写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

目の錯覚、ライカMのシャッター幕とソニーRX-1の光学系

 久しぶりに旧知の写真仲間Mさんが写真展を開いているというので、Mさんの学生時代の先生やだぼはぜ写真仲間と連れだって作品を見に行ってきました。種々雑多、さまざまな話に及びましたが、「ライカM」に話が行ったときに、Mさんは「ライカM」のシャッター幕が湾曲していているというのです。何でも、休暇を取って昨年9月にドイツ・ケルンに自費でフォトキナに見に行ってきたとき確認したというのです。その理由は、撮像素子とシャッター幕が湾曲していれば、後面の出っ張った広角レンズなどで、光線特性において効果的だというのです。どこかに特許図面がでていたというのです。確かにMさんのブログでは昨年12月ごろにそのようなことがでていましたが、その時点で僕にはそのようには見えなかったので「目の錯覚でしょう」と考え、別に気にも留めませんでしたが、Mさんはまだこだわっていたようです。
【右上の写真はライカMのシャッター羽根】羽根が効率を高めるために、それぞれが円弧をもってカットされているために幕面が湾曲しているように見えたようです。そういえば、1892 (明治25)年フランスの「Steleo Photosphereステレオ・フォトスフェール」は俗称オッパイカメラと呼ばれ、シャッターはお椀を伏せたようなレンズ基部の内面に沿って作動するスフェリカルシャッターでした。
 そこで、フォーカルプレンというスリットシャッター羽根の機械的な運動からそのようなことはありえないことだと解説し、シャッター幕が歪曲して見えたのは羽根がカーブを描いていたからだと説明し、改めて後日「ライカM」を持参して、そのようなことはないことを理解してもらいました。どうやら、目の錯覚というか、事前に見た特許情報の先入観で“シャッター幕が湾曲していているに見えてしまった”ようです。特許情報というのは難しいのです。なぜかというと、各社とも実施可能なものと、実施不可能なものをいろいろと群で出願するわけで、実現可能でも製品化されないものもあります。僕の仲間の技術者も複数特許を持っていても、それが実施されたという話はあまり聞きません。ま特許は、専門家ではありませんからよくわかりませんが、実際画期的な実施可能なものもあれば、単なる防衛のためのものもあるので、ほとんどは後者で公開されたパテントから実用化への判断は難しいのです。そういえば当日同行願った“だぼはぜ写真仲間さん”は世界的な電子機器メーカーの特許担当でした。僕も雑誌をやっているころには「特許から明日のカメラを……」とかやりましたが、あくまでのその道の専門家の判断であり、考察であったわけです。ただ唯一考えられるのは、製品化を事前情報として知っていて、公知の特許情報を使ってその製品化を故意にリークするというやり方はありです。でも、現在は立場的に事前に知っているからといっても、見せてもらうときは守秘義務契約を結ぶので、事前に知っていることを自慢するような人はいません。
 同じ錯覚でも、僕が以前このブログでも話題にした「ソニーRX-1」のゾナー35mmF2の最後玉は、凸かフラットかという問題もありました。この時、僕はしっかりと自分の目で見て、さらに写真に撮って凸面だと判断したのですが、ソニーからでてきた図面は平面でした。これに関してはいろいろ考えましたが、僕の錯覚でなく、錯視であると結論付けましたが、どうしても納得できなく、最後の手段として某社の技術屋さんにお願いして、分解したときに後部のガラスはどうなっているか聞いたのですが、やはり平面だというのです。それでもまだ信じられずに、やがて壊れたのでもあったら分解してみたい気が今でもしているのです。Mさんのことは決して笑えません。先日潔く白旗を上げていましたが、僕はまだまだ調べなくてはいけません。  (#^.^#)