写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ペンタックスK-3を使ってみました

 各社から大型新製品が相次いでおり、久々にカメラ業界が活況を呈しています。話題性からいうと、ソニーα7RやニコンDfがもっともホットかもしれませんが、実は少し前の11月1日に発売されたリコーイメージングの「ペンタックスK-3」はカメラスペックとしては地味ですが、僕的には大いに気になる一眼レフカメラなのです。なぜ気になるのかということですが、ペンタックスK-3は、APS-C判で光学ローパスフィルターレスの2,400万画素のCMOSセンサーを採用して、高い解像感を実現させていますが、光学ローパスフィルターを非搭載でも露光中にCMOSセンサーを微小駆動させるという独自な技術で、偽色やモアレを軽減させるというのです。使用にあたっては、メニューの中からローパスセレクターを選択すると、解像感重視の[OFF]、解像感とモアレとのバランスを重視した[TYPE1]、モアレ軽減を重視した[TYPE2]を選べるのです。つまり、ローパスフィルターなし、ローパスフィルター効果弱、ローパスフィルター効果強の3モードをユーザーが任意に選べるというのです。ペンタックスは2012年10月に光学ローパスフィルター搭載の「K-5II」と光学ローパスフィルター非搭載の「K-5IIs」を発売しています。この2機種は光学ローパスフィルターを物理的に搭載・非搭載で、効果を変えているわけですが、「K-3」のローパスレス効果は、1台のボディで撮像素子であるCMOSセンサーを微小駆動させることによって光学ローパスフィルターの効果をON・OFFできるのです。駆動原理は、ペンタックス独自のボディ内蔵手ぶれ補正機構「SR(Shake Reduction)」手ブレ補正の応用だと考えられます。具体的にはバイヤー配列のRGGBのユニット単位で考えるようですが、1画素を超えない範囲で、物理的に駆動させるというものです。これ以上の原理は、あまりにも難しく専門的ですので、ここまでにします。
 光学ローパスフィルターのあるなしは、撮影した画像のモアレや偽色の発生に関係するわけですが、実際、「K-3」のローパスレス効果の写りはどうなのだろうかというのが、最も気になる部分です。まず撮影レンズは“SMCペンタックスDA35mmF2.8マクロLimited”を用意しました。なぜマクロレンズかということですが、モアレはどのような条件で発生するのか、簡単にいうと、1)被写体が微細な繰り返しパターンであること、2)撮像素子の解像度が低いと、3)レンズの解像力が高いとき、などです。このあたりはおおざっぱなので異論があるかも知れませんが、逆にいうと、高画素撮像素子のカメラ、解像力の低いレンズ、ピントが合っていないシーンではモアレは発生しにくいということになります。つまり、高解像力なマクロレンズを使用すればモアレが発生しやすくなるわけです。さて撮影場所ですが、実は僕は身近な被写体で、モアレの発生しやすい場所を見つけています。すでにこの場面で、さまざまな機種のモアレ発生具合をテストしていて、やがて発表しようかなと密かに準備を進めていましたが、今回はその場所で撮影した「K-3」の撮影データをお見せすることにしましょう。

【国宝正福寺地蔵堂】ローパスセレクター[OFF]、絞りF5.6・1/400秒、ISO200、AWB、三脚使用。ノートリミングで左右640ピクセルにリサイズ。

【ローパスセレクターを変えて撮影】左から、ローパスセレクター[OFF]、[TYPE1]、[TYPE2]。撮影データは基本的には上の全画面掲載と同じです。元データをPhotoshop上で画素等倍100%に拡大し、同じ部分をトリミングして3種を比較のために貼り合わせて掲載。ふだんさまざまな機種で同じように撮影していますが、「K-3」はもともとモアレが発生しにくい高画素タイプなので、簡単には見分けはつきにくいですが、明らかに[OFF]ではモアレの発生が認められ、[TYPE1]、[TYPE2]と選択することによってモアレは徐々に弱まっていくのがわかります。この画面は、あくまでも画素等倍への拡大ですので、実際プリントするときはさらにシャープになります。
 ということで、「K-3」のローパスセレクターの効果は十分に認められましたが、撮影場面によってはさらに効果的なことがあるかもわかりません。ただ、あまりモアレ発生を気にしていてもきりがありませんので、一般撮影場面での画質をお見せしましょう。

【木の実:SMCペンタックスDA35mmF2.8マクロLimited】近接した手持ち撮影ですが、AFでむりなく撮影できました。木の実の繊毛がシャープに描写されている反面、ボケ味は柔らかくくせがありません。ローパスセレクター[OFF]、絞りF5.6・1/125秒、ISO200、AWB、手持ち撮影。ノートリミングで左右640ピクセルにリサイズ。

【ポートレイト:SMCペンタックスFA43mmF1.9Limited】フィルムカメラ全盛の1997年に発売されたフルサイズ用のパンケーキレンズです。当時は、レンズの味として収差を残存させたということで、一時期デジタルがでたときには不向きだとアナウンスされましたが、このカットをご覧になってお分かりのように、フレアっぽさを残しながらシャープな描写です。向かって左側髪の毛の下にモアレがわずかに発生していますが、撮影後にカメラ内のメニューからモアレを軽減できる処理も可能です。ローパスセレクター[OFF]、絞りF2.8・1/200秒、ISO200、AWB、手持ち撮影。ノートリミングで左右640ピクセルにリサイズ。
 いかがでしたか。スペースの関係もあり、さまざまな場面での実写や、いつもの英国大使館での撮影も終えていますが掲載は省略しましたが、当然、APS-C判なのでそのぶん小型・軽量であり、ペンタックスのフラッグシップ一眼レフらしく、実力はなかなかのものです。使っていて特に好感が持てたのは、発色がすっきりしていたことです。ユニークなカメラづくりを推し進めるリコーのペンタックス一眼レフ、次の手は何かと考えてしまいした。 ( ^)o(^ )