写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ニコンD850を使ってみました Ver. 3.1(Final)

 注目のニコン新製品「ニコンD850」が9月8日に発売されました。今回は、朝一番に販売店の開店を待ってボディを受け取り、その足で札幌に向かいました。札幌では、9月9日にIMAI Collectionで「ニコンの100歳を祝う会」が開かれるので、何としてもその場に持っていきたかったのです。ホテルにチェックイン後、まずはバッテリーをチャージし、本番の9日に備えました。とはいっても、D850で写真を撮るのが目的ではなく、単にお祝いの場へ最新カメラで花を添えたかったからなのです。
 D850は発売直前にニコンのファンミーティング開かれ詳しい説明があったようですが、今回はあえてスルーして発売2日前に“ニコンプラザ新宿”へ行って説明を受けることにしました。D850デモ機の前には女性がいたので、何が新しくなったかずばり聞いてみました。それによると、1)4,575万画素のフルサイズイメージセンサー、2)7コマ/秒の高速連写、3)グリップの握りが深くなった、4)可動式のチルト式液晶モニターが採用されているというのです。チルト式液晶は、ライブビュー(LV)で使うことが多いけど、LVでは画面を押してシャッターが切れるのかと聞くと、切れますというのです。さらにサイレントシャッターモードもあるというのです。なるほどというわけで、数カットシャッタを押したのち、カタログをもらって帰りました。

≪このアングルからだとグリップが深くなったのはお分かりいただけるでしょう。しかしなぜ、Gタイプでもなく、EタイプでもないAFニッコール35mmF2Dかということになりますが、D700、D800E、D810とD800シリーズのチェックにはいつもこのレンズを使ってきたのです。いわば僕のニコン用基準レンズなのです。それとカプラーAF方式で、どれだけ精度高くピント出しができるのかというのも大切なチェック項目です。とはいっても、基本的にはこの小型・軽量さは魅力で、ボディとのバランスもよいです≫
 購入後は、まず実写する前に試しに室内でシャッターを半押ししてみると、力強く、ジッとレンズが合焦するのが気持ちよかったです。札幌での「ニコンの100歳を祝う会」の会場では、さすが発売翌日にD850を持ち込んだのは僕だけでした。ここでは何カットか撮影しましたが、納得いく写真が得られませんでしたので、会の終わった後に、札幌郊外の藻岩山に登り、夜景とポートレイト撮影をしましたのでそのあたりをまず報告します。

≪D850+AFニッコール35mmF2D、F2.5・1/40秒、ISO 2500(AUTO)、AWB、手持ち撮影≫市内から約5km、ケーブルカーを乗り継いで登った藻岩山頂上から、札幌の夜景とモエレ公園での花火大会を写しました。実は懇親会会場で、現地写真家の方が藻岩山に花火を撮りに行くというようなことをいったように聞こえたので、撮影仲間と行ってみましたが、本当はモエレ公園だったようですが、結果として間違えてよかったです。撮影は、特に問題なくシャッターを切りましたが、1/40秒と低速でありながら拡大して見ても、ぶれていないのは好感が持てます。

≪D850+AFニッコール35mmF2D、F2.5・1/40秒、ISO 2500(AUTO)、AWB、手持ち撮影≫ケーブル頂上の駅にて、夜景を背景にポートレイト撮影。かなり低照度下であったのですが、迷いなく合焦するのは素晴らしいです。仲間の持ってきたF1.4レンズのついたD810では、行ったり来たりと迷っていました。D850の暗所測距特性は―4EVまでということですが、これは目では合わせられないような明るさの下で測距できるわけですからすごいです。このカットは、シャッターを切る瞬間に、撮影仲間のAF補助光が顔に照射されたため赤くなりましたが、照射がないときは普通に光源側は明るく撮れていますが、背景のボケがおもしろかったので赤いほうを採用しました。なお、ピントは女性の左目に合わせましたが、画素等倍まで伸ばしても感度的には破綻なく描写され、まつ毛に低照度下でも精度高くしっかりピントが合っていました。

≪チルト式液晶モニターを使ったライブビュー撮影≫液晶モニターがチルトしているところを撮影しようとしたら、モニターがONになってしまったので、背後にボールヘッドを配置して、液晶画面が見える状態で、画面全体のフォーカス状態、フォーカスポイントの拡大の状態を撮影してみました。いまさらではありますが、指で押したところにピントが合い、自動的にシャッターが切れるというのはこのような撮影では便利です。GUIもわかりやすく、サイレントシャッターモードなら静かで軽快でした。

≪D850+AFニッコール35mmF2D、F5.6・1/100秒、ISO 100(AUTO)、AWB、三脚使用。近所の北山公園。いつもの撮影場所です。ピントは画面中央に合わせていますが、レンズの解像とカメラの解像のどちらが勝っているかとなり、画素数のマックスまで、ほぼ解像しているようです≫

≪上のショットの画面中央少し左の看板を中心に画素等倍で切り出し。この場面は、今までさまざまな機種で同じに撮影しているので、必要に応じ比較してください。掲載は京都MJのサイトです。このシーンでD850を超えているのは少ないです。もちろんレンズ性能(解像力)をコミの問題ですが、実用的にどこまで解像を必要とするかは使う人の判断になります≫

≪D850+AFニッコール35mmF2D、F2.8・1/1600秒、ISO 100(AUTO)、AWB、手持ち撮影。同じ北山公園にヒガンバナが咲いていました。撮影はチルト式の液晶モニターを引き起こし、タッチシャッターで切りました。ピント合わせのポイントは一番手前の花です。サイレントモードにセットしましたが、屋外ではシャッター音があってもいいですね。ヒガンバナの花はいずれの距離でも色的に分離していて、ベタッとくっつくことなく、微妙な色再現がなされていることがわかります≫

≪D850+AFニッコール35mmF2D、F5.6・1/800秒、ISO 100(AUTO)、AWB、三脚使用。久しぶりに晴れたので、英国大使館の撮影ができました。撮影は、いつものことですが晴天の時にAM10:00〜AM10:30に済ませます。季節によって太陽の位置が若干異なりますが、気にしないで撮影してきたら面白いことが見えてきます。フォーカスポイントは、中央屋根の直下のエンブレムです。撮影はいつも絞りF5.6です。VGAの左右640ピクセルの画面から見えることは色調ですが、なかなかすっきりした発色です≫

≪上の画面のエンブレム部分を画素等倍にして掲載してみました。すでに前掲の北山公園でわかっていたことですが、解像感は十分に高いのです。この画素等倍画面を見る限り、色調はかなりD810に近似しています。D810の3,640万画素に対してD850の4,575万画素分だけ解像感は勝っています。そしてD810とD850の画素等倍の画像をよく見るとD850の方が立体感があるように感じるのです。裏面照射タイプのCMOSは描写が平板だと考えていましたが、今回は逆なのです。これは光線状態や画像処理のサジ加減にもよるのでしょうが、数枚の画像見ただけで画質評価をすることの難しさです。参考までに、裏面照射タイプではなかったD800Eでの同じ場面と、D810での同じ場面を示しますので、リンクをクリックして見てください。ここからわかることは、撮影レンズは同じで、設定絞も同じF5.6ですから、違いが判るのは色作りの違いです。これによるとD800Eだけ色にクリアさがありませんが、D810、D850はほとんど同じです。また、Dfの発色具合も後者に近似していて、ニコンの色つくりが、この辺で定まったのではないかとも考えるのです。ちなみにD800Eの撮影は、一部に天候が悪いのではという指摘が当時あり、5カット以上同じ場面を日を変えて3日にわたり撮影した中のピント精度を含めベストを掲載したのです≫
■一眼レフはミラーレスになれるけど
 ニコンの高画素機として登場したD800/D800Eが発売されたのは2012年。さまざまな問題点を指摘され2014年7月にD810へと改良され、この時期2017年の9月にD850へと進化しました。僕的な印象としては、D810で高画素機として完成され、D850ではさらに高画素化、連写コマ速度を上げ、チルト液晶ディスプレーを採用し、スマートフォンタブレットに常時接続できるスナップブリッジ搭載するなど、より進化させたスペックアップに加え、新しさを付加したのです。このうちチルト式液晶ディスプレーによるタッチAF・タッチシャッター、スナップブリッジ機能を付加したあたりは、普及タイプのAPS-C判一眼レフであるD5600の機能を吸い上げ、同様に測光はD5と同じ180KピクセルRGBセンサーの採用など、D850は、既存の上位・下位機種で技術的に実績のある機能に、さらに高画素化と高速化を進めて性能を高め、手堅いところで作り上げたカメラということがいうことができます。
 ここまでは、あくまでもスペックの比較でということですが、実際使ってみた感じでは、高画素一眼レフカメラに、使えるミラーレスカメラの機能が加わったという印象なのです。もちろん一眼レフにおけるライブビュー機能は、かなり以前から実用されていましたが、この時期D850でライブビュー機能を使って再認識したのも事実です。そして思ったことは、“一眼レフはミラーレスになれても、ミラーレスは一眼レフにはなれない”ということです。もちろんボディの大きさもあるでしょうし、交換レンズの大きさ、光学特性などもありますが、前述の普及機D5600は横幅で一部のマイクロフォーサーズ一眼よりも小さいのも事実で、これからの一眼レフカメラの在り方を示すものだとも思うわけです。