写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ソニーα7R IIIを使ってみました

 ソニーα7RIIIが、交換レンズFE24〜105mmF4G OSSとともに11月25日に発売されました(写真右参照)。その特長は「システムを一新し、有効約4,240万画素の高解像、 最高約10コマ/秒高速連写、高速・高精度AFを小型ボディに凝縮したフルサイズミラーレス一眼カメラ」ということのようですが、どこがどのように進化したのでしょうか。今年の5月にはフルサイズで20コマ/秒の“ソニーα9”を発売したばかりですが、高価であることから一部ユーザーはこのままではソニーのシステムアップにはついていけないなどの声を聞くこともありましたが、機を逃さず6か月後には高性能機を割安感を感じさせるような価格設定で“ソニーα7RIII”として発売したあたりは、ソニーマーケティング戦略のうまさを感じさせます。
 そこで、進化してきたα7Rシリーズとα9の機種間の性能をまずは比較してみました。これは僕個人が重視するところを抽出しましたが、ユーザーによってはそれぞの注目点によって、さらに作る側によっても違う表ができるでしょう。ここで見ていただきたいのは、それぞれをA2に拡大(4辺に10mmずつの余白を設定して計算)してもプリント解像度は大きく変わらないということと、プリンターによってはその解像度の差が大きく伸ばしても反映されないことがあるのです。ということは、通常の写真製作を行うには、とりあえず画素数差は無視してよいということになります。

 それではα7Rシリーズとα9の違いは何なのでしょうかとなります。この表からは、画素数と連続撮影コマ速度の違いは簡単にわかりますが、意外なのはα9だけイメージャーがわずかに他機種より小さいのです。使う人によっては、どうでもよいということになるのですが、改めてα9という新ラインを示したわけですから、撮影コマ速度の違いと関係あるのでしょうか。まずは、外観的な相違点を見てみることにしました。

 α7Rシリーズとα9はカメラを正面から見た状態では、よほどソニー製品に精通している人でないとなかなかわかりません。上のボディは左がα7RIII、右がα9です。各ボディには、FE24〜105mmF4G OSSソニー・ツァイスバリオ・テッサーT*FE16-35mm F4とそれぞれのボディと同時期に発売されたレンズを装着してあります。この角度から見るのがわかりやすいのですが、最も大きな相違はトップカバー上の操作ダイアルなどの配置です。ここで明らかな違いは、α9は従来メニュー表示から設定していた撮影コマ速度などの切り替え操作をトップカバー上左のダイアルへ引き出したことです。これはさまざまな撮影場面で、とっさに切り替えができること、電源OFFでも撮影モードが外観からわかることなど、明らかに操作性が向上したことです。
ソニーFE24〜105mmF4G OSSレンズの描写
 α7RIIIボディと同時に発売された「FE24〜105mmF4G OSS」の写り具合を見てみましょう。まず、ソニーのフルサイズ用FEマウントレンズには、“FE⇒ FE・G⇒ FE・ツァイス⇒ FE・Gマスター”と4種がシリーズ化されています。このうちGマスターレンズが大口径をそろえる高級シリーズで、今回使用したFE24〜105mmF4はGシリーズです。したがってズームレンズでは、開放F値4となりF2.8の大口径と比較すると1絞り暗くなるわけですが、大きくならない、デジタルカメラの高感度適性が格段に進歩したこと、手ブレ補正機構が入ったこと、ボケに関してはズーム域の望遠側設定によりある程度カバーできる、などなど考えあわせると、ズームではF4クラスも十分成立することになります。それでは、α7RIIIボディとの組み合わせでランダムな撮影結果を披露しましょう。掲載は、残念ながらVGAの左右640ピクセルにリサイズしていることはご容赦ください。

≪24mmの画角。絞り優先AE、F8・1/200秒、ISO100、AWB、すっかりこの場所で定点観測的に撮影するようになりました。拡大するとかなりシャープな描写をすることがわかります。東村山・北山公園≫

≪105mmの画角。絞り優先AE、F8・160秒、ISO100、AWB、24〜105mmというと約4.4倍ズームということになり、画角的には風景、建築からポートレイトまで万能に使えるレンズです≫

≪紅葉したサクラ葉。焦点距離:78mm、絞り優先AE、F8・1/320秒、ISO100、AWB、紅葉したサクラ葉にピントを合わせて、背景の宝塔の金色輝く先端のボケ具合を見ましたた。東村山・徳蔵寺≫

≪ピントを合わせた紅葉したサクラ葉部分を画素等倍まで拡大して切り出しました。画面としては中央部ではなく周辺に近いですが、必要以上にシャープです≫

山茶花絞り優先AE焦点距離105mm、F8・1/500秒、ISO100、AWB、105mmにズームして一番寄れる距離で撮影。この画面ではわかりませんが、拡大すると白い花びらの表面がみずみずしく再現され、花びらのエッジには色収差の影響によるフリンジは発生していません。東村山・北山公園付近≫

≪紅葉。プログラムAE焦点距離:24mm、F6.3・1/80秒、ISO100、AWB、紅葉したモミジの葉をより鮮やかに撮れるようにと、ステンドグラス効果を狙い逆光でしたが撮影しました。逆光でも、ゴーストやフレアは特に感じさせません。東村山・ほっこり広場≫

≪中国寺院建築。焦点距離:24mm、プログラムAE、F8・1/200秒、ISO100、AWB、画素等倍まで拡大して見ると、寺院の瓦、庇の刻みなどみごとなまでの高解像です。少なくともこの画面からは広角側でもディストーションは少ない描写です。秩父両神

≪空箱。焦点距離:24mm、プログラムAE、F8・1/640秒、ISO100、AWB、ビールのカバケースをねらいました。露出レベルにもよるのでしょうが、周辺の光量がわずかに低下しているのがわかります。α7RIIIボディは初期設定状態で、露出補正は加えていません。個人的にはこのような描写の方が写真らしくて好きだという人もいます。秩父・源作ワインにて≫

≪紅葉のクローズアップ。焦点距離105mm、プログラムAE、F4.5・1/160秒、ISO100、AWB、約1.5mぐらいからの距離で撮影ですが、紅葉の葉色の渋さがよくでています。秩父・源作ワインにて≫

≪紅葉のクローズアップした画面中央部分を画素等倍まで拡大して切り出して掲載。イメージャーの高解像を十分に生かすことができるだけの解像力をもったレンズであることがわかります≫

α7Rシリーズとα9の画質を比較

≪左から、ソニー・ツァイスゾナー35mmF2.8付きα7RIII、同α7RII、同α7R、同α9は撮影を忘れました。ゴメンナサイです。≫
 いつものように英国大使館正面玄関を、α7Rシリーズ3機種とα9の画質を比較のために、同じレンズのソニー・ツァイス・ゾナー35mmF2.8を付けた状態で、絞り優先AEでF5.6、ISO感度自動設定にセットして、三脚に据えて撮影しました。撮影はα7RIII発売日の翌日となりましたが、前後の雨模様の天候から一転して、この日は晴天となりました。撮影時刻は10:20頃です。いつものことですが、ピントはスポットAFで建物中央のエンブレムに合わせました。ソニー・ツァイス・ゾナー35mmF2.8という名称で呼んだのは、α用のツァイスレンズに、ソニーが扱うのと、カールツァイスが販売するのがあるために区別のためにあえてソニー名を冠しました。各カットは、本来ならば全画面をトリミングなく子細に観察できるとさまざまなことが見えてくるのですが、サーバーの都合から合焦部の所だけの左右640ピクセルであることは、ご勘弁ください。

≪α7R:F5.6・1/800秒、ISO100、3640万画素、最初のこの機種だけ通常のCMOSです。この結果でしょうが、わずかに同じレンズであっても、きわめてわずかですが周辺光量が低下しているのす。これは、超広角になると著しく現出しますが、なによりも、かなりマゼンタ気味の発色を呈しているのです。ただ、他のシリーズ機に比べるとかなり濃度が高くなるように設定されているようですので、他機種に露出レベルを合わせると、周辺部の低下は目立たなくなると考えられます≫

≪α7R:フォーカスポイント部画素等倍拡大、同じレンズを使い、同じ絞り値で、スポットAFということなのですが、その画質はというと、画素数なりの描写を示すというのが正直な印象です。ただ、エンブレム周辺の壁面を見ると細かく文様が入ったような描写です。これは本機種7Rだけの傾向なので、撮像素子か、画像処理や圧縮回路に何かがあるのかもしてませんが、通常のプリントワークの範囲では、そのような文様がそのまま現れることはまずないでしょう≫

≪α7RII:F5.6・1/400秒、ISO100、4240万画素、この機種はフルサイズとしては初の裏面照射タイプCMOS使っています。この結果、広角レンズにおいて周辺光量の低下は少なく、高感度適性も良好です。ただはっきりしているのは、α7Rのようにマゼンタ味を帯びていなく、露出レベルもシャッター速度を見てもわかるように、少しデフォルトがプラス側に設定されているようです。この機種以降は初代7Rとは画作りが、はっきりと異なるようです。この時点から、α7シリーズは、発色状態から、ボディの機械的な部分まで、何かが大きく変わったのです≫

≪α7RII:フォーカスポイント部画素等倍拡大、壁面を見ると7Rのときのような文様は消えています≫

≪α7RIII:F5.6・1/500秒、ISO100、裏面照射タイプ4240万画素、基本的にはα7RIIと同じイメージャーだと考えますが、この画面からはわずかながら色分離がいいように見えますが、これは個体差もしくは露出レベルの微妙な違いかもしれません

≪α7RIII:フォーカスポイント部画素等倍拡大、ソニーのいう特長は、圧倒的な高解像と低ノイズ性能ということだが、同じ画素数の裏面照射タイプのイメージャーでも、画素等倍で拡大したエンブレムを見ると明らかに解像感が高いことがわかります≫

≪α9:F5.6・1/400秒、ISO100、2,420万、イメージャーがメモリー内蔵積層型であるとされますが、画面全体の発色具合等を見ると、裏面照射タイプと大きく変わるはずはなく、変わったら大きな問題なのでしょう。α7Rからα7RIIでは、色傾向が大きく変わりましたが、これは意図されたものだろうと考えますが、それ以降は変化がないように思います。したがって、イメージャーの違いは画像処理能力の向上によるコマ速度に影響するのでしょう。これはα7RIIからα7RIIIへの改良も同様と考えます。ちなみに画面左上空の黒い点は飛翔するハトです≫

≪α9:フォーカスポイント部画素等倍拡大、2,420万という画素数なりの解像特性を持っていますが、撮影レンズがさらに高解像なα7RIIIでもカバーしているので、それ以上変わる要素はないようです≫
ミラーレスフルサイズ機αシリーズの今後
 ソニーに限らずデジタルカメラは、ある時期まで画素数を増やすことによって進化というか、新規需要を掘り起こしてきました。その点において、ミラーレスフルサイズ機αシリーズの登場は2013年が最初であったわけですから、高画素志向も一段落ついたころのシリーズ展開ということになります。そこで、さまざまな技術改良がなされ、最も大きいのが連続撮影コマ速度の向上があるわけですが、それを達成するためにはイメージャーそのものを目的に合わせて変えたりしているのです。外観から見えにくいスペックの向上としては、EVFの高精細化、コントラスト検出AFに加え、位相差検出方式AFの付加、AF速度の高レスポンス化、電子シャッターによるサイレントシャッターの採用、高速撮影時ブラックアウトレス等などあげていけば切きりがありません。
 確実にいえるのは、初代α7Rよりすべての動作がクイックになったということです。さらに使って感じたことは、同じレンズのソニー・ツァイスゾナー35mmF2.8をα7R⇒α7RII⇒α7RIII・α9に装着するとレンズ交換の摺動が徐々に渋くなってきたのです。もちろんボディの剛性も高くなっているわけですから、プロの酷使にも耐えられるような改良が施されているのかもしれません。そして表をご覧になっておわかりのように、α7Rシリーズは2年ピッチで新製品が登場してるので、α7RIIIとα9の次の改良というか新モデル登場の時は、2019年、ちょうど東京オリンピックの時になるのです。最近はプロ対応サービスを始めたソニーですが、その頃はどのような地位を確保しているのでしょうか、目を離せません。

せっかくだから1ショットの4台並べました(左から、α7R、α7RII、α7RIII、α9)
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