写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

甦った一眼レフ交換レンズ

 これは性分だからしょうがないと思うのです。これというのは、かつて手に入れたカメラや交換レンズを手放すことができないのです。だから、僕のストックルームには、数えたことがないほどのカメラやレンズがあるのです。フィルムカメラの時代には、完動品のボディをメーカーやクラスに分け、さらに交換レンズを必要最低限そろえることにしてきましたが、最近の電気カメラの時代にあっては、久しぶりにカメラを引っ張り出して電池を入れても、電子回路が不調だったりして動かないカメラがいくつもでてきてしまったのです。専用の交換レンズも、役に立ちません。なかには、メーカーはあっても、カメラ作りから撤退したり、マウントが新マウントになったりで、やはり使えないというレンズが、意識しないまま手元にごろごろしていたのです。
 でも、時代は変わりました。デジタルの時代になって、ライブビュー撮影が可能になり、各社の旧マウントから最新ボディへつなぐマウントアダプターが安価ででてくるようになり、状況は一変しました。実は、2008年のミラーレスのマイクロフォーサーズ機「パナソニックルミックスDMC-G1」の登場で、救われたのです。この時点でライカ用の純正マウントアダプターが用意されたのですが、ここで、一気にマウントアダプターの認識が高まったのです。それ以前にも、ライカ用には、L39スクリュー⇒Mバヨネット、旧コンタックス⇒L39スクリューがありライカの距離計に連動して使え、古くは距離計には非連動でも各社一眼レフ⇒ライカスクリュー変換というアダプターもたくさんありました。これというのも、カメラボディのフランジバックの短いライカならではのものですが、近年一眼レフでは、キヤノンFD、キヤノンEFボディがやはりフランジバックが短いことにより一部他社交換レンズをアダプターを介して装着することができたのですが、マニアにしか使われていませんでした。ところが、各社からフランジバックがライカより短いミラーレス機の登場で、さらにレンズマウントアダプターを介した遊びが盛んになりました。ライカも2012年のフォトキナでミラーレス機とも呼べるライブビュー撮影の可能なフルサイズ機「ライカM」を発表し、2013年春から発売したのです。ライブビューが可能となると、望遠、マクロ、ズームと、今までのライカでは使えなかったレンズが、一気にマウントアダプターを介して使えるようになったのです。

 上の写真を見てください。ライブビュー撮影ができるようになり、距離計が連動していなくてもピント合わせができるようになり、いままで使えなかったレンズもマウントアダプターで使えるようになりました。左から、ニコンF用(ED AFニッコール80〜300mmF4-5.6D)、ペンタックスK用(SMCペンタックスFA 43mmF1.9 Limited)、コニカ用(UCフィッシュアイヘキサノンAR15mmF2.8)、キヤノンFD用(キヤノンマクロFD50mmF3.5S.S.C.)、キヤノンEF用(キヤノンEF28mmF2.8)、ミノルタMD用(MDロッコール85mmF1.7)です。もちろんこれで僕の持っているレンズがすべてではありません。当然、これ以外に各社マウントに対する焦点距離別バリエーションがあり、さらにライカの純正、スクリューマウント、Mバヨネットマウント、さらにはノンライツのスクリューマウント、Mバヨネットマウントがあるわけですから、数えるのもいやになるのもおわかりいただけると思います。ということで、最近はこの組み合わせにはまってます。ライカ系レンズでは、距離計連動とライブビューをどのように使い分けるかなど、実際いろいろな場面で試してみると楽しいのです。
 右の写真は、「PANAGOR PMC AUTO MACRO 55mmF2.8」というレンズをライカMにアダプターを介して取り付けた撮影状況です。パナゴールは、1970年代のマクロレンズですが、当時としては単体で等倍撮影ができる貴重なものでした。国内では発売されていなく、輸出用のものをコミネ(いまはないと聞いてます)というメーカーにいる友人から、マクロ撮影好きが集まって特別に分けてもらったものです。マウントは、当時ニコンキヤノンFD、ミノルタMD、オリンパスM42などがあったように記憶しています。写真のレンズは、ミノルタMDマウントですがまったく問題なく装着できています。それでもどんな写りをするのだろうかと気になるでしょうから、試写してみました。結果をご覧ください。

【ライカM(Typ240)+パナゴールPMCオートマクロ55mmF2.8】絞りF5.6・1/250秒、ISO200、AWB。いかがですか、夕方撮影したので少し黄色味を帯びていますが、コダクロームのようになかなか渋い発色を示しています。撮影はオプションのEVFを利用して行いました。実は、友人は検査の責任者であったので、投影検査で最もいいのを選んでくれたのです。それにしても、マクロ撮影は、あまりAFはいりませんので、これで各社マウントのマクロレンズが一気に7本ほど使用可能になってしまいました。
 さてさて、ということで、国内メーカーからのフルサイズのミラーレス機の登場が待たれるわけですが、一番近道は、NEXをもったソニーなわけです。もちろんアダプターを介した撮影は、ピント合わせは当然のこととしてマニュアルになるわけですが、僕のように過去のストックレンズが一気に現役に復帰するということもあるわけですから、レンズ遊びを趣味とする人には待望のカメラとなるわけです。かつて35mm一眼レフカメラはシステムカメラといわれましたが、横軸の広がりでなく、時代を超えた縦軸のシステム構築ができるところが、ミラーレス機(ライカM)は現代のシステムカメラといえそうです。