写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ミラーレス一眼に異議あり


『緊急提言“ミラーレス一眼”改名宣言!!』と題して「日本カメラ」9月号(8月20日発売号)に小特集が組まれました。ミラーレス一眼に異議ありといったところでしょうが、カメラそのものの存在に異議を唱えているわけではなく、そのような名称でいいのだろうかということで、総勢22人の執筆陣がさまざまな考えをもって新名称を唱えているところがおもしろいのです。僕もご指名で参加させてもらいましたが、僕の提案した新名称は「レンズ交換式ライブビューカメラ」です。その理由の詳細は「日本カメラ」9月号をご覧いただくとして、日常僕が考えていたことと近似した特集記事なので意外と悩まずに簡単に名称を決めることができました。もちろんミラーレス一眼でいいのではないかとか、ファインダー民主主義カメラ(田中長徳さん)がいいとか各人各様で、最終的にとりまとめ役の写真家・河田一規さんによって選ばれたのが『“レンズ交換式ミラーレスライブビューデジタル一眼カメラ”と呼ぶ。その際の略称は、“レンズ交換式ライブビューカメラ”、“ミラーレス一眼”、“ライブビュー一眼”…で良いだろう。』というわけです。この決定方法がおもしろく、ライター皆さんのあげた新名称を細かい単語に分け、それぞれをキーワードとして検索し、出現頻度の高い言葉を組み合わせたというのです。たしかに、これならば問題ないでしょう。それだけこのあたりについて言及するのは、たいへん微妙なことなのだということが良くわかります。歴史的な流れを見ますと、もともとレンズ非交換式とレンズ交換式の「一眼レフカメラ」があって、→デジタルになってレンズ非交換式の「ミラーのない一眼レフスタイル」のカメラが登場し、→さらにレンズ交換式で「ミラーのない一眼レフスタイル」のカメラが登場し、→続いて外観的にはコンパクトカメラスタイルのレンズ交換式カメラが登場し、いま「一眼」と呼んでいるわけですが、そうなるともともとのコンパクトカメラも「一眼」ではないの?という素朴な疑問がわくわけです。
実は僕自身は、3月のCP+2010が開催された時点で、「どう呼ぶの?各誌のこだわり」というタイトルで本ブログに簡単な意見を述べさせてもらいましたが、あれから半年ぐらい経ち、ますますどう呼ぶかが難しくなってきたのも事実でしょう。今年の9月22日からはドイツで大規模カメラショー「フォトキナ」が開かれますので、その場に新規参入のメーカーも噂されているわけで気になるわけです。やはり以前、このブログで「カメラが肥大化しすぎていませんか」ということを書きましたが、ミラーレスであることによる小型・軽量がユーザーの支持を受けていると考えるわけですが、それ以上に、ライブビューの効果はデジタルならではのものであり、今後この種の「レンズ交換式ライブビューカメラ」は、さらに大きな飛躍の可能性を十分に秘めているわけです。
ちなみにお隣韓国では、ミラーレス一眼の「NX10」を製造販売しているサムスンハイブリッドカメラと名づけているために、ユーザー、雑誌レベルでもハイブリッドカメラと呼んでいるそうです。巻頭の「パナソニック ルミックスDMC-G2」「オリンパスペンライトE-PL1」「ソニーNEX-5」と3台そろった写真は、僕も関係し、去る7月27付けの「日本経済新聞」朝刊に掲載された“新製品バトル”に登場したカメラですが、日本経済新聞ではこの3台を「小型デジタル一眼カメラ」と総称していました。
ところで、その「日本カメラ」の特集記事には、パナソニックオリンパスもどのように呼んだらよいか答えているのですが、それによるとどちらも「マイクロ一眼」だそうです。これはマイクロフォーサーズ規格という名称と小型・軽量のイメージから両社で新たに考え出されたのでしょう。そしてもう1社なぜかソニーは答えていなく、調べてみると「デジタル一眼カメラ“α”」でした。今回の特集に答えた22名の執筆人にはそのように答えた人はいなく、作る側と使う側のすれ違いはこれからも続きそうです。