写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

いま僕たちにできること

 3月も終わり頃、とある家電系カメラメーカーのNさんから相談したいことがあると電話がありました。お会いして話を聞いてみると、すべてが自粛ムードのあるなか、黙っていてもしょうがない。いま写真業界として、皆で何かできることはないだろうか?、ということなのです。被災地で、津波を被った泥水にまみれた瓦礫の中から写真を救い出している姿をテレビで見ると“写真はかけがえのないものだ”とつくづく感じたというのです。僕は、そういうことを手伝うのも1つかも知れないけれど、まずは感材メーカーがそのあたりをフォローしなくてはいけないですねというと、Nさんによると、その時点で富士フイルムコダックも水没汚染写真復元のノウハウをホームページで伝授しているというのです。早速、ホームページを見るとなるほどということなのですが、富士もコダックも水洗による方法を推奨していますが、ただ決定的に違うのは富士は「ぬるま湯(約20℃〜30℃)に浸す」、コダックは「冷水や氷を入れた水の中に30分〜45分浸します。(冷水を使うことで乳剤の軟化を防ぎます)」となっているのです。僕は試していませんので不明ですが、多分どちらも正しいのでしょう。とはいっても、コダックは「2001年9月11日の世界貿易センタービルの被災現場から回収された写真の救済作業の経験をもとにしています」と注釈がついていることで、何となく重みを持たせています。
 写真家のハービー・山口さんはツイッターで「3人のAV女優さんからリクエストがあり、電子書籍で写真集を作り、売り上げを全額被災地に送りたいと。勿論ノーギャラで撮影させて頂きました。彼女達、人の役に立ちたい、そして、ハービーさんのキャリアに傷がつかないかとても悩んでいました。傷は付かないよと言うと、涙して喜んでいました。」とつぶやいていましたが、その後「オリジナルプリントを販売し、全額を義援金としたいと思います。キャビネサイズ、バラ板紙で手焼きします。5000円でいかがでしょうか?」、さらに「今朝より受け付けを開始させて頂きました義援金用プリント販売は22時で限定100名に達しました。ありがとうございました。第二弾を考えます。心してプリント致します。」とつぶやいていました。写真家さんには写真家さんなりのできることがあるのですね。
 同じ写真家でも報道写真家というかフォトジャーナリストの新藤健一さん(写真右)は、直後に現地入りし、被災地の写真をフェイスブックに刻々とアップしています。この写真をもって4月29日から写真弘社のギャラリーで写真展を速報するというのです。さらに新藤さんは、ビジュアルジャーナリスト仲間に呼びかけて、海外での写真展を企画中で、日本の震災の写真展は海外でやってこそ価値があると、その実現に向けて頑張っています。
 いずれにしても皆さんそれぞれで、ギャラリーで写真展をやってその参加費と支援販売金をすべて義援金に回すという「ギャラリーコスモス」の“東北関東大震災支援コスモス臨時写真展”とかいろいろです。
 さてあんなこんなと考えている内に、「あなたの思い出まもり隊、無料で写真復元します」という記事が4月10日付の朝日新聞に紹介されていました。何でも、東北福祉大、工学院大、神戸学院大などで作る社会貢献学会が、被災地で泥をかぶったり、ぬれたりした写真を無料で復元するプロジェクトを始めたというのです。さらに追いかけで、4月12日付けの朝日新聞では釜石市の民家で泥まみれになった8ミリフィルムを持ち込まれた写真店を経由して、専門の業者である東京光音が修復・DVD化を無償で引き受けたというのです。これに引き続き「NPO法人・映画保存協会」のうち(株)東京光音と(株)吉岡映像が協同で「映画フィルム救済プロジェクト」を立ち上げ、被災した《映画フィルム》ほか磁気テープ、SPレコード等、オリジナルの視聴覚記録媒体の救済処置を無償で行うというのです。こちらのほうの解説は、かなり内容的には科学的で、マイクロフィルムも扱ってくれます。ただし、紙資料やスチル写真(紙焼きのプリント)に関しては相談・実作業ともに受けられないというのです。まぁ、簡単にいえば業界が違うというわけですね。
 となるとスチルの写真業界はどうするのでしょうか?となりますね。さらに、おまえはどうするのか!といわれてもしょうがないのですが、僕はとりあえずこのブログを書くことでやっとなのでした。