写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

「ライカM モノクローム」なるもの

 ライカカメラから「DAS WESENTLICHE in Tokyo」という発表会を、5月10日にドイツ・ベルリンでマスコミ関係者を500人招いて開き、日本でもいち早くその新製品を紹介するからと見に来ませんかと案内をいただきました。人数に限りがある予約制だというので、即日電話で申し込みました。そこでダメ元だと思い、新製品とは何ですかと聞くと、その日までお待ち下さいという、当然の答えが返ってきました。そこでいろいろと探ってみると、海外のWebサイトにはでているようで、モノクロ専用機のM型ライカとコンパクトのX2だというのです。僕は、最近勘が鈍ったのか、新技術を理解できなくなったのかわかりませんが、X1の改良機はあっても、モノクロ専用機のM型ライカというのはまったく理解ができず、“まさかそんなカメラがでてくるわけないよ”と簡単に一笑に付してしまったのです。ところが、ヨドバシ.comから10日の午後“【号外】イカ新モデル「ライカM モノクローム」「M f2.0/50mm ASPH.」「X2」発表!”と連絡がきたのです。時代は変わりました。ライカカメラだけでなく、日本のニコンキヤノンもヨドバシ.comから第一報が入るのです。まずは価格の発表と予約の受注なのですが、スペックや性能もかなりくわしく書かれていることもあります。
 そこで「ライカM モノクローム」なるものが新製品として存在することがわかったのですが、それでも僕の頭では、たぶん初期のデジタルカメラのようにカラーフィルターがないのだろう。結果としてベイヤー配列の4組の色フィルターがない分だけ高解像度のデータが得られるのではとうぐらいは理解はできるのですが、この時期あえてモノクロ専用機登場の意味が理解できないのでした。というのも僕のデジタル撮影においては、まずはカラーで撮影して、その後にモノクロデータ化したり、カラーデータのままプリンターのドライバーでモノクロを作りだせばいいと考えているのです。フィルムカメラの時代には、撮影に持参するフィルムは黒白にするか、カラーにするか、カラーはリバーサルかネガかと悩んだものですが、デジタルだととりあえずカラーで撮影して、最終的な出力時にモノクロを選べばいいという考えです。これにより、撮影前の悩む負担がかなりなくなりました。よく、通常のデジタルカメラの撮影モードをモノクロにしている人がいますが、聞くと、撮影に対する気合い入れ方の問題だとかいうのです。この辺も僕には理解できません。実際僕は、同じカットを必要に応じカラーとモノクロの2種類をプリントして、イメージに合う方を選ぶという方法をとっています。
 ということで、ここまでは頭で考えたこと、ここから先は、まずは現物をじっくり見てからにしようと発表会に出向いたわけです。もちろん公式HPにはそれなりの詳細は載っています。発表会で実物を見て写したのが右上の2枚です。ライカMモノクロームボディそのものに、やはり新製品のApoズミクロンM50mmF2ASPH.を付けてあります。ライカとか赤色ロゴマークとか一切はいっていなく、機種名もアクセサリーシューの右側に入っているだけです。例外として後ろ肩にうっすらと“LEICA CAMERA MADE IN GERAMANY”と書かれているくらいで、かなりプロ好みに徹したというか、高級な趣味性が高いデザインです。撮影された結果ですが、ライカカメラ社のHPからダウンロードできるサンプルデータと同じ絵柄の大型プリントを見る限り、かなり解像感のあるプリントなのです。ではどのくらいベイヤーのフィルターがあるものと違うのかというと、そこは難しいようです。Foveon的な計算で行くと4倍ということになりますが、そこまでは行かないのではということです。ただし、確かに解像感は高いのですが、いずれにしても最終プリントの大きさ、どのようなプリンターを使うかによっても異なるわけです。右上は、絞りF2開放(1/45秒、ISO 800)でライカカメラ社の日本スタッフの方を写させていただきました。レンズは、ApoズミクロンM50mmF2ASPH.でして、拡大するとシャープな感じはよくわかりますが、この大きさでは、ボケ具合とモノクロ感しかわかりません。そこで、ApoズミクロンM50mmF2ASPH.をカラーで撮影したらどうなるだろうかというのが右の写真(F2・1/45秒、ISO 1250)です。ボディはカラーが撮影できるようにとM9ですが、モノクロ同様、撮影条件と拡大率からするとボケ具合はわかりますが、ほかはわかりませんね。なお、ライカM モノクロームでの撮影は、DNGデータで行われ、Photoshopで展開し、JPEG保存したら、グレースケールデータでした。今回ライカカメラ社のスタッフは、ApoズミクロンM50mmF2ASPH.の描写の紹介で、bokeh(ボケ)という言葉を使いましたこれも、興味あることです。また、ライカMモノクロームには、RGBカラーフィルターはついていないが、赤外線カットフィルターはついており、赤外線写真を撮影したい人にはM8をお勧めするということでした。
 もう1つ。興味あるのはニュースレリーズに以下のような記述があるのです。

「ライカ モノクロームプリント」ライカM モノクロームをご購入いただいたお客様には、ネットプリントサービス「Whitewall」と提携して撮影したモノクロ写真を高画質にプリントできる特別サービスをご提供します。ライカのホームページでユーザー登録後に、お客様ごとに専用のリンクから「Whitewall」にアクセスして、モノクロ写真を高品質なバライタ紙にプリントしていただけます。(日本での対応につきましては詳細は未定です)

 これは大変注目されるサービスです。最近日本では、デジタルで撮影して、インクジェットフィルムに出力してデジタルネガを作り、密着でバライタ印画紙にプリントするという技法が流行っていますが、Whitewallというラボにはデジタルデータからフィルム出力ができるLightjetはあっても、ダーストラムダと同じようにカラーペーパー出力に使っているようです。ところが、発表会ではレーザープリンターにより黒白銀塩のバライタプリントに仕上げるというのです。これは、ちょっとしたニュースです。Whitewall社のHPを見てもかなり手広くやっているのがわかります。
 当日はこのほかに、ハッセルブラッドHレンズをライカS2に使うための「ライカSアダプターH」(写真右)が発表されましたが、その場にはマミヤM645用、マミヤRZ用、ペンタックス67用のアダプターも展示していました。これは、推測でしかありませんが、今後ライカカメラ社からでてくるカメラはかなりマウントアダプターを意識して展開されるような感じがしました。それを裏付けるかのように、2012年9月にドイツ・ケルンで行われるフォトキナでは、5,000平米のホール1つをライカカメラ社が占有使用する、2009年にライカRシステムは採算が合わないために撤退したが、Rレンズを見捨てたわけでなく、フルサイズで何かできないか現在模索中だというのです。これはRカメラファンにとっては朗報だし、かつてのRレンズユーザーにとってはレンズが甦る可能性が高くなったわけです。それがどんなカメラかは、時間の経過を待つより仕方がないでしょう。
 さて、今回のライカMモノクロームはヨドバシ価格で90万円、ApoズミクロンM50mmF2ASPH.は70万円となっていますが、ポイントバック分を除いても高価であることは事実ですが、発表会の会場でお会いした方々の感じを聞いていると、こういうクラスのカメラもあっていいのではと思うようになりました。高いからじっとがまんして買うとか、カメラはそういう夢のものであってもいいのではと思ったわけです。それと、会場で何人かの方に「写真にこだわる」のブログをやっている方ですねと、声をかけられました。見ず知らずの方々からですが、顔写真付きだからわかるのかも知れませんが、ライカ好きの方々が読まれていたのですね。ご愛読感謝いたします。ますます身を引き締めてかからなくては、と思った次第です。(^。^)
 そこで最後にクイズ。ApoズミクロンM50mmF2ASPH.レンズの正面文字の刻み方がいままでと違うのですが、どう違うかわかりますか?