写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ソニーα7R Mark IIを使ってみました

  ソニーから35mm判フルサイズ高画素タイプのミラーレス一眼として「ソニーα7R Mark II」が8月7日に発売されました。いままでのα7R(右写真の左側)は3,600万画素で、これも十分に高画素でしたが、「α7R Mark II」(右写真の右側)では4,240万画素とさらに画素数を増やしたのです。しかも、撮像素子は従来のコンパクトカメラに使われてきた、高感度に強い裏面照射タイプを採用しています。ここではα7R Mark IIが、どれだけ高画素であり、高感度に強いか、5軸の手ブレ補正機構の効果を含め、簡単に使用した結果を報告しましょう。
 ■高画素で高感度であることのわけ
 α7R Mark IIのイメージャーは、有効4,240万画素と高画素であり、裏面照射タイプのCMOSであるために、高感度が得られやすいという特徴があります。裏面照射タイプの原理は、ソニーのHPから拝借したイラストを以下に掲載しましたが、従来タイプ撮像素子の受光部は、図の左側、裏面照射タイプは右側のですが、受光の効率が良いことはこれでおわかりいただけるでしょう。
 この裏面照射タイプの撮像素子がどれだけ高感度に強いか試してみました。蛍光灯照明の街灯下でフラワーポットの中に咲く花をα7Rとα7R Mark IIで比較撮影しました。撮影レンズはゾナーT*FE35mmF2.8で、どちらも同じものを使い、三脚に載せてシャッターを切りました。撮影は、プログラムAEにセットして、AFでピントを合わせ、各設定は基本のままで、感度設定は拡張を含めて50⇒100⇒200⇒400⇒800⇒1600⇒3200⇒6400⇒12800⇒25600⇒(51200)⇒(102400)と倍々に変化させました(注:カッコ内はα7R Mark IIで増えた感度範囲です)。実際は、もっと細かく感度数値は設定されていますが、視覚的には倍々に変化させたほうがわかりやすいので、細かいセットは省略しました。

<撮影した全画面をお見せします。この画像はα7Rで、感度セットは1600、撮影環境はプログラムAE(F2.8・1/3秒)の照度です>

<この画像はα7Rで、感度1600にした画面下中央部分右の花の画素等倍部分拡大です>

<この画像はα7RMark IIで、感度1600にした画面の画素等倍部分拡大です>

<この画像はα7Rで、感度25600にした画面の画素等倍部分拡大です>

<この画像はα7R Mark IIで、感度25600にした画面の画素等倍部分拡大です>

<この画像はα7R Mark IIで、感度124000にした画面の画素等倍部分拡大です>
 これら一連の写真からわかることは、α7Rの画素数が7360×4912なので画素ピッチが4.8μm、α7R Mark IIの画素数は7952×5304なので画素ピッチは4.5μmと細かいのですが、明らかにα7R Mark IIの裏面照射タイプのほうが低輝度に強いことがわかります。実用的にどうかということになりますが、その画像を許容できるかできないかは、拡大率にもよりますが、何よりも個人の判断基準によるわけです。さらに最も異なるのは、撮影場所のもともとの明るさにも画質は大きく依存することです。

<低輝度と5軸手ブレ補正の効果:レンズはVario-Tessar T*FE16-35mm F4の焦点距離16mmポジション、プログラムAE(F5.6・1/5秒)、ISO6400でした。5軸の手ブレ補正機構は、最高4.5段分の補正効果を実現ということですので、この場合はシャッター速度が1/5秒なので、少な目にみて4段分効果があったとすると、実用上はシャッター速度1/80秒で切ったのと同じ効果です>
 ■ライカもびっくりライカマウント広角レンズの適応性向上
 実は、α7R Mark IIで最もビックリして評価できるのはこの部分です。ソニーα7の魅力のひとつにマウントアダプターを使えば、各社の交換レンズが使えることはおわかりだろう思うのですが、このなかでもフィルム時代のライカマウント広角レンズは、35mmより焦点距離が短いと、フルサイズで使うと周辺光量の極端な落ち込み、マゼンタ色のカブリなどがなどの現象が避けがたいものとして一部に存在していました。ところが、ソニーα7R、ライカMで発生していた上記問題点が、α7R Mark IIを使うと、一部レンズではまったくといってよいほどに発生しないのです。たとえば、コシナフォクトレンダースーパーワイドヘリアー15mmF4.5の旧タイプレンズはまさにその通りであって、コシナはそのために新型のフォクトレンダースーパーワイドヘリアー15mmF4.5 III(京都MJ第二十九回)をだしたわけですが、新型α7R Mark IIの前にあっては新型レンズも解像力を除けば、従来品で十分となってしまうのです。これには、ライカマウントレンズユーザーだけでなくコシナもびっくりだろうと思うのです。でも本当にビックリしてほしいのは、ライカカメラ社の技術陣です。過去に、M8、M9、M(Typ240)と発売してきたわけですが、このレンズ以外の純正レンズでも上記のような問題があったのです。ところが、同じミラーレス機(異論はあるかも知れませんが)でライカ判フルサイズでさらに高画素のα7R Mark IIが解決してしまったのですから、ここはぜひ見習って欲しいと考えるのは私だけでしょうか?

フォクトレンダースーパーワイドヘリアー15mmF4.5 、左:α7Rボディ、右:α7R Mark IIボディ、撮影時期は異なりますが、どちらも同じレンズで、絞りF5.6、快晴のほぼ同時刻に撮影しています。画素数が多いα7R Mark IIの画像は同じピクセル数にすると小さくなります>
 そこで、ソニーα7シリーズとライカMの撮像素子に関係した仕様を以下にまとめてみました。これから、わかることは、α7Rよりα7R Mark IIのほうが画素ピッチが小さいのに、周辺光量の落ち込みと偏色はないのです。そこでシリーズ全体はどうなのだろうと、ソニーショールームに自分のスーパーワイドヘリアー15mmF4.5を持ち込み、簡単な撮影をさせてもらうと、一番偏色が大きいのがα7Rで、次いでα7 IIが軽度ではありますが、やはり偏色はありました。そして、α7Sとα7R Mark IIは周辺光量の落ち込みと偏色は認められないのです。それぞれが、開口数が大きいのがその理由だと思われますが、今後は長い目で見ると2,400万画素で裏面照射型撮像素子のα7 Mark III(勝手な名称)がでてくればこのような問題はたちどころに解決されるわけです。

 ■いつもの英国大使館を撮影すると
 それでは、恒例ですので、α7R Mark IIの実力を知るためにいつものように英国大使館の正面玄関を撮影してみました。撮影条件は毎回同じで、三脚にカメラを固定して、ツァイス・ゾナーT*FE35mmF2.8レンズを使い、絞りF5.6に設定して、建物中央上部のエンブレムに合わせてあります。結果を以下にに示しましたが、左右640ピクセルの画像では画質を評価するのは難しいのです。

<英国大使館正面玄関:晴天をねらって、いつもの英国大使館正面玄関をいつもの時間にねらいました。絞り優先AE(5.6・1/640秒)、ISO100、AWB、Jpeg.ExtraFine(5424×3616)、AF、三脚使用、Sonnar T*FE35mmF2.8。でも、左右640ピクセルでは画質はわかりませんね>
 そこで今回は、モニター上の判断だけではなく、実際、α7Rとα7R Mark IIで撮影した、この英国大使館正面玄関のカットを大伸ばしをして比較してみました。α7R(7360×4912ピクセル)とα7R Mark II(7952×5303ピクセル)の画質比較して見るために、それぞれのデータからB1サイズ(1030×728mm)相当にプリントしました。そこで、子細に見るとその画素数の差を見つけることはできますが、ここまで大きく伸ばしても、実はざっと見ただけではその差はわかりにくいのです。これは、もともとα7Rが3,640万画素と高画素なので、α7R Mark II で4,240万画素にアップされても現物の画像ではなかなか画質に効いてこないのです。そこでさらに横幅1.9m相当へ部分的にさらに拡大して、2機種の画像を比較してみるとその差はもう少し明確になってきます。特に建物の屋根の斜めの線は、α7R Mark IIのほうが画素が多いからでしょうが、わずかながらスムーズなつながりを見せています。今回、比較のためのB1相当プリント(右写真下)の絵柄部分の横幅は実寸で1,070mmです。これをα7R Mark IIの7952ピクセルで割るとプリント解像度は188ppi、α7Rは174ppi。この差ではとても画質差はわからないだろうからと、さらに横幅1,900mm相当に拡大プリント(右写真上)したのは、α7R Mark IIが106ppi、α7Rだと98ppiとなります。実際は、プリンターの出力解像度を350ppiに設定して、高画質タイプでそれぞれ出力していますので、現実的には両機種の画素数差をプリント結果に見つけるのはかなり難しいということは、おわかりいただけたと思います。表にはもう少しわかりやすいようにと、家庭用のプリンターでプリントできるA2判(420×594mm)を想定してプリント解像度を算出してみました。算出にあたっては、4辺にそれぞれ10mmずつの余白をとるように計算してあります。一般的にインクジェットプリンターでは絵柄にもよりますが、100ppiを超えれば写真的につながりがあるプリントが得られますが、これでおわかりいただけることは、最も画素数の少ないα7Sでも、A2判ではこの数値をクリアしているのです。つまりα7Rがもともと3,640万画素と高画素なので、α7R Mark II で4,240万画素にアップされても現物の拡大プリントではなかなか画質の違いが見えてこないということです。

<神秘的なお堀:プログラムAE(F8・1/250秒)、ISO100、AWB、Jpeg.ExtraFine(5424×3616)、手持ち撮影、Vario-Tessar T*FE16-35mm F4:焦点距離16mm。やはり、左右640ピクセルでは画質はわかりませんね>
 以上で、ソニーα7R Mark IIを使ってみたダイジェスト版レポートを掲載しました。より細かく、5軸の手ブレ補正機構、シャッターなどに関連しても言及し、多くの実写作例を掲載したフルレポートが京都MJのサーバーにアップされていますのでぜひご覧ください。