東日本大震災の津波で被災したカラープリントを“思い出は流さない”ということで、各地で汚染されたカラープリントの洗浄作業をボランティアの方々がやられているようですが、ある団体の調査報告によると宮城県内のある地域だけでも125万枚、被災地全体で1億枚もあるというからこれは大変な作業です。僕のブログでも「いま僕たちにできること」、「津波から回収された思い出の写真」と関連した内容を記載しましたが、まだまだこれらも洗浄作業は当分続くようです。
さて、今日のテーマはこのようなことと関連は大いにあるのですが、少し違うのです。実は6月20日-21日とビックサイト東京国際展示場で開催された「PHOTO NEXT 2011」という展示会に行って来た報告です。このフォトネクストは、この2月に横浜で開かれた「CP+2011」が一般ユーザー向けが主体であるのに対し、写真館やスタジオなど写真を職業とする人々を対象とした展示会に特化しているのが特長です。この種の展示会には、写真界の新しい動向を知るために可能な限り今までも見学していますが、今年は目的を持って見に行きました。その目的とは「今、カラープリント技術は?」ということで、カラープリントの方式はどのようなものがあるかということを知りたかったからです。実は、昨年同じ会場にきて、富士フイルムのブースでおもしろいことを見つけたのです。カラープリントの各種実演をやっていて、サンプルプリントを配布していたのですが、明らかに今までの銀塩カラープリント方式とは違う方式が展示の主流となっていたのです。そのときの方式は、“染料熱昇華方式(サーマルプリント)”、“電子写真(ゼログラフィー)方式”、“インクジェット方式”などであったのです。僕の世代にとっては営業用の写真といえば銀塩プリントであると思っていたのですが、確実に世の中は変化しているようです。僕の良く通る駅ビルの中に設置されたセルフプリンターはサーマルプリントですし、有名コンビニのコピーマシン兼用のセルフプリンターは電子写真方式です。インクジェット方式のプリンターはセルフ方式にはあまり見たことありませんが、業務用の大型プリンター、個人で使うA3ノビクラスまではインクジェットがかなりの割合を占めているのは、ご存じのとおりです。さて、これらに共通していることは、非銀塩プリント方式ですが、いずれもDRYプリント方式というカテゴリーに分類されるものです。今までの銀塩プリント方式がWETで湿式であったわけですが、ここが一番、異なる点だと思うのです。では、プリントクォリティーはというわけですが、同じ会社が、同じブースで比較して見せているわけですから、方式の違いによる性質の違いはあっても、ブラインドで銀塩を含めて“利き酒”ならぬ利きプリントをやったら、一般の人にはその違いは画質からはわからなく、唯一“バックプリント”を見るくらいしか判別はできないかも知れません。そんな意識を持って各社ブースを見て歩きましたが、1)昇華型、2)インクジェット、3)銀塩写真方式というような出現頻度であったと思うのです。それも、昨今の新しい写真の見せ方として流行ってきた“フォトブック”は圧倒的に昇華型が多いと見ました。もちろん、インクジェット、銀塩方式、電子写真方式のものもあるのですが、圧倒的にフォトブックは昇華型だなという印象でした。
そして営業写真館での写真も、銀塩とインクジェットではほとんど変わりがないでしょう。という、比較展示コーナーまで富士フイルムのコーナーにはありました。各社のプリント展示を見ると、しっかりと時代は変わっているのだなというのが、正直な印象です。
◆右の写真は、富士フイルムのブースで見つけた比較プリント。左が、フロンティア57ORでプリントした銀塩プリント、右はDL600というドライミニラボ機でプリントしたインクジェットプリント。違いはまったくといっていいほどわかりません。ま、わかりにくいからこそ、比較して見せているわけです。