写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

It's a Sony展に寄せて(その1)

 ソニーは、ソニービル建替前のカウントダウンイベントとして 「It's a Sony展」〜「銀座ソニーパーク」オープンに向け、歴代商品とともにソニービルの50年を振り返る〜を開催されてます。会期は、2016年11月12日(土)から2017年3月31日(金)までですが、全138日間にわたって展開されます。会期は前半と後半の2部に分かれ、前半は2016年11月12日(土)から2017年2月12日(日)まで、「歴史」をテーマに、日本初のトランジスタラジオ『TR-55』や初代ウォークマン『TPS-L2』、エンターテインメントロボット「AIBO」など、ソニーが世界に驚きをもたらしてきた商品の数々を、当時の広告などとともに展示。またアンディ・ウォーホルによる版画「SONY-WALKMAN」や、各界の著名人など10名の思い出のソニー商品をエピソードとともに紹介する「My Favorite Sony」コーナーも設けられ、展示商品は約730点にのぼるというのです。

 ところで右上に示す「SONYLIT」というレンズを知っていましたか? 少し前に、元カメラレビュー編集長の萩谷剛さんが、持ち込んで来たのですが、お互いに、たぶんこれは映写用のレンズで、銘盤からしソニーとしてきわめて初期のレンズだろうと話していたのですが、ソニー展が開かれるということで、このレンズの由来をソニー歴史資料館を通して調べてもらいました。
 まず「TOTSUKO」、これはソニーの前身である東京通信工業は1946年の創業で、1955年にSONYマークを使用開始し、1958年にSONY株式会社となったのです。そしてこのレンズは、1955年に東京通信工業から発売されたテープレコーダーと組み合わせて、音とスライドの映像を同期させる発声自動幻燈装置「オートスライドAS-2」の5インチレンズだと判明したのです。1955年というとSONYマークを使いだした最初の年のレンズであることがわかりました。オートスライドの仕組みは、磁気テープの裏に貼り付けた金属箔が電極を通過し、スライドがきり替わるようになっているのです。当時オートスライドの価格は49,000円で、視聴覚教育用、宣伝活動用として、全国の教育機関や企業に広く普及したというのです。なるほどです。そこで今では数多くの撮影用レンズとカメラを製造販売するソニーに敬意を表して、このソニーリットレンズを「α7R」に取り付けて撮影まで楽しもうというわけです。

 このレンズは、もともと幻燈器用のレンズですから撮影に使っても、性能は多くを望めません。それでも、α7Rへの装着は簡単なので遊び半分でやってみました。用意したのは、L39中間リング、L39⇒M42マウント変換アダプター、M42ヘリコイド中間リング×2、M42ソニーEマウント変換アダプター、電工用ビニールテープ。これだけあれば十分で、特別な加工も必要ありません。ヘリコイド中間リングは2個としましたが、たまたま僕の手元には2つあったから使っただけで、中間リングで見合う長さが得られればそれでいいのです。見合う長さとは、5インチの焦点距離ですから、ミリ換算だと127mmとなり、撮像面からレンズ先端まで130mmぐらいになるようにすればいいのです。組み込みはL39の先端部にソニーリットレンズを当てて、ビニールテープでグルグル巻きにするだけです。接着剤を使ってもいいですが、簡単に復元可能な方が気軽でいいです。そして絞り、ソニーリットレンズは、プロジェクションレンズですので、絞りはありません。つまり撮影は絞り開放だけで行うのです。撮影には開放絞り値はわからなくても問題ありませんが、それでも開放絞り値は、「焦点距離÷レンズの口径」(127÷38=約F3.3)で求められます。
 早速、撮影してみた結果をお見せしましょう。ただし、このレンズ内側の1面が薄っすらと白く濁っています。撮影してそのままだと、霞がかかったような画像となります。クラシックレンズではこのような描写を味だと思う方もいますが、実はデジタルだと一発で消えるのです。フィルムカメラの時のカブリのようなものですが、レタッチソフトのレベル補正をかけるとみごとにきれいになります。とはいっても解像力はレンズ固有の性能ですから、レタッチソフトでは上げることはできません。まずは結果をご覧ください。

《ツァイスイコン。今年はソニーカールツァイスのレンズを使って25年だというので、それを記念して、Zeiss Optonの文字にピントを合わせました。これだといまひとつ面白くないですが、絞れないのでこのレベルですが、こういうのにしっかりと拡大してピント合わせできるのは、ミラーレスならではです。絞り優先AE、1/200秒、ISO100、AWB》

《1枚だけの紅葉。オリジナルは眠い画像でしたが、レベル補正で見るも鮮やかな画像となりました。絞り優先AE、1/800秒、ISO100、AWB》

《ピューターの一輪挿しにガラスの花を入れ、背景に丸いボケをたくさん入れてみました。丸ボケは背景のアウトフォーカス部に丸い物を置けばよく、この場合は梱包用の大型エアーキャップを置きました。絞り優先AE、1/250秒、ISO100、AWB》