写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

キヤノンとニコン 創生期のカメラ

 数年前のことですが、日本のカメラ史を解説する講演会が開かれました。第一部戦前の部が終えて、何か質問はありませんかということになった時に、一人の方が手をあげて質問されました。「話を聞いていると、オリンパスキヤノン、小西六、ミノルタはでてくるけど、なぜニコンを入れないのですか」ということでした。質問された演者は、言葉に困っていましたが、実はニコンがカメラを作り出したのは戦後1948(昭和23)年の「ニコンI」からなのでした。そして、キヤノンは1935(昭和10)年の「ハンザキヤノン」からだったのです。おそらくその方は大のニコンファンだったのでしょうが、ニコンの名前がでてこなくて思い余って質問されたのでしょう。
 話は変わりますが、このたび日本カメラ博物館のミニ展示コーナーに『国産小型カメラのはじまりと発展“精機光学研究所と日本光学工業”』と題した展示が始まりました。精機光学研究所はご存じのとおり現キヤノンであり、日本光学工業は現ニコンであるわけです。そしてキヤノン最初のカメラであるハンザキヤノンに組み込まれた距離計とレンズは日本光学工業が製造を担当しました。今となってはライバルである両社は、今日までさまざまな競争のなかにおいて、日本のカメラ産業が世界の王座にあることを守り続けている原動力になっていることは間違いないでしょう。今回の展示品は以下のようになります。

【精機光学研究所(キヤノン)関連】ハンザキヤノン試作機、ハンザキヤノン初期型、ハンザキヤノン量産前期型、キヤノン標準型、キヤノン最新型、キヤノン新標準型、キヤノン普及型、キヤノン普及型スロー付、セレナー20cmF4試作品、ニッコール3.5cmハンザキヤノン用試作品

日本光学工業(ニコン)関連】ニコンカメラ(I型)、ニコンカメラ(I型)三木淳氏使用、ニコンM型、ニコンS型、ニコンS2型、ニコンSP型、ニコンSP型名取洋之助氏使用、ニコンS3型、ニコンS4型、ニコンS3M型、ニコンSP復刻版(製造番号001番)、ニコンS3(2000年記念モデル)、ニッコール12cmF4.5、エルメス5.5cmF3.5(精機光学製「セイキ引伸機」用)、ニコンフィルム
 いかがですか、キヤノンニコンの創生期のカメラやレンズを一度に見れるのはまたとないことです。展示はミニですが中身はビッグです。

 このほか、日本カメラ博物館では、歴史的なフランスのカメラ約350台を展示した「フランスカメラ展」を2013年2月24(日)まで開催。JCIIフォトサロンでは「堀市郎・前田寅次作品展―Japanese Photographers in America 1910-1930 ―」を年内12月25日(火)まで開催しています。1930年代初頭、ニューヨーク在住の堀市郎は写真館で肖像写真に励み、ロサンゼルス在住の前田寅次は国際サロンへの応募を重ねました。今回は当時の貴重なオリジナルプリントを展示。約80年前の印画を見ることができます。