写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

キヤノンEOS R5を使ってみました

 キヤノンの最新ミラーレス一眼「キヤノンEOS R5」が7月30日に発売になりました。今回「EOS R5」と引き続く「EOS R6(8月27日発売)」は、一昨年来の各社のミラーレス新製品ラッシュでいささか疲れましたので、現物を見ないで勝手に『ミラーレス一眼、次の方向が見えてきた キヤノン』というタイトルで、キヤノンニュースリリースとホームページの技術情報を読むだけで、レポートを書き上げるという暴挙に出たのですが、アクセスカウンターによると5,000人ぐらいの方が見に来てくれたようで、それなりに興味持っていただけたのだと満足していました。ところがそのレポートを読んだわがスポンサー氏は、今まで継続してやってきたことを休むのは良くないから、買いましょうとなったのです(どうやら8k動画に興味があるようです)。小売店への購入依頼は少し遅れましたが申し込むと、当初はバックオーダーが多すぎて3か月待ちだと伝えられましたが、どうにか8月20日には手にすることができました。というわけで、早速「EOS R5」をレポートします。

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≪今回はEOS R5ボディに新しいレンズをということで、RF15~35mm F2.8 L IS USMを購入しました。すでにRとRPの時にRF24~105mm F4 L IS USMとRF35mm F1.8 MACRO IS STMは入手しているのです≫

 

■外観から見てみると

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≪回転収納式の背面液晶は先行のEOS R、EOS RPと同じです≫

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≪バリアングル的に使うにはこのように回転させます≫

 ところでEOS R5はEOS Rの発展機であり、上位機種であることは間違いと思うのですが、すでにEOS Rを使っているユーザーだとこの上の写真を見るとあれっと思うのではないでしょうか? EOS Rでトップカバー背面右肩の位置にあった“M-Fnバー”と呼ばれる新しいスイッチがなくなってしまったのです。その代わりに中央押しも可能な“マルチコントローラー”と呼ばれるボタンが新設されたのです。企画時にいろいろと議論されて良かれと新規採用した“M-Fnバー”でしょうが、個人的にもまったくなじめる機構でなかったために私は不使用のままやり過ごしてきましたが、EOS R5の“マルチコントローラー”は視覚的にも操作的にもマニュアルを読まなくても直感的に操作できるのはすごく良いです。それにしても、あれだけ新規軸として打ち出した“M-Fnバー”を、次期モデルではなかったことにする思いっきりの良さはキヤノンらしく素晴らしいです(皮肉ではありません)。

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 ≪左)電源をOFFにしてレンズを外すとシャッター幕が閉じているので、気持ちとして楽になります。電源ONのままレンズを外すと撮像面がむき出しになるので注意が必要です。レンズ交換式のミラーレス機としてシャッター幕が閉じるのは、先代のEOS R以来のセーフティー機構ですが、大口径、ショートフランジバックならではのメカニズムで、フィールドでのレンズ交換が気分的に手軽に行えるのです。右:記録メディアはCFexpressカードとSDカードの2スロット式。写真は間に合わせにXQDカードとSDカードを軽く差してありますが、CFexpressカードとXQDカードは外形は同じですが、別物なので要注意≫

 

■「キヤノンEOS R5」の特徴

 「キヤノンEOS R5」の特徴を見てみますと、4,500万画素の撮像素子、電子シャッター使用時最高約20コマ/秒、機械シャッター/電子先幕使用時は最高約12コマ/秒の高速連続撮影が可能、約100%の広範囲AFエリア、常用最高ISO感度51200、レンズとボディ側との相助作用による最高8.0段手ブレ補正効果、手振れ補正機構内蔵の交換レンズでも5軸の手振れ補正が可能、8K/30P・4K/120Pの動画撮影可能などがうたわれていますが、ここでは実写から、私の興味ある部分を中心に取り上げてみました。

■実写から見るEOS R5

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≪いつもの英国大使館正面玄関:焦点距離35mm、絞り優先AE、F5.6・1/640秒、Auto-ISO100、AWB≫ 手にした翌日だけ晴天の青空となりましたが、以後天候には悩まされました。天候にもよりますがEOS R5の発色傾向は全体的に淡いライトな感じで、左のオレンジ色の車止めポールからもその傾向は読み取れます。撮影時刻は晴天に日の朝10時30分ごろ、春夏秋冬一貫した条件です。その日の天候にもよりますが、EOS RやRPより柔らかく感じられますが、最初のカットなのでもっと撮り込まないとわかりません。

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 全体画面の中央上部を解像感はレンズの解像力によるところが大で、単焦点のRF35mmF1.8 Macro IS STMを使えばもう少し切り立った描写になると考えます。とはいっても、画素等倍に伸ばすようなプリントは通常はありえないのでA3ノビやA2程度ではプリント上は大きな差は出ないと考えられます。調子の再現は全画面からも読み取れましたが、特別に白飛びしているところもなく全体的に柔らかく見えます。

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焦点距離15mm:絞り優先AE、F5.6・1/640秒、Auto-ISO100、AWB≫ 焦点距離を変えても露出は変わりませんでした。少なくともこのカットから見る限りRF15~35mm F2.8 L IS USMレンズの直線性は良いようです。

 

■ランダムに撮影してみました

 撮影は、極端に細かくアングルの変化を避けなくてはいけない場合には、三脚で位置固定して行いますが、最近はすべて手持ちで行うようにしています。もちろん掲載カットは手振れなどが起きていないベストのものを選ぶのですが、仮にブレの要素が加わっても、手振れ補正機構で吸収できる範囲だと考えるし、画質に影響が出てもそれがカメラとレンズの実力だと思うのです。

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≪いつものマンション:焦点距離24mm、プログラムAE、F7.1・1/400秒、Auto-ISO100、AWB≫ このシーンで見るのは中央のマンションのタイルの地肌の解像感と左右のビルの調子再現です。ここ数年この場所で同じように撮影してきているので半ば第2チャート化していますが特別問題ない描写です。中央と右の上に立つアンテナ避雷針を画素等倍まで拡大して見ると色収差の発生もなく、ポールの丸みを感じさせ、それぞれが細かく解像し、細かな色も分離して見えますのでなかなかな描写です。

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 いつものマンションの画像を画素等倍に拡大して中心部を切り出してみました。基本的にはこのような状態ではレンズの解像力が大きく関係してくるのですが、必要十分な解像感といえるでしょう。

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≪遊具:焦点距離35mm、プログラムAE、F6.3・1/320秒、Auto-ISO100、AWB≫ さまざまな色に塗り分けられた遊具、自然の緑など、取り立てて誇張された派手な発色のない場面ですが、落ち着いてみることができます。このレンズの焦点距離35mmはズームレンズとしてみるとテレ端になるわけでして、手前の遊具のポール、背後のビルを見るとズームレンズのお約束通り、わずかに糸巻き型の歪曲が認められます。

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千鳥ヶ淵のお堀:焦点距離15mm、プログラムAE、F6.3・1/320秒、ISO100、AWB≫ 風のない晴天の昼下がりですが、やはり全体に落ち着いた色調で、色づくりがかつてのキヤノンとは異なるやさしい描写です。

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≪彫像:焦点距離29mm、プログラムAE、F4・1/125秒、Auto-ISO100、AWB≫ 四季を通じてこの場で撮影することが多いのですが、ほとんどの場合彫像が黒くつぶれてしまうことが多いのですが、像の日の当たった部分は白飛びがなくぎりぎりの描写です。撮影はAFですが、この場合ピントは背後のサクラの木の葉に来てました。

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≪写真展にて:焦点距離35mm、プログラムAE、F3.2・1/30秒、Auto-ISO200、AWB≫ 天体写真とネコ写真をライフワークとする山野泰照さんの写真展会場にて、画面右端に立ってもらいシャッターを切りました。顔認識+追尾優先AFですが、このポジションでシャッターボタン半押しで山野さんの眼鏡越しの目を瞳認識し、合焦してます。焦点距離35mmでF3.2だと右腕袖から先はぼけています。瞳認識AFはすっかり人物撮影においては不可欠な機能となりました。なおEOS R5の瞳認識は動物にも対応することになりました。なお写真展会場での撮影では、どの社のカメラでもその場の光を使うとこんな色調になります。自然な発色を望むときはレタッチソフトで自動レベル補正か自動カラー補正を使えば一発で補正されますが、ここではそのまま掲載しました。また露出レベルも顔でなく背景の壁に合うことが多く、少しばかりトーンカーブを持ち上げてあげないと顔がつぶれるのですが、本機ではそのようなことはなく、そのままの露出レベルです。

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≪自分の顔を写してもらいました:焦点距離35mm、プログラムAE、F2.8・1/30秒、Auto-ISO800、AWB≫ 他の人を載せるだけでなく自分の顔もアップしました。山野さんのシーンもそうですが、プログラムAE時は“1/焦点距離”までは絞りで制御して、それ以上暗くなると自動的に感度がアップしていくわけで、山野さんの場面は写真展会場で明るかったのでISO200となり、喫茶店の店内のここではISO感度800となりました。撮影は顔認識+追尾優先AFでしっかりと向かって右の目にフォーカスしてます。

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≪英国大使館脇の歩道で:焦点距離35mm、プログラムAE、F5・1/200秒、Auto-ISO100、AWB≫  歩道わきに生える植物の葉にピントを合わせてシャッターを切りました。 背景のボケは、とくに癖もなく素直です。

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 ピントの合った部分を画素等倍にして切り取りましたが、文句ない解像です。画素等倍は実用的でない拡大率ですが、近距離での撮影で、ここまで拡大すると絞りF5でもかなり深度は浅く見えます。

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≪お花畑で:焦点距離15mm、プログラムAE、F5・1/200秒、Auto-ISO100、AWB≫ 焦点距離15mmという広角を活かし、かつ自然な感じで撮れる場所を探しました。撮影された画像から視覚的に見ると、お花畑の向こうに鎮守の森があるような感じですが、一番手前の黄色い花から、奥の森までは距離にするとわずかに20mというぐらいです。ピントは中央の森に合わせてありますが、拡大すると葉が1枚ずつ解像していますが、森を離れた左右の木々は大きく拡大すると解像していません。ここがデジタル写真ならではの事であり、焦点距離15mmでF5という明るさで、基本的に背後の被写体は過焦点距離内として全体にピントがきているのではないかと考えるわけですが、厳密にはピントが外れているのです。被写界深度を計算でだすことも当然可能ですが、許容錯乱円をどの程度に設定するかということ以上に、高画素機での大伸ばしは難しさをもっています。

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≪醤油屋さんの店頭:焦点距離18mm、プログラムAE、F2.8・1/60秒、Auto-ISO2500、AWB≫  直線性の良い写真が撮れるレンズなので、古い味噌・醤油屋さんの 店頭を写させてもらいました。こういう画面では、解像特性が高いのはいうまでもなく、直線性の良いデフォルメ感のないレンズなので自然な感じに撮影できています。

 

■最高8段の手振れ補正効果とISO感度51200を試す

 EOS R5は、レンズとボディ側との相助作用による最高8.0段手ブレ補正効果、常用最高ISO感度51200とうたわれています。実際どのように写るか試してみました。

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≪水車:焦点距離24mm、絞り優先AE、F22・0.6秒、Auto-ISO100、AWB≫ 最高8段の手振れ補正を活かした撮影ということで考えました。通常の撮影では、ゆっくり回る水車は写し止められてしまいますが、ここではあえて絞りを最小のF22に設定し0.6秒というスローシャッターで狙ってみました。結果はまずまずで、背景と手前の水車との輝度差が大きくて、背景が露出オーバーですが、水車から流れる水は白く糸を引いたように写せました。本来なら定番の新緑の奥入瀬渓谷の水の流れを追うようなシーン、地下駅広場など雑踏での人の動きを流すような撮影の時などに効果を発揮する技法ですが、手持ち撮影で行えるところが、まさに最新のカメラ技術の応用といえます。

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≪1秒手持ち撮影:新宿ゴジラ通り、F18・1秒、ISO100、-1EV露出補正≫ 東宝シネマの屋上にいつもならスポット照明されたゴジラがいるのですが、コロナ禍の自粛で照明は点灯されていません。しかし定位置であるために、あえてそのまま撮影しました。なぜ1秒かということですが、他社機種ユーザーには2~3秒を手持ち撮影できたと自慢する人もいますが、仮にそれが事実としても私の能力としては1秒が限界ではと考えて、1秒となる絞り値を選択しました。シャッターを切った後には“BUSY”とファインダー内に表示され、ノイズキャンセル処理をやっているのがわかります。このサイズからはわかりませんが、拡大画面はブレていないようにも感じますが、レンズの画質や拡大率によって評価は変わるでしょう。

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ISO感度51200での撮影:新宿ゴジラ通り、プログラムAE、F11・1/1000秒、ISO51200、-1EV露出補正≫ こちらは同じ場所で、ISO感度を常用感度の最高ISO 51200にマニュアル設定して、プログラムAEで撮影してみました。この画面左右640ピクセルへのリサイズ画面では、1秒手持ち撮影もISO感度51200撮影も大きく変わるようには見えません。実際は実用的な写真展示サイズのA3ノビあたりに拡大プリントにするとその差はでるのだろうかと考えます。さらに実際の場面でEOS R5とこのレンズを使いプログラムAEでの撮影では、通常の薄暗い場所での撮影でも最高感度51200まで上がることはないだろうと考えられます。ただ、いずれにしてもいつも見ている感じより少し柔らかい描写のような気がします。これが手振れによるものか、超高感度撮影によるものか、さらには交換レンズそのものの解像特性によるものかは、これらの撮影でははっきりと断定することはできません。ただこのカットは1/1000秒でシャッターが切れていますから手振れ補正の効果を除いて考えても良いと思いますが断定はできません。

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≪画素等倍近くまで拡大して画像の一部をクロップして見ました≫ 左:1秒手持ち撮影、右:ISO感度51200。それぞれが極端に画素等倍という大きな拡大率ですが、ISO感度51200のほうはザラツキがあり、トーンも狭まっているのがわかります。4,500万画素で画素等倍で引伸ばすと横幅で2.9mの大型プリントになりますが、実際は鑑賞距離にもよりますし、プリンター側の画像処理機能も働くので実用上はまったく問題ないということになり、先述のように実際の撮影場面ではISO 51200になる撮影条件は少ないと思われます。

■いつものライカマウントクラシックレンズを使ってみました

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≪左)キヤノン25mmF3.5(1956年製)と右)コシナフォクトレンダースーパーワイドヘリアー15mmF4.5 ASPH.(1999年製)≫

 ミラーレス一眼はフランジバックが短いのが特徴で、マウントアダプターをボディとレンズの間に入れることにより、さまざまな昔のレンズがフルサイズで使えるのが魅力で、かなりの人が最新ボディにクラシックレンズを組合わせて楽しんでいます。このうち一眼レフの場合にはミラーボックス分だけフランジバックが長いので、ほとんどのミラーレス機に一眼レフ用の交換レンズはフルサイズ機でもむりなく使えるのですが、ミラーのないフランジバックの短いライカとその類の交換レンズの、対称型光学系を採用した広角系のレンズには一部周辺減光の問題や色付きがあったりするので、私の使用レポートでは必ずその点をチェックポイントとしてきました。当初は焦点距離50mmぐらいから超広角まで各種ライカマウントレンズを対象にしてレンズの適、不適を見てきましたが、ある時期に撮像素子の形式が変わればレンズ描写も変わるということがわかりましたので、最近ではライカスクリューマウントの「キヤノン25mmF3.5(1956年製)」と「コシナフォクトレンダースーパーワイドヘリアー15mmF4.5 ASPH.(1999年製)」をクリアすればOKというように考えるようにして、チェックを簡略化しました。ということで、早速この2本を持って撮影に出かけましたがどうも天候の関係かスッキリ来ないのです。撮影場面によって、露出が定まらないのです。結局、3か所ほど場所を変えても納得できなかったので、最終的にはいつものYS-11駐機場に行って撮影を終了させました。

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≪Canon25mmF3.5(1956):絞り優先AE、F5.6・1/800秒、Auto-ISO100、AWB≫ 同じレンズでもどうしたのだろうというぐらいに周辺光量の落ち込み、色づきが先行機のEOS RとEOS RPの時よりも極端に少なくなっています。発表の時にはCMOSの撮像方式が、裏面照射タイプとか積層方式になったわけではないと聞いていましたが、CMOSのマイクロレンズの集光特性とか、画像処理エンジンで何か対応したのでしょうか。写真は表現ですから、周辺光量、色づきなど含めてこういう感じが好きという人がいてもおかしくないです。

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フォクトレンダー・スーパーワイドヘリアー15mmF4.5 ASPH.(1999):絞り優先AE、F5.6・1/800秒、Auto-ISO100、AWB≫ キヤノン25mmの時と同様に周辺光量の低下、色づきはありますが、好みの問題としてとらえればそれまでですし、前モデルより格段に変わっている印象があります。ちなみにコシナのーパーワイドヘリアー15mmF4.5 ASPH.は、現在のモデルではMマウント化され、光学系も一新されこのような周辺光量の低下、色づきはありません。

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≪RF15~35mm F2.8 L IS USM:焦点距離15mm、絞り優先AE、F5.6・1/640秒、Auto-ISO100、AWB≫ 今回のRF15~35mmレンズの描写です。露出、発色、周辺光量ともまったく問題ない描写ですが、表現としての描写では上の2点のような描写を好む人がいてもおかしくないのです。

 このほか、参考までにと第2世代6枚玉ズミクロン35mmF2と沈胴式ズミクロン50mmF2では周辺減光、色づきもなく、まったく問題なくアダプターで使用できました

■追いつ、追われる立場にあるEOS Rシリーズ

 キヤノン初のフルサイズミラーレス機が「EOS R」が登場してから約2年半経ち、EOS R5とR6が発売されました。この間さまざまな要因が絡み合い、昨今のカメラ市場の低迷はCP+2020、フォトキナの中止、Stay Homeで外出の自粛などが重なり、かなりつらいものがありました。そのような中で発表・発売された新製品ですが、その発表形式はYouTubeによるオンライン配信という過去に例のない発表会となりました。

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≪7月9日21:00から行われた異例のYouTubeによる発表会のオープニング画面。キヤノン㈱常務執行役員 戸倉剛氏によるご挨拶≫

 各社ともこのようなオンライン発表会は行っていますが、画面左下を見てお分かりのように12,564人が視聴中となっているあたりは、コロナ後のこれからも新しい発表会の在り方を示しているような気がします。

 さて、このような状況下においてキヤノンが市場投入してきた「EOS R5」と「EOS R6」どのような新規性があるのだろうかと、簡単な比較表を作ってみました。これを見ると入れ替わりの新世代機ではなくて、画素ごとのラインとみることもできます。

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 この表からすると、実用的にはEOS R6が、高感度特性、連写速度、手振れ補正範囲などの高さから注目されるボディとなります。もちろん、「EOS R5」は4,500万画素という高画素に加え、8k動画撮影が可能なことなどのプレステージを備えているわけですが、私が注目したのは、『このカメラは画素数では上回っているEOS 5Ds (約5060万画素)をも凌ぐ解像性能を達成しています」とキヤノンはアナウンスしているのです。この点に関しては前回の私の「EOS R5」と「EOS R6」レポートでは、デジタルカメラの解像感は、カメラの画素数・プリンターの解像度に関連するものであって、通常の展示用のA3ノビ、A2クラスの拡大プリントでは、2,000万画素機も6,300万画素機も、その差はわかりにくく、むしろレンズの解像力、ピント合わせの精度のほうが画質向上の構成要素としては大きいということを書きました。

 ところが、今回のキヤノンの解説を読むと『CMOSセンサー、映像エンジン、レンズ、それぞれの性能を余すところなく引き出し、三位一体となってEOS最高解像性能を実現。「解像感」「ノイズ」「光学特性」のすべての要素から画質の向上を図りました。画素数では上回っているEOS 5Ds (約5,060万画素)をも凌ぐ解像性能を達成しています。』となっているのです。このアナウンスにはわが意を得たりという感じがありますが、さらにキヤノンは『ISO12233準拠のCIPA解像度チャートで確認』となっていますから、どうやらCIPA(カメラ映像機器工業会)で規定された条件での撮影解像力を読み取っての結果だと思うのです。そこで改めて5060万画素のEOS 5Ds を引っ張り出してくるのですが、実はこのカメラが発売されたときの使用で気になる画面がありました。それは今回の2番目のマンションの壁面を作例に示した画面中央の画素等倍の部分を見ると明らかに今まで同じ場所を撮影してきた画像とは違い解像感に乏しかったのです。その時点で私はレンズの解像が低いのかなぐらいしか考えませんでしたが、別に使っているユーザーに聞いても何か不思議な感じだというのです。結局それは、ユーザーの知りえない形での画像エンジンの性能が絡んでいたのだなと思うわけです。

 EOS 5Dsの私のレポートは、京都MJのここに示しておきますが、EOS R5のマンションの画も焦点距離24mmで示してありますから、比較してみていただければ納得してもらえるかもしれません。いずれにしても高画素になれば画質が高いという考えが、メーカーと、私のレベルからも見ても同じことを言っているあたりが、興味深い点です。なお今回の撮影では、すべてのカットが破綻なく描写され、念のために主だった画像のヒストグラムを見てみると、黒つぶれも、白飛びもなくきれいに収まっているのが印象的でした。次はどの手で来るのかな、楽しみなことです。

  なお、近日中にはニコンが普及価格で「Z5」を発売、ソニーが「α7S III」に加えミノルタ時代からのAレンズをサポートする新しい「マウントアダプターLA-EA5」を、さらにパナソニックがフルサイズで小型・普及価格の「LUMIX DC-S5」発売するなど、キヤノンとしては追い上げの立場から、追われる立場にもなったわけで、業界としては活性化するのではと思われる反面、この先はますます混戦模様となる気がするのです。  (^^♪