写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

旧コンタックス ゾナー8.5cmF2とソニー ゾナー35mmF2

 いま話題の、ソニー サイバーショットDSC-RX1搭載レンズであるゾナー35mmF2(7群8枚構成)のレンズ断面図がなぜ発表されないのか、などといろいろ考えていましたが、それならばというわけで、手元にある旧コンタックス用の望遠ゾナー8.5cmF2で少し僕なりのゾナー研究ということにしましょう。ということではありませんが、実は1年ほど前に「旧コンタックス→ライカスクリュー」へのマウントアダプターを、日本写真学会からデジタルカメラとマウントアダプターの話を依頼されたのを機会に購入しましたが、実質的には「ライカマウントボディ」にコンタックス用のゾナー8.5cmF2を単に装着して覗いて楽しむだけにとどまっていました。同じように「ミノルタMD→ライカM」というマウントアダプターも購入していましたので、レンズ構成的に似通った「ミノルタMDロッコール85mmF1.7」と画質比較をしてみたいなと、前から考えていました。そこに、ソニー ゾナーの問題がでてきましたので、僕的には見逃すわけにはいかなくなり、それなりのレポートをと考えたしだいです。まず「コンタックス→ライカスクリュー」マウントアダプターですが、機械的にはかなり複雑なものです。簡単にいうとコンタックスの内爪マウントと外爪マウントのレンズに距離系も連動してライカスクリューマウントで使えるというものですが、装着して使うためにはアダプターの距離目盛を∞にセットしておくなどお約束事がいくつかあり、取り外しは知恵の輪みたいでなかなか手ごわいのです。右上にゾナー8.5cmF2のマウント部とアダプターを示しますが、ヘリコイドの付いたアダプターの内爪部分は使用時には隠れてしまうのです。

 さっそく取り付けてみましょう。まずゾナー8.5cmF2のレンズには、“旧コンタックス → ライカスクリュー → ライカM”と2つのマウントアダプターを介してリコーGXR+A12マウントに取り付けました(写真左)。実際はこの状態で、ライカM9に取り付ければ距離計連動でフルサイズの撮影が可能となりますが、距離計の連動しないミノルタMDロッコールとの共通使用のためボディはリコーGXR+A12マウントにしました。結果として、ミノルタMDロッコール85mmF1.7は、“ミノルタMD→ライカM”のマウントアダプターを介してリコーGXR+A12マウントに取り付けました(写真右)。このような組み合わせは、最近ではソニーNEXシリーズ、富士フイルムのレンズ交換可能なXシリーズなどでも可能ですが、リコーGXR+A12マウントを含めいずれも撮像素子がAPS-Cなので、画質はレンズの中心部近くだけを見ることになります。
 せっかくですから、それぞれのレンズ構成図を右に示しました。ゾナー8.5cmF2は3群6枚構成、MDロッコールは5群6枚構成となります。また、いつものように簡単なセットを屋外に組んで、それぞれ撮影距離を約1.5m、絞り開放の状態で撮影してみました。このうち最短撮影距離は、ゾナーは1.4m、ミノルタは1mなのですが、ゾナーにそろえるために撮影距離1.5mとしました。なお撮影当日は、晴天でありましたので、日のあたる場所で撮影したほうが発色もいいのですが、それぞれの絞り開放F2とF1.7では露出オーバーとなるために、あえて日陰に被写体となるチャートとりんごをセットしました。そのために画面が青っぽくなっていることはごかんべんください。撮影はカメラを三脚に取り付け、レンズを交換してピントの微調整を行い、絞り優先AEでシャッターを切りました。なお、ピント合わせはライブビューで中心に配置した解像力チャートをMFアシストで拡大して行ないました。 

ゾナー8.5cmF2】絞りF2開放・1/2300秒、ISO200、+1EV補正。撮影結果を示しましたが、この左右640ピクセルに縮小した画面では、画質的にミノルタMDとの違いはなかなかわかりません。本当は、撮影したときは1枚薄皮をかぶったような画像でした。このような描写はクラシックレンズに多いのですが、レタッチソフトでレベル補正を施せばすっきりした画像になります。ちなみにこのゾナー8.5cmF2は、カール・ツァイス・イエナ製の戦前の1938年ごろのもので、コーティングはなされていなく、撮影結果は全体にM味が強い色傾向にあります。あえてミノルタMDとの描写の違いを記すと、深度が深いということになりますが、これはゾナーがF2、ミノルタMDがF1.7という開放F値の違いからきていると考えるわけです。

ミノルタMDロッコール85mmF1.7】絞りF1.7開放・1/3200秒、ISO200、+0.7EV補正。このMDロッコール85mmF1.7は1978年の登場で、時代的にはマルチコーティングが施されていて、実写結果もたいへんすっきりとした画像となりました。またリサイズ前の画像を拡大していくと、かなり解像力が高いことがチャートから読み取れますが、実際はどのような大きさに伸ばして見るかによって変わるわけですから、簡単には高解像なロッコールのほうがいいとはいい切れません。ところで、このMDロッコールはレンズタイプからすると、ゾナータイプではなく、ガウスタイプだそうです。しかしレンズ構成タイプが違うからといって、撮影サンプル数も少ないですが、ここに掲載した写真からは描写が違うとはいい切れません。なおMDロッコール85mmF1.7は生産わずか1年で終了しており、その後小型化されMDロッコール85mmF2として発売されました。MDロッコール85mmF1.7は、その製造本数が少ないことと、シャープな中にもやわらかいボケ描写をするということで、今でもマニアの間では評判のレンズです。
 ところで、京セラが2001年に発売した「コンタックスT3」に搭載された「ゾナー35mmF2.8」のレンズ構成図を右に示しました。フルサイズ35mm広角系単焦点ゾナーと名のついたレンズはこれしかなかったと思います。高屈折低分散ガラスの凸レンズを3枚使った4群6枚構成でありましたが、T3はいまもなおファンの多いカメラです。そこにゾナー35mmF2とさらに大口径レンズを搭載したソニー サイバーショットDSC-RX1が登場したのですが、MTF曲線に加え、AAレンズ含む非球面レンズ3枚を含む7群8枚構成とまでは発表されていますが、レンズ構成図は発表されていないのです。そしてソニーのいう“AAレンズ”とは、AAモールド(Advanced Aspherical-高度非球面成型)技術を用いた新開発の薄型非球面レンズの意味だそうです。ちなみに京セラ コンタックスT3のゾナー35mmF2.8には、マイナスたる型の歪曲がわずかにあったと記憶しています。ソニー ゾナー35mmF2も同じ描写傾向がありますが、偶然か、広角ゆえか、大口径ゆえか、それとも広角ゾナーというレンズタイプのためなのかはわかりません。
 なおフルサイズでなければ、APSフィルム時代には京セラのコンタックスTiX(1997年)のゾナー28mmF2.8があり、デジタルではAPS-CでNEX用にソニー ゾナーT*E 24mmF1.8ZAもありますが、24mmF1.8は35mm判相当にすると36mmとなり、レンズ構成も7群8枚だそうですので、サイバーショットDSC-RX1ゾナー35mmF2は意外とこれに近似したレンズ構成なのかもしれません。せっかくだから、ソニーのHPからゾナーT*E 24mmF1.8ZAの構成図を拝借し左に掲載しました。ところが偶然ですが、2013CESのソニー・ブースでサイバーショットDSC-RX1のバラバラモデルを見つけました。その中のレンズ部分だけをクローズアップして写したのが下左の写真です。さらにバラバラでない、ボディのレンズ部だけのクローズアップを下右に掲載しました。これだけでレンズ構成がわかるということはありませんが、光学系部分が、ボディ内部に深く入り込んでいるのがわかります。これはレンズ交換式のミラーレス機の比ではなく、レンズ非交換式ならではのもののように思うのです。そして過去の例からすると、たぶんこのサイバーショットDSC-RX1のバラバラモデルはCP+2013でも展示されるだろうと思うのです。 !(^^)!