写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

『日本大判写真展』2010


日本大判寫眞家協会による『日本大判写真展』2010が上野の東京都美術館で開催されました。会場には額装された2倍全紙の作品209枚が所狭しと並びますが、風景を主体とした作品群はいずれもフィルムで撮影しプリントされたものばかりで、その細密描写と階調性はさすが大中判フィルムとうならせるものがあります。僕は主宰の写真家・玉田勇さんの「大判写真入門」という本を作ったことから、写真展の第1回目から欠かさずオープニングに参加してきました。そんなこともあり、ここ7回開催されている中大判公募展では、末席で審査を務めさせていただいています。この写真展を見て毎回思うことは、年々盛んになっていること、そして日本大判寫眞家協会とは、まるでプロ写真家の集団のような名前ですが、玉田勇さんはプロ写真家であっても、実はメンバーの皆さんは大判写真の愛好家であることです。

この写真愛好家の方々が、自分たちの力で自分たちの写真展を開くのはいままでも多々あることですが、一般の方々を対象に作品を公募し、授賞し、展覧会を開いてきたことは素晴らしいことだと思うのです。しかも、東京を皮切りに、京都・広島・神戸と巡回展を行っていますが、その物心両面のご苦労のほどははかり知れません。
公募展には、7回すべて応募し、毎回入選しているという強者もいらっしゃり、「何度受賞してもうれしい限り」だということです。授賞式に来賓で参加された富士フイルムの担当者の方は「このデジタルの時代に、フィルムで撮って、銀塩でプリントしてくれるというのは大変ありがたく、皆さんに感謝状を差し上げたいくらい」というような言葉がでるくらいの写真展です。最近、フィルムの存続を危ぶみ、だからフィルムを使おうというようなメッセージを時折見かけますが、そのようなメッセージ以上に、魅力ある写真を集めるコンテストと写真展の実行は、身近に仲間を感じ目標を得るもので、一般写真愛好家にはきわめて価値あるものだと思います。
ちなみに、フィルムで撮って銀塩でプリントというと完全アナログの伝統写真技法と思われるかも知れませんが、このグループの写真展はかなり初期の段階から、フィルムで撮ってデジタルデータ化し銀塩印画紙にプリントするという手法をとり、その途中生成物であるデジタル画像データで写真展に合わせ豪華写真集を作るという、かなり進んだ方式がとられています。
また、注目されるのは、昨年協会そのものが一般社団法人となったことです。その詳しいことは僕にはわかりませんが、新たな展開が開ける第一歩となることには間違いないでしょう。