写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ソニーFE20~70mmF4 Gを使ってみました。

■写真業界に春がやってきた

 ソニーは2023年1月18日にフルサイズ対応の標準ズームとしてGクラスのFE20~70mmF4Gを2月10日に発売すると発表しました。そのニュースを聞きつけたわがスポンサー氏から久々に連絡があり、F4と暗いけどどうだろうかというのです。F4でも20mmスタートという標準ズームはコンパクトで動画も含めて良いのではないでしょうかと返事して、久々の新製品購入となりました。なぜ久々かということはやはりコロナ禍で動きにくかったこともあったのでしょうか、ここ数年ニコンZfc以来機材の購入は何となく控えられていたのです。それでコロナ明けも近いこともあり、「写真業界に春が来た!」という見出しになるのです。スポンサー氏と私の暗黙の了解は、購入したら私が使ってみてレポートをあげるということなのですが、さっそく発売初日の2月10日に受け取り試用しましたが、あれこれあり、CP+のレポートも上げたので、遅れましたが報告します。

 まずソニーの仕様を抜き書きすると、レンズ構成:13群16枚、最短撮影距離:0.3m、最大撮影倍率:0.39倍、フィルター径:72mm、大きさ:最大径78.7mm×長さ99mm、質量:約488gとなります。これは手に持った感じもかなり小型で、従来からある24~70mmF2.8とは最大口径の違いはあるものの小型・軽量さらに安価であることも魅力となり、何よりも20mm超広角スタートというのは魅力です。

ソニーα7RⅣに装着されたソニーFE20~70mmF4 G≫ あえて同梱されてきたフードは外して撮影しました。

≪左:FE20~70mmF4 Gのレンズ構成ソニーHPより)、右:レンズ鏡胴基部にはAutoとマニュアルの絞りリングがある。同じような絞りリングは、どこかで見たことがあるとシグマのDG DN 45mmF2.8を思い出し、隣に並べてみました≫

 ソニーには同じα用EマウントでもGM(Gマスター)レンズ、Gレンズ、ツァイスレンズ、と単なるEレンズとFEレンズがあるので、FE20~70mmF4 Gは上から2つ目のランクという感じです。最近はツァイスレンズの新製品の追加はなく、いつの間にかGレンズがツァイスレンズの上位に位置するようになりました。マニュアル絞りリングは、関係方面に聞くところによると、ソニーでは単焦点レンズから始まり、最近はズームレンズにも絞りリングが付くようになったということですが、シネでの撮影を意識した仕様だそうです。レンズ性能としては、独自のXD (extreme dynamic) リニアモーターを採用し、光学設計では球面収差の最適化によりズーム全域で高い解像性能を発揮し、9枚羽根の円形絞りとGレンズならではの美しく柔らかいボケを示すとしています。

■さまざまな場面で撮影してみました

 ということでGレンズであるFE20~70mmF4はどのような写りを示すか、「写真はレンズで決まる」とは、かつてヤシカ/コンタックス時代のツァイスレンズのキャッチフレーズでしたが、ソニーGレンズはツァイスレンズを超えて上位にランクアップされたのでその写りは大いに気になるところです。

◐いつもの英国大使館正面玄関

 1年を通して春夏秋冬、晴天の午前10時過ぎ、同じ位置から正面玄関屋根下のエンブレムにピントを合わせて、原則として焦点距離35mm、絞りF5.6で撮影しするようにしています。すでに10年以上前からの設定場面ですが、ボディとのマッチングもありますが、昨今のカメラとレンズでおかしな描写を示すのはほとんどありません。過去の本レポートを参照いただければ技術の進歩がわかります。

焦点距離34mm≫ F5.6・1/640秒、+0.3EV、ISO-Auto100。目盛で焦点距離35mmに合わせたつもりでしたが、Exifでは34mmとでました。画素等倍にまで拡大して見ると、エンブレムの解像感、左右樹木の解像も問題なくすばらしいです。+0.3EVの露出補正をかけていますが、エンブレム周りの壁面は飛ぶこともなくきれいに描写されています。従来なら、画素等倍での画面を掲載していましたが、そのようなことも必要ないぐらいのレベルの高い描写を示しています。

焦点距離20mm≫  F5.6・1/500秒、+0.3EV、ISO-Auto100。最短焦点距離20mmの描写ですが、周辺光量の低下もなく、左右建物の屋根のレベルで見ると直線再現性が良いのがわかります。34mm時もそうですが、正面フラワーボックスの手前部分の敷石が凹んでいるように見えますが、地面そのものにそのような凹みがあるのです。ここでは焦点距離の違いによる画角の変化をご覧ください。

焦点距離70mm≫  F5.6・1/800秒、+0.3EV、ISO-Auto100。最長焦点距離70mmの描写ですが、わずかに糸巻型の収差を感じさせますが、焦点距離からするとむしろポートレイトなど人物での撮影の領域でしょうから、好ましい傾向かもというのは言い過ぎでしょうか。34mmのところでも述べましたが、壁面の調子のトビなどは認められません。

≪英国大使館側道の赤レンガ片≫ 焦点距離70mm、F5.6・1/200秒、+0.3EV、ISO-Auto 100。英国大使館は1874(明治7)年12月に公使館として竣工し、初代の建物は赤レンガ作りで1923(大正12)年の関東大震災で完全に倒壊したとされています。側道にはところどころ赤レンガの破片が散らばっていますが、遊歩道にもなっていて、多くの人々が散歩やマラソンをしたであろう100年の歴史を感じさせるレンガの摩耗です。丸みを帯びた赤レンガの柔らかさに対し、ところどころに顔を出している小石はシャープに描出されています。

≪英国大使館側道のサクラの新芽≫ 焦点距離70mm、F5.6・1/160秒、+0.3EV、ISO-Auto 100。大使館の側道にはサクラの古木があり、剪定された枝から新しい芽がでていました。焦点距離70mmでの最近接に近い撮影ですが、さすが深度は浅いですが、ピントの合ったところはシャープです。

ケヤキに1羽のカラス≫ 焦点距離70mm、F5.6・1/500秒、ISO-Auto 100。元英国大使館跡地に2023年3月に開園予定とされている「国民公園 皇居外苑半蔵門園地」に植わるケヤキです。カラスは画面中央少し上の枝にとまっていますが、冬季はこのように落葉したケヤキの枝を写し拡大して見るとレンズの性能が良くわかります。画素等倍にまで拡大していっても極端な色ニジミは感じさせません。F5.6というと、このレンズでは1絞り絞り込んだところですから立派な描写でしょう。

≪ダイヤモンドホテルの紋章≫ 焦点距離50mm、F5.6・1/160秒、ISO-Auto 100。今年で70周年を迎えたというダイヤモンドホテル。ボディとのマッチングが良かったのでしょうか、金色に輝くエンブレムには順光で太陽光があたっていますが、白飛びすることもなく立体感をもって描出されています。また背後のボケもクセがなく自然です。

≪東條會舘写真研究所≫ 焦点距離20mm、F5.6・1/100秒、ISO-Auto 100。2023年で111周年という長い歴史を誇る東條會舘だけに、今も写真処理を自社で行っているようです。拡大して見るとシャープで1つずつのタイルの目にくずれはなく、屋上の植物の枝も拡大しても色のにじみはありません。ただ、ワイド端の20mmで撮影ということで致し方ないことですが、わずかながらのタル型歪曲を感じさせます。

≪文字の多い店≫  焦点距離20mm、F5.6・1/40秒、ISO-Auto 100。左はパン屋さん、右は中華料理店。どちらも手書きのメニューが多いのです。このようなときは超広角と高画素機(6100万画素)ならではのパワーが発揮されます。どんどん拡大していってどこまで読めるかが大切なわけで、例えば時間のないときの取材などではメモするよりは、まずは撮っておけば後で拡大判読すれば良いのです。もちろん全体の画像が付いているわけですから、メモや録音より効率は良いのです。全体的に他の被写体に比べて柔らかく描出されていますが、撮影時のシャッター速度にもよるのでしょうか意外でした。

≪白く輝く壁のビル≫ 焦点距離20mm、F5.6・1/1600秒、ISO-Auto 100。目にまぶしいほどの白い壁に太陽が反射している所を斜めからねらってみました。さすが太陽光がズバリ当たっているところはスポット的に白ヌケしていますがゴーストもでていなく、全体的にはグレーに描出されているので適正な露出成果で、手前の樹木も黒つぶれなくバランスのとれた露出と考えられ、ボディとレンズの相性は良いように感じました。

≪枯れ木に実る≫ 焦点距離20mm、F4・1/640秒、ISO-Auto 100。最広角側で、近接して撮影するとどのくらい背後がぼけるかと絞り開放F4にセットして試してみました。拡大して見ると木の実はカリカリという感じに写っていて、背景は十分なボケを感じます。このような場面をどう撮るかですが、ズームして標準や望遠域で撮影すればボケはさらに大きくなるでしょう。

≪FE20~70mmF4G開封の儀≫ 焦点距離20mm、F8・1/30秒、ISO-Auto 10000。購入後はいつものお店で開封の儀式を行いました。ボディはもともと使用しているILCE-7RM4ですが、シャッターを押したのは千葉大学工学部のドクターコースに通う年配の学生さんです。F8と絞ったのはお椀状に並んだ人々を皆にピントを合わせようとのもくろみだったのでしょうが、手前の空箱にピントを合わせたのでしょうか、人物は全体的に柔らかく描写されました。

■やはり写真業界に春がきたのでしょうか

 ソニーFE20~70mmF4Gを使い終えての感想はやはり広角側20mmスタートとというあたりがポイントで、F4という口径はデジタルではさほど気にならなく、むしろ小型化のメリットが大というのが正直な印象です。もちろん画質はということになるのですが、Gマースターでもなく、Gであっても作例をご覧になってお分かりのように、大変安定した画質であることも標準ズームとして使うには十分なものがあったことが前提になるのです。このFE20~70mmF4レンズが発表される直前に写真仲間のHさんが、シグマ24~70mm F2.8 DG DN | Art | レンズを購入していたのを知っていたので、どんな感じか聞いたら、十分満足して使っているけどやはりF2.8という大口径のアドバンテージは十分に高いし、じゃあソニーの純正はというと高価だしということで、それでいいのだというのです。これはユーザーなら当然考えることなので、それでもって業界のバランスもとれているのです。

 すべてを終えてFE20~70mmF4Gの使用記を文章化する前にわがスポンサー氏から電話が入り、ソニーFX30にEPZ 10~20mmF4G、さらにDJI RS 3 Miniを追加購入して欲しいというのです。さっそく入手して開梱しましたが閉口しました。カメラの操作、ジンバルの設定など短時間ではまったくのお手上げ状態なのです。やがて時間ができたら挑戦したいですが、積み残しの宿題はたまるばかり、この先複数のグループ写真展への参加も予定されどうしようかと考えています。 (^_-)-☆

 

 

 

シグマ24~70mm F2.8 DG DN | Art