写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

長徳さんとLeica S1 Proを使う


 田中長徳さんとまた北海道にやってきました。昨年11月にも長徳さんと来ましたが、目的は札幌時計台前の「IMAI collection」への訪問でした。今回も実は同じ目的ですが、昨年きたときに長徳さんが「LEICA S1」を見て、『オッ!こんどはS1で写真を撮ってみたいな』といったのです。オーナーの今井さんはしっかりとその言葉をおぼえていたようです。その後時間をかけてS1で撮影できる環境を整えて、改めてこの時期にさあどうぞというわけです。そのライカS1プロですが、特異なデザインが印象的ですが、ライカとしては最初のデジタルカメラでありました。まずはライカS1の上に最新M9を乗せて記念写真ですが、わずか15年間でこれだけデジタルカメラは変化したのです。僕の調査によるとS1プロに割り当てられたシリアルナンバーは2286001−2287500までで1,500台となります。ところが関係者によると日本ではわずか1台しか販売されなかったというのです。ここにあるS1プロ個体のシリアルナンバーは2286125、つまり125台目というわけでしょうか。発売は、デジタルはまだまだこれからという1996年8月30日のことであり、その現物をじっくりと見た人はあまりいません。僕も昨年9月に行ったゾルムスのライカカメラ社訪問時に工場のショーケースに1台存在しているのを確認しています。そのほかの1台が札幌「IMAI collection」にあるわけですから、長徳さんならずとも撮影したくなるのはしょうがないですね。
 このS1は、一見すると両手で構えて撮影できる感じですが、現在のデジタルカメラのようにワンショットタイプではなく、有効約2,500万画素のスキャンタイプとして作られており、機種名であるS1は“Scanner 1”の略称です。このカメラのユニークさは外観デザインだけでなく、レンズマウント部を交換すればライカRのほか、キヤノンニコンコンタックスミノルタのレンズも装着可能というものでした。価格は、日本国内で300万円ぐらいしたと思われます。写真はS1からレンズを取り外してシャッターを切り、CCDがスキャンしている間に撮影しましたが、ラインセンサーがよく見えます。ちなみに開口は36×36mmであり、本スキャンで5139×5139ピクセルでの撮影ができました。

 ところでデジタルカメラには、「3ショットタイプ」、「スキャンタイプ」、「ワンショットタイプ」と3種類あります。3ショットタイプはフィルムカメラの時代もありましたが、3色分解露光ですから、動いている被写体は狙うことはできません。ただこのタイプはモノクロ撮影ならば分解露光をせずに1回露光ですみます。また3色分解露光を、1回ですませることができる「3板式」もあります。こちらも銀塩カメラや画素数をかせげなかったスチルビデオカメラの時代にもありましたが、現在は業務用のビデオカメラにあり、もちろん動いている被写体を狙えます。スキャンタイプは、画素数をかせげなかった時代の業務用デジタルカメラに多く、簡単にいえばラインセンサー搭載のフラットベッドスキャナーのようなもので、ライカS1もそうですがスタジオ内で静止画を撮影するのに適しています。そしてワンショットタイプは、すべてのカラーフィルムがそうであったように、1回の露光で撮影できます。
 さて実際の撮影にあたっては、ライカS1プロはスタンドアローンタイプでないために、動かすためのパソコンが必要となります。そのために当時のOSであるWinndowsMEを用意し、Photoshopプラグインソフトとして当時用意されていたS1プロ用のドライバーソフトをインストールしました。そのためのPCもHPのマシンを改造して専用に製作されました。撮影にあたっては、本来はご近所時計台を、大通公園テレビ塔をということで、可動用の電源まで用意されましたが、残念ながら当日は台風12号の影響で、屋外での撮影は断念、今井コレクション窓からの撮影となりました。撮影は、まさにフラットベッドスキャナーと同じでした。プレスキャンに約30秒、本スキャンに約2〜3分となりました。シャッターはS1側からも切れそうですが、パソコン側から切りました。電源ケーブルとは別に、S1カメラとパソコンの間は光ケーブルでつながれていました。
 最後に撮影した画面をお見せしますが、本来は静止画を撮るためのカメラで、風景を撮ったわけですから、木々の葉は動いてしまい、赤・青・緑と色ずれを起こしています。くわしいことは、アサヒカメラの近号にて長徳さんが報告するようです。