写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

キヤノンEOS Rを使ってみました。

 キヤノンのフルサイズミラーレス一眼「キヤノンEOS R」が2018年10月25日に発売になりましたので、さっそく使ってみました。

f:id:ilovephoto:20181128225913j:plain


≪今回用意したのは、EOS R:3,030万画素、大きさ・重さ:135.8×98.3×84.4mm、約660g(バッテリー、SDカード含)、価格:237,500円、RF24~105mmF4 LIS USM(155,000円)、RF35mmF1.8 Macro IS STM(75,000円、11月15日発売なので追加しました)、マウントアダプターEF-EOS R(15,000円)≫

■まずはセットアップしました

f:id:ilovephoto:20181029223757j:plain

≪開梱してうれしかったこと:箱からボディが複雑でなく簡単に取り出せたこと。㊧RF24~105mmF4レンズとマウントアダプターEF-EOS Rにしっかりとしたケースがついていたこと、㊨レンズをマウントから外して、ボディ側マウント内部を見るとシャッター羽根が閉じていて撮像素子がもろにでていない、などです。ただ、追加で購入したRF35mmF1.8 Macro IS STMには、ケースもフードも付いていないのです。ちょっと残念ですが、キヤノンとしてはRF35mmF1.8 Macroを標準レンズとして考えているようです。なぜならば、標準レンズにはケースやフードは同梱されていないですね≫

 

■最初のシャッターを切る

 購入したレンズをセットして、撮影に入りますが、まずは隠れている背面液晶を表に出します。次に電源をONにして、モードボタンを押しながらボディ右前か右肩のサブ電子ダイヤルのどちらかを回転させるか、背面液晶に示される各モードタッチすれば好みのモードが設定できます。この中でEOS初というFvモード(フレキシブルAE)が新しく搭載されてます。これはシャッター速度、絞り、ISO感度を、AUTOもしくは任意で設定できる初めてのモードとあるけれど、とりあえずはスルーしてAv(絞り優先AE)モードにて撮影してみました。撮影モードは上部右上の表示パネルに示されますが、電池が入っていると撮影モードが電源OFFでも示され、電池を抜いた時には消えますが、電池を装着すると改めてもとにモードが保持されているので安心しです。

 まずは2カットほど室内を撮りましたが、特に問題ないのでAvモードにして、絞りF5.6でいつもの英国大使館正面玄関の撮影にのぞみました。とりあえずファイルを見ると“FNA0001.jpg”となっているのです。もちろんファイル名は好みで変えられるでしょうが、過去のデータと分別できるので、このままいくことにしました。

f:id:ilovephoto:20181101000053j:plain

≪英国大使館正面玄関、RF24~105mmF4 L IS USM、焦点距離35mm、F5.6・1/640、ISO 100、AWB、三脚使用≫このレンズ、24~105mmと倍率が高いせいか重量感があり、外観仕上げは重厚感があり、手前からズームリング、フォーカスリング、一番先端にクリック感のある絞りリングがあります。

f:id:ilovephoto:20181101002420j:plain

≪英国大使館正面玄関中央上のエンブレムを画素等倍に拡大。RF24~105mmF4 L IS USM、焦点距離35mm、以下撮影データは上記と同じ≫いかがでしょう。特別にいいとか、悪いということもありませんが、3,000万画素として普通の感じで良く写ります。ただ、エンブレムは画面全体の周辺丈夫だということで、中央部ならさらによいでしょう。それはどこのレンズでも同じことです。

f:id:ilovephoto:20181224220934j:plain

単焦点のRF35mmF1.8 Macro IS STMで英国大使館正面玄関を撮影:F5.6・1/640、ISO 100、AWB、三脚使用。ズームレンズの35mmの時と撮影と単焦点35mmF1.8の描写比較ですが、画素等倍のエンブレムの部分を2点を掲載しましたが、この2枚の画素等倍比較からは単焦点の35mmF1.8マクロの方が少し上かなという感じです。画面全域では、24~70mmズームと単焦点35mmの描写比較ですが、640ピクセルの全体画像画像ではわかりませんから、全画面表示はRF24~105mmF4 L IS USMの画像で共通としました。≫いずれにしても、640ピクセルの全体画像画像ではわかりませんから、京都MJのサーバーにアップされてます。ここにはさまざまな過去にテストしたカメラが載っていますので参照ください。

 

■ランダムな被写体で撮影したら

 今回購入のレンズは、発売時期がずれたため同時入手ではありませんが、RF35mmF1.8 Macro IS STMとRF24-105mmF4 LIS USMの2本です。それぞれ、ミラーレスならではの光学設計ということで、ショートフランジバックで性能を発揮するというものです。このうちRF35mmF1.8は“マクロ”と称されているように最大撮影倍率0.5倍までのクローズアップ撮影ができるというもので、いろいろと楽しく遊べそうです。

f:id:ilovephoto:20181202202745j:plain

≪左:RF35mmF1.8 Macro IS STM(最大撮影倍率0.5倍)、右:RF24-105mmF4 LIS USM(Lレンズ)≫

 

●RF35mm F1.8 MACRO IS STMレンズにて

 35mmF1.8マクロですから、Ver.7では、マクロのあたりを見てみました。

f:id:ilovephoto:20181201225544j:plain

≪いつものマンション:F8・1/400秒、ISO100、WBD≫RF24-105mmF4 LIS USMでも同じ場面を撮影してあります。35mmレンズでは24mm時とは画角が異なるため、撮影は後ろに引いた距離で行いました。

f:id:ilovephoto:20181201230149j:plain

≪いつものマンションのフォーカス部を100%画素等倍にクロップ:F8・/400秒、ISO100、WBD、手持ち撮影≫24mm時とは画角と撮影距離を後ろにしていますが、やはり単焦点35mmF1.8の方が解像力は高いのがわかります。

f:id:ilovephoto:20181201230651j:plain

≪新宿の夜景:F1.8・1/100秒、ISO100、WBD、手持ち撮影≫絞りF1.8開放で中央右の焼き鳥釜めしの看板にピントを合わせましたが、全体的にコントラストもあり、すごくシャープです。画面空がわずかにマゼンタ味を帯びているのは、ホワイトバランスをデイライトにセットしたためです。

f:id:ilovephoto:20181201231512j:plain

≪新宿夜景のボケ具合:F1.8・1/64秒、ISO125、WBD、手持ち撮影≫絞りF1.8開放で手前の道路柵のポールにピントを合わせました。背後のさまざまな光源はきれいにボケています。左右周辺でわずかに口径食の影響がでていますが、F1.8と開放絞りで、撮影距離が近いため、ある程度は致し方ないでしょう。

f:id:ilovephoto:20181210002701j:plain

≪紅葉。F3.5・1/100秒、ISO100、AWAB、手持ち撮影。手前の紅葉は鮮やかに、奥のテーブルの周囲の下草はボケ具合にムラがなく、色調的にも柔らかく再現されてます≫

f:id:ilovephoto:20181210002919j:plain

≪野の花。F4.5・1/160秒、ISO100、AWAB、手持ち撮影。640ピクセルではわかりにくいですが、右端の花は花びらの内側に落ちた花粉がしっかりと解像しているのです≫

f:id:ilovephoto:20181210002955j:plain

≪ツタの紅葉。F4.5・1/160秒、ISO100、AWAB、手持ち撮影。640ピクセルではわかりにくいですが、右上のクモの糸にぶら下がった枯葉を拡大すると解像力の高さがわかります≫

f:id:ilovephoto:20181210003020j:plain

≪ツタの紅葉画素等倍。F4.5・1/160秒、ISO100、AWAB、手持ち撮影。640ピクセルでは見えなかった、クモの糸にぶら下がった枯葉、と紅葉したツタの葉、ちょっとした感激です≫

f:id:ilovephoto:20181210003056j:plain
≪チノパン。F1.8・1/60秒、ISO800、AWAB、手持ち撮影。イスに座って撮影後にカメラを足の上に載せて遊んでいたら、シャッターを切るとこんな写真が撮れたのですが、絞りF1.8の深度がよくわかるのです。さらに画素等倍に拡大したらビックリです≫

f:id:ilovephoto:20181210003125j:plain

≪チノパン画素等倍。F1.8・1/60秒、ISO800、AWAB、手持ち撮影。640ピクセルでは見えなかった、チノパンの合焦部を拡大したら、繊維分が1本ずつ見えるのは、解像力が高いからで、まるで拡大マクロ撮影のようです。絞りF1.8開放ですが、絞ればいろいろな使い方ができる万能レンズです。そしてこのカットを見てわかるのは、深度は拡大率によって変わるということです≫

 

●RF24~105mmF4 LIS USMレンズにて

f:id:ilovephoto:20181101004439j:plain

≪つつじのなかの葉っぱ、RF24~105mmF4 L IS USM、焦点距離76mm、F4・1/160秒、ISO 100、AWB、手持ち撮影≫撮影距離などからすると、ここでわかるのはボケ具合でしょうか、描写は準望遠ですなおですね。

f:id:ilovephoto:20181103130823j:plain

≪いつものマンション壁面、RF24~105mmF4 L IS USM、焦点距離24mm、F9・1/320秒、ISO 100、AWB、手持ち撮影≫いつもはこれでレンズとカメラの解像感を見るのですが、この全画面640ピクセルでは、ディストーション、色傾向ぐらいしか見れません。

f:id:ilovephoto:20181103131251j:plain

≪いつものマンション壁面の中央部分を100%画素等倍でクロップ、RF24~105mmF4 L IS USM、焦点距離24mm、F9・1/320秒、ISO 100、AWB、手持ち撮影≫これで見るのもうひとつわかりませんね。過去のレポートの中に同じシーンがキヤノンを含め他社のもありますので、京都MJのこちらをご覧ください。

f:id:ilovephoto:20181104000545j:plain

 ≪写真仲間の“宝槻稔さん”の個展「道具の力」のオープニングにて、RF24~105mmF4 L IS USM、焦点距離33mm、F4・1/64秒、ISO 640、AWB、手持ち撮影≫お二人の肌の再現色も柔らかく自然で、シャツはどちらも中間調ですが、拡大すると生地の目が繊細に描写されました。画素等倍にして、㊨宝槻さんのシャツを見ますとISO640に増感したためでしょうか、わずかにノイジーな感じもしました。

f:id:ilovephoto:20181201233006j:plain

≪黄葉:RF24~105mmF4 L IS USM、焦点距離24mm、F8・1/250秒、ISO 100、AWB、手持ち撮影≫3本のイチョウの黄葉の進行具合がそれぞれなので撮影しました。画素等倍まで拡大してみると、1枚1枚の葉がしっかりと解像しています。

 ■マウントアダプターで一眼レフ用レンズを付ける

 キヤノンの純正マウントアダプターは4種あり、マウントアダプターEF-EOS R(15,000円)、コントロールリングマウントアダプターEF-EOS R(30,000円)はボディとともに発売されましたが、ドロップインフィルターマウントアダプターEF-EOS R:円偏光フィルター付き(45,000円)、可変NDフィルター付き(60,000円)の2種は2019年の2月下旬です。ここでは最も基本で安価な“EF-EOS R”アダプターを純正EFレンズと、交換レンズメーカーのシグマとタムロン製のものを使ってみました。

f:id:ilovephoto:20181103012427j:plain

≪写真には、左からタムロンAF28~200mmF3.8-5.6 ASPH.LD(IF)、EOSRとアダプターに取り付けられたキヤノンEF28mmF2.8、シグマEX DG20mmF1.8を示しました≫

 このうちキヤノンEF28mmF2.8は1987年発売のEOS650に合わせて買ったレンズですから、かれこれ30年以上前のものです。APS-C判のEOS MのマウントアダプターEF-EOS Mの時もそうでしたが違和感ない仕上げでしたが、さすがマウント口径が大きくなった分だけ、段差があるのは致し方ないというところでしょうか。そのAF作動ですが、純正のキヤノンEFはいうまでもなく、サードパーティータムロンもシグマもおもしろくないほどすべて動作するのです。いずれの3本ともUSMでなくモーター式のものですから、その古さはお分かりいただけるでしょう。ちなみに、手元にあったEOS650発売直後の複数の望遠系シグマAFレンズ、タムロンSP AFマクロ90mmF2.8(72E、1996年)もすべてAFは動きました。これはシステムを考えたキヤノンがすごいのか、それに追随したシグマやタムロンがすごいのかということですが、少なくとも30年間不動であるわけですからすごいことです。
 ところでレンズ交換するときに見ると、ボディの電源がOFFの時シャッターが降りて撮像素子が直接露出していないのですが、これはショートフランジバックのカメラにおいては、すっごく安心感ありました。また、EF側の電気接点は8個、EOS R側の電気接点は12個、好奇心旺盛な人はどのように端末処理しているか、開けてみたくなりますね。そして、マウントアダプターが丸いのも、私は好感もてました。ソニーのアダプターのように内部に絞り羽根制御、AFカプラーのためにアクチュエーターが3つも組み込まれているときは下に出っ張っていても致し方ないですが、キヤノンは単なる電子回路だけでしょうから、丸い方がボディを固定したままレンズ交換できますから、カメラポジションが変わらず、光軸も動かないのでいいですね。
■ライカM用マウントアダプターを使ってみました
 ミラーレス機のもうひとつの魅力(僕にとっては一番)は、マウントアダプターを交換することにより、さまざまな各社の交換レンズが使えることです。このうち最も魅力はレンズが小型のライカMマウント用です。これはEOS R発売と同時に焦点工房とKIPONから発売されていましたので。ここではKIPON製のL/M-EOS Rを使ってみました。価格的にはどちらも同じで、カメラもそうかもしれませんが、こちらも早いもの勝ちであり、価格競争も熾烈です。

f:id:ilovephoto:20181103012524j:plain


≪お気に入りのライカズミクロン35mmF2(第2世代)を付けてみました。取り付けは特に変わったことはありませんが、このマウントアダプターはライカMマウント側の公差が少ないのでしょうか、少し取り付け・取り外しが渋いのです。ところでこの写真を見るとおわかりのように、ホットシューアダプターのキャップがないのです。私は外していませんし、製造元のキヤノンが忘れるとは考えにくいのです。たぶんコストカットのために省略したのでしょう。このキャップ、もともと外して使っていましたので、このような無用な部分の省略はユーザーサイドからみても納得でき、いいですね。≫

■マニュアルフォーカスでのピント合わせ

 実は、個人的にはマニュアルフォーカス時のピント合わせがやりやすいか、やりにくいかは僕の場合は大きな注目点となります。ミラーレス一眼になって、一番驚いたのはレンズのピントというか、許容錯乱円という考え方が、ある意味根底から崩されたのです。例えば、28mmという焦点距離のピント合わせは、フィルムカメラ時代はパンフォーカス的にざっと合わせればよかったのですが、実際撮影後のデータを拡大して見ますと、やはりピントというか合焦点は1点しかないのです。私の経験では、焦点距離10mmとか15mmでも、F8とかF11に絞っても、やはりピントは1点なのです。もちろん、プリント拡大寸法(鑑賞サイズ)をどのくらいにするか、鑑賞距離をどのくらいにするかによっても、大きく変わりますが、デジタルの画質評価はパソコンモニター上の画素等倍であり、展示はA3ノビがスタンダードサイズで、必要によっては畳1畳ぐらいのプリントも簡単にできるのがデジタルなのです。一度、この大伸ばしの魅力を知ってしまうと、ピント合わせはマニュアルでしっかりと合わせようとなってしまうのです。もちろんこれだけの大きさに拡大するためには、ピントがしっかり合っていて、ブレのないことが重要になります。

f:id:ilovephoto:20181124230534j:plain

≪㊧M-fnの文字の下がメイン電子ダイヤル、下部MODEの文字の周囲がサブ電子ダイヤル、㊨右端ほぼ中央ブルーのルーペマークの左がAFフレーム拡大縮小ボタンです。≫

 特に僕の仲間は、オールドレンズを使う人が多い(フルサイズミラーレス一眼の神髄はここにあるのです)のですが、このマニュアルでの拡大ピント合わせがどれだけ行いやすいかが、チェックポイントなのです。その利用法は、純正のレンズの場合にはレンズのフォーカスモードスイッチはAFでもMFでもよく、マウントアダプターによるMFレンズの場合にも、ボディ右肩背面のルーペマーク脇のAFフレーム拡大縮小ボタンを押した後に、INFOボタンを押すと5倍の拡大表示となり、ここでメイン電子ダイヤルを左右に回転させることでフォーカス位置を左右に、サブ電子ダイヤルを左右に回転させることにより、上下方向に動かすことができるのです。この操作は、背面右の十字キーでも行うことができ、電子ダイアルの場合は大きく動き、十字キーでは細かく動くので、使い分ければいわけですが、タッチシャッターをoffにしてあれば、指で任意の場所を押すとフォーカス位置はワンタッチで任意の場所に設定できます。そしてフォーカス位置が決まったら、さらにINFOボタンを押すと、5倍⇒10倍⇒全画面表示と変化させられます。ただ、この操作は若干の慣れを要し、5倍、10倍のポイントで、ここぞと思ったら、シャッターボタン半押しで一気に全画面表示に戻れれば、シャッターチャンスは倍増するのにと思うわけです。ここは、なぜかニコンZ7も同じですが残念です。

 

■オールド広角ライカ用レンズとEOS R
 ミラーレスになって最初に問題になったのが、画面周辺での減光とマゼンタ色への色付きでした。これは距離計連動のライカタイプのAPS-C判のころからあった問題で、フルサイズミラーレス一眼でも、初期では一部にこのような現象が現れる機種もありました。その原因はレンズだけではなく撮像素子にもあるようで、開口率の問題などで、裏面照射タイプになってからこのような現象はあまり見られません。もっともこのような現象は、マウントアダプターを使った一眼レフの交換レンズでは見られないことですし、ライカタイプでも広角でオールドに属するものだけに発生する現象です。そして広角といっても焦点距離にすると35mmを境にして、周辺での減光とマゼンタ色への色付きがでてきます。同じ焦点距離35mmのレンズでも被写体によっては気にならないこともあり、モノクロで使用するならまったく問題ないわけです。このあたりをどう考えるかですが、そもそもオールドレンズを使う人はモノクロ派であったりするわけで、それはカメラを使う側がどのように使うか、ミラーレスフルサイズに何を期待するかであるわけです。

f:id:ilovephoto:20181224165913j:plain

≪左から、フォクトレンダースーパーワイドヘリアー15mmF4.5 ASPH.(1999)、フォクトレンダースーパーワイドヘリアー15mmF4.5 ASPH.Ⅱ(2010)、キヤノン25mmF3.5(1956)、IBERIT24mmF2.4(2016)≫

 そしてタイトルに書いたように、広角でオールドなレンズに関係してくるのです。
 そこで、1999年に発売されたコシナの超広角レンズの「コシナフォクトレンダースーパーワイドヘリアー15mmF4.5 ASPH.」と1956年に発売されたライカスクリューマウントの当時としては広角大口径交換レンズだった「キヤノン25mmF3.5」で具合を見てみました。特にこのような現象は、ライカマウントの古いレンズタイプの時に発生するわけで、新しい設計のレンズではどうだろうということでコシナフォクトレンダースーパーワイドヘリアー15mmF4.5 ASPH.Ⅱ(2010年)を用意しました。この15mmレンズは、最初はフィルムカメラの時代に登場し、デジタルになって改良のⅡ型がでたわけで、まさにこのような現象に対する対策品であるわけです。また「キヤノン25mmF3.5」に対しては、類似品としてKIPONの「IBERIT 24mmF2.4」用意しました。このレンズは登場が2016年なので、デジタルを意識したライカMマウントレンズであるわけです。

f:id:ilovephoto:20181224165956j:plain

≪左:フォクトレンダースーパーワイドヘリアー15mmF4.5 ASPH.(1999)、右:フォクトレンダースーパーワイドヘリアー15mmF4.5 ASPH.Ⅱ(2010)、絞りはどちらもF8≫

f:id:ilovephoto:20181224170420j:plain

≪左:キヤノン25mmF3.5(1956)、右:IBERIT 24mmF2.4(2016)、絞りはどちらもF8、画角からいえば24mmの方がつらいはずですが≫

 結果は、ご覧になればおわかりのようにデジタルカメラに向けて光学設計が新しければ、より広角でも問題ないわけです。ただここで色付きのあった同じレンズを他機種で使うと周辺での減光はあっても、色付きのない機種(ボディ)があるのも事実で、このあたりは裏面照射タイプの撮像素子を使った機種に見られます。ライカタイプの古いレンズなどは使わないという人にとっては、まったく問題ないのですが、やはりカメラの楽しみ方いろいろですから、ここはカメラ製造にルーツを持ち、撮像素子から一貫してカメラを製造しているキヤノンにはエールを送るとともに、いまひとつの頑張りをと願うわけです。

 とはいってもやはりマウントアダプターを使っての広角系クラシックレンズの描写は気になる所ですので、一眼レフ用を含めて、もう少し掘り下げてみました。

f:id:ilovephoto:20181229151224j:plain

  ≪用意したのは第2世代ズミクロン35mmF2(1969年製)とM42マウントのレビューノン24mmF4(1960年)です。それぞれマウントアダプターを付けていてEOS Rに取り付く状態でセットしてあります。特にレビューノン24mmF4は本来の一眼レフに付けるままの状態ですと、薄くコンパクトレンズなのですが、ショートフランジバックのEOS Rに装着できるように右のように長くなります≫

f:id:ilovephoto:20181229124421j:plain

≪第2世代ズミクロン35mmF2(1969年製)≫F5.6・1/640秒、ISO100、AWB。お気に入りのズミクロン玉です。いわゆる、第2世代の6枚玉です。約50年前レンズですが解像力も高く、マニュアルフォーカスになることを気にしなければ、小型・軽量のレンズであり重宝してます。結局、ライカは連動距離計は付いていますが、ミラーレスだったわけです。640ピクセルの画像ではわかりにくいですが、元画像で拡大するとかなり解像力が高いことがわかります。周辺光量の落ち込みは、画面そして解像力はズミクロンの方が高いのです。これは画面中央に輝度の高い白い飛行機、マンションがあるためにそちらに露出が振られており、周辺は落ち込んでいるように見えますが、被写体状が変わればごく普通のレンズ描写になるはずです。

f:id:ilovephoto:20181229124502j:plain

≪レビューノン24mmF4(M42マウント)≫F8・1/400秒、ISO100、AWB。ドイツの写真販売業者フォトクエレ向けにエナ社が1960年代に製造したレトロフォーカスタイプの24mmという一眼レフのM42マウントの広角レンズです。撮影は上のズミクロン35mmと同じポジションで、同じ飛行機のプロペラエンジン脇にピントを合わせてありますが、F8に絞っていても解像力はズミクロンの方が高いのです。さらに屋上手すりなど見ると背景のマンションのボケ具合はレビューノン24mmの方が大きいのです。画面周辺の光量の落ち込み具合はズミクロンと同様に画面中央に輝度の高い飛行機、マンションがあるためにそちらに露出が引っ張られており、普通のレンズ描写で、大きく変わりはありません。

 

■ミラーレス一眼のサイレントシャッター

 サイレントシャッターモードで撮影すると、電子シャッターを使用して、シャッター動作音と振動のない撮影ができるのですが、動体では歪みがあるように撮影されることもあります。したがって、大きな動きのある被写体には向きませんが、音楽会や踊りなどで大きく動かない決めポーズなどでは、静かなので大変有効です。この歪み具合は、撮像素子の特性、被写体の走行方向、走行速度、撮影距離など相対的な部分で決まることが多いのです。このような歪みをローリングシャッター現象と呼びますが、いまのところミラーレス機全般に見られ、今後の技術的課題といえます。

f:id:ilovephoto:20181124232908j:plain

≪サイレントモードでの動体撮影:RF24~105mmF4 LIS USM、焦点距離35mmで㊧絞りF5.6・1/1000秒、ISO1600、㊨絞りF4・1/160秒、ISO100、AWB≫

■夕焼けが写るか
 もともと、一眼レフ時代にはそのようなことはなかったしということなのですが、前機種の私のレポートを見た方から、ミラーレスはみんなそうなのでは?といわれました。今まで、先行ソニーではそのような印象はありませんでしたが、キヤノン最初のミラーレス機APS-C判の「EOS M」ではどうだったかと思い出すと、2012年にEOS Mが発売されたときの作例では「北海道白老で撮影した夕日」が一番のお気に入りカットでした。そこで今回のフルサイズEOS Rではどうかと、夕日を求めてご近所をブラブラして、さまざまな場面を撮影してみましたが、特別な露出補正をしなくても、撮影時のファインダーを覗いた時の色づき、カメラ内再生時の色づき、パソコンモニターでの色づき、など大きく違いはありませんでした。やはりそういうもんだと思うのです。

f:id:ilovephoto:20181125222007j:plain

≪わが町から見える富士山:RF24~105mmF4 LIS USM、焦点距離105mmで㊧絞りF8・1/500秒、ISO100、AWB≫

 

■フルサイズミラーレス一眼はどこへ向かうのか
 押せば写る時代にあって、限られた時間で最新のカメラに対し、それなりの考えを示すのは難しいことです。したがって、すべてにわたってカメラを見ることは不可能なことであって、あくまでも私がこのカメラを使うならという視点だけでレポートを進めてきました。そして今から5年前2013年の11月、ソニーα7Rが発売されたときに、われわれの写真仲間はこぞってこのカメラに手を出しました。それは、マウントアダプターを介することで、過去に見捨てられたさまざまなレンズで高画素な写真を撮ることができるようになったことに注目したのです。そして現在までの進化の過程では、ライカM・Sマウントの広角レンズが事実上使えないという困難もありましたが、第2世代機ではほとんど解消され、今では忘れ去られた事象というぐらいになりました。
 そしてこの5年間、多くのユーザーが言い続けてきたのは、ミラーレスフルサイズ一眼で小型化をというのでした。その点においてはEOS Rも十分にクリアしているのですが、この時期ミラーレスフルサイズ一眼に参入のキヤノンニコンも撮影光学系は、高画質・高級路線へと向かったのです。もちろん、単なる小型・軽量ですと自社のAPS-C機との差別化も難しいでしょうが、いわゆるかつてパンケーキレンズと呼ばれたような薄型の交換レンズが1本あったらいいなと思うのです。もちろんキヤノンとしては「RF35mmF1.8マクロIS STM」がそれにあたるということなのでしょうが、もっと薄くてグリップ部の前面と同レベルのような薄型レンズがあると、凸型した一眼レフのイメージから箱型の収納しやすい形になると思うのです。いずれにしても、スタートしたばかりのミラーレスフルサイズ一眼ですが、今回使用したF24~105mmF4LIS USM、RF35mmF1.8マクロIS STMのほか、RF28~70mmF2L USM、RF50mmF1.2L USMの合計4本が発表されているわけですが、既存のEFレンズとの互換のなかでどのようなRFレンズがさらに追加されていくのか興味深い点で、それがこれからのフルサイズミラーレス一眼の向かう方向になるのだと思うのです。 (^_-)-☆

 この記事は、整理して京都MJのサーバーに移転しました。こちらでは作例を画素等倍まで拡大して見ることができます。