写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

△ と □ の絞り

 僕の所には、いろいろなレンズが持ち込まれます。先日もニコン研究会のIさんにお会いしたら、「コニレット」(1953年、小西六)のレンズをライカスクリューマウントで使えるようにしたからお貸ししますというのです。このレンズは「Konitor 50mmF4.5」で3枚構成のトリプレットタイプ、絞り羽根が四角いのです。この四角をボケとして画面の中に入れたら面白いよねと身近なInoさんに話したら、翌日「コンタレックス」用のカール・ツァイス「Planar 85mmF1.4」を持参され、こちらの絞り羽根は三角形のおむすび型だから、ぜひ一緒に試してくださいというのです。そうですかと、さっそく使ってみることにしましたが、Inoさんいわく、コンタレックス用のマウントアダプターはマイクロフォーサーズ用しか売っていないというのです。そしてレンズとマウントアダプターは持っているけれど、マイクロフォーサーズボディは持っていないというのです。世の中いろいろな人がいるのですね。ということで少し古いけれど、ボディは手元にある「ルミックスG1」を両方のレンズに使いました。

 プラナー85mmF1.4はマウントアダプター1つでボディに取り付きますが、コニター50mmF4.5はライカスクリューマウントに加工してあるので“ライカM→マイクロ4/3”に変換して装着しました。ちなみにこのコニターレンズのライカスクリューマウントへの加工は自作だそうで、鏡胴は分割でき前部分を取り外すと同じM39のライカスクリューでもフランジバックの短い「パクセッテ」のアダプターとして使えるというのですから、なかなかの優れものです。というか、好きな人はここまでやるのですね。ということで、2本のレンズを正面から見てみました。左がプラナー85mmF1.4、右がコニター50mmF4.5です。絞りはF8〜11ぐらいに絞ってありますが、△と□ の絞り羽根形状はご確認いただけたと思います。以下それぞれが、どのような描写をするか撮影してみました。

プラナー85mmF1.4】絞りF8の描写です。左側が前ボケに△が、右側は後ボケに△が発生しています。前ボケの場合のピント位置は∞で、後ボケの場合のピント位置は手前の小さな凧に合わせてあります。

プラナー85mmF1.4】さて、一般的なフィールドでの撮影でどうかというと、このように撮れます。ほとんど∞に近い位置ですが、プラナー85mmF1.4はかなりシャープで近代的な描写を示します。マイクロ4/3ですから、35mm判で170mm相当の画角となります。絞りF8・1/400秒、ISO100。

【コニター50mmF4.5】絞りF11の描写です。左側が前ボケに□が、右側は後ボケに□が発生しています。前ボケの場合のピント位置は∞で、後ボケの場合のピント位置は手前の小さな凧に合わせてありますが、掲載寸法が小さいので後ろの電球が□にぼけているのは少しわかりにくくなっています。

【コニター50mmF4.5】一般的な撮影です。撮影距離は約10mですが、マイクロ4/3ですから、35mm判で100mm相当の画角となります。トリプレットタイプは、一般的には画面中心部はシャープであるといわれていますが、窓の右側の木の枝などからもそのような描写特性は確認できます。画面サイズの小さいマイクロ4/3で使ったことが幸いしているのかもしれません。絞りF8・1/125秒、ISO100。
 どちらのレンズも、素晴らしい描写を示しました。レンズの絞り形状は理想的には円形がいいのですが、だからといって一般撮影場面では絞り形状を出すのはなかなか難しいのです。そこで、あえて△や□を出そうと考えるなら、ポートレイト撮影などが最適で、手前に人物を配して背後から木漏れ日のさすような場面、もしくは背後に点光源のイルミネーションがあるようなシーンがよろしいかと思います。もちろんピントは人物に合わせるのです。レンズはだいたい100mm前後の準望遠域の焦点距離が絞りの形を発生させやすいです。また、このような効果をだすためには、一般のレンズで絞り開放にして、フィルターの部分に、黒い紙で△や□、さらには☆、♡形などを絞りとして抜いても同じように得られるはずです。興味のある方は、いろいろと試してください。