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写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

It's a Sony展に寄せて(その2)  ソニー最古のレンズ発見

 去る11月14日付でアップした「It's a Sony展に寄せて」の記事中で紹介したオートスライドに付いた〈TOTSUKO SONYLIT f=5in.〉レンズに関して、その後新しいことがわかりましたので追加報告します。
 銀座ソニービルで行われているSony展を初日に取材したデジカメWatch鈴木誠さんによれば、展示されているオートスライドは1952年製で、レンズはTOTSUKOと記せられていなく〈SONI-LIT f=125mm〉と表記されているというのです。つまり〈TOTSUKO SONYLIT f=5in.〉より3年前に発売されたオートスライドのレンズなのです。
 たしかにそのようで、まずレンズ名が‘SONI-LIT’であって、‘SONYLIT’ではないのです。これはソニーの社史にも記されていますが、SONYとなったのは1955年です。その、SONYでなくSONIと刻印されているのが注目されるところで、‘ソニー’と音引きで伸ばさずに、‘ソニ’と発音していたことがSony展の展示からわかりました。さらにLITは、リットと発音するのでしょうが、推測するにドイツのレンズにエナリット(ENNALYT)、ズマリット(SUMMARIT)というような名称のが当時あったので、レンズ名称の接尾語として使われたのではないかと考えるわけです。そしてセンチ表記とインチ表記、一般的にセンチは日本国内とヨーロッパ向け、インチはアメリカ向け表記というのがカメラレンズでは多いのです。

ソニー最初の磁気録音テープ。SONYでなくSONIだった。It's a Sony展より≫
 とか話していたら元カメラレビュー編集長の萩谷剛さんがさらに〈SONI-LIT f=150mm〉を持ち込んできたのです。こちらはたぶんケースに入っていることから、交換用レンズだろうと考えました。このケース、64年も前に製造されているのにまったく風化していないのです。1970年代に製造された各社ケースがボロボロなのに立派なものです。さらにこのレンズはどこで製造されたのだろうかと萩谷さんと話していたら、1906年創業で、戦前から映写レンズを製造していて、映写レンズシェアでは現在も70%を誇る杉藤光学の杉田社長によると、うちじゃないの?というのです。64年も前のことですから今はわからないでしょうが、古いことを調べるのは楽しいですね。いずれにしても、現在では多数の撮影レンズを製造しているソニーレンズの源流ともなる‘SONI-LIT’‘SONYLIT’レンズの発掘は意義あるものだと思うのです。

≪SONI-LIT f=150mmレンズ≫
※「その1」もご覧ください。