写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

一足お先に美瑛の丘と東川町へ

 休日を利用して6月の最後の日曜日、一足お先に北海道の富良野、美瑛、そして写真の町東川町を巡ってきました。富良野、美瑛方面は、ご存知のとおりさまざまな花畑があり、7月中旬にもなればとりわけラベンダーと麦畑やさまざまな野菜や花のコントラストが美しく、写真を楽しむ人にとっては撮影のメッカであるといっても過言ではないでしょう。で、現地に着いていろいろと周ってみましたが、やはり時期的に2〜3週間ぐらいラベンダーには早かったようです。もともと目的が別にあったわけですので、あわよくば早咲きのラベンダーがなどとも考えましたが、期待はみごとにハズレました。
◇写真左から、わずかに見つけたラベンダーの花(ファーム富田にて)、拓真館、周囲の丘もまだまだ花は少ないのです。

 そんなわけで、途中から大きく目的地変更して風景写真家・前田真三さんの写真ギャラリー「拓真館」に向かいました。開館は1987年7月であるとされていますから、地方にある写真ギャラリーとしてはかなり早い時期からのオープンだと思うのですが、手入れもよくきれいです。僕もふだんはあまり行く機会はないのですが、これで3度目の訪問となります。訪れたときはちょうど『あなたとぼくと、一本の木』というテーマの特別展をやっていました。これは諏訪中央病院名誉院長である鎌田實さんの文章に、前田真三さん、前田晃さんの写真を組み合わせたコラボレーション展示で、写真そのものは大型プリントが中心でした。この特別展示を見て、あれっと思いました。すべての作品がインクジェットのしかもマット調で凹凸のある画材紙に出力されているのです。実際は、プリントより大きなグレーのアルポリック板に貼り付けられていいるのです。前回のブログでは、銀塩プリントかインクジェットプリントが見た目ではわからないということをアピールして展示している例を紹介しましたが、世の中というか展示の現場では、むしろ新しい素材を使って新しい見せ方をしているのです。僕なりに考えると、お客さんにとってのプリント材質は、どちらがどちらかはわからなく、極論すればどちらでも良く、マットという面質のこともあり、むしろライティングによる反射が入らない分だけ、インクジェットのほうが見やすいかもしれないのです。そうなのです。見る側にとって大切なことは、プリントされている中身であって、プリントの材質ではないわけです。あたりまえといえばそれまでですが、ここまで来るのにはけっこう時間がかかった気がします。

◇写真左から、東川町文化ギャラリー、東京写真月間2011北海道展、道の駅「ひがしかわ道草館」のカメラ展示
 

続いて足を伸ばしたのは、写真の町「東川」です。こちらは1985年に写真の町宣言をして以来、“東川町国際写真フェスティバル”行い、国内外の作家に“東川賞”を設けて授賞していますが、全国高等学校写真選手権大会としての“写真甲子園”、“東川町文化ギャラリー”での写真展開催などかずかずの写真文化発信の町となっています。この東川町国際写真フェスティバルと写真甲子園は毎年7月の最後の土日を含めた日に行われ、東京から多くの写真業界人が、全国から写真好き高校生が集います。僕も1992年と1993年の写真フェスティバルと併催される農業収穫祭の“どんとこい祭り”にボランティアとしてイベント参加したことがあります。そのときは、町長を含めた三役他、町の子供たち143人の顔を写真に撮り、ポラロイド8×10で和紙に画像転写し、願い事を書いてもらい143の連凧にして空に揚げたのですが、そのときの子供たちも立派に成人しているのでしょうね。ずいぶん昔の話です。それ以来、東川町には近くを通るときは寄るようにしていますが、今まではなぜかフォトフェスティバル終了の翌週ということが多かったのですが、今回はフォトフェスティバルを翌週に控えたタイミングとなりました。今回はタイミングよく文化ギャラリーでは“東京写真月間2011北海道展”が開かれていましたが、東京の雑踏のなかで見るのと違い、特別展示、今本淳さんの「うみうし」、関根学さんの「ハヤブサ-空に生きる猛禽-」は、静かな雰囲気のなかで落ち着いて見られたのがよかったです。また、写真の町を標榜するだけあって道の駅“ひがしかわ道草館”には、町に個人から寄贈されたカメラの展示がされるなど、雰囲気を盛り上げています。ただ、難しいのは、最近あちらこちらで個人コレクションのカメラ展示を見ることが多くなりましたが、どのように展示して持続性をもたせて見せるかが、今後の大きな課題になると思います。


 最後は、今回何となく撮れたなという写真を紹介します。撮影地は、旭川空港の近く、東神楽の農道からです。そして僕のブログではめったに掲載しないのですが、オマケは食べ物の写真です。ご存じ「旭川ラーメン」ですが、けっこうマジメニ車で2時間ほど走って、やっとの事で旭川ラーメン村にたどり着いたのです。そして最後に、ひとこと、ファーム富田や拓真館は入場料をとらないのです。各地に写真ギャラリーがありますが、ほかの所では、遠くのお店で500円払って、自分でドアの鍵を開けて、電源スイッチを入れて、カビくさいなかで退色しかけた写真を見て、自分で電源落として、ドア締めてなんてこともありましたが、その点において拓真館はメンテナンスも良くきれいだし、美瑛町は太っ腹ですね。そんなことがリピーターを含め多くの観光客を呼ぶのでしょうね。