写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

フルサイズで小型の一眼レフ

 今年2月に開催された“CP+2012”の海外プレス向け質疑応答というのを見ていたらおもしろい質問が飛び出しました。フランスからきたという女性写真家が「なぜ、プロ用の一眼レフカメラはもっと小型で軽くならないのですか?」と聞いてきたのです。なるほど、確かにそうで、僕自身も最近はプロ用とされるフルサイズ機を持ち出す機会は極端に減って、コンパクトやミラーレス機の出現頻度が高くなっているのも事実です(もちろん年齢と体力からそうなってきました)。それに、昨今世間でのミラーレス機の台頭は小型・軽量とは無関係ではないわけです。確かそのときの回答は、前向きに善処します的な模範解答であったと思うわけですが、実はニコンキヤノンもその時点で小型・軽量のフルサイズ機の製作にしっかりと取り組んでいたのです。具体的には、この9月のフォトキナのタイミングに合わせて発表された「ニコンD4とD600」「キヤノンEOS-1DXとEOS 6D」の関係でもあるわけです。そこでプロ用機というのはどのようなものを指すか細かいことは別として、とりあえずはあらゆるシーンに対応できる一眼レフでフルサイズ機であるとするならば、ニコンD600もキヤノンEOS 6Dも十分なプロ用機であるわけです。そこで、どのくらい小型化されたかを見るために、ニコン最初のフルサイズ機「ニコンD3」(2007年)と、この9月に発売されたばかりのニコン最新の小型機「ニコンD600」を前後に並べてみました。ここでは数値的には追いかけませんが、どう見てもD600は小型・軽量化されているのがよくわかります。「キヤノンEOS-1DXとEOS 6D」の関係はどうでしょう。残念ながら、こちらは未発売なので現物は手元にありません。
 そこで、メーカースペックだけでニコンD600とキヤノンEOS 6Dを比較してみることにしました。
ニコンD600:2,426万画素、約141(幅)×113(高さ)×82 mm(奥行)、約850g
キヤノンEOS 6D:約2,020万画素、約144.5(幅)×110.5(高さ)×71.2(奥行)mm、約755g
 この仕様で見る限りは、キヤノンのほうが小型・軽量であるわけです。ところが一眼レフはシステムカメラであり、交換レンズもありますから、そう簡単にそれぞれ気に入った方に乗り換えるわけにはいきません。でもフルサイズ一眼レフの小型・軽量化は、ある意味でまだまだこれからだと思うわけです。そこで少しだけおもしろい実例をお見せしましょう。1996年に発売されたAPSの「ミノルタベクティス300」と35mmコンパクトの「ミノルタTC-1」です。どちらも同じ時期に開発されたのでしょうが、フィルム幅24mmのAPSベクティス300より、フィルム幅35mmのTC-1のほうが小さいのです。APSはその特長に小型・軽量を上げていたわけですが、現実35mmフィルムチームが頑張りすぎて、スタートからこういう珍現象が起きてしまったのです。もちろん一眼レフとコンパクトは構造的に違うということはあっても、やはりこの例を見てわかるように、デジタル一眼レフ同士でもAPSに対しフルサイズはまだまだ小型・軽量化できると思うのです。しかしボディばっかり小型化しても、レンズがそのままであるわけですから、最終的にはほどほどにバランスの良いところへ落ち着くのではないかと思うのです。