ニコンからライカ判フルサイズの一眼レフカメラである「ニコンDf」が11月28日に発売されました。その28日の午後、旅先に高校時代からの写真仲間から電話が入りました。大手量販店のKやYにニコンのDfを買いに行ったら、どこも3カ月待ちだといわれたというのです。そこで買うのはあきらめて、せめて見るだけでもと思っても、カメラが店にないということで、どうやらやり場のない気持ちを僕に電話してきたようですが、「Df」の人気は高いのです。Dfは、ニコンD4と同じ有効1,625万画素のCMOSセンサーを使った小型・軽量のボディということですが、同じフルサイズで、やはり小型・軽量を目指した、ソニーα7/α7Rとはその目指すところは違うようです。まず、ソニーα7/α7Rが2,430万画素と3,640万画素と高画素タイプであることです。これはどちらがいいかということになりますが、画素数が多ければ大伸ばしに耐えられ、画素数が少なければ1つの画素単位が大きいので、ノイズも少なく高感度なデータが得られダイナミックレンジの広い画像が得られるというわけです。この画素数の問題は使う目的というか、使う人によってそれぞれで、一概に多ければいいと決めつけれれるわけではありません。すでにニコンは、有効画素数3,630万画素のD800とD800Eを発売しているので、D4クラスの機種選択の幅が広がったということになるでしょう。もともとソニーは、マウントアダプターを介して各社の各種オールドレンズを取り付けて楽しむユーザーをも重要視していると考えるのです。一方、ニコンは既存の35mm判ニコン一眼レフユーザーををターゲットととしたところが、まずは大きな違いではではないでしょうか。これはそれぞれ両社の歴史の違いからくるものであって、どちらも持てる力で、可能性の高い方にユーザーを求めたことになります。
まずこのDfは、小型・軽量のボディであることがうたわれていますが、どうもこの時期先行発売された同じフルサイズのソニーα7/α7Rと比較すると分が悪いようです。でも、ニコンのフルサイズ機と比較するとどうだろうということになりますが、上の写真に示すようにニコンのフルサイズで小型のD800Eよりも明らかに小型であり、重量もD800Eの1,000gに対し765gと235gも軽いのです。このボディも小型に見せるため横に線を入れて、縦方向で小さく見えるよう工夫がなされており、特にペンタカバー部はフィルムカメラ時代のFMあたりをイメージするデザインです。各操作部にはロック機構が多用されていて、無用に動くことはなく安全である反面、操作には手間を必要とすることになるわけです。このあたりは、素早い操作と安全のどちらを重要視するか兼ね合いであるわけですが、ニコンらしい設計思想という印象を受けました。
今回の発売にあたっては、「Df 50mm F1.8G Special Editionキット」というのが用意されました。これは既存の50mm F1.8Gレンズのピント用ゴムリングを2段にし、往年のMF時代の50mmF1.8レンズのように深度表をシルバーリングにした限定品をセットして発売しました。そこで、たまたま手元にあったMF時代の50mmF1.8(1983年ごろ購入)をDfボディに装着し、わきに50mm F1.8Gを置いてみました。この2本をそれぞれ比較すると、MFはフィルター径52mmφで175g、AF-S_Gはフィルター径58mmφで190gで、AFとなりさらに超音波モーター内蔵で大きくはなっても、意外と重量はあまり変わらないのです。むしろ大きさからすると、手に持った感じは逆に軽く感じました。AFになり大きくなったのは致し方ないといったところでしょう。レンズ構成は非球面レンズを1枚使用した6群7枚構成ですが、レンズ前面からのぞくとレンズ部内全体が進退する方式で、レンズ押さえ環が幅広いので、何かのレンズと鏡胴を共通化させているのかもしれません。
さて、実写結果を報告しましょう。このDfでは、古いニッコールレンズのうち、Ai対応、非Ai対応のMfレンズにも対応させることができるということですので、ここではあえて35mmF2(1983年ごろ購入)のAi対応のMFレンズを使って、いつもの英国大使館正面玄関を撮影してみました。MFレンズを使うにあたり、セットアップメニュー“レンズ情報手動設定”ができます。これはボディ側で焦点距離、開放F値を9種設定することができ、設定することによりexif情報として焦点距離、絞り値を記録でき、測光と露出の精度を高くできるというのです。ただし周辺光量や歪曲などのレンズ特性の補正を行うためのデータ入力とは違うようです。
【いつもの英国大使館:ニッコール35mmF2】 絞り優先AE(F5.6・1/500秒)、ISO100、AWB。この時期の撮影は、天候にも恵まれ青空のもと素晴らしい描写となりました。撮影はなるべく精度を高くするために三脚を立てて、ライブビューでフォーカスエリアを設定し、最大限拡大してピントを合わせました。最新の35mmレンズを使えば、さらに良い結果がでたかもしれませんが、このレンズ個体そのものは、ヘリコイドの回転感覚、描写での解像感もフィルムカメラ時代には多くの人から高い評価を得ていました。久しぶりにストックボックスから引き出しての撮影でしたが、画質的には十分に満足いくものでした。右下には、建物中央上部紋章の画素等倍の画像を載せましたが、高画素3,600万画素相当のその部分とは、解像、寸法とも違うのはDfの有効1,625万画素からくるもので、写真的にA2相当への引伸ばしでも問題ないものです。
【花屋さんの店頭で:AF-Sニッコール50mmF1.8G Special Edition】 プログラムAE(F4.5・1/80秒)、ISO6400、AWB、手持ち撮影。夜景を撮ろうと新宿の駅を歩いていたら、ビルの壁面に花屋さんが店を出していました。街灯が当たっていましたが見た目にはかなり薄暗かったので、感度をISO6400に設定して写したらご覧のようにきれいに写りました。超高感度でも色鮮やかで、ザラツキ感も高感度ノイズも感じなく、文字は細かなところまですべてシャープに読めます。
【帰りの座席で:AF-Sニッコール50mmF1.8G Special Edition】 プログラムAE(F5.6・1/80秒)、ISO6400、AWB、手持ち撮影。帰りの座席で何気なく撮影した最短撮影距離45cmでの1カットです。左は画面全体、右はその部分拡大です。AF-S50mmF1.8Gのヌケのよさとマクロレンズのようなシャープさにはびっくり。さすが単焦点レンズだと感心しました。
【わが町、いつもの風景:AF-Sニッコール50mmF1.8G Special Edition】 絞り優先AE(F4.5・1/640秒)、ISO100、AWB、手持ち撮影。いつもの僕の好きなレトロな町角です。わずか2週間前に手前のニンジンの葉は青々としていましたが、あっという間に冬のモードです。発色は全体的に黄色みを帯びたニコンカラーといった感じで、同じ場所でいつも撮影しているとさまざまなことがわかってきます。
駆け足で、一気にペンタックスK3、ソニーα7R、ニコンDfとレポートしました。最近のカメラは、少なくともこのレベルでの使用感は、どちらがいいかということよりも、どちらが好きかということです。たとえば、ソニーα7Rのシャッターを切った音は、カシャン・カシャンと2度シャッター動作音がするのですが、ペンタックスK3とニコンDfは、1回カシャンとするのです。これがミラーレスと一眼レフの原理的な違いからくるのでしょうが、このあたりを問題にする人もいれば、まったく気にならない人もいるわけです。いずれにしても、フルサイズで小型・軽量をめざし、アナログ感覚のダイヤルで操作できるソニーとニコン。このあたりに次の時代のカメラが見えてきた気がするのです。いそがしくも楽しい1カ月間でした。 !(^^)!