写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

キヤノン「カンノン」誕生から80周年

 キヤノンの今日の礎ともなるレンジファインダーカメラの試作機が誕生してから、今年2014年で80周年だそうです。キヤノンはこれにちなんで、去る8月19日に“カメラ最初の試作機「カンノン」誕生から80 周年”というニュースレリーズを発表しました。それによると、『1934 年、キヤノンから国産初の35mmレンジファインダーカメラの試作機である「KWANON(カンノン)」が誕生しました。試作機「カンノン」は、観音様の慈悲にあやかり、世界で最高のカメラを創る夢を実現したいという願いを込めて名付けられ、レンズにもブッダの弟子の名前に由来する「KASYAPA(カシャパ)」という名前が付けられました。また、カメラボディの軍艦部には千手観音のマークが刻印(右上)されています。』というのです。
 キヤノンの「カンノン」試作機に関しては過去にも話題が豊富でしたが、まずはキヤノンそのものがそのように位置づけているので、僕自身は今回の「カンノン試作機誕生から80周年」の発表は、単なるカメラ作りから80年という区切りをアッピールするのではなく、カンノンという試作機をツールにして、新しい動きの予告だと考えています。早い話、大型の新製品がでてくるだろうと考えられるわけですが、それが何で、何時なのかは、正式な発表を待つより致し方ないわけです。へたに詮索するより、僕的な経験からはガサネタに踊らされることなく、静かにその日を待つのが一番だと思うのです。

 さて、上の写真をご覧ください。まず、左)1995年ごろにキヤノンが発表した試作機「カンノン」のレプリカの写真です。なぜレプリカかというと、当時はその「カンノン」の試作機が1台しかなく(今もたぶん)、海外の販売会社がキヤノンの歴史カメラを展示するのに必要だということで3台ほど、ハンザキヤノンも含めて製作したしたというのです。この製作は困難を伴い、一番苦労したのは古さをどのようにだせるかということだったようです。中)今回8月19日に配信されたニュースレリーズに添付された試作機「カンノン」です。これが今から10年ほど前に製作されたレプリカのオリジナルモデルであったわけで、当然のこととしてそっくりであるわけです。右)は、1936年にキヤノン製35mmレンジファインダーカメラとしての第1号機として発売された「ハンザキヤノン」です。なぜハンザキヤノンかということですが、当時の販売代理店であった近江屋写真用品の協力があってこのようなダブルネームになったわけです。この写真の実機は、2000年ごろ、当時は神田神保町にあった近江屋写真用品の金庫と課長の机の引き出しにあった2台のうちの1台です。この試作機とハンザキヤノンで興味ある点は、撮影レンズと距離計連動の光学系、焦点調節機構を含むマウント部は日本光学製であったことです。このあたりは、さまざまな文献にも詳しいですが、意外とその事実は最近のニコンキヤノンの若いカメラ技術者にはあまり知られていないようです。なお、ここに写っているハンザキヤノンのレンズには“Nikkor 1:3.5 F=50mm”と刻印されています。詳しいことは、キヤノン公式Webサイトの、カンノン(試作機)ハンザキヤノン誕生の項をご覧ください。なお、ハンザキヤノンは、日本で最初のレンズ交換式高級精密カメラとして、日本カメラ博物館の歴史的カメラとして認定されています。
 ということで80周年記念モデルは、レンジファインダー機?なんてことはまずないでしょう。それなりの新規性を持った一眼レフだろうと僕は考えますが、当然複数機種ということもありますので、9月16日からのフォトキナ2014の開催に合わせた発表を心静かに待ちましょう。