写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

コシナとフォクトレンダー

 「コシナとフォクトレンダー展」が4月5日から7月3日までの会期をもって、日本カメラ博物館の特別展として始まりました。コシナといえば、今日ではフォクトレンダーブランドのカメラや交換レンズを作るメーカーとして知られているかもしれませんが、実はフォクトレンダー社は、1756年にウイーンに創業した世界でも最古の光学機器メーカーであるのです。戦前戦後を通じて1950年代までは独自の製品を作っていましたが、60年代にはツァイス・イコン社との合併を経て、ローライへのフォクトレンダーブランドの転移などがあり、今日、日本ではコシナフォクトレンダーブランドでフィルム用のレンジファインダーカメラと交換レンズを作っているわけですが、もともとまったく別の会社なのです。

 コシナの創業は1959年です。今回の展示では、コシナ初のカメラとしての126インスタマチックほか、8ミリシネ、35mmコンパクト、35mm一眼レフなど意外なカメラや懐かしいものを多数見ることができます。そして最近のフォクトレンダーカール・ツァイスレンズなど実に多くの交換レンズが展示され、種類、本数など見るだけでも壮観です。もともとコシナそのものがOEMメーカーとして成長してきた部分がありますが、今では世界で唯一フィルムカメラを作り続ける企業となっているところも見どころです。会場には多数の変わったカメラやレンズが置かれていますが、僕が気になったのは、1991年アメリカ・ビビター社に向けた「シリーズ1 Qdos 70〜210mmF2.8-4」のレンズ内に赤青のフィルターを内蔵したアナグリフ3D用のズームレンズです。また、最新型ではマイクロフォサーズならではの特長を機敏にとらえたフォクトレンダー25mmF0.95レンズ、さらに日本では発売されませんがフォクトレンダーブランドの120ブローニーフィルムを使うベッサIII667Wがちょっと気になる新製品です。
 そして旧フォクトレンダー。僕自身もクラシックカメラをいくつか手元に置いてありますが、クラシックカメラで写真を撮ろうとなると、不思議と旧フォクトレンダーのものを引っ張り出すことが多いのです。そのなかでもお気に入り(^。^)は、左からペルケオI(1950)、ビテッサT(1956)、ブリラント(1932)です。ペルケオIとブリラントはブロニーフィルムを使う6×6の小型カメラとして写りも含めて、ビテッサはフィルムの送りとシャッターのチャージが独特なメカニズムを採用しているところがお気に入りなのです。もちろんこのほかにも旧フォクトレンダーのカメラ、レンズも多数展示されていますが、僕の気になるのは今日のズームレンズの元祖である「ズーマー36〜82mmF2.8」の存在です。
 そして会期中の4月16日には、コシナ・技術顧問の木村和夫さんによる講演会『レンジファインダー開発物語』が開かれます。木村和夫さんは、旧ミノルタカメラ時代から、ライカCL、ミノルタCLE、コシナ時代のフォクトレンダーベッサ、ツァイス・イコンなどレンジファインダーカメラの開発一筋に関わってきました。それだけにデジタルの時代にあって、レンジファインダー機が今後どうなるだろうかといったようなお話しも聞けました。当日は、旧ミノルタの方々が旧同僚との再会を期待して、声をかけ合っていたようです。