写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ソニーα7Rを使ってみました

 ソニーから、フルサイズのミラーレス機「ソニーα7」と「ソニーα7R」が11月15日に発売になりました。ソニーはもともとAPS-C判のEマウントカメラとしてNEXシリーズを発売していましたが、NEXでなく、フルサイズにして“α”としたところがソニーがいかに力を入れているかということです。この「α7R」にはちょっとしたことがありました。発売後の翌週(24日)に写真仲間4人で鎌倉で紅葉を撮影しようと訪れましたが、カメラマン4人のうち、3人が「α7R」を持ってきたのです。撮影会直前にソニーの関係者に聞いたところでは、「α7」を購入した人のほうが多く、「α7R」の人はきわめて少数だというのです。「α7」は画素数が有効約2,430万画素、「α7R」は有効約3,640万画素と高画素で、解像感を高めるために光学ローパスフィルター効果を持たせていないのです。このほかにα7Rは1.5コマ/秒、α7は2.5コマ/秒の連写速度、ですが、α7では追随性と高速性よい位相差検出方式AFも搭載することで高速なAFを実現しているというのです。「α7R」は従来通りのコントラスト検出AFだというのですが、AF速度を従来比で約35%短縮した新AF方式ということですが、実際専用の「ゾナーT* FE35mmF2.8ZA」(写真右上)を使ってみると、かなり速くなっているのを実感できます。ちなみに左はマウントアダプターを介して“ウォーレンサック・ラプター51mmF1.5”、中央は“ニッコールP.C 8.5cm F2(俗称ダンカンニッコール)”というわけですが、これだけを見ても撮影会参加メンバーのレンズフリーク度がわかるというものです。そこで「α7」と「α7R」のどちらを選ぶかということです。もちろん購入は財布との相談ということもありますが、レンズフリークの人たちが「α7R」を選ぶには、画素数が多いことと光学ローパスフィルターレスだけではないと思いますが、ここではこれまでにしておきましょう。
 以下にさっそく実写結果を報告しましょう。

 【いつもの英国大使館正面玄関:ゾナーT* FE35mmF2.8ZA】 絞りF5.6・1/320秒、ISO100、AWB、三脚使用。ノートリミングで左右640ピクセルにリサイズ。いつもの通り、絞りF5.6に設定し、三脚使用での撮影です。ピントは画面中央建物の上についている紋章に合わせています。この部分の画素等倍をトリミングして掲載してみました。すでに、この場所ではさまざまなカメラを画素等倍で端から端まで見られるようにと京都ライカブティックのサーバーに記事とデータをアップしていますので、ご覧下さい。NEX-7との関係や、フルサイズで同じ画素数ニコンD800Eとの関係などは、それぞれの記事を見てください。英国大使館正面玄関の画面全体を見てすぐに気づいたのは、車止めの黄色いポールの発色傾向がかなりNEX-7に似ているソニーカラーであることです。またさらに高画素タイプではシグマDP1メリル、同じフルサイズのソニーDSC-RX1あたりと見比べるのも面白いです。いずれにしましても、英国大使館正面玄関のデータ、モアレの発生状況を見る国宝正福寺地蔵堂の撮影データは、京都ブティックのサーバーにやがてアップしますのでご期待ください。
 ところで、ソニーα7Rはなぜこれだけクラシックレンズファンに人気なのでしょうか? ズバリこれは、マウントアダプターでα7Rのボディにさまざまなレンズが「ライカM」同様に簡単に取りつくからです。しかもレンズ遊びは、やはり設計時のイメージサークルをそっくりそのまま使えるのがおもしろいわけで、フルサイズが最高ということになります。さっそく、先ほど紹介したダンカン・ニッコールP.C 8.5cm F2での結果を披露しましょう。

 【ポートレイト:ニッコールP.C 8.5cm F2】 絞りF2開放・1/160秒、ISO100、AWB、手持ち撮影。ノートリミングで左右640ピクセルにリサイズ。右には、ダンカン・ニッコールがいかにシャープかを示すために、右目の部分をトリミングして画素等倍で掲載しました。距離計が連動していないのにこれだけシャープにピントが合うのは、ライブビューで拡大して実際のピントを見ることができるからです。特に、このダンカン・ニッコールのシャープさは、EVFで覗いてピントを合わせているだけでわかるという代物で、レンズがいいのかEVFがいいのかと考えたほどです。いずれにしても、ピントを開放で何も怖がらなくてもいいのですから、ライブビュー恐るべしです。背景のボケも、わずかに球面収差の影響がでていますが、美しいボケ具合だと思います。
 さて、もうひとつ面白い結果をお見せしましょう。下の写真はライカ用のM39スクリューマウントレンズをライカスクリューマウント用レンズアダプター(1品物、これしかアダプターはなかったのです)を介して約1.5mの距離から撮影したものです。手元にスクリューマウントのライカ用レンズがあまりなかったのですが、左から、スーパーワイドヘリアー15mmF4.5、キヤノン25mmF3.5、ヘクトール2.8cmF6.3、ウルトロン35mmF1.7、ズマリット50mmF1.5での撮影結果です。一見してお分かりのように50mm、35mmは問題なく使えますが、焦点距離28mm以下は、周辺光量の低下、周辺部の偏色などが目につきます。周辺光量の低下は絞り値によっても変わるのでF5.6にセットしました。ただしヘクトールだけは開放のF6.3のままです。また、15mmは周辺に不要なものがたくさん写り込んでいますが、わが家のスタジオが狭いのでいろいろ写り込んだわけで、画像がケラレているわけではありません。さらに当然のこととして、レンズの設計タイプにもより周辺光量の低下率は変わります。ヘクトール2.8cmは対称型、キヤノン25mmはトポゴンタイプと古典的なデザインですが、基本的に古い時代のライカ用レンズは周辺光量の低下や周辺部の偏色は避けられません。もちろんボディにもよりますが、だからといってα7RとライカMの周辺光量低下や偏色は大きく変わるものではありません。実は全く同じ条件で、2台を比較してみた結果、そう思うのです。

 同じようなことをAPS-C判のNEX-7でやったことがありますが、同じ焦点距離のレンズでも画面サイズが小さいのに、フルサイズのα7Rの周辺光量低下と似たりよったりという印象がありました。それだけα7Rでは、広角レンズを意識してマイクロレンズを偏向させたということなのでしょう。僕は、所有していないのでやっていませんが、ライカ用のスーパーアンギュロン21mmF3.4も装着できると、鎌倉撮影会に参加したHさんは言っていました。この周辺光量低下と偏色は表現にもからんでくる問題でありまして、Hさんはけっこう気にならないようですが、僕は気になるほうです。これがいやなら、レンジファインダーイカ用のレンズを使うのでなく、一眼レフ用の交換レンズをアダプターを介して使えばいいのです。結果として、フォーサーズでいっていたテレセントリック特性が高くなり、周辺光量低下は少なくなるということになります。ソニーによると12月にはα7用のアプリを投入して、周辺光量低下と偏色を補正できるようにするそうです。

 【僕の通う駅:スーパーワイドヘリアー15mmF4.5】絞りF8・1/400秒、ISO100、AWB、手持ち撮影、Photoshopでグレイスケール化。ノートリミングで左右640ピクセルにリサイズ。鎌倉に同行したYさんとHさんは、ライカ用12mmや21mmで撮影した写真をいいぞいいぞと見せてくれましたが、僕は周辺の偏色でカラー画像では受け入れることはできません。そこでカラーデータをグレースケール化したのが上の写真です。これならいいです。画素等倍で拡大して見ると、高層ビルもシャープに写っています。周辺光量の低下も効果的です。道具は使いようですね。
 まだまだ撮影してみるとおもしろいことがたくさんあると思うのです。どんなカメラでもそうですが、時間をかけて使い込むことにより、使う側が熟練してくるでしょうし、愛着もわいてくるというわけで、これからが楽しみです。 !(^^)!