「ライカM11」の記事は、京都MJのサーバーに移行して、作例写真を画素等倍にして見えるようにしています。
http://www.mediajoy.com/mjc/ichikawa/ichikawa_part52_1.html
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2022年1月14日に発表されたライカM11は、6000万画素と高画素機で、価格は118万8千円。1月21日に発売されました。デジタルのレンジファインダーライカは、2006年発売の①ライカM8(CCD、APS-H、1030万画素)からで、②M9(CCD、フルサイズ、1850万画素)、③M(Typ240、CMOS、フルサイズ、2400万画素)、④M10(CMOS、フルサイズ、2400万画素)、④'M10-R(CMOS、フルサイズ、4000万画素)、⑤M11(CMOS、フルサイズ、6000万画素)で5代目となり、フルサイズ化、CMOS化、高画素化などとスペックアップさせてきましたが、M11ではどのような変化を見せたのでしょう。M11の特徴は、64GBのメモリーを内蔵、ブラックボディはトップカバーをアルミニュームとしたことにより、M10より20%軽く、フィルムカメラのM6ぐらいの重量であるなどがあげられています。ライカカメラ社自身がミラーレス機を発売しているなかで、レンジファインダー式のカメラとして、最新のミラーレス機とどのように折り合いをつけたのかなど、大変興味がわく部分です。そんな視点をもって、ライカM11をレポートしてみました。
≪外箱と内部梱包材≫ 外箱はかつてのような引き出しのついた箱から普通になりました。中の緩衝梱包材は黒いウレタンはスポンジが使われていますが、これは現在の日本のカメラが段ボールなどで構成しているのに対して最も異なる部分です。右上の白い紙にはiPhoneとiPadの製品に関しての動作の注意書きです。
≪取扱説明書≫ 中央:箱に同梱されていたのはクイックスタートガイドだけでした。左:ダウンロードして自分で出力したPDF版、右:請求したら航空便で送ってきた取扱説明書。発売までに間に合わなかったのでしょうか?。ドイツからきたのが見やすくわかりやすかったです。解説文は日本語ですが、挿絵の部分はすべて英語です。
≪ライカM11と6ビットコード付きの35mm、50mm交換レンズ≫ 今回ここで使うレンズは、ライカM11の機能を十分に引き出すためにクラシックや他社製品でなく、あえて6ビットコード付きのズマリット50mmF2.4とズマリット35mmF2.5を用意しました。もちろんクラシックのお気に入りや、サードパーティー製のレンズも使ってみます。
■ライカM11の各部
≪操作する感じでボディを斜め上から見ると≫ 左から、①ISO感度ダイヤル(ISO64・200・400・800・1600・3200・6400とマニュアルMでISO64~50000、オートAのポジションが刻まれています。写真はオート(A)にセット。設定はダイヤルを持ち上げて行えます、②ホットシュー右脇はシャッター速度ダイヤルで、絞り優先オートの(A)ポジションにセットしてあります。シンクロ同調は1/180秒。その右は③電源スイッチとシャッターボタン(写真はOFFの状態)。右上④はファンクションボタン(初期設定では押し込むことによりライブビューの時に拡大表示される)、右肩⑤サムホイール(再生画面の表示を操作できます)、ボケていますが、背面右⑥センターボタンとセレクターボタン
≪バッテリーと記録メディアのセット≫ 底蓋は、フィルムカメラ時代からの取り外し式ではなくなり、左写真の白いレバーを回転させるとバッテリーがポンと飛び出しますが、このままでは取り出せないのです。もう1段軽く押すと取り外しできるセーフティー機構となっていますが、1度わかれば簡単ですが、知らないとからくり箱のようで苦戦します。右写真はバッテリーを取り外した状態ですが、バッテリーの頭部がボディ底面の構成パーツになっているのは新しい発想です。この部分にマークシールでも貼れば複数のバッテリーの使い分けも便利かもしれません。SDカードは、バッテリーを取り外した状態での押し込みで出し入れできます。なお、M11には64Gの内蔵メモリーが搭載されていて、SDカードと内蔵メモリーを設定により、DNGとJPEGを分けて保存したり、DNGとJPEGを内蔵メモリー優先保存に、SDカード優先保存、DNGとJPEGをSDと内蔵メモリーにバックアップなどと好みに応じて選択保存できるように設定できます。今回の撮影では、JPEGですべて保存をSDカードに行いました。
≪バッテリーの充電≫ 左は、純正の電源変圧器。入力:AC100~240V、出力:5Vと各社のカメラ用充電器、スマホ用充電器と大きく変わることはない規格で、「USBタイプA⇒タイプCコード」で専用のバッテリー充電器(バッテリースタンド)にセットして充電を行います。この純正の充電器を介した状態で、タイプC側コネクターをボディに直接つないでも充電は行えます。右の写真は、試しにサードパーティー「GREEN HOUSE」の携帯バッテリーと100円ショップで買った“タイプA⇒タイプC”コードを介してボディ内バッテリーへ充電してみましたが問題なく行えました。したがって市販のスマホ用充電器や車からの電源からもチャージはできるわけです。必要以上に長く、太いコードより、短い“タイプA⇒タイプC”コードの方が取り回しはいいです。なお、右の写真でグリーンに点滅してる部分は「ボトムランプ」と呼ばれ、充電中やメモリーアクセス中に作動します。
≪メニュー画面≫ ボディ背面左下の“MENU”ボタンを押してみました。見れば大体わかる感じですが、これにタッチパネル、セレクターボタン、センターボタン、サムホイールなどを操作して設定します。左の“LV”に打ち消し線が入っていますが、ライブビューを使わないモードにセットしています。その右“横長の□”は1コマ撮りですが、3コマ/秒の低速連写・4.5コマ/秒の高速連写を選べます。上半身マークはユーザープロファイル、“24/50”は50mmF2.4レンズが付いていることを表示してます。6ビットコード付きでないレンズを装着した場合には、“Uncoaded”とこの部分に表示されます。各機能は、マニュアルセットもできます。下列左はJPGをセット、その右はJPG+DGN、さらにその右はL・M・Sとファイルサイズを選択できます。その右はメモリーのフォーマット、一番右はメインメニューのリストです。この背面液晶は、指先のタッチによりスクロール、拡大・縮小などもできます。
随分と前置きが長くなってしまいました。本当はまだまだ書かなくてはいけないのですが、以下さまざまな条件で撮影していくなかで各種技術を紹介していくことにします。
■クラシックから最新まで、各種交換レンズを使ってみました
≪今回の撮影に使ったレンズ≫ 上 左から、ズミクロン35mmF2第世代(お気に入りだから)、ズマリット35mmF2.5(6ビットコード付きだから)、ズマリット50mmF2.4(6ビットコード付きだから)、フォクトレンダー・ノクトン50mmF1(最新2022年1月発売で大口径だから)、下左から、スーパーアンギュロン21mmF4(撮影可能かを見るために)、キヤノン25mmF3.5(周辺光量の減少具合を見るために)、ヘクトール135mmF4.5(距離計連動の限界焦点距離の感じをつかむため)。ここに用意したレンズは、ライカM11の特徴を見るために用意したものであり、これが所有のライカマウントレンズのすべてではありません。(^_-)-☆
■いつもの英国大使館の正面玄関を撮影
≪ズマリットM35mmF2.5≫ F5.6・1/400秒、ISO-AUTO 64、AWB。ピント合わせはライブビューと拡大で行いました。画素等倍まで拡大した画像は載せませんが、わずかにほかのレンズより解像度が低い感じがしますが、これはピント合わせが甘かったのかもしれません。ただズマリットM35mmF2.5の描写は柔らかな描写とボケ味が特長なので、そのあたりとの兼ね合いであり、ふだん使っている限りはまったく不足は感じませんし、むしろ好みの描写特性です。現行品にはこのほかに、ズミクロンM35mmF2 ASPH.、APOズミクロン35mmF2 ASPH.もあるので、価格に合わせて描写の異なるのも納得いきます。
いままでライカのレンズの設定絞り値はメモしておかなくてはなりませんでしたが、6ビットコード付きのレンズの場合には「算出された大まかな絞り値をExifファイルに記録する」ということでしたので、Exifデータを読むとF5.6とでてきました。この設定絞りのF値は、撮影データを何で展開するかによって異なり、Exifデータを読めてもF値を表示できないソフトもあるので注意が必要です。ちなみにズマリット50mmF2.4で同じ場面を同じ絞り設定で撮影してみましたがF5.6とExifデータは記録されました。手元にあったM9では設定より半段ほど違う値がでましたが、撮影条件の違いか、ボディの違いによるのかは判りませんが、「算出された大まかな絞り値をExifファイルに記録する」ということなので理解しました。この設定絞り数値の表示はないよりはあった方が絶対いいわけで、私のように絞り値変化の描写を楽しむ者にとっては便利です。“ライカというと使用レンズはオールドレンズ”という思い入れが強く、6ビットコード付きレンズは焦点距離のExifへの書き込み、広角では周辺光量の補正というレベルの認識でありましたが、反省です。
■M11のCMOSセンサー
ライカM11の特徴に撮像素子であるCMOSが基準感度ISO64であることがあげられています。ライカの場合には大口径レンズを開放絞りで使うことも多く、ISO感度が低く設定できることは、最高シャッター速度にもよりますが高輝度撮影環境下でも絞り開放での撮影が可能となります。また、RAWデータであるDNGの解像度が、60Mピクセル、36Mピクセル、18Mピクセルと選択できるのにどの解像度でもすべてのピクセルを使うトリプルレゾリューションテクノロジーという技術を使い、高いディテールの再現と幅広い感度を実現したというのです。
≪トリプルレゾリューションテクノロジーとは≫ 左はライカカメラ社のカタログからの転載ですが、60Mピクセル(9504x6320)、36Mピクセル(7392x4896)、18Mピクセル(5248x3472)それぞれが、単純に画素が間引かれるのでなく、複数画素を組み合わせを変えて低解像度としているので、1ピクセル当たりの面積が広くなるので階調再現が良くなり高感度が可能になるというのです。右の写真は、ライカMマウントの高解像度レンズをF2.8にして60Mピクセルと18Mピクセルで撮影した画面中央付近の描写を画素等倍近くに拡大したときの描写ですが、この撮影ではその差を見出すことはできませんでした。その差が著しくでるようだと逆に問題なのかもしれません。なお、撮像素子の前面には極薄のガラスを2層に重ねたUV/IRカットフィルターが配置されていて、薄いことにより急な角度で入射する光線も効果的に取り込むことができるとされています。
■M11は撮像面測光
ライカがデジタルになって歴史的な一部広角レンズではTTL測光ができなく、私の場合にはスーパーアンギュロン21mmF4が使えなく、すっかりその存在を忘れていましたが、M11ではどうだろうかということが一部で盛り上がっていましたが、レンズ後部やガードがシャッター幕に物理的に接触するようなことがなければ、原理的に考えるとM11は撮像面測光なので問題なく撮影できるだろうと考え試してみました。
≪M11とSUPER-ANGULON 21mmF4≫ F5.6・1/320秒、ISO-AUTO 80。巻頭の英国大使館の撮影を行ったときにスーパー・アンギュロン21mmF4でも撮影してみました。ご覧のとおり写ります。周辺光量の低下は裏面照射型CMOSセンサーなのでまずまずですが、これが一時代前の同じフルサイズのM9では測光センサーをレンズ本体が邪魔するのでまったく使えませんでした。この撮影データのExifを読んでみると、焦点距離は0mm、開放絞りはF4、設定絞りはF5.6とでました。6bitコードのないレンズですが、偶然でしょうか?実写でもう少し追いかけてみる必要がありそうです。
≪M11とM9の測光機構≫ 左:撮像面測光のM11には暗箱内部にはセンサーはないのです。右:M9のシャッター幕面は上下中央は白色に近い薄いグレーで、上下は18%グレーに塗装されています。この部分を暗箱下部から測光するので中央部重点測光となると考えられます。測光センサーはメインの中央以外に小さいのが2つ配置されていますが、それぞれの役割は不明です。右下のインサート画面は、別の場所でM9にスーパー・アンギュロン21mmF4で撮影した画像ですが、まったく使えないのがわかります。
■さまざまな場面で撮影してみました
≪ズマリットM35mmF2.5:「目」≫ F4・1/160秒、ISO-AUTO250、AWB。なかなか都心には出にくいですが、用事のついでに撮影しました。銀座和光のウインドウディスプレイ。2022年はトラ年ですが、トラの目が時々動くのが愛嬌です。6000万画素と高画素ですから拡大するとトラの毛のふさふさなところ、磁器のティーカップなどの絵柄もしっかりと描写されています。(銀座にて)
≪ズマリットM35mmF2.5:表具店の店先≫ F5.6・1/350秒、ISO-AUTO64、AWB。看板の白い文字に影響を受けてでしょうが、コントラストの高い画像として仕上がっています。プリント時の拡大倍率にもよりますが、濃度域の広いしっかりとした画像に仕上がっています。(川越にて)
≪ズマリットM35mmF2.5:トルコ人の地鎮祭≫ F5.6・1/180秒、ISO-AUTO64、AWB。昭和レトロな洋館長屋のような川越の建物ですが、ここ数年で街全体がさらなる観光地化に向けてリニューアルされています。しかしトルコの旗で囲われた地鎮祭も、東京近郊の観光地川越ならではの光景でしょう。(川越にて)
≪ズマリットM35mmF2.5:モグラの巣穴≫ F8・1/225秒、ISO-AUTO64、AWB。冬枯れした草木を見ながら川べりを歩き、増水で枯れ草の絡んだ木など数カット撮りましたが、何となく寂しい感じが多く、どうにか納得できたのがモグラの巣穴でした。“春よ来い”といった気分です。(東村山にて)
≪ズマリットM50mmF2.4:ミツマタの花のつぼみ≫ F4・1/640秒、ISO-AUTO64、AWB。VGA画像ではわかりにくいですが、中心の花のつぼみにはしっかりピントがきていて細かい産毛まで分解しています。ミツマタは和紙の原料となりますが、花は黄色く可憐です。
≪ズマリットM50mmF2.4:ひな人形≫ F5.6・1/3秒、ISO400、AWB。ご近所を歩いても冬枯ればかりです。少し歩いた先にキャベツ畑がありましたので、パチリしました。ここで不思議なことを気づきました。撮影後、PCでデータを整理していると、泥の粒子のような部分を徐々に拡大していくと、他社とは異なり早く溶けたようなヌメットした描写になるのです。当初は、撮影レンズの解像力が低いからなどとも考えましたが、どうしても不思議なので、同じレンズを使って、同じ6000万画素数のソニーα7RⅣで同じ場所にピントを合わせて撮影して確認するとライカM11はα7RⅣより早く溶けたようなクリーミーな描写になるのです。冬枯れの腐ったキャベツの葉っぱではどうも画になりにくいので、改めて別な場面でとひな人形をチャートに撮影してみました。
左:ライカM11(F5.6・1/3秒、ISO400、AWB)、右:ソニーα7RⅣ(F5.6・1/3秒、ISO400、AWB)です。条件を同じにするために絞り値、ISO感度を400にそろえました。どちらもJPEGのLサイズですから、画素数的には、M11が9504×6320ピクセル、α7RⅣは9504×6336ピクセルで、ほとんど同等なわけです。色再現の特性はライカが見た目より鮮やかに、ソニーはオリジナルに近く渋めです。同じ拡大率でM11がメルティング状態になるのか拡大率を徐々に変えてみたのが上の比較です。拡大率はPhotoshopで66.7%です。いろいろ素人なりにその違いを考えましたが、画像処理に対するそれぞれの社の違いかと思われますが、英国大使館のエンブレムの拡大描写が何となくあまくみえたのも関係ありそうです。いずれにしても通常の作品制作プリントでは発色具合は別にして、同じ6000万画素のライカもソニーも差はでないと考えます。
■ビゾフレックス2
別売アクセサリーとして用意されたライカの外付けEVFは、ライカならではの歴史的な名称ビゾフレックスとつけられています。ライカM(Typ240)の時から「VISOFLEX」の1型が用意されていましたが、M11用には「ビゾフレックス 2」と新しくなりました。写真に示しましたが、大型になりアクセサリシューへの専用接点もシンクロ用の3点のほか16点もあるものです。「ライカM」のときは、ライブビューがないので理解できましたが、一見するとM11では不要ではとも思いましたが、しっかりとファインダーで覗いてピントを合わせたり、細かく構図を決めたりするのには必要なのでしょう。価格は約10万円です。
上の写真左は、ビゾフレックス2をアクセサリーシューに差し込み、少し上に向けましたが、このようにするとローアングルでの撮影も可能となるのですが、上に向けないままではしっかりとのぞけてライブビュー撮影するときはアイレベルのEVFとして機能します。手前を下に押し込むと手前左右にある強力なマグネットにより固定され不用意に上がるようなことはありません。右の丸いのは視度補正用ダイヤルです。写真右は、アクセサリーシューの電気接点を示しましたがストロボシンクロ用の奥には16もの接点があります。
≪ビゾフレックス2のアングル≫ ズマリットM50mmF2.4、F2.4・1/1000秒、ISO-AUTO64、AWB。ビゾフレックスは、本来は距離計連動範囲外の望遠レンズを使うためのアクセサリーとして用意されましたが、デジタルライカになってはライカM(Typ-240)の時にビゾフレックス1が用意されました。その時は単なる外付けEVFとして機能させて使いましたが、2型では視野範囲も広くなったので植木の中にM11を入れて目を離して50mmの最短撮影距離7cm近くで撮影したのが上の作例です。被写体はツツジですが、妙に黄色く見えますが、誇張はされた発色ですが、季節柄実際にこんな感じです。
≪ズミクロン35mmF2、第2世代≫ 新宿西口の空:F5.6・1/350秒、ISO-AUTO 64、AWB。1969年製、私のお気に入りのライカMレンズ、古いのにさすがの描写です。
≪キヤノン25mmF3.5(Screw)≫ 横浜市民ギャラリーあざみ野:F8・1/296秒、ISO-AUTO 100、AWB。1956年に発売されたトポゴンタイプの当時としては明るい超広角レンズで、薄くて、かさ張らないので時々持ち出します。フィルム時代は特に問題なく使えましたが、デジタルになり、当初は周辺減光が強かったですが、M11は裏面照射タイプになり周辺の減光も目立たなくなりました。(横浜市にて)
≪ヘクトール135mmF4.5≫ F4.5・1/400秒、ISO-AUTO 64、AWB。白蛇のミニチュア。ライカ距離計連動機の焦点距離限界の135mmでの撮影は特に問題ありませんが距離計で行いましたが、もっと遠景をねらったほうが良かったのでしょうが、この日の撮影で気に入ったのはこのカットでした。さすが135mmF4.5での最短撮影距離1m近くでは深度も浅くなりました。(川越にて)
≪フォクトレンダー・ノクトン50mmF1≫ F1・1/320秒、ISO-AUTO 250、写真展会場でお会いした写真大先輩の柳沢保正さんをパチリと撮影させてもらいました。大口径ながら大変シャープなレンズですが、合焦ポイントを外れた前後に細かい線状のものがあると、拡大率を上げると色収差が発生するのは致し方ない部分ですが、これも極端にトリミング拡大でもしない限り実用上はまったく問題ないでしょう。
≪ISO6400をチェック、新宿ゴジラ通り≫ ノクトン50mmF1、F5.6・1/640秒、ISO 6400、AWB。ライカM11の最高ISO感度はISO50000ですが、トップカバーの感度ダイアルにはマニュアルの数値でISO6400が刻まれています。今回の撮影では、他のカットはすべてISO-AUTOで撮影していますが、ここではあえてISO6400の描写を見るためにマニュアルで設定していつもの場所で撮影しました。ピントはゴジラの顔に合わせましたが、ほとんど無限遠状態でした。
上の写真をゴジラの顔を画素等倍でクロップしてみました。ISO6400ですからどうだろうかと思いましたが、わりとノイズがのりやすい印象を持ったので、同じ照度下で、被写体、撮影レンズ・絞り値など条件をそろえて同じ画素数の機種と比較撮影してみますと、ノイズがわずかにでやすいのを確認しましたが、やはりその差はきわめてわずかで、プリント仕上げということでは実用的には大きく変わらないでしょう。
■距離計連動カメラとしてのM型ライカ
今回のライカM11は、手強いカメラでした。何がと問われると、あげれば切りがないのですが、かつて一眼レフが全盛の時代にはライカの良さは何かと聞かれると、80年も前のレンズが距離計に連動して使えるからなどと答えていましたが、M型ライカよりフランジバックの短いミラーレス一眼がでてきてからは、古いレンズが使えるというのはマウントアダプターが用意されたことにより日常となりました。この結果、ライブビューで撮像面で正確なピントを合わせができるようになり、多くの人々に新しい写真の楽しみ方を提供することができるようになったのは誰もが認めることでしょう。
そこで、改めてM型ライカの魅力は?と問われると、やはり連動距離計が組み込まれているから、ということになるのです。2006年発売のライカM8、M9、M(Typ-240)と使ってきましたが、改めてこの時期M11を使ってみると、M(Typ-240)から大きな変化がありました。その1つが、ブライトフレーム枠を電気的な照明にしたことです。M11ではカメラをONにしてスイッチを入れて、ファインダーフレームがでてピントを合わせるのですが、速写性ということからはワンタイミングずれるのです。また電源をつねにONにしておけば、シャッターボタン半押しで撮影が可能となるのですが、長らく押していないとスリープするので、シャッターボタン半押しか、電源を改めて入れなおすという作業が必要となります。このあたりM(Typ-240)を使っていた時にはあまり気にならなかったのですが、M11ではなぜか気になるのです。これは測光方式が撮像面測光になったことなどと関係あるのかもしれませんが、起動がわずかに遅くなったような感じがするのです。さらに、せっかくここまで電子化したなら、少なくとも6ビットコード搭載のレンズを装着の場合には焦点距離情報を取り込んでいるわけですから、ファインダーフレームの表示は採光窓時代からの35+135mm、50+75mm、28+90mmのダブルフレーム表示ではなく、装着レンズそのもののフレーム表示だけでも良いような気がしますが、M型を求めるユーザーはそれで納得するかどうかは難しいです。
とはいってもデジタルのミラーレスライカですから、背面液晶かビゾフレックスでのピント合わせですと見えるのは撮像範囲だけですから、より目的にかなった撮影ができるというということになります。このピント合わせは、①距離計による方法、②背面液晶による方法、③ビゾフレックス2による方法、さらに①と②では移動可能な拡大表示、ピントが合った部分を色表示するフォーカスピーキング機能があるので、どのピント合わせ方式を使うかはもちろんユーザーが決めるのですが、せっかくレンジファインダーのライカを求めたら距離計部分の合致で素早くピントを合わせをするのがM型本来の魅力だと思うのです。他のピント合わせ方式を使うと、最新ミラーレス一眼機と同じような機能を持たせていることで、ミラーレスのフォーカス機能を使い込むほど神経を使う部分が増え、距離計連動ライカの良さが遠のいて行ってしまう気がするのですが、いかがでしょう。レンジファインダー機の良さはピント合わせに対するその潔さが信条だと思う次第です。
追記)今回手間取ったのは、使い勝手がというか、GUIというか取扱説明書が難解なことでした。どこかに書いてあるかはわからずじまいでしたが、メインメニューのボタンを2回押し込むとサブメニューに飛ぶとか、初期設定がフォーカスピーキングがONのためビゾフレックスでは撮影場面によっては画面の大部分が赤く色づくとか(ピーキングの色とレベルは変えられるそうですが)、それをOFFにするために奥深い階層でやっと設定しても、いわゆる、決定ボタンが見つからなく、また元に戻るという繰り返しでした。結局、ライカ銀座に出向いて聞いてみるとシャッターボタンの半押しが、日本のカメラのセットとか決定にあたることがわかったのです。M9やM(Typ-240)はかなり直感的に使えましたが、2006年にデジタルRF機に参入以来16年も経つと開発者も若くなったからでしょうか?
なお、本レポートを行うにあたり、購入したての機材一式を1月もの長期にわたり貸し出してくれた、写真仲間に感謝です。
(^_-)-☆ 2022/03/06