写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

まだまだカメラのイメージセンサーは進歩する!

 キヤノンから「EOS 5Ds」と「EOS 5DsR」が発売され、5,060万画素で常用感度ISO100〜6400、拡張感度ISO50〜12800に驚いていたら、ソニーから「α7R MarkII」が発売され、裏面照射式の4,240万画素、常用感度でISO100〜25600、拡張感度でISO50〜102400とその高感度とライカの超広角レンズでも周辺光量の低下の少なさに感激していたら、ニコンからD5が発表され、2082万画素だけど、常用感度でISO100〜102400、拡張感度でISO50〜3280000相当の感度が得られると知って、ISO328万てどんな感度とびっくりしていたら、キヤノンから「EOS-1DX MarkII」が発表され、フルサイズで2,020万画素、デュアルCMOS AFセンサーで、常用感度でISO100〜51200、拡張感度でISO50〜409600だというのです。それぞれに驚いて、感激して、びっくりしていたら、今度はパナソニックが“有機薄膜を用いたCMOSイメージセンサーによる広ダイナミックレンジ化技術を開発”とぶち上げたのです。多くの一般ユーザーからは、もうお腹一杯という感じの声を聴きますが、これは高解像度に対してだと思うのです。その高解像度に関しては、昨年11月の「Canon Expo 2015」では、フルサイズで1億2000万画素の一眼レフ、APS-Hサイズで2億5000万画素のカメラが技術展示されました。用途はそれぞれですが、やればできることを示したわけです。
 さて、今回パナソニックの発表した技術は、現在は学会発表段階で実用化への道は未知数ですが、少なくともこの時期に発表するということは、いずれやがてはと期待できるわけです。パナソニックによると、富士フイルム製の有機薄膜を用いたCMOSイメージセンサーで、明暗差の大きいシーンを、従来比100倍のダイナミックレンジまで、時間差なく撮影できる広ダイナミックレンジ化技術を開発し、光電変換を行う有機薄膜と回路部での電荷蓄積機能を独立に設計可能な特長を活かし、従来は困難であった、ダイナミックレンジ123dBの明暗差のあるシーンの撮像においても、明るい場所でも白とびなく、暗い被写体でも鮮明で質感豊かな映像を再現するというのです。この技術発表は、2013年6月11日に富士フイルムパナソニックと「有機薄膜を用いた有機CMOSイメージセンサー技術を開発、業界最高のダイナミックレンジ、感度により、鮮明で質感豊かな映像が可能」として発表していたのを、改めてパナソニックが、この2016年1月31日〜2月4日に米国サンフランシスコで開催された国際学会ISSCCInternational Solid-State Circuits Conference)2016にて発表し、プレス発表したのですから、より現実に近づいたのでしょう。
 その原理イラストを下に示しますが、入射光線範囲を60°に拡大し、忠実な色再現性が可能。従来比1.2倍の感度を実現し、暗いところでもクリアな映像を撮像可能ということで、監視・車載用カメラ、業務放送用カメラ、産業検査用カメラ、デジタルカメラなど幅広い用途に提案していくというのです。

≪裏面照射タイプCMOS撮像素子(左)と有機薄膜CMOS撮像素子(右)との比較≫

≪高ダイナミックレンジを達成するために1画素2セル構成の技術がとられている≫
 さて、ここで僕なりの考え方を示しますと、企業が技術開示するときには、実現が間近なときと、そのプロジェクトチームが解散するときに、せっかくだから今までの成果を世間に紹介して記録として残しておこうというのと、2種類あると思うのです。僕は技術雑誌の編集を約40年間やってきましたので、多くの事例をつい数年前まで見てきました。その経験からの考えですが、今回の技術発表は前者の例であると思いたいわけです。

パナソニックは、2013年にはカラーフィルターを用いずにマイクロ分光素子を用いた回折現象によりR.G.B.を分光する別のイメージセンサー技術を発表しています。