写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

最近カラープリントが!!

僕は、実はもうここ10年ほどさいたま市の「大宮一眼レフクラブ」という写真クラブの講師を務めているのです。さいたま市は、大変写真が盛んなところで、多くの写真クラブがあり市民が活発に写真活動しています。また現在、交換レンズのタムロンデジタルカメラの開発を行う富士フイルムがあり、かつては富士写真光機(現富士フイルム)、マミヤ光機(現マミヤデジタルイメージング)、ブロニカタムロン)も含めて、最盛期には3社が中判のフィルムカメラを作っていたという特異な都市です。僕の写真クラブには写真関連企業の人はいませんので、写真活動と直接関係ないようですが、かなり写真にディープな方々が多いところです。僕のクラブは、撮影会というのはかつては何回か行ったことはありますが、いつのまにか自然消滅してしまいました。それというのも、せっかく素晴らしい天気であっても競歩のように早い人がいたり、なぜか当日の天気が悪かったりというわけで、あまりものにならなかったのです。そこで、最近毎月の例会はそれぞれのメンバーが自分のテーマにしたがって撮影した、作品を持ち寄って、それに対して皆で見て講評を行うという方式がすっかり定着してしまいました。
☆右写真は2009年に市内で行った「大宮一眼レフクラブ」の写真展会場

そして先月の例会で気になることが報告されました。会員のMさんが、開始時間の10分ほど前に「先生このプリントを見てください」というのです。いつもなら開始はメンバー全員がそろう10分後くらいからで、それまでは持ち込んだ写真雑誌を見せあったり、世間話をするのが相場となっていたのですが、この日だけはいきなり本番となりました。Mさんによると、行きつけの写真屋さんに大伸ばしを頼みにいったら、A4のインクジェットでプリントされてしまったというのです。Mさんは中判はフィルムのペンタックス645を2年ほど前に購入し、デジタルはニコンD300を持ち、それぞれシーンにより使い分けていて、写真歴はこのクラブで最初ということですが、なかなかの腕前です。ただお歳ということもあり、デジタルはパソコンの操作が苦手のようで、奥様に依頼するか、ご自身で記録メディアを直接挿入できるインクジェットプリンターで、2L判に出力してして例会に臨みます。そしてお気に入りのものを写真屋さんに持ち込んで4切か6切程度の大伸ばしをするのですが、なぜか今回はインクジェットのA4プリントをされてしまったというわけです。Mさんによると、自分の考えるプリントとまったく違うイメージに仕上がっているというのです。そしてご自身でプリントされたA4プリントと比較して、ひどいでしょうというわけです。確かに一瞥してそのとおりなのです。色調は赤茶けていて、光沢感もないのです。Mさんによると「写真屋さんは、このほうが退色しないからいい」というのだけれど、よっぽど俺がプリントした方がきれいだし、写真だというのです。
僕は、これは顔料プリンターによるもので光沢のカラープリントとは別物なのですよと伝えました。染料のプリントならそういうことはないと思うし、A4までは自宅でプリントしたほうがいいと伝えましたが、Mさんは腹の虫がおさまらないようで、もうあの写真屋には行かないというのです。聞くところによると、A4で1枚1,300円請求されたそうで、納得できないけど1枚だけ参考までに引き取ってきたのだというのです。それにしても、その写真屋さんは目先の利益のために長年のお客さんを失ってしまったわけですから、悲しいことです。写真屋さんはもっと勉強して、お客さんが何を求めて専門店にきたかを把握して、銀塩カラーペーパーか、インクジェットなら染料と顔料タイプの使い分けぐらいわかればいいのにと僕は考えたわけです。僕の経験によると、インクジェットの場合カラーと光沢仕上げは染料で、モノクロの場合は光沢を除けば顔料でもいけるというのがここ数年来得られている結論です。
すでにフィルムとデジタルカメラは違和感なく受け入れられる時代がきて久しいわけですが、プリントはまだだったのです。銀塩からデジタルへ、カメラはここ数年でシームレスな移行が進んだわけですが、カラープリントはまだまだなのでしょうか。僕が考えるに、もともと銀塩のカラーペーパーは染料であり、100年プリントとかいっても、保存条件によって退色してしまうのは化学反応である限り致し方ないわけです。そしてこの時期開発発表されている写真店向けのドライミニラボは染料タイプのインクジェットプリンターなのです。こちらのプリントは従来の銀塩プリントと比較してまったく見分けがつきません。この写真屋さんは、実行に移すには少し早すぎたというか、もう少し勉強して欲しかったです。そういえば前回アップした『新宿ゴールデン街』の野嵜正興さんの作品は、染料タイプインクジェットで、とくに見分けはつきませんでした。
もうひとつ、じゃあ銀塩プリントがいいかというとそうでもなく、写真クラブのメンバーはデジタルオンリーの人はいなく、カラーリバーサルで撮影し持ってくる2Lダイレクトプリントは、いつも聞かれるのが、数年前はきれいにでたのに、最近はフィルムに写っているのに黒くつぶれているのが多くなったのはどうして?というわけです。こちらは富士フイルムの担当者によると、かつてと材料が違っているわけではなく、ラボにベテランプリンターがいなくなった結果だそうです。とはいっても、写真クラブメンバーの写真展用のプリントはフィルムからもデジタルからもプロラボ銀塩カラープリントで、充分に満足していることを最後にご報告というわけです。