■その1枚は想像を超えるか
「その1枚は想像を超える」とは、インスタントハイブリッドカメラ“instax wide Evo”のキャッチフレーズです。この方面に興味の薄い人にはわかりにくいですが、富士フイルムのデジタルカメラにインスタントフィルムプリンターを搭載したものが「インスタックスワイドEvo」ですが、デジタルと銀塩インスタントフィルムのよいところを組み合わせたシステムです。このカメラでは、インスタントフィルムで撮影したカットを単にプリントができるというだけでなく、確かに想像を超えるほどの特殊効果を1台のカメラで100種類以上の組み合わせて撮影できるというのです。
いままで写真というと、読んで字のごとく写真だから真実を写すとか、いかに正確に色を再現し、精緻に描写できるかとかいうのが画質に対する基準で、良いカメラの評価でした。ところが、今回取り上げた“instax wide Evo”では、普通によく写ることも確かなのですが、カメラの中でどれだけブロークンな写真を作り出すかという逆転のカメラシステムなのです。従来インスタントカメラといえば単にインスタントフィルムを消費するためのカメラという印象が強かったのですが、ワイドEvoではまったく逆で、エフェクトをかけてどんどんデジタルカメラ部分で撮影し、必要なものをチェキワイドフィルムに出力したり、画像データをminiSDカードに保存して、パソコンからメールで送ったり、大きく伸ばして作品として展示できるというものなのです。
記録は1/3型の原色フィルターCMOSで、35㎜判換算16㎜F2.4のレンズが付き、広角時4608×3456ピクセル、標準時は2560×1920ピクセルの画像データが得られるというものです。広角時データを従来からのインクジェットプリンターで、300dpiで出力すると390.14×262.16㎜、200dpiで出力すると585.22×483.91㎜となり、これはA3~A3ノビをカバーするようなデータ量となります。同じように標準時には2560×1920ピクセルなので、300dpi出力では216.75×162.56㎜、200dpi出力では325.12×243.84㎜となります。ちなみにA3用紙は420×297㎜、A3ノビは483×329㎜なのです。このあたり計算値と異なるだろうというご指摘もあるでしょうが、実際プリンターにかけるとプリンター側の画像処理エンジンでかなり補正してくれるようで、鑑賞距離にもよりますが、実用上は問題ないデータ量となります。カメラ機能としては、広角時がフルに全画素を使い、標準時には中心部の画像を使うことになる電子式2画角カメラといえるでしょう。
実際、私の写真仲間の小野隆彦さんは、1/5型CMOSで2560×1920ピクセルの画像データの得られる「インスタックスmini Evo」を使い、過去にこのカメラならではの多重露光を効果を活かしてA2~A0クラスの作品を多数作り、ギャラリーで個展を開いてます。いままではinstax mini Evoチェキが発売されていましたが、WIDEサイズのインスタントフィルムサイズ用のEvoチェキが発売されたので、今回の使用記となりました。
●まずは開梱から

《富士instax wide Evo》左から、インスタックスワイドフィルム3箱(10×3枚)、instax wide Evo化粧箱、instax wide Evo専用ケース化粧箱。いずれも従来からのカメラ関係のパッケージデザインとは異なる考えでパッケージがデザインされています。

《富士instax wide Evoボディのパッケージ》左:外側は機能や使い方がみっちりと写真入りで印刷されている。もちろん別に取扱説明書は同梱されています。右:上蓋を開けると、若者向けのギフトのようにボディラインに合わせてオシャレに包装されてます。

《富士instax wide Evoケースとボディ》左:専用ケース、しっかりとレンズ部分がしっかりと丸く型どりされている。右:ボディと専用キャップ。ストラップはどちらにも付属しています。

《instax wide Evoを正面から見ると》左上のレバーのようなのがシャッターボタン。右の2つの丸い部分は上が補助光となるストロボ(LED?)、下は自撮り用のミラー。左底面は三脚ネジ穴、右下側は広角スイッチで、写りをワイド・標準と切り替えられる。レンズは“INSTAX LENS 16mmF2.4”と35㎜判換算値で書かれ、FOCUS RENGE 0.1~∞と記されているので、最短撮影距離10㎝から無限遠まで撮影できることになる。

《充電とメディアの挿入》充電はPD対応の充電器からタイプCのUSB端子を使います。記録メディアはマイクロSD。内蔵メモリーで約45枚保存でき、内蔵メモリーの撮影データをマイクロSDに移すことも可能。写真左側は、電源スイッチ。その左の丸い部分はリセットボタンで、押し込むと複数設定したメモリーされているエフェクトを一気に解除できます。

《背面から見る》撮影後の再生時にメニューボタンを押してみました。背面液晶は、3.5型TFTとされるが、約74×50㎜の大きさなので鑑賞はすこぶる快適。あえて言うならば全画素数は約46万ドットとされていますが、粗さが気になる人もいるようですが、発色傾向も普通で、実用上はまったく不足を感じることはありません。

《プリント操作》プリントしたいときは、モニター画面にプリントしたい画像を表示させ、右下のフィルム巻き戻しノブ状のダイヤルを回転させると、ボディ上部からプリントが排出されます。このダイヤルは単なる電気スイッチと思われますが、くるくる回すとインジケーターが進行を表示し、約16秒間経つとプリントが排出される。右の写真は排出されたばかりで、画像は現像進行中でまだ白く見えるのです。
なお、プリンターの出力部分は光学的な面露光ではなく、R.G.B.のLEDラインヘッドのようで、露光画素数は1800×1260dot、スマホアプリ時は800×1260dotとされている。プリントを裸眼で見てドットが見えるわけではなく、念のためと印刷用の網点を見る12倍のルーペで拡大しても見えなく、連続階調の写真の画質だ。かつて1980年代後半のカラーフィルム出力では、スキャンしたラインが見えたこともあったが、改めて見るとこの分野の技術進歩もすごい。プリントの排出時間は約16秒でも、画像が安定するのには温度なども関係し、数分以上を要するのはインスタント写真そのものです。
●いろいろ撮ってみました。

《撮影してからチェキプリントしてみると》さまざまなエフェクトをかけたものから、ノーマルなものまで、撮影後のチェキプリントをお見せします。まず、驚くのは排出されたプリントのエッジがホログラフィー用紙を使ったようにきらきらと輝いているのです。BRUSHED METALICSというタイプのフィルムですが、基本色は、シルバー、ゴールド、銅色といった感じで、どれがでてくるかはわからないところが面白いです。私はプリントしたときに、金色のエッジが見えてきたときは大当たりの気分になれますし、そういって渡すと、プレゼントされた人も何となくラッキーな気分になれるおみくじで大吉をを引いた気分になれます。それぞれのデータからの写真はこの後お見せします。ただし、左上の2人の写真はスマホからの画像データ転送のダイレクトプリントです。
まずはいつもの英国大使館正面玄関前からいきましょう。いずれも、インスタックスワイドEvoで撮影したデータからの画像です。

《ワイド16㎜相当画角で撮影》16㎜相当画角とは35㎜判相当で、光学的な実際の焦点距離は2.1㎜。さらにこのシーンでの撮影データは、F2.4・1/2000秒、ISO100となりました。画質としては良好で、画素等倍に拡大しても破綻は感じなく、撮影時のアングルにも関係しますが、超広角域のわりには直線性が良く描写されている。

《標準域での撮影》35㎜判の換算焦点距離はカタログなどには掲載されていませんが、Exifで見ると35㎜判で28㎜とでました。光学系としては元の焦点距離2.1㎜の中心部を使った2画角レンズであるために撮影データは、F2.4・1/2000秒、ISO100とまったく同じです。なお、このカメラの場合には焦点距離は固定で0.1m~∞にピントの合うパーンフォーカス式で、絞りは固定で、ISO感度100~1600、シャッター速度1/4~1/8000秒の間で露出制御が働くことになります。このあたりのスペックというか、カメラシステムはスマートフォンのカメラ機能と似てます。

《池本さやか先生と暗室教室の皆さん》最初はビームフレアというエフェクトをかけましたが、やはりこういう集合写真はノーマルのほうが良いですね。F2.4・1/25秒、ISO160、フラッシュ自動発光。皆さんいい顔してます。

《Paper Pool Saoriさんのハンバーガー》最短撮影距離10cmだからそれらしい距離でクローズアップ。F2.4・1/25秒、フラッシュ自動発光。美味しかったです。

《PPで偶然お会いした鈴木さん》F2.4・1/25秒、ISO100。カメラ、スマホ、音楽など何でもこなす若手のフリーライターさんでありYouTuberでもあります。この写真を撮るときに、前のカットのハンバーガーを2重露光しようとしましたら、鈴木さんのほうが強く、ハンバーガーのほうが描写が薄くなりました。このあたり、露出補正でバランスを取ればよいのでしょうが、もっともっと撮りこみというか慣れが必要ですね。

《開封の儀に参列された方》エフェクトはモノクロ周辺ぼけ。F2.4・1/25秒、ISO400自動フラッシュ発光。いい感じのモノクロに仕上がっている。Tokinon50㎜F1.4にて。

《Film Style:フィルムストリップ》ネガカラーフィルムで撮ったようなフィルムコマナンバーとDXコードらしきもものがオレンジ色にプリントされる。

《Film Style:湿版印刷》この画像では一見してモノクロ周辺ボケのように見えますが、よく見ると画面周辺部が糸状で滲んだような感じで写っています。もともとの湿板写真とは違いますが、最近の湿板写真はこのように仕上がっているのは確かです。このような仕上げを好み、あえてやっているのは湿板写真家のWDさんだとわかるのです(笑)。モデルは小説家の柊さなかさん。

《鉢植えの花壇:ノーマル》F2.4・1/500、ISO100

《鉢植えの花壇:Lens Effect:色ずれ》F2.4・1/1000秒、ISO100

《鉢植えの花壇:Lens Effect:光漏れ》F2.4・1/1400秒、ISO100
●エフェクトの種類
「画角切替:2種」ワイド、標準。「Film Style:6種」ノーマル、シネマティック、デートスタンプ、湿版印刷、コンタクトシート、フィルムストリップ。「Film Effect:10種」ノーマル、ビビッド、ウォーム、スカイブルー、ライトグリーン、マゼンタ、セピア、モノクロ、アンバー、サマー。「Lens Effect:10種」ノーマル、光漏れ、ライトプリズム、ビネット、ソフトグロー、色ずれ、モノクロ周辺ボケ、カラーグラデーション、ビームフレア。「Degree Control」レンズリングを回転させると各レンズエフェクトの度合いを100段階以上で調整可能となる。ということで、組み合わせ方によってはエフェクト(特殊効果)は、単純にこれらの効果を組合わせると100種どころか12万種も可能となりますが、やってみるだけの時間と余裕はありませんでした(笑)。
●インスタックス ミニ Evo(instax mini Evo)の2重露出作品
先ほど紹介した小野隆彦さんのバリでの2重露出作品です。「インスタックス ミニ Evo」だと、焦点距離は2㎜(28㎜画角相当)で、2560×1920ピクセルの画像ができます。小野さんはこのカメラを使って、過去にA2プリント、A0プリントに伸ばしてピクトリコギャラリーでバリ島をテーマにした個展を開いています。

《バリ島にて:Ⅰ》F2・1/1000秒、ISO100
《バリ島にて:Ⅰ》F2・1/210秒、ISO100
フィルム時代に、二眼レフで多重露光している作品を見たことありますが、1枚撮り次のカットを写し込むことはできますが、インスタックスワイドEvoでは、すでに複数撮影していた画像データを呼び出して、2重露出モードに設定して新たな場面で撮影すれば、上掲のような合成写真が撮れるのです。私の場合は、白い皿に盛られたハンバーガーと鈴木さんの顔でしたが、ハンバーガーの画像がうっすらとなりましたが、小野さんのバリの写真は特に露出補正などの操作なく、シャッターを切った結果だそうです。ま、このあたりを使っておもしろい写真が撮れるということで、個展を開いてしまうというのも趣味の写真ならではです。
●スマホプリンターとして、スマホリモコンとして使ってみました。
「instax wide Evo」は、ハイブリッドカメラと位置づけられていますが、1つはデジタルカメラとしての機能、もう1つはデジタルカメラで撮影した写真のプリントができるのです。スマホは、アンドロイド、iOSともに使え、専用アプリを無料でダウンロードすれば、Bluetoothによる接続で約10m以内の範囲内ならワイヤレスでデータの送り込みプリントとリモコンシャッターを行えます。
以下に、アンドロイドスマホでの各操作をキャプチャー画面で示します。

左)スタート画面。Bluetoothでの接続が確認できていると、スマホからのダイレクトプリントかリモート撮影か選ぶ。中央)スマホの画像を取り込んだ状態。接続された状態で、プリントボダンを押せば出力を開始する。右)リモコン撮影、2秒のセルフタイマー撮影もできる。(いずれもスマホ画面のスクリーンショット画像です)
■インスタントの魅力は撮影後直後にプリントが得られるのが魅力だったが
インスタントカメラについて改めて考えてみました。ポラロイド社から、インスタントカメラが最初に発売されたのは1948年のことで、創始者エドウイン・ランド博士の3歳になる娘が、撮った写真はなぜすぐに見られないのかと聞かれたことに、応えて発明したのがインスタントカメラ発明へのきっかけであったとは有名な話です。当初のインスタントフィルムは、現像後にネガ像と薬剤を手で引きはがすピールアパート方式でしたが、その後1972年に発売された、ポラロイドSX-70のシステムは、シャッターボタンを押せば、自動的にプリントが排出される、モノシートタイプ、自己現像型、ワンステップタイプなどと呼ばれます。ポラロイド社の倒産後は、インポッシブル社がポラロイドと名称も引き継ぎ現在に至りますが、感光方式は異なる富士フイルムのフォトラマ、チェキなどもこの「モノシートタイプ」です。
いずれにしても撮ったすぐ後にプリントが得られるのがインスタント写真であったのが、「instax wide Evo」と「instax mini Evo」ではプリンターを内蔵ということだけではなく、積極的にエフェクトをかけて、言葉を変えれば、よく写る写真をいかに壊すかというカメラシステムというわけです。実際使ってみると、ああやったら、こうやったらと、組み合わせは膨大で、遊びの道具としてはおもしろいし、写真的な作品も作り出せ、フィルムをたくさん使うこともなく楽しめるというのも新しい部分です。
写真を撮ったらすぐ見たいというのがインスタントカメラのスタートでしたが、撮影後すぐ見るということでは、1995年発売の「カシオQV-10」がカメラ背面に液晶を組み込み、当時はパーティーやコンパのツールとして大ヒットしたのは懐かしい思い出ですが、やはりプリントをすぐ得たいという願望から、インスタントカメラやコンパクトな携帯プリンターがその後も販売されてきたのです。
このような流れに対して、2023年6月には「instax mini Evo」が発売され、この時期大判プリントが得られる2画角式の「instax wide Evo」が発売されたのです。富士フイルムのインスタント部門の好調さはよく聞くところですが、関係者によると足柄工場にはインスタントフィルムの製造ラインを増設したと聞くのですが、今回もカメラ販売に対し、フィルムを10パック注文して、わずか3本しか買えませんでした。ミッドタウンの富士のショールームに出向いて聞くと、3本あれば十分でそれだけ買えれば恵まれているともいわれました。それだけ売れているのでしょうね。私が使っていておもしろいといったら、私にもカメラとフィルムを買ってきてと知り合いの女性に言われ、お店に問い合わせると、次の入荷は未定だというのです。それだけ人気なのでしょう。
●気になるところ
このところ、ちょっと驚きの現象が起きました。2025年1月30日にこの写真にこだわるのブログに『生き残ったコンパクトデジカメ、ペンタックスWG-1000とWG-8』をアップしたら、わずか3日間で12,000アクセスを超えたのです。各社ミラーレス機のフラッグシップ最新機を頑張って早期に載せても、これほどアクセス数はいきません。ところがペンタックスのWGシリーズはいずれも昨夏の発売でしたが、何がそこまでブレークした要因があったかわかりません。その方面に詳しい人に聞くと、その種のレポート記事が少ないこと、隙間的にうまくネット配信情報にリンクしたのではないかというのです。そに確信はつかめていませんが、もしかすると既存のミラーレス一眼の進歩にはついていけないというか、もうお腹いっぱいという人たちがいて、少し見方を変えた遊びとしてのカメラに注目がいったのではないかとも思うのです。
そこで、改めて実証実験的に今回は「instax wide Evo」を取り上げて、その注目結果を追いかけてみようと思ったのです。アップしてからの3日ぐらいで勝負が決まるので、大いに注目しています。もし、インスタックスへのアクセス数が、日常の高級ミラーレス機レポートより高いとすると、より早く、よりコマ数多く、動体追跡にしのぎを削るハイエンド機に対し、遊び心のある、この2機種がどのような立ち位置にあるのか知ることで、スマホ時代のこれからのカメラのあり方が何となく見えてくるのではないかと考えた次第です。
また、フィルムカメラの好調さが一部には伝えられていますが、一般的なフィルムと異なり、モノシートタイプのインスタントフィルムは、薬剤を放出したり、仕上げるのに水洗したりしないから、それだけ地球環境問題にはやさしい銀塩写真システムであることなどもあり、これからの推移を見ていたい気がします。 (^_-)-☆
■その後の報告
なぜ、ブログの『生き残ったコンパクトデジカメ、ペンタックスWG-1000とWG-8』記事がブレークしたかわかりました。たまたまですが、私のペンタックスWGの記事とその後私の制作した、自家本「エプソンR-D1の研究」が信濃毎日新聞に載り、その電子版がヤフーのニュースに掲載されたようでこちらもちょっとした。ブレークでした。つまり、記事も大切なことながら、いかにヤフーニュースのようなメジャーなWebニュースに取り上げられるかがポイントなのでした。
岡谷市で作られた先進的カメラ 専門誌の元編集長が冊子発行「コンタックスAXの研究」 今も根強いファン多く|信濃毎日新聞デジタル 信州・長野県のニュースサイト