写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

続・針穴写真の魅力(投稿)

 以前“べス単Hawk-Eyeでデジタル”を投稿してくれた神原武昌さんから、針穴写真に関して再度投稿がありましたのでご紹介しましょう。神原さんは、かつては銀塩写真擁護派の最右翼であり、さまざまな場所で銀塩フィルムの魅力への論陣を張っていましたが、最近は赤外写真クラシックカメラの描写をデジタルで挑戦し、今回は針穴写真をというわけで、すっかりデジタルの急先鋒となってしまいました。何が神原さんをそうさせたのでしょうか。今回投稿いただいた文章の中に、その答えがあるような気がします。以下、神原さんの文章と写真をお見せしましょう。


 「針穴写真の魅力」の記事大変魅力的でした。1993年に針穴写真の権威中島先生と、農工大の小野先生と、市川さんと私とで『それぞれの選択/現代写真術の競作』と題して4人展をやりました折に、中島先生から0.2mm厚の銅箔にピンホールを開けたものをいただいておりました。それをミラーレス一眼カメラのLUMIX G1に取り付けて実験をやろうという意欲が涌いてきました。暗箱の製作など色々考えましたが、思い切って簡便なものを使うことにしました。案ずるより生むが易しというわけで、ホースマンボードを2枚用意し、一方のボードにセロテープでピンホール銅箔を固定し、それをサンドイッチするように他方のボードをあてがって、輪ゴムで固定しました。遮光のために厚地の布を用意し、真ん中に適当にピンホールが来るように穴を開け、ボードをくるむようにして、右上写真にありますようにさらに輪ゴムで固定しました。大げさな表現ですがこの自作の「ピンホールシステム」を両手でボディに押し付けるようにしながら、通常の撮影技法どおり人差し指でシャッターを切った次第です。

 簡便すぎて写るンかいなと思っていましたが、バッチリと作例写真のようにモデル撮影できました。ここで素晴らしい発見です。絞り値があまりにも大きいのでファインダーの画面は真っ暗であろうから、外付けファインダーを使おうと思っていたのですが、ファインダーを覗いてみて驚きました。なんと、はっきりとイメージが見えるではありませんか。これぞミラーレス一眼カメラの極意だと思いました。普通の撮影気分で、フレーミング・ワークができました。驚きとうれしさに加えて、どういうわけか、儲かったーと思いました。ベテランの皆様には当たり前の事でしょうが、初心者の私にはとても新鮮な発見でした。ISOを3200にして、手持ちでパチパチ撮れました。とても手軽にピンホール写真が楽しめます。作例にありますように、とてもムードのある気持ちの良い写真が撮れます。これからが楽しみな写真の世界がまた開けたようです。

 それにしても、神原さんの自作というか製作は、ゴムバンドなどで固定するあたりは、かなりユニークな工作法です。結果がよければオーライということなのでしょう。そして、最初の4人展を開いてからもう少しで10年経ちますが、そのときの4人のそれぞれの写真術はどのような変化を遂げているでしょうか、10年一昔ですが、変わらないのはオールデジタルの小野さんと、オール銀塩の中島さんだけかもしれません。それともうひとつ、ファインダーを覗いてピンホール画像が見えると感激の神原さんですが、そこがまさに「レンズ交換式ライブビューカメラ」たるところです。