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写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

キヤノン“質感情報”を数値化する画像処理技術を開発

 超高画素センサーや超高画素センサー一眼レフと矢継ぎ早に技術発表しているキヤノンですが、実はその陰に隠れてインクジェットプリントの画像処理技術を9月8日に発表していました。写真関係のWebメディアではあまり紹介していないようですので、改めてここで取り上げることにしました。なお、これらの技術発表は、本年9月から2016年5月にかけて、ニューヨーク、パリ、東京、上海で行う「Canon EXPO 2015」にて展示する技術の一部とされています。
 キヤノンの開発した画像処理技術は、照明の方向や見る角度で変化する物体の光沢感、立体感、透明感などの「質感情報」をデジタルカメラで取得し、プリントで忠実に再現する質感画像処理技術です。質感とは、光沢感、立体感、凹凸感、透明感など、その材質について人が感じ取る視覚的、触覚的な要素で、写真や印刷物で質感を再現するには、色の情報に加え、物体表面の凹凸や光の反射特性などの質感情報を取得することが必要でした。今回キヤノンが開発した質感画像処理技術は、キヤノンデジタルカメラを複数台用いて対象物を撮影し、微細な凹凸や光沢などの質感情報を数値化するというものです。その数値化した質感情報をプリンター(UV硬化型プリンターなど)の特性に応じて最適に制御し、オリジナルの質感を忠実に再現します。

<左:油彩画(フェルメール作「真珠の耳飾りの少女」)、右:金屏風(向かって左が本物の金箔、右がプリント)>
 このような技術開発は、画像入出力機器をもつキヤノンならではのもので、高精細な色彩表現だけでなく、金属や生地といった多様な質感のプリント表現を可能とし、オリジナルの質感を忠実に再現できることから、油彩画などの貴重な歴史的文化財を複製することで、優れた作品に直接触れることができる新しい鑑賞方法や、オリジナル作品を良好な環境で保存するといった活用も見込まれるとしてます。キヤノンでは、これまで培ってきた高精細な写真プリント技術に加え、壁紙などのインテリア素材や広告看板、商品パッケージなど適用先の拡大を目指し、今後さらにこの技術の開発を強化していくというものです。