ライカMモノクロームが、ライカM9と同じ1,800万画素と同じ画素数のCCDであっても、ベイヤー配列のR.G.G.B.の色分解フィルターがないことにより高画質であることは、各方面でいわれてきました。では実際どれだけ高画質なのか、簡単に目視できるようにしたということで、“写真にこだわる”のライカMモノクローム試用レポートは大きな反響を呼びました。そのとき僕は、ライカM9より1.6〜1.7倍程度よいのではという推測をだしまして、元カメラメーカーの企画にいた学者肌のKMさんに、解析をお願いすると書きましたが、このたびやっと返事がきましたので、以下に紹介しましょう。
ベイヤ−配置は、「いかに少ない画素と情報量で、色と解像度をうまくだすか」、そこを基に作られた技術です。そのために単純原色配置に比較すると、種々不満がある反面、利点も多く、それなりの解像度を確保しているのです。そのために単純白黒の撮像素子に対して、横の解像度が半分にならない理屈になると思います。たぶん市川さんのいう、“感覚的に1.6〜1.7倍程度”という評価は正しいと推定します。しかし、1つの画素が2μmでも十分な電荷量を得られるようになれば、イメージセンサーは4,000〜6,000万の高画素が一般化し、フィルター配置も原色配置となり、画素からくるサンプリング定理で考えた一般界における周期構造うんぬんもありますが、ここまで画素が小さくなると、レンズ自体が光学ローパスフィルター的存在となり、ローパスフィルターが不要となります。原色フィルターで、光学ローパスフィルターなしの結果は、素晴しい画質と色のデジカメ時代がくると考えられます。まさに、現在はデジタル画像の過渡期であります。
ただ、あまり現行技術の解説にかかわらずに、むしろ、なぜデジタル時代に、銀塩で映画をうんぬんしたり、銀塩写真にかかわろうとする若者が存在すること、彼らがなにを根拠に銀塩写真に興味をもっているのかなどを考えたほうが面白いと思います。たぶん原色配置になれば、多くの問題がなくなり、電荷量が著しく増えればS字の感度特性も作れると考えられます。かつてはやったホームビデオの補色フィルター配置すら、過去となっています。イメージセンサーは、本来LCDなどの表示素子のように、各画素に対してRGBそれぞれの受光部を配置することが理想ですが、各画素の受光部毎に微細なマイクロレンズを用いて集光するために、レンズの動作を考慮すると円形に近い画素形状が望ましく、素子の形状を細長くすることは困難です。また、各画素3色とすると素子の規模が約3倍に増えることになり、製造上は不利となります。このために、一般的には各素子ごとのカラーフィルターをベイヤー(Bayer)配列として、総画素数の削減を図っているわけです。なお撮像素子1枚によるカラー撮影を、単板方式といいます。
ベイヤー型配列では、撮像素子の総画素数Nに対して、緑の解像度はN/2、赤および青の解像度はN/4になるため、各画素毎に周辺の画素の出力を用いて補間演算を行うことによりN個のRGBの組を作り出している。補間演算の方式により画質が影響を受けるため、各カメラメーカーは独自に処理方法を考案しています。ベイヤー型配列で、緑の画素を2倍設けているのは、人間の眼の分光感度が緑付近をピークとしており、緑の解像度が見かけ上の解像度を向上させるためです。
さて、ここまで書きましたが、再び実写でその高画質を追いかけてみました。なんとこの時期「ライカMモノクローム+APOズミクロン50mmF2 ASPH.」で、ポートレイト撮影をする機会に恵まれたのです。撮影した写真を示しますが、撮影データは、絞り優先AE(F2.8・1/90秒)、ISO感度640。撮影は混雑した場所でしたので、ピントの確度を増すために絞りは1絞りだけ絞っての撮影となりました。まず、右のモデルさんをご覧いただくとわかりますが、ライカM9と同じ1,800万画素なのにすごい解像感をもっているのです。さらに左のモデルさんの腕から肩のあたりを拡大して見ていただきたいのです。顔や目に対してピントは合っていないのですが、右のモデルさんの目と同じ距離にある肩の産毛や髪の毛の解像感は出色です。APOズミクロン50mmF2 ASPH.とライカMモノクロームが恐ろしいレンズでありカメラであることがお分かりいただけるでしょう。