写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

世界の写真フェスティバル

最近、僕の周りの人々の写真活動も国際的になってきました。一番人気は、毎年7月頃にフランスで開かれる「アルル国際フォトフェスティバル」で、身近には、いずれも女性ですが自ら作品をもって参加したISさんとYNさんがいます。11月にフランスで開かれた「パリフォト」を見に行ったというC社のKTさんの話も聞きました。このほかに10月にはイギリスで「ブライトンフェスティバル」、アメリカではヒューストンで「フォトフェスト」というのが開かれているそうですが、僕がたまたま知る限りでは、ドイツのケルンで開かれている“IPK”は意外と知られていませんが、大いに注目していい写真フェスティバルだと思うのです。2010年は、IPK「20.Internationale Photoszene Koln」と名付けられていますが、タイトルでおわかりのように、すでに20回の開催となるわけです。

IPKの最大の特徴は、世界的な写真のトレードショーである「フォトキナ」と開催期間がダブらせてあり、ハード主体の写真見本市とうまく連動しているところは、注目していいでしょう。とはいってもフォトキナ会場はカメラと写真用品の見本市であるだけでなく、「ホール1」はビジュアルギャラリーと称して、作家、専門学校、大学生など多くの作品展示がなされ、各ホールをつなぐ場所には、随所に写真作品が飾られています。このホール1は、他のカメラ機材のショー会場とは分離されていて、入場料は別立てのようで、一般市民も入りやすいようになっていました。

IPKは、フォトキナの開催期間9月21日〜26日に連動して、9月3日〜9月26日までケルン市内の博物館やギャラリー、学校、カフェ、ホテルなどさまざまな場所で写真展示が行われていました。期間中にはオールカラーのしっかりとした142頁の写真展ガイドブックが無料配布されていて、何よりも驚くのは、著名な作家の作品が展示されていること以上に、展示場所がケルン市内に73個所もあること、さらにそれぞれのギャラリーで写真が作品として売買されていることです。そして限られた時間でしたが、ケルン滞在中に2時間ほどかけてそれらのギャラリーを足早にいくつか見て歩きましたが、わずか数100メートルも歩かないうちに参加ギャラリーを何軒も見つけることができました。その中には日本人の写真家の作品をメインに展示しているギャラリー「Galerie Priska Pasquer」、日本人の写真集を積極的に置いている写真書籍専門店もありましたが、たまたま入った「Galerie Boisseree」では、作品のプライスカード、ギャラリーのネームカードをもらいサインをしてきたが、せっかく日本から来たのだから日本語でサインするようにというのです。帰国後そのギャラリーの由来を調べると、何と創立は1838年。これにはびっくりしました。いつもは絵画のギャラリーのようですが、170年以上の歴史があることにはただただ敬服するだけです。IPKは、フォトキナと同じ時期に開催されていることで、日本からも多くのマスコミ、写真関連企業関係者が訪れていますが、今までは新製品ばかりに目を向けていました、少なくとも写真マスコミは少しだけこちらに目を向けてもいいのではと思いました。

 日本の写真フェスティバルでは、毎年6月1日の“写真の日”を中心に日本写真協会の主催する「東京写真月間」の各種イベントに協賛して行われる約70軒の東京の写真ギャラリーの展示などもよく知られていますが、2010年には9月17日から20日まで六本木ヒルズアカデミーヒルズで開かれた「東京フォト2010」は開催2回目で、まだ一般には認知されていないようですが、海外の画廊からの出展も多く、会場の雰囲気からすると、限られた場所でギャラリーが写真を並べ展示するパリフォトと並ぶようなフェアに発展することも考えられます。また、横浜で2011年2月に開催される日本最大の写真イベントと名打った「CP+2011」では、横浜市が「フォト・ヨコハマ2011」と名付け、写真展、撮影会、フォトコンテスト、シンポジウムなど23もの各種写真イベントが1月〜2月にわたって集中して開かれるのが注目されます。