写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

シグマ60~600mmF4.5-5.6DG DN OS |Sportsを使ってみました

 シグマから高倍率・超望遠のズームレンズ「SIGMA 60~600mmF4.5-5.6DG DN OS |Sports」が、CP+2023直前の2023年2月17日から発売されました。CP+の会場では他社も含め見るものも多く、ちらりと横目で見る感じでしたが、個人的な指向からすると超望遠のレンズには大変興味があるのです。それというのも、ここ数年来、ミラーレス一眼の最新機種をいじっていて、その機能を十分に生かすのは超望遠系だと思うようになったのです。その内訳は、小さくてすばしっこいカワセミ、どんどん迫ってくる飛行機や列車を撮影するには、超望遠を使って、毎秒何コマ撮影できるか、AFはどこまで追随できるかなどです。これらに加え当然のこととして高解像であることが望まれるわけですが、そんなことを繰り返していたらいつの間にかその方面に興味がわき、コロナ禍とはいえ、カワセミオオタカは近所の八国山緑地や水元公園へ、飛行機は、座間基地、横田基地、入間基地、さらには松本空港沖縄県の瀬永島へ出向くほどでしたが、やはりロケーションさえよければ標準ズームでも良いのですが、目では見えなくてもはるか遠方から爆音で迫ってくる飛行機を遠くからアップで追い続けるためには、高倍率のズームレンズが最適なわけで、それを使うことがひそかな願望でもありました。もちろんこの分野には、野球やサッカー、自動車レース、舞台などもあるのですが、一般人が手を出しやすいのは、野鳥、飛行機、列車、といったところでしょうか。

 そんな時にシグマが「新製品貸出し体験会 2023 Spring in 東京」を4月8日(土)に開催すると告知しました。会場は九段会館テラス3階で、身分証明があれば無料で新製品を2時間貸し出してくれるというのです。地の利も職場から近いこともあり、あいにくの薄曇りでしたが、朝一番で少しだけ顔を出し「シグマ 60~600mmF4.5-5.6DG DN」をちょっとだけ試用しましたので簡単に実写結果を報告します。

 

≪シグマの試用会ということでfpを持参、フードを取り付け最長600mmにセット:左≫ 右上:フードなし60mm時の寸法と重さ、右下:焦点距離60mmと600mm時のレンズの動き。ズーム方式は直進と回転に対応し、ズームロックスイッチあり。レンズ構成は19群27枚、フィルター径105mmφ、大きさ:119.4mmφ×279.2mm、重さ2,495g、価格:368,500円、発売:2023年2月17日

 最初にレンズを渡されたときに、ボディへの装着は簡単に行えましたが、いざ持とうとすると3.5㎏近くあり簡単には持てません。万が一落下させても困るので、ストラップはボディ側とレンズ側のダブルで首から吊り下げるということになりました。その状態で歩き、ベンチに置き、上左)の姿写真を撮りましたが、いざカメラを構えてみると、不思議と背面液晶画面に目を近づけてしまうのです。ふだんからEVFのないカメラも使っているのになぜだろうと考えましたら、腕を伸ばしてレンズの着いたボディを目視位置に持っていくのは重くてできないため、落とさないように自然に背面液晶部分をのぞこうとしたのです。このためにはfpにEVFがあればよかったのです。もっと簡単に言えば、EVFとグリップのあるルミックスS1-Rかソニーα7系のボディを持参すれば良かったのです。つまり、総重量を考えずにfpを持参した、私の作戦ミスなのです。

 

■いろいろと撮影してみました

 曇天のなか限られた時間でしたが、それでも何とか使ってみました。今回のfpでの撮影は、基本的にAUTOつまりプログラムAEで行いました。実は、私はカメラの性格を知りたいときはいつもプログラムAEで撮影しています。もちろん特定の意思をもって撮影するときは、その限りではないのですが、カメラに対して開発陣がどのような考えを持っているかがわかるのです。カメラのプログラムラインはさまざまな要素が加味されるのですが、明るさ、撮影レンズの焦点距離、被写体までの距離、静止物か動体か、被写体の輝度分布や色傾向など、メーカーのノウハウを集約させた部分として『絞り値とシャッター速度』が決まるのですが、最新のデジタルカメラではさらに『感度の自動可変』の要素が加わり露出が決まり『絞り値とシャッター速度と感度』が自動的に変わるのです。そのプログラムでの結果では、自分のイメージする写真が撮れないときに、目的にかなった絞り優先AE設定などを行うわけです。カラー設定は、最新のファームアップで加わったウオームゴールド色にセットしました。

≪画角変化を見る:60mm≫ F4.5・1/60秒、ISO100。まずは10倍という高倍率を見るためには、いくらスポーツという名称であっても固定された不動のものを写してみると、そのズーム倍率の違いに驚きます。被写体は、九段会館テラスから見える、1964年の東京オリンピック時に建てられた山田守氏設計の日本武道館。屋根のてっぺんは擬宝珠(ぎぼうし)とか「大きな玉ねぎ」とも呼ばれるもので、屋根のカーブは富士山に倣っているとされています。いずれにしても曇天で、やはり写真は青空の下で撮りたいとつくづく思う次第です。

≪画角変化を見る:600mm≫  F6.3・1/400秒、ISO100。日本武道館てっぺんの玉ねぎがこのように微細に見えるのは、さすが10倍のズーム倍率はすごいです。画面上の玉ねぎ横幅を測ってみると60mmのほぼ10倍あります。この金色は金なのでしょうか、その下の8角形の台座の部分は、鑑賞倍率によってはモアレが発生して見えますが、元画像にはモアレは発生していなく、モニターや拡大率を変えれば解消します。

≪入学式会場への道≫ 焦点距離600mm、  F6.3・1/320秒、ISO800。ほぼ葉桜の日でしたが、当日は日本大学の入学式で、九段会館テラスの手すりにレンズの三脚座部分を軽く置き、会場への案内看板と向かう人にシャッターを切りました。決して安定して固定されているわけではありませんが、このレンズのシャープさがよくわかるカットだと思います。

≪枯れた睡蓮の茎≫ 焦点距離600mm、 F6.3・1/320秒、ISO800。冬枯れした睡蓮の茎が頭が重く折れるのでしょうか、水面との反射で幾何学的な模様を示し、さまざまな形をして冬の風物詩としておもしろいのです。

≪桜の花と虫≫ 焦点距離412mm、 F6.3・1/520秒、ISO800。桜の古木の脇から、芽がでていて花が咲いていたので撮影しました。画面としてはこの状態でノートリミングですから、望遠マクロ撮影となります。撮影時には、フレーミングとAFでやっとでしたが、撮影後PCのモニター上で拡大すると、なんと小さな虫がいるのです。画素等倍まで拡大して見ると虫の目玉まで見えて、やはり解像の高さを示す結果となりました。

≪水面を行くオオバン焦点距離600mm、 F6.3・1/320秒、ISO500、-0.3EV補正。今回の撮影で最もSportsの名にふさわしい被写体でした。動きの速いオオバンを追って、AFでタイミングを見てシャッターを押すのですが、私の指先のタイムラグと、カメラのタイムラグが相乗してなかなか思ったようなカットがとれないのです。単写で撮影したのがまず第1の敗因で、撮影モードとカメラの選択を間違えたというのが正直な印象です。複数コマで何とか押さえたのがこの1枚でした。

≪ブラインドを閉じた室内でレンズの解説をする写真家 山口規子先生≫ 焦点距離62mm、 F9.1・1/320秒、ISO4000、+1EV補正。最前列の席に陣取り、ほかの方々のじゃまにならないようにと右端にいて、先生のお顔にフォーカスしました。スクリーンに映写する暗い環境で、その場の光だけで撮影しましたが、拡大して見るとぶれていなく、レンズ性能としては高解像ですが、拡大に耐えるお顔も素晴らしいです。

 

■終わりに

 今回の「シグマ 60~600mmF4.5-5.6DG DN OS」という最新の10倍高倍率ズームレンズの試用は極めて限られた時間でしたが、三脚なし(持参しなかったこともありますが、テラスでは三脚・一脚の使用は禁止でした)で使用しました。使ったボディfpには機械的な手ブレ補正機構はありませんが、レンズ側で約6.5段の補正効果があるというのです。どおりで簡易な撮影でもブレを感じるカットはなかったのも素晴らしいことだと思うのです。

 時間が許せば新しい飛行機の発着の撮影場所として、最近話題のキヤノンニコンのオフィスがある品川のインターシティーに出向くのも手軽でよいかなと思いました。さらに欲を言えば、OMデジタルに搭載のプロキャプチャーのようなシャッターを切る前にさかのぼって撮影画像が得られる機能などもカメラに欲しい機能だと思うし、目的にかなった機材で撮影システムを組み上げれば、一般の人でもさまざまな被写体で、かなりハイレベルの写真が撮れるようになったのが、現在だと思うのです。このように最新の技術の上に成り立つのが写真の進歩だと思うし、過去から現在に至るまでその進歩が撮影可能範囲、表現の範囲を広げてきていると考える次第です。 (^_-)-☆