写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ニコンもやはりミラーレス

 9月20日ニコンからミラーレスの「Nikon 1 J1」と「Nikon 1 V1」が発表されました。僕は、ちょうどカメラの分類を書いていたところですが、この「ニコン1」の登場で分類を根底からもう一度やり直さなくてはならないことになりました。前々から、十分予想はついていたことですが、デジタルの時代になると搭載される技術が輻輳してきて、いままでのカメラ分類では解決つかない機種もでてくるわけです。このブログでも以前から、“どう呼ぶの?各誌のこだわり”、“カメラが肥大化しすぎていませんか”、“ミラーレス一眼に異議あり”などとか書き連ねてきたわけですが、実はこれはすべてミラーレス含みのテーマだったのです。とはいってもニコン1(ワン、イチではありません)はどんな特徴を持っているのでしょうか。

 写真上にはニコン1の左からJ1ブラック、J1レッド、V1ホワイトを示しました。この写真からおわかりのようにV1モデルは、EVF内蔵でありまして、そのほかはJ1モデルと大きく違いはないと考えて問題ないようです(※ニコンOBの方からコメントをいただきました: V1とJ1の大きな違いはシャッターにもありますよ。V1はフォーカルプレンシャッターを備えていますが、J1はCMOSの素子シャッターのみです。そのためシンクロ同調速度が1/60秒になっていますね。動体撮影時にどの程度歪みが出るか興味のあるところです)。主な特長を列記しますと、1)マウント名は“ニコン1マウント”、2)フォーマットは“CXフォーマット”ということになりますが、簡単にいえば、ペンタックスQよりは大きな撮像素子で、マイクロフォーサーズよりは小さな撮像素子ということになります。このあたり文章だけで記述するとややっこしいので、比較表にまとめました。この数値は公表データをまとめたものですが、細かいことをいうと違ってきますが、おおむねという感じで見てください。ただ、フォーマットの違いはボケ具合にも大きく関係してきます。小さい撮像板ではコンパクトカメラ同様にボケ味はある程度あきらめるのかなどです。それぞれの標準レンズの実焦点距離でボケ味を想定してください。
 ということで、比較表だけを見ますと、単に撮像素子サイズの違いだけしか見えてきませんが、ニコンとしての特長はどこにあるのでしょうか? 右にはレンズを外したマウントを見ることができますが、当然のこととして完全電子マウントですが、3本爪の“ニコン1マウント”はニコンFマウントのミニ判といったところで、視覚的なこだわりを感じさせます。また、今回はニコンFマウントの交換レンズをAFも可能にする「マウントアダプターFT1」が用意されているのも特長です。このあたりの考えは、ソニーのNEXシリーズにもあるわけですが、交換レンズメーカー製で作動するかというのがユーザーサイドとしては注目点です。さらに最近のミラーレス機は、小型・軽量で支持を得ている部分もありますが、隠れたユーザーとして変換レンズマウントを楽しむユーザーもかなりいます。このあたり、ニコン1ではフルハイビジョンでの動画撮影を視野に入れているようですが、“ニコン1マウント”をサードパーティーに無償公開できるのかなども注目点です。僕の感じでは、フォーサーズで画面周辺が少し切られる、Cマウントレンズ用アダプターが“ニコン1マウント”に登場すれば、古い映画用Cマウントレンズが今以上再度注目を浴びることになるだろうと考えます。
 さて、ここまで書いてきて、実はニコン1の一番すごいことは、撮像面でAF測距する像面位相差検出方式を採用していることなのです(実際はコントラスト検出方式も併用)。AFの方式にはコントラスト検出方式と位相差検出方式があることは、ご存じのとおりです。コントラスト検出方式は従来のコンパクトカメラとミラーレス一眼が採用してきて、位相差検出方式は一眼レフカメラが使ってきました。ただデジタル時代は、今までのようなカメラ分類ではすまないわけでして、ミラーレスでありながら、一眼レフのような格好して、位相差検出を採用したソニーα33とかα55がすでに存在しているわけでして、10コマ/秒の高速連写を可能としてきました。ニコン1では、AF時に10コマ/秒、ピント固定時には60コマ/秒を可能とするというわけですから、これは明らかにハイスピード動画撮影機でもあるわけです。もうひとつ、実はもっと大事なことは、一般的に位相差検出方式は前ピンと後ピンを認識できるのです。これは意外と知られていないことですが、今までは圧倒的一眼レフだけの強みだと僕は思っていました。例えば、草むらでピーンと伸びた花をコンパクトカメラやコントラスト検出のミラーレス機でピントを合わせて撮影しようとしたら至難の業でした。一眼レフだと実に簡単にピントを合わせることができるのです。このあたりはAF原理に起因すると前々から思っていました。ただしあくまでも今は、ニュースレリーズの範囲から一般論として技術の記述をしているので、実際はどうなのか発売されたら使ってみて試すよりしょうがないですね。
 最後に、くわしいことはやはりニコンのHPをご覧下さい。また、像面位相差検出方式を採用したデジタルカメラとしては2010年に富士フイルムから発売された、FinePix F300EXRとFinePix Z800EXRがあるわけですから、ニコンはレンズ交換式としては初の像面位相差検出方式採用機となります。なお、富士の場合には通常の画素の間に位相差画素というものが配置されてAFを機能させていましたが、ニコンの場合は?まだわからないというか開示されていないことが多いです。そして、今回は“ニコン独自開発のCMOS”とうたっていますが、ソニーは同じミラーレスで透過ミラーを使った位相差検出のα33、α55をα65、α77へと発展させています。このあたりの技術も見逃すわけにはいけないと思うわけです。またすでに発売済みのリコーGXRマウントユニットもミラーレス機であるわけですが、一部リコーにフルサイズ機の登場を待つ人もいるようです。しかしフルサイズはライカカメラ社がやるべきで、リコーは安価なAPS-Cだからいいわけです。そして、これらのカメラをミラーレスという視点で見るのではなく、レンズ交換式ライブビューカメラとして見ることが大切だと思うのです。リコーGXRマウントA12の魅力は、ライブビューの楽しさでもあるのです。そして小型撮像素子と対局にあるフルサイズ撮像素子、これこそ本当の光学的ボケ味(BOKEH)を楽しめるわけです。ライカさんよろしく。