写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

「のぞきからくり」と「画像からくり」

 「のぞきからくり」と「画像からくり」、皆さん違いはわかりますか?
 「のぞきからくり」は11月11日まで日本カメラ博物館で開催されている特別展のタイトルです。正確には“江戸から明治へ−画像からくりの世界”と名づけられていますが、展示内容は多岐にわたっており、天台遠眼鏡 (江戸期の天体望遠鏡)、のぞきからくり (1850年頃日本の美麗な朱塗り)、自動写真鏡 (1910年頃日本の立体写真ビューワー) 、プラクシノスコープシアター (1879年フランスのパラパラ動画装置)、カメラ・オブスキュラ (1830年頃) 、メガレトスコープ (1862年イタリアの大型イメージビューワー)、などなど、今回の展示はカメラオブスクラのように名前は“カメラ”とついていても、いつものように感光材料など記録材料を伴ったカメラの展示ではありません。カメラ以前の身近な光学系を使った望遠鏡であったり、カメラオブスクラであったり、幻灯機であったり、立体写真や、のぞきからくりであったりと、江戸から明治時代の光学・映像機器です。たとえば、天体望遠鏡は芸州浅野家使用の1800年頃に作られた2.5m以上の大型なものであり、数多くの「とおめがね」や「オペラグラス」には和紙に柿渋と漆やベンガラを塗って強度を増して彩色した一閑張り、ガラス細工、象牙製、真珠母貝、彩色陶器など美術工芸品的要素をもたされたものも多く、当時はこれら光学機器が大変高価であったことがうかがわれます。いずれもふだんはなかなか目にすることはできない大変に珍しい光学機器類で、日本カメラ博物館コレクションの奥深さを示すものとして高く評価されています。

 一方、「画像からくり」は、来る10月13日(土曜日)の午後1時から日本カメラ博物館で開かれる桑山哲郎さんによる日本写真学会と共催の講演会“画像からくりの世界”のタイトルです。桑山哲郎さんは、日本写真学会の理事で、キヤノンに勤務のかたわら、学生時代からホログラフィや回折光学の研究に関わる映像技術史研究家であり、ホログラフィなど立体映像おもちゃの膨大なコレクターとしてしても知られています。講演会当日は、動くモアレの絵本、円筒鏡と円錐鏡のアナモルフォーズ、ゾートロープ、フェナキスチスコープ、パノラマ画面のステレオビューアーなど、多くの現物を持込披露し、解説します。なお参加者には自作用アナモルフォーズのプリントをおみやげとしてプレゼントします。
 講演会“画像からくりの世界”は入場料300円ですが、当日講演会参加者は特別展“江戸から明治へ−画像からくりの世界”とライカや日本の歴史的カメラを常設展示した「日本カメラ博物館」を無料で見学できます。
 桑山さんは、鏡推史のペンネームを持ち、古くから各方面にホビーとしての光学や光学史を寄稿し、かつてニコンに在籍した金野剛志さんと双璧をなす市井の光学ライターでもあります。講演会当日は、お2人とも日本写真学会の会員でもありますので、会場で顔合わせとなるかも知れません。金野剛志さんファンの方もぜひご参集下さい。

せっかくご案内いただいたのですが、残念ながら金野剛志さんは大学の授業のため桑山さんのご講演に出席できないそうです。みなさまによろしくお伝えくださいと申しておりました。