦点まで107m。道を歩く女性の後ろ姿が素敵だったので、だいぶ先まで歩いていくのを見届けてシャッターを切りました。もちろんAFはコンティニュアスなので、女性の姿を追い続けています。手前の歩道の障害物、奥の歩道の木々や歩いてくる男性などが、圧縮感とともに程よくボケていて狙った女性を浮き立てていますます。

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≪走る自転車≫ CAF、  F11・1/800秒、ISO-AUTO 1600、AWB、手持ち撮影、合焦点まで23.2m。ゆるやかな坂を下ってくる自転車を狙ってみました。撮影距離からするとしっかりと自転車を漕ぐ、こちらに来る人物を面白いほど追いかけています。

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≪走行する車≫ CAF、  F11・1/800秒、ISO-AUTO 1250、AWB、手持ち撮影、合焦点まで206m。遠距離を走行する車を狙ってみました。狙ったのは中央の白いミニバン。走行をしっかり追いかけていますが、運転手の顔も反射がなければ識別できるほどのAF追随能力です。動いている被写体を何のためらいもなくシャッターが切れるのは、すっごく楽しいです。

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≪大輪のダリア≫ CAF、  F11・1/400秒、ISO-AUTO 12800、AWB、手持ち撮影、合焦点まで4.3m。近接での描写を試してみました。F11という明るさだと、この程度の大きさの花だと手前から花芯までピントが合うのはなかなかいい。シャープさも必要十分だと思います。

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彼岸花 CAF、  F11・1/640秒、ISO-AUTO 8000、AWB、手持ち撮影、合焦点まで13.9m。中距離にある彼岸花の群生を撮影しました。この感じからすると600mmF11というレンズでも深度は浅いように感じました。計算すると、この距離だと29cmぐらいが深度です。

■楽しくカジュアルに使いこなせる超望遠レンズ

 今回の撮影はここまでにします。後は、×1.4エクステンダーが来てからのお楽しみとします。従来600mmクラスの超望遠レンズでの撮影には三脚は必須だったわけですが、少なくともこのレベルの撮影が散歩的なぶらぶら歩きで気楽に撮れてしまうのですから、楽しいです。

 そもそも焦点距離600mmか800mmか、エクステンダーは×1.4か、×2.0かとその選択に悩むわけですが、600mmを使って思ったことは、何でも大きければいいということではなく、しっかりとした撮影ターゲットが決まっている以外は、これ以上は長くても、倍率が高くても使う頻度が少なくなるような気がするのです。ちなみに、ちょうどこの時期に北海道鶴居村でタンチョウ撮っているKさんに問い合わせると、撮影距離からすると焦点距離600mmぐらいがちょうどいいということでした。 2020/10/8 (^^♪

 引き続き完結編では、×1.4エクステンダーが来たので、新たな被写体にチャレンジしてみました。

こんなカードアダプターが欲しい

 久しぶりに持ち運び用のノートパソコンを 買い換えました。それまでの機種がWindows10になって動作が重くなったのです。いろいろ悩みましたが、購入してみると前モデルよりは軽くサクサクと動くようになったので助かりました。前モデルは6年前の購入ですが、価格と償却を考えるとまずまずかなと思うのです。私の必要とする機種は、小型で1kg未満であることなどですが、6年間で値段は1/2に下がりましたが、1)Microsoft OfficeWPS Officeになった、2)インターネットはWi-Fi接続だけになった、3)SDカードスロットはマイクロSDカードスロットになった、4)USB3.1(Type-C)とUSB 3.0×2、5)HDMI端子などがあるのですが、新規機能を取り入れながらも何となくコストダウンされている感じがするのです。しかし、よくよく考えるとこれで必要十分ということがわかりました。

 もうひとつ悩んだのが、必要に応じてデジタルカメラの画像をこのノートPCで開くのにはどうするかということです。私の使うデジタルカメラの多くはSDカード仕様なのですが、通常のSDカードは爪が折れたりするような物理的な損傷がたまに発生するために、最近はハウジングが丈夫なMicro SDカードに順次切り替えて、アダプターを使って利用していたところなのです。このMicro SDカードを読み込ませるには、専用スロットのあるカードリーダーかアダプターがあればいいだけなのです。そこで、取材先などで簡単にデジタルカメラのデータをこのノートPCでSDカードやMicro SDカードのデータを読み込ませるには小さなマルチリーダーを持てば、スマートフォンデータを含めてすべて取り込めるのです。

 それでも唯一対応できないのがXQDカードです。何とかMicro SDカードアダプターのようなものをXQDカードのハウジングを利用してできないかと思うのです。もしSDカードを入れるのは物理的に難しいならば、もっと小型なMicro SDカードを入れればいいわけです。もしこんなアダプターができたら、一気に利便性が増し、撮影コストが下がり、さらには撮影テーマによるカード毎の保存なども安価で気軽に行えるのではないでしょうか。

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左上から、①PCカードCompactFlashアダプター、②CompactFlash、③SD-CFアダプター(CompactFlashのハウジングにSDカードが収納され普通に使える)、④SDカード、⑤MicroSD・MicroSDHC・MicroSDXCアダプター、⑥MicroSDカード、⑦XQDカード

 XQDカードのハウジングの中にMicroSDカードが入り、通常のメモリーカードとして使えれば素晴らしいことです。既存のXQDカードを使うカメラの価値観がぐんと上がることは間違いないのです。MicroSDカードが2つのアダプターを介せば、PCカードまでつながるのは素晴らしい規格だと思うのです。