写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ソニーα9を使ってみました

 ソニーは4月21日に、2,420万画素のフルサイズミラーレス機で、AF・AE追随、20コマ/秒という高速の「ソニーα9」を発表し、5月26日から発売したので、さっそく使ってみました。
 ところでソニーは、すでに昨年の11月に4,240万と高画素でフルサイズの一眼レフで、12コマ/秒という連写機能を誇る「ソニーα99II」を発売していますが、これによりフルサイズで高画素、中画素で最高連写コマ速度トップを誇る機種をラインナップしたことになります。今回の使用にあたっては特別に意図するところではありませんが、カールツァイスのBatis2/25(ZEISS Distagon25mmF2 T*)を装着しての撮影となりました。

≪Batis2/25を装着したα9。わりとボディの各部の稜線がシャープなα9に対し、柔らかな曲線美あるBatis2/25のレンズはどうだろうかとも考えましたが、意外とフィットしています≫
 α9の最大の特徴である、AF・AE追随で20コマ/秒という高速の撮影を可能としたのは、ソニーによれば、α7IIに比べて20倍高速化されたメモリー内蔵の35mmフルサイズ積層型CMOSイメージセンサーと進化した画像処理エンジン、最高20コマ/秒ブラックアウトのない連続撮影、最大60回/秒の演算によるAF/AE追従や、最高1/32000 秒の歪みを極限まで抑えたアンチディスト−ションシャッターなどの高速性能を備え、大容量のバッファメモリーにより、20コマ/秒連写で圧縮RAW241 枚、JPEG362枚の連続撮影が可能だというのです。当然これらの特徴は、スポーツ撮影などにおいて効果を発揮するものであることは間違いありません。実際、発表日の4月21日、北京で開催された“CHINA P&E”のソニーブースに特設されたバスケットコートで、運よくやはり新発表のGマスター超望遠ズームレンズの「FE 100-400mm F4.5−5.6 GM OSS」を装着して、バスケットの模擬試合のシュートの瞬間を20コマ/秒で撮影できましたが、無音で、その瞬間が簡単に撮影できたので、なるほどなと思ったわけです。といっても僕の関心事は、撮像素子の周辺減光特性や発色具合にあるわけで、今回はBatis2/25に加え、同じ焦点距離のクラシック・キヤノンレンズの25mmF3.5で比較で試してみました。

≪左:キヤノン25mmF3.5(1956)、右:カールツァイスのBatis2/25≫ツァイスのBatisの25mmに合わせて、キヤノンのクラシックレンズでライカスクリューマウントの25mmF3.5を用意しました。α9へは、ライカSC/Mマウントアダプター、ライカM/ソニーEマウントアダプターを使用。ソニーの交換レンズには、ソニーの販売するツァイスレンズがありますが、Batis2/25はカールツァイスジャパンが発売するソニーEマウント専用のAF対応交換レンズです。まずは、いつもの英国大使館正面玄関を撮影してみました。

キヤノン25mmF3.5。F5.6・1/500秒、ISO 100≫トポゴンタイプの3群5枚構成、距離計連動カメラ時代のレンズですが、実はこのレンズはα7R(2013年11月発売)ボディでは、周辺光量の極端な落ち込みと色付きからモノクロ以外には使えなかったのが、α7R MarkII(2015年8月発売)では使えるようになり、4,240万という高画素特性より、その配光特性と高感度特性に驚きました。これは、フルサイズで裏面照射タイプを採用したからですが、今回のα9のセンサーも同じ裏面照射タイプだということで、好みもありますが十分にカラーで使える範囲にあります。いずれにしても、レンズがすごいというよりカメラというか撮像素子がすごいのです。この写真を見たある写真家氏は、こちらの方が写真レンズらしくて好きだというのです。結局、その範囲です。ちなみにこのレンズは、60年代に多くの写真家が名作をたくさん残していますが、まだ黒白フィルムの時代でした。

≪Batis2/25。F5.6・1/500秒、ISO 100≫この日は快晴かと思いましたが、やはりカスミがかかったようですっきりしません。それでも、画面全体の均質性は抜群で、解像はかなりシャープです。サーバーの関係で画素等倍で見ることはできませんが、2,420万画素のセンサー解像力を十分にカバーした現代の高解像超優等生レンズです。

≪Batis2/25。F4・1/1250秒、ISO 100≫やはり快晴でなくては思い、シャッターを切った1枚です。伊豆急蓮台寺駅構内です。拡大すればシャープさは抜群で、直線性もよく、背景の山の木々の微妙な緑の変化もよくでています。

≪Batis2/25を外したα9≫そこで気になるのがBatis2/25。α9のボディから取り外して、マウント基部を見てみました。マウント部は軽量のジュラルミンでしょうか、その周辺には青色の防水リングがついています。レンズの距離指標は有機液晶の表示で、カメラに装着すると“ZEISS”というメッセージが表示されます。AF時には何も表示されませんが、MF時には距離指標と被写界深度が後方と前方と別々に示されるのです。なぜ液晶表示かということですが、鏡胴周辺の機械的な動作部分を少なくしようということなのでしょう。MF時の距離リングの過回転により、m/Ftなど情報表示法を変えられます。

≪高解像機「α7R Mark II」でBatis2/25。F2.2・1/640秒、瞳AF、ISO 100。モデル:ひぐれともみさん≫気になるBatis2/25の解像性能ですが、4,240万と高画素のα7R Mark IIで、ポートレイトで使ってみました。太陽が沈む直前の直射がなくなる時間帯に撮影してみました。背景のバラの花、樹木の葉のボケ具合もクセがなく、とろけるような感じです。合焦位置で、2,420万画素画素のα9では十分に解像度を満足させていましたが、高解像4,240万画素のα7R Mark IIでも十分にレンズの解像度がカバーしていることがわかります。VGAの画面サイズで画素等倍まで拡大してお見せしてもいいのですが、あまりにも大きすぎますので今回は控えましたが、まつ毛1本ずつがしっかりと解像し、肌も微細にというところまでわかりました。本体は専用フードをつけても362gと軽く、小型・軽量のα7ボディにマッチすることはいうまでもなく、これからの交換レンズのあり方を示すものだと考えます。そして25mmという焦点距離でF2という大口径がポートレイトに使えるというのも、新しい発見でした。
 ところで、α9のファインダー液晶は3,686,400ドットの有機LEDだそうですが、自然な感じで見やすくできています。そしてソニーの仕様を見ていたら、ファインダー光学系はカールツァイスのT*コーティングが採用されているとのことですので、交換レンズ選択を含めて、ソニーとツァイスの関係はどこまでと、興味ある点です。自分の気になる部分だけをレポートしましたが、高度に進化した多機能カメラでは、当然のことでして、最もα9の特徴である20コマ/秒の性能は専門商業メディアをご覧ください。(^^)/