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写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ソニーとニコン、小型・軽量のライカ判フルサイズで勝負 『ソニーα7R vs. ニコンDf』

 10月16日にソニーがライカ判フルサイズのミラーレス一眼「α7R」および「α7」を11月15日から発売するとしましたが、11月5日にはニコンがライカ判フルサイズの一眼レフカメラニコンDf」を11月28日から発売すると発表しました。この発売時期の時間差はほとんど同時といって問題なく、発表・発売とも先行したソニーに対し、ニコンはよほどくやしかったのでしょうか、ニコンとしては初のティーザ広告を10月23日から打っており、11月5日の発表日に向けてかなりじらされた感じは否めません。

 このソニーニコンは、どちらもライカ判フルサイズでありながら、ミラーレスであり、一眼レフカメラであるところが最も異なります。また、撮像素子が、「ソニーα7R」は有効約3,640万画素の光学ローパスフィルターレスで、「ソニーα7」は光学ローパスフィルターを有する有効約2,430万画素であるのに対し、「ニコンDf」はニコンD4と同じ有効1,625万画素のCMOSセンサーだというのです。このあたりは、それぞれの設計思想の違いであるわけです。これで、ソニーミノルタα以来のAマウント一眼とNEXに始まるEマウントの一眼とフルサイズを2系統持つわけですが、新しいフルサイズ対応のEマウントレンズはFE(フルサイズ・Eマウント)と名づけられています。デザイン的には、α2桁シリーズのボディが曲線で仕上げられているのに対し、α7R・α7は直線を基調としているのが目につきます。
 これに対し、ニコンDfは、ティーザ広告の時点では「ニコンF3」似のデザインだとうわさが流されていましたが、実際発表されてみると「ニコンFM」の流れを汲んだデザインであることがわかります。そして、何よりもこのニコンDfは、ニコンFMの時代に戻ったようにかなりノスタルジックに仕上げられていることです。その表れとしてトップカバー上の操作部を見ると、かつての一眼レフそのものであるわけです。F3でなくFMというあたりは、なかなかで、いまでもフィルムカメラを使う若者のカメラがマニュアルの「ニコンFM」であるわけですから、そのあたりを狙ったということなのでしょう。このためのレンズは当時の50mmF1.8レンズを彷彿とさせる50mmF1.8のGタイプレンズを用意して、さらには非Aiレンズも手動で設定すれば開放測光が可能になるというものです。いま考えるとなるほどなと思うのですが、毎年横浜で開かれている「CP+2012」の“上級エンジニアによるパネルディスカッション”の後に開かれた海外マスコミ向けのプレスカンファレンスで、フランス人の女性プロカメラマンが『なぜ、プロ用のカメラは大きく、重いのか?、もっと軽くして欲しい』というようなことを質問していましたが、何か言いたそうで、言えない、ニコンの開発担当責任者の顔がいまでも忘れられません。僕自身もそうですが、やはりフラッグシップ機を思いのまま振り回す、気力と体力はもはやありません。だから、APS-Cを使えばいいというわけではありません。ソニーニコンもある意味、望まれていたクラスの出現なわけです。先日も、ソニーの発表直前に、JPS会員のカメラマン氏に相談されました。やはり今のカメラは重くて、取材にはつらいというのです。誰もが、秒10コマ以上の連写速度はいらないというのです。そこで調べてみましたが、今回のソニーα7Rは1.5コマ/秒、α7は2.5コマ/秒、ニコンDfは約5.5コマ/秒だというのです。もちろん、より速く、より高く、より強くというオリンピック用のカメラも大切ですが、これでいいのです。まだまだカメラはやることたくさんありますね。そしてニコンは過去のニコンユーザーに向けたわけですが、ソニーはマウントアダプターでさまざまなレンズ遊びに興ずるユーザーに共感をもって迎え入れられるわけです。どちらも実機の発売が楽しみです。