写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

サイバーショットDSC-RX1を使ってみて

 いまソニーのカメラ部門が元気です。11月1日〜18日まで銀座のソニービルで世界規模の写真コンテスト「Sony World Photography Awards」の2012年受賞作品展を開催したり、トランスルーセントミラー方式のαシリーズのα99(発売10月26日)、無線LAN機能搭載のNEX-6/NEX-5R(発売11月16日)と矢継ぎ早に新製品を送り出していますが、センサーメーカーならなのでしょうか、それとも勢いあまってということでしょうか、何とフルサイズレンズ非交換式コンパクトカメラとして“サイバーショット”『DSC-RX1』を11月16日に発売したのです。発表は、いずれも9月のフォトキナ直前でしたが、予告通り11月16日に発売されたRX1をさっそく使ってみました。RX1に組み込みの単焦点レンズはカール・ツァイスゾナーT*35mmF2(7群8枚構成)です。別売でカール・ツァイスの設計したという光学ファインダーとEVF、フードも同時に発売されました。イメージャーは35.8mm×23.9mmで、有効画素数約2,430万画素のCMOSセンサーを採用が特徴です。最近、高画素タイプの一眼レフカメラにおいて、ミラーやシャッターの動作によるブレが一部に問題視されていますが、レンズシャッター式のボディならそのような影響は少ないだろうと考えられます。レンズ鏡胴基部の赤いリング部には、誇らしげに“35mm FULL-FRAME CMOS IMAGE SENSOR”と書かれています。
 まず、手に持ってみますと、ひんやりとした金属の感じで、ブラック仕上げで寸法なりの重量感もあり高級感は十分に感じさせます。メニュー画面から、いくつかのセットアップを行ないましたが、画面サイズは3:2と16:9の2種類しかありません。あくまでもライカ判フルサイズにこだわるようです。実際、フィールドに持ち出して気づいた点をいくつか述べて見ますと、シャッターを切ったときの音がまず気になりました。なぜかコトンという感じなのです。電子音で作っているわけですから、もう少しメカニカルな切れ込み音であってもいいと思いましたが、レンズシャッターですから静かにカシャでもいいのではとも思いました。ただ、このコトンはどこかで聞いたことがある音なのです。いろいろ考え思い出しましたが、ライカM8で最初に1/8000秒を積んでいたのを、清音化のために1/4000秒に改良したモデルと同じような音なのです。いずれにしてもシャッターを切ったように周りに気づかさせない鈍さがあるので、これはこれでいいのかもしれません。

左)ファインダーは光学式と電子式の2種が発売されました。どちらか一方だけでいいというものではなさそうで、使用場面に応じて取り替えるのがベストのようです。お散歩などに持ち歩くには、光学ファインダーのほうがカッコいいと思いますが、いかがでしょう。
右)電池の充電は電池をカメラの中に入れたまま、専用のソケットからマイクロUSBコードを通じて行うのですが、パソコンのUSB端子からも充電可能なので、外部電源パックをつなぐとこんな感じでしょうというイメージです(安全性は未確認)。
 それでは、実際に撮影した結果をお見せしましょう。レンズは、7群8枚構成のゾナーT*35mmF2です。絞り羽根は9枚と豪勢で、絞り値はカール・ツァイスらしく1/3段刻みになっています。ゾナーの広角タイプというとなかなかイメージしにくいですが、2001年に発売された京セラのコンタックスT3は“ゾナー35mmF2.8”でした。今回、不思議なのはソニーのHPには、このレンズの1枚の部分とMTF曲線は載っていますが、全体のレンズ構成図は見当たりません。後日でいいですから公開してほしいものです。では、以下に結果をお見せしましょう。撮影は、エクストラ・ファインというJpegモードにセットしました。撮影後のファイルはすべて、6000×4000ピクセルとなりました。

【カメラマンSK君】絞り優先AE(絞り開放F2・1/80秒、ISO3200)。ズバリメガネの中心にピントを合わせましたが、画素等倍でもまゆ毛はビンビンに解像、背後のボケ具合もクセがなく、合焦ポイントは大変シャープです。絞り開放では、このほかにさまざまな場面で撮影してみましたが、全体にシャープなのには驚きました。SK君は前からRX1が大変気になっていたそうで、この後、自分なりに複数試写をしてみて、この場で購入を決定。カメラを持った自分をスマホで写し、その場で奥さんに写メールして、購入の意志決定を知らせていました(微笑ましいです)。

ゾナーT*35mmF2のディストーション】いろいろ撮影しているうちに歪曲が気になりました。わが家の近所のお寺でディストーションのチェックをしてみました。左をご覧になってお分かりのように、明らかに樽型の歪曲が目につきました。それでメニューにあるレンズ補正のうち“歪曲収差”をONにしてみました。いかがでしょうか。僕の目の錯覚かもしれませんが、補正の結果こんどはごくわずか糸巻き型の収差があるように見えるのです。ちょっと補正しすぎかなと思うのです。それにまったく別ですが、先ほど紹介したソニーのHP作例写真は本物の糸巻で、それも画面全体が糸巻き型に変形して見えるのです。僕は専門でないのでよくわかりませんが、歪曲収差には、光学ディストーションとTVディストーションとかいうのがあり、その基準の取り方が違うようですが、これらもその結果なのでしょうか。いずれにしても、ゾナーT*35mmF2はデジタル時代のレンズ設計であることには間違いないと思います。
 最後に、ソニーだからということでしょうが、フルサイズのコンパクト機は、カメラファンなら無視できない存在です。ただ、誰もが購入できるという安価なものではありません。それだけに皆さんRX1の性能は気になる部分だと思います。また冒頭に、ソニーがいま元気だと記しましたが、その元気さは単に製品のラインナップの数だけでなく、世界規模のフォトコンテストを開催したり、今日の写真業界における地位もしっかりと築き上げてきたと思うわけです。それだけにRX1を見る目も厳しくなるわけです。多少のことはファームウエアのアップで直ると思いますが、本機はVer. 1.00でした。ではここいらで、!(^^)!。