写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ライカMとソニーEマウントの「フォクトレンダーアポランター50mmF2」ver.2

 写真仲間のMさんからコシナVMマウント(ライカMマウント)の「フォクトレンダーAPO-LANTHAR 50mmF2 Aspherical」を買ったから使ってみて欲しいと連絡がありました。私は、2020年1月にソニーEマウントの「アポランター50mmF2」をレポートしましたが、Mさんは“コシナVMマウント”と“ソニーEマウント”のアポランター50mmF2に写りの違いはないか、比較して欲しいというのです。コシナVMマウント用の「アポランター50mmF2」の発売にあたってはいつものお店から予約はどうするの?と早々に連絡がありましたが、はい間に合ってますとか返事して終わらせていました。

 それ以前には、ソニーとライカでは撮像素子の前に配置された光学フィルターの厚みが異なるので、レンズそのものもそれぞれ適切化した設計がなされているとか関係筋から流れてきていましたが、そもそも「アポランター50mmF2」が登場したときに、ファインダーをのぞいて最初に発した言葉は、『何だこれは!』という分離の良いクリアな見えに対する驚きで、その写りも大変シャープな未体験な画像だったのが強烈な印象でした。

 そんなこともあり、コシナVMマウントとソニーEマウント仕様の「アポランター50mmF2」はどちらもよく写るだろうぐらいしか思っていなかったのですが、写真仲間のMさんから頼まれれば、嫌いじゃないし興味は大なのでこの2本のレンズの違いはどれだけあるだろうかということで、早速、実写から比較してみようと考えました。まずはそれぞれのマウントに合うボディでの撮影ということで、α7R2とM9を用意しました。

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≪左:ソニーα7R2に装着したソニーEマウントのアポランター50mmF2、右:ライカM9に装着したコシナVMマウントのアポランター50mmF2≫ いずれも専用フード付き。距離は∞、絞りはF5.6にセット。アポランターのシンボルRGBマークは、Eマウント仕様は鏡胴先端に、VMマウント仕様では正面の銘板に記されています。フードはそれぞれ専用で、VMマウント用はあくまでもライカスタイルを踏襲ということです。

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≪それぞれレンズ単体見てみました。左:ソニーEマウントのアポランター50mmF2、右:コシナVMマウントのアポランター50mmF2≫  VMマウントはライカMマウントと同等です。

●まずはEタイプとVMタイプを実写で比較してみました

 快晴の日を待ってわが家の裏山トトロの森を遠景からねらってみました。ピントは画面中央の樹木の太い幹に合わせて、VMマウントとEマウントのアポランター50mmF2をそれぞれ絞りF2開放と、絞りF5.6で3カットずつ撮影しました。また、それぞれのレンズそのものを比較するためにはマウントの関係で、ソニーα7R2にマウントアダプターを介してVMマウントレンズを取り付けて行えば同じボディでの比較ができるわけです。

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≪遠景の撮影は「ライカM9+VMマウント・アポランター50mmF2」、「ソニーα7R2+VM-Eクローズフォーカスアダプター+VMマウント・アポランター50mmF2」、「ソニーα7R2+Eマウント・アポランター50mmF2」と、3種の組み合わせで行いました≫ この写真でお分かりのようにVMマウントのレンズをソニーで使うためにはマウントアダプターを装着してフランジバックとマウントを同じにする必要があるのです。

 実は、今回のレンズ比較でひそかに思っていたことは、従来はライカMマウントレンズにマウントアダプターをはかせてミラーレス機で使うようにしていたわけです。ところがフランジバックの短いソニーEマウントボディ用に適切な光学・機械設計していたものを、ライカMボディ用にするためには物理的なレンズ長を簡単に言えば短くしなければならず、短くするためには単純にカットすれば良いわけはなく、光学的に何らかの変更が生じてくるだろうと考え、そこが個人的な興味の対象であったので、Mさんの依頼を引き受けたのもその部分があったからです。

■遠距離での描写比較

 画面中央の樹木の太い部分に結びつけられた赤いリボンにピントを合わせました。無限遠ポジションの少し手前で、ヘリコイドを微妙に前後できる所です。

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VMマウント・アポランター50mmF2、ライカM9、F2・1/3000秒、ISO160、+0.3EV、AWB≫ ピントは太い幹の部分で∞の少し手前で距離計合致部分を十分に認識できました。絞り開放F2、F5.6と2種撮影しましたが、基本的にCCDで1800万画素のM9、CMOSで4240万画素のα7R2ではまったく土俵が違うので、この先の比較はα7R2のボディ1台で、Eマウント・アポランターと、VMマウント・アポランターを、絞り開放F2、F5.6で比較するのが、最も不確定要素が少ない条件で2種のアポランター50mmF2を比較できると考えました。空の色が明るいのはライカの色づくりか、CCDだからなのでしょうか。F5.6に絞ると周辺光量不足はなくなります。なおVMマウントはライカMマウントですから、無限遠位置撮影はヘリコイドの∞ポジションへの突き当てでも可能なのは言うまでもありません。f:id:ilovephoto:20210211230427j:plain
VMマウント・アポランター50mmF2+VM-Eアダプター+α7R2、F2・1/2500秒、ISO100、AWB≫ ノートリミングの全画面です。F2開放で若干の周辺光量低下は致し方ないところですが、あくまでもこれはこのボディでの結果であって、ライカM9の開放画像と比べてもわかるように、撮像素子(カメラボディ)が異なると周辺光量不足も増減することはすでに知られたことです。F5.6に絞ると周辺光量不足はなくなります。

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Eマウント・アポランター50mmF2+α7R2、F2・1/3200秒、ISO100、AWB≫ ノートリミングの全画面です。同じボディですが、F2開放で周辺光量の低下はMマウント・アポランターより少ないように見えます。この原因として考えられるのは、Eマウント・アポランターには電子接点があり絞り開放時の信号がボディに伝わってビネッティング補正が働いているか、光学系が適切化されているために少ないのか、ユーザーレベルではわかりませんが、違いがあることだけはお分かりいただけるでしょう。なおF5.6に絞ると周辺光量不足はなくなります。

 なお、EマウントアポランターはAFボディのソニーαボディに使うため、ライカマウントレンズのように突き当てで無限遠を出すということはできませんので、ヘリコイドは∞の先までわずかに可動するようになっています。よくAFボディにアダプターを付けて、昔のMFレンズで無限遠がでないということをいうことを聞きますが、でないのが正しいのです。両アポランターの∞位置の部分は上の比較写真をご覧ください。

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フォクトレンダーVMマウントアポランター50mmF2≫ 上の絞りF2開放の状態を画素等倍までクロップして掲載。ピントは中央に見える樹木に付けられた赤いリボンです。私の目にはわずかですが、VMマウントアポランターのほうが良いように感じますが、実際こんな倍率に拡大することはなく非現実的で、あくまでも目安です。

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ソニーEマウントアポランター50mmF2≫ 上と同じに、絞りF2開放の状態を画素等倍までクロップして掲載。

 さて、このF2状態でも撮影してそれぞれの違いが少しわかりました。無限遠手前の太い幹と左側の小枝の描写を見ると、VMタイプのほうがわずかに良いのです。もちろん、開放絞りF2の描写はということもありますが、晴天の下、遠景を絞りF2開放で撮ること自体かつてはナンセンスなことでしたが、デジタルの時代になって1/1000秒以上のシャッター速度での撮影が可能となりましたので、露出的にはまったく問題はありません。むしろ輝度の高い所で口径の大きいF2開放で撮影できる時代になったのです。

 さらに言及すると、絞り込みで深度の拡大は望めますが、絞り開放から高い解像が得られるのは、まさに収差を抑え込んだAPO仕様だからだといえます。なお、同じ時間帯で同じカメラで、F2でシャッター速度が違うのはデジタルならではで、わずかな光束の透過率の差が表示としてそれぞれ1/2500秒と1/3200秒に転んだと考えられるのです。

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≪F5.6の時のピントを合わせたと部分の画素等倍にクロップした時の描写特性≫ 左:VMマウント用、F5.6・1/400秒、右:Eマウント用、F5.6・1/400秒≫ ここであれっと思ったことが起きてしまいました。上の絞りF2画素等倍の画像を見てお分かりいただけると思いますが、VMマウント用のほうがわずかにシャープに写るのですが、F5.6に絞り込むと今度はEマウント用のほうが極めて微妙に良いのです。絞り込み効果がEマウントタイプには期待できますが、これはプリントや印刷では通常はありえない拡大率なので、個体差ともいえ、使用上はこの2種のレンズの間に差はないということです。

 実はその時点で1つ困ったことが起きたのです。VMタイプレンズで、絞りF2開放とF5.6では、発色がガラッと変化したのです(上のF5.6に絞った2枚発色の関係と同じ変化です)。ところが同じボディでもEタイプレンズではそのようなことが、まったく起きないのです。これには悩みました。なぜかというと、この下の“ざるチャート”の場面でもVMタイプはまったく同じように色が変化(AWBの色温度変化)したのです。つまり場所を変えて、撮影距離を変えても絞り変化による色転びはVMレンズに起きたのです。さらにEタイプは撮影距離を変えてもそのような色転びは起きないのです。それではと、今度はありったけの他社ボディ4機種(キヤノン、シグマ、ニコンパナソニック)を引っ張り出して、同じ場面でマウントアダプターを介してVMレンズと組み合わせて撮影しても色転びはまったく起きないのです。ここまでくると、とてもその原因は理解も推測もできないことになり、単にこのような現象が起きましたということしか報告できません。何となくボディに原因がありそうですが、機会あれば違うα7R2ボディか、違うα7シリーズボディでVMタイプとEタイプレンズを絞り変化させて使ってみれば、その原因をもう少し特定することができるかもしれません。

■画面周辺の画質をチェック

 第一報をアップしましたら、早速熱心な方から要望がきました。画面中央ばかり載せないで、周辺もしっかり見せて欲しいというのです。そうですかということで、ありのままを載せます。遠距離風景写真の右端の画素等倍です。

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VMアポランター+ライカM9 左:F2開放、右:F5.6、画素数が1800万画素、ピント合わせがレンジファインダーですから微妙なピントのズレはありそうですが、画素数の多い最新のライカでライブビューで拡大して合わせれば、また結果も変わるでしょう。いずれのカット左側が濃度高いのは、F2開放時の周辺光量低下によるものです。

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VMマウント・アポランター50mmF2+VM-Eアダプター+α7R2≫ 左:F2開放、右:F5.6。VMマウントレンズをアダプターの下駄をはかせて撮影したらこの通り。やはり、マウントアダプターでのフランジバック合わせでは、画面周辺では画質的に難しいのですね。中央がシャープなだけに、この描写には驚きです。

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≪Eマウント・アポランター50mmF2+α7R2≫ 左:F2開放、右:F5.6。これはすごいという感じですが、やはりEマウントに適切に設計された光学系の成果でしょうか?ちなみにライカMマウントのマウント口径・フランジバックは「43.9mm・23.8mm」であるのに対して、ソニーEマウントは「46.1mm・18mm」とされています。この口径の寸法、フランジバックを前提に適切に光学設計するとそれぞれが十分な画質ですが、マウントアダプターを使うと画面周辺部は全く別物のような画質になるというのは当たりまえなのでしょうが、改めて知らされた驚きとなります。

■近距離での描写

 次に撮影距離約90cm、近距離の解像特性を調べました。この被写体は、“ざるチャート”と呼びますが、画面中央にマイクロ写真用の解像力チャートを置き、チャート中央の部分にピントを合わせ絞り開放F2と、F5.6に絞った状態でそれぞれピントを合わせてベストの状態を探して撮影してあります。なぜ90cmかというと、ライカMマウントの最短撮影距離が70cmなので、距離リングの前後を微動できる範囲として設定しました。撮影距離レンジは、VMマウント仕様は70cm~無限遠と、Eマウント仕様に比べると狭いのです。

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VMマウント・アポランター50mmF2+VM-Eアダプター+α7R2、F2・1/1600秒、ISO100、AWB ≫  このF2開放では周辺光量の落ち込みがEマウント仕様より大きいのです。やはり、マウントアダプターを付けての撮影では本来の性能はでないのでしょうか。またVM-Eアダプターの4mmのヘリコイド操作を行えば最短撮影距離は稼げるでしょうが、描写性能はどうなるかわかりませんね。

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≪Eマウント・アポランター50mmF2+α7R2、F2・1/2000秒、ISO100、AWB ≫  撮影距離約90cm、近距離の解像特性を調べました。この場面では、絞りF2開放にかかわらず周辺光量の落ち込みは少なくなっています。これはソニーαマウント用に専用設計された成果だと考えられます。ちなみにソニーEマウント仕様の最短撮影距離は45cmです。つまり45cm~無限遠と撮影距離レンジは広いのです。

 この被写体は私の近接用テストチャートであって、マイクロ写真用解像力チャート以外はざるを含めてすべて自然のものです。人工的な塗料は使っていないため色の偏光はありません、エノコログサの穂がどれくらいシャープに示されるか、色づいた枯葉の色再現、拡大したときの葉脈のシャープさ、赤く乾燥したトマトの光沢感などを見て、レンズの性能を知ることができるのです。また、背景の敷石や砂利のボケ具合からレンズの性格を判断することができるのです。撮影時の天候はチャートに反射が入らないようにと散光状態の薄曇りで行いました。

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VMマウント・アポランター50mmF2+VM-Eアダプター+α7R2のF2開放で、ざるの部分が良く見えるようにトリミングして掲載しました≫ 50mmF2、撮影距離90cmですから、設定絞りF2ですから、許容錯乱円を0.026mmとして計算すると、前後合成で被写界深度は31.9mmとなります。F5.6の場合は89.6mmとなります。同じカットをFEマウント・アポランターでも撮影しましたが、大きく変わる部分がないので、ざるのアップはVMマウントアポランターだけの掲載となりました。

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 ≪チャート部分を画素等倍にトリミング、VMアポランター、左:F2・1/1600秒、右F5.6・250秒、AWB

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チャート部分を画素等倍にトリミング:FEアポランター、左:F2・1/2000秒、右:F5.6・1/250秒、AWB

 さらに細かな部分を見るためにVMマウント・アポランターとEマウント・アポランターのチャート中心部の画素等倍にトリミングした状態が上の2つです。それぞれ左がF2、右がF5.6ですが、どちらを見ても大きく変わらないのです。結局、この状態ではα7RⅡの4240万画素の限界を調べただけのようです。つまり両アポランターの解像力が上をいってるということなのです。そこでVMマウント・アポランターを各社アダプターを使って調べると、4500万画素のキヤノンEOS R5、4730万画素のルミックスS1Rだともう少し先まで、2400万画素のシグマfpだともう少し手前まで撮影後に読めるのです。またα7RⅡと同じ画素数ニコンZ7を比べると、ピント合わせ時はニコンZ7のほうが細かく見えピントが合わせやすく感じるのですが、これはZ7のEVFが0.5型で369万ドット、α7RⅡが0.5型で236万ドットという値に依存するようですし、写った解像としては同じようなレベルなので、結局、レンズの解像力、撮像素子の解像度とチャートの解像度との関係が見えたのがこのチャートの拡大部分というわけです。

VMマウントかEマウントか、Mさんの逡巡

 その後ただちにMさんからメールが来ました。文面によるとMTF曲線が……というようなことでした。そこでコシナのHPでMTF曲線を見ると、確かにMマウント仕様とEマウント仕様では、Eマウント仕様のほうが高周波成分40本の所が直線的にわずかに100%に近く、Mマウント仕様では少し下に位置し直線的に右側に下がっていくのがわかります。一般的に高周波成分が100%に近いほど高解像力で低周波10本/mmのMTF特性が100%に近いほどヌケが良いレンズで80%以上あれば優秀で、60%以上あれば満足できる画質が得られると言われていますが、Mさんはこのあたりを気にしていたようです。

  そこで、VMマウント・アポランターとEマウント・アポランターのMTF曲線とレンズ構成図をコシナフォクトレンダーのHPから抜き出してみました。

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VMマウント仕様のアポランター50mmF2のMTF曲線とレンズ構成図、8群10枚、コシナHPより≫ 

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ソニーEマウント仕様のアポランター50mmF2のMTF曲線とレンズ構成図、8群10枚、コシナHPより≫

 確かにMさんの言うとおりにMTFのカーブは、Eマウント仕様のアポランターのほうが極めてわずかですが100%に近く、直線性が良いのです。さて、どうしたものでしょう。Mさんは購入にあたって、そのあたりを逡巡したようです。私はMTFでレンズ性能をということはあまり考えなく、実写でどうだろうかという主義なのです。その点においては、過去にEマウント仕様のアポランター50mmF2を、今回と同じソニーα7RⅡで建築中の高層マンションを写して縦方向で1mほどにプリントしてその精緻な描写にびっくりしたのですが、Mさんはそのプリントは目にしていましたが、すでにノクトン50mmF1.5を所有していて、結局あの高解像な画像に魅力を感じたのでしょう。

 そこで改めてレンズ構成を見ると、同じ枚数ですが硝材が異なるのです。細かく仕様を比較整理してみると以下のようになりました。

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 ライカMマウント仕様のVMレンズと ソニーEマウント仕様のレンズでは基本的にカメラ形式がレンジファインダーであることと、ミラーレスであることから仕様は異なるのはわかるのですが、この表から見るとやはり1年後の発売という時間差が、大きく影響しているのだなという印象が強いのです。特に感じるのが同じ8群10枚構成でも、使用している硝材が異なるのです。この点で見ると高価な異常部分分散ガラスを3枚少なく使っても、Eマウント・アポランターと同等、もしくは極めてわずかに遠景で勝る性能を持つのは、開発・発売の時間差からくるのだろうと思うし、絞りF5.6でも円形絞りにしたことなどから、うかがい知れます。

■カメラを持ってお散歩

 Mさんから預かったレンズですが、せっかくのライカマウントですので、これを機会に“M9ボディ”に付けて少し撮り歩いてみました。撮影順に掲載しましたから、これでどこを歩いたかわかる人は「散歩の達人」か「東京ウオーカー」ですね。

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≪田安門に向かう“IDOL”トリオ≫ F4・1/4000秒、ISO160、AWB。とっさにマニュアルフォーカスでの撮影ですが、久しぶりに勘を取り戻すのに苦労しました。今回の一連の行程で何度頭と体の行動が一致できなかったかは言えません(笑)

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江戸城石垣の刻印石≫ F4・1/3000秒、ISO160、AWB。田安門をくぐるとすぐ左に「丸に十の字」の薩摩藩が献上した刻印石を見つけられます。

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≪石像≫ F2.8・1/2000秒、ISO160、AWB。2頭ついになって置かれていたので狛犬かもしれませんが、左背景石垣のボケはムラなく均質性があります。

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近衛師団司令部庁舎跡≫ F5.6・1/3000秒、ISO160、AWB。2020年までは東京国立近代美術館工芸館でしたが、昨年に美術館は金沢に移転したのでこの先はどうなるのでしょう。明治期の1910年に建てられた近衛師団司令部庁舎です。

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スマホ散歩≫ F2.8・1/4000秒、ISO160、AWB。手前の草にピントを合わせましたが、背景には大きくボケていますが、スマホを手にして歩く人の感じがわかります。

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≪切り株≫  F5.6・1/2000秒、ISO160、AWB。少しだけ絞り込んで、切り株の重厚感を出してみました。

■いろいろ試してわかったこと

 ずいぶんいろいろと撮影を繰り返しましたが、結局分かったことは2本のレンズの間に画面中央は通常使用では画質的にはほとんど差が出ないということです。Mさんは、ふだんはライカM3に黒白フィルムかカラーネガフィルムを使っているそうで、デジタルではソニーα7SⅡで撮影しているそうで、今までに十分高精彩を感じているようです。

 しかしこのあたりを実感として十分に感じるのはデジタルならではの世界だと思います。従来、通常のライカMマウントレンズがあり、各社一眼レフレンズレンズがありましたが、それをミラーレスカメラに流用するにはレンズマウントアダプターを使えばよかったわけですが、Eマウント・アポランター50mmF2に続き、VMマウント・アポランターと、今までになかった順序でアポランター50mmF2が登場したのです。実は、このようなことを考えるには、ミラーレス機のフルサイズは当初ソニーだけだったわけですが、現在では各社がフルサイズ機を市場投入していて、それぞれに同じ交換レンズを使うのには、ミラーレス専用マウントよりもアダプターを用意すればユニバーサルマウント的なライカMマウントのほうがいいのかななどと考えていたのですが、今回のテスト結果からすると、画面周辺はかなりつらくなることがわかりました。

 このほか電子接点のついたEマウント・アポランターは、撮影時にはマニュアルフォーカスであってもヘリコイドをわずかに回転させるとファインダーのピント合わせ部分が拡大表示されカメラ側の拡大操作が省かれ快適です。さらに、ボディ側の5軸手振れ補正への連係がなされ、ファインダー右下には「人上半身-山マーク」に加え撮影距離に応じて「0.4m-0.5m-0.6m-0.7m-0.8m-0.9m-1m-∞」を目盛りが示されるなど便利です。さらに撮影後には、レンズ名、最大絞り、設定絞り値がexif情報としてファイルに記録されるのもうれしいことです。

 いずれにしても、それぞれのマウントには光学性能としてベストがでるように設計され、それぞれ使い勝手にも特徴があるわけで、そこを理解したうえで使う人の好みで撮影機材システムを構築すればよいわけです。Mさん、これで満足いただけましたか。 (^^)/

 更新履歴:2021.02.14 ver.1、2021.02.15 ver.2