コロナ禍ですっかり停滞していた写真業界は、写真展などはかなりかつての姿に戻り、わずかながらオープニングパーティも開かれるようにもなってきましたが、完全な回復にはまだまだ時間がかかるようです。そのようなときに、カメラ映像機器工業会(CIPA)の主催する写真展の公募が2022年8月に発表されました。テーマは『2020~2022年科学少年・科学少女の見た風景』とされていますが、このコロナ禍で撮影したお気に入り写真を送れば、全世界に向けたCIPAのWebsiteに掲載されるというものです。応募資格は、元科学少年・科学少女も含むというものですが、つまり年齢・性別は問わないというわけです。もちろん国籍は問われないと思います。
≪虹の向こう≫ あえてタブーを意識して撮影してみました。50mmF1.5、F1.5・1/8000秒、ISO-AUTO125、AWB
◐コロナ禍以降、写真業界は元に戻れるのだろうか?
実は個人的には、毎年パシフィコ横浜で開催されてきたCIPAの主催するCP+は、この先元の姿に戻れるのか、どのようになっていくのだろうかと業界スズメとしては気になっていたところです。CIPAが異例ともいえるWeb写真展公募を行い、かつての「ホビーとしての王様、写真」をもう一度奮い立たせようという考えのようです。応募に際しては、8月31日締め切りで、氏名、所属、年齢の書き込みなどありますが、私も元科学少年として市場動向を見るためにも応募してみました。
9月下旬にCIPA事務局から、掲載にあたっての文字と体裁の校正が届きましたが、特に問題ないので戻しましたが、10月3日にはCIPAのWebページにその結果が公開されました。それによると総応募点数は公開されていませんが、入選者数は約45人で、点数は70点を超えていて、男女比は約4:3で、最年少は4歳、最高齢は75歳、年齢構成的には10歳から60歳ぐらいまで、小学生からプロ写真家、大学教授までと幅広いのが特長です。もちろん応募点数はもっと多くても良いのは言うまでもありませんが、その結果からは、いまの写真が置かれている状況が垣間見えてきているのです。その1つが、従来写真は男の趣味というように言われていたのが、女性がかなりの数を占めていることです。もちろん写真専門の大学では女性の占める割合が5割を超えたというのは、かなり以前から言われてきているわけですが、ここでも明確に示されたわけです。
◒少しだけ写真の新しい姿が見えてきました
このフォトコンテストは、Web上の写真展に向けての公募でしたが、特に入選に順位を付けたわけでもなく、賞品や賞金がでることはなく、あくまでも自分が撮影した写真を見てもらおうということであり、公募規定の中に粗品進呈は明記されていましたが、それがなんであるかは不明で、賞金や景品ねらいの応募ではないのがわかります。そこに見えてくるものは何なのでしょうか。スマホに押されてカメラの消滅を声高らかに訴える人も一部にいますが、実はカメラのデジタル化によって小型カメラで高性能な画像が得られることから、子供からお年寄りまでの方々が日常的に写真を撮りカメラを持つことをの楽しみを覚えたのです。それが、電話機、カメラと一体になり、さらにはパソコンとしての万能ツールを介してのスマホに対して、いわゆるレンズ交換式のカメラを使い、写真ならではの楽しみも幅広い人々に根付いてきたのではないかと思うわけです。これはいままでのプロ写真家や愛好家を含めて多くの人々が特別な目的をもって写真を撮ることとは別の新しい動きだと思うわけです。
≪東京北西部からの富士山≫ 400mmF5.6、F8・1/1250秒、ISO-AUTO100、AWB
町には写真企業とは一線を画した独立した写真ギャラリーや展示場を多く見かけるようになりました。写真を趣味、ホビーとしてとらえたときに、 いままでの動きとは異なる新たな形で成長してきているのです。もちろんこのような動きは以前からもありましたが、より見えるような形になってきたのが昨今だと思うのです。それをバックアップするのが、写真企業であった時代から、写真好きの個人やグループで、ときには行政であったり、一般企業であったりと、少しずつ変化していくと、日本における写真のあり方が異なってくるのではないかと思うのです。 (^^♪