写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

昭和のレンズ 「伊香保三昧」

■シン昭和のカメラとレンズの写真展に参加

 2022年11月3日(木・祝)~5日(土)の3日間、東京東小金井のマロンホールで開催された「第7回、シン昭和のカメラとレンズの写真展」に参加しました。写真を楽しむ者として、お誘いを受けた写真展にはなるべく参加するようにと心がけていて、できるだけ新作をもって臨みたいと考えています。この写真展は、タイトルにあるようにある意味でカメラとレンズを主体とした写真展ですが、主催者の考えでは単なる作例でなく作品にストーリー性を持たせてほしいというのです。

 まず最初に考えたのは、どのようなカメラとレンズを使おうかと考えたことです。昭和の時代というと大雑把にいうと1930年代から1980年代ぐらいでしょうか、私自身はカメラもレンズも古いのから最新のものまで興味の対象ですが、必ずしもコレクターといわれるほどの物持ちではありませんので、そこでわが家の収蔵庫をひっくり返し探し当てたのは昭和時代の“超広角レンズ”の2本でした。

 

■使ったのは昭和の超広角レンズ、キヤノン25mmF3.5とレビューノン24mmF4

 キヤノン25mmF3.5」(左)は、トポゴンタイプの5群5枚構成(構成枚数表示は当初はキヤノンカメラミュージアム内の表示に従って3群5枚構成と記述しましたが、本記事をきっかっけにキヤノンOBのカメラ好きNGさんが校正枚数表示がおかしいと異議を唱えて上申し、2022年11月22日現在で5群5枚構成と訂正され、長い間のこのレンズ構成の謎を閉じました)のレンズ。距離計連動機用のスクリューマウントで一眼レフ用ではありませんが、発売が昭和31(1956)年ということで焦点距離がレビューノンの24mmと近似しているので使ってみました。当時としてはF3.5と明るく、最後部1枚の並行平面ガラスが画質的に効果をもたらすかで話題を呼んだレンズですが、70年代の日本の写真家が多くのこのレンズを使った作品を残しています。

 「レビューノン24mmF4」(右)はドイツの通販会社フォトクエレの製品ですが、製造は西ドイツのENNA社でLithagon、Ennalyetなどの名でも販売されていました。昭和35(1960年)頃の発売、7群7枚構成で、ミラーアップしないで使える超広角24mm焦点距離のレトロフォーカスタイプレンズの最初とされています。レンズ鏡胴、絞りリング、M42スクリューマウント部、最後部鏡枠までエンジニアプラスチックで作られていますが、時代を考えるとかなり高度な樹脂加工技術をENNA社が保有していたことがわかります。

 

■撮影地は群馬県伊香保温泉

 主催者はテーマ性を持たせてというので、コロナ禍の控えめの夏休暇して群馬県伊香保温泉に行くので、その地域に的を絞って撮影しようと考えました。伊香保温泉に通い出して30年は超えたでしょうか。この間さまざまな移り変わりを見てきました。今回の写真展に合わせて改めて伊香保の町を撮ってみようと考えたのです。
 そもそも私が通って面白いと思ったのは、戦前からの歴史ある温泉地だけに、古い写真の宝庫といえる町でもあります。かつては渋川から路面電車が走っていたこともあり、石段に製糸工場で働く女性たち100人近くが整列し、社旗を持った経営者が中心に座った記念写真も残っています。また近くには高崎練兵場跡や相馬原駐屯地もあり、歴史的にも興味をひかれる町です。30年ほど前には残っていた温泉場特有のストリップ劇場も今は影も形もありません。そのような中でいくつか変わった動きがでてきました。今回はそのような場所を、古いレンズを携えて伊香保温泉街のある山裾から順に撮影して行きました。

 

佛光山法水寺

 台湾のお寺で世界中に300以上の別院を持つとされる「佛光山寺」の日本の総本山。敷地内の駐車、施設の見学は無料のうえ、写経や座禅なども無料というから新しい観光スポットとなっています。階段を上った山門からは眼下に渋川市内、目を転じれば赤城連山も絶景です。寺院内にはべジカフェ滴水坊があり、台湾バーガーやべジそぼろ丼などの軽食もあります。

≪わが身かな≫ 法水寺、レビューノン24mmF4、目測、F8・1/400秒、ISO125

≪大きく息を吸ってハイ≫ 法水寺、レビューノン24mmF4、目測、F8・1/640秒、ISO125

≪山門前からの赤城連山≫ 法水寺、レビューノン24mmF4、目測、F8・1/400秒、ISO125

 

◐水澤観音

 1300年の歴史がある天台宗の古刹、坂東三十三ヶ所の十六番札所となっています。境内にある六角二重塔は手すりを押して回すことができ、3回、廻るとご利益があるとか。

≪親子で3回廻れば≫ 水澤観音・六角二重塔、キヤノン25mmF3.5、目測、F8・1/30秒、ISO720

≪信心≫ 水澤観音・十二支の守り本尊、キヤノン25mmF3.5、目測、F8・1/80秒、ISO360


伊香保温泉街

 すっかり変わってしまった古くからの温泉街の中に昔を探してみました。いまも変わらない石段街、ひっそりとたたずむ昔のスナック、ここには珍しく今も射的場が健在なのです。

与謝野晶子でVサイン≫ 伊香保温泉街、レビューノン24mmF4、目測、F8・1/50秒、ISO125

≪欲しいものあるのかな≫ 伊香保温泉街射的場、レビューノン24mmF4、目測、F8・1/30秒、ISO900

≪栄枯盛衰≫ 最後の開店はいつ、伊香保温泉街、レビューノン24mmF4、目測、F8・1/30秒、ISO500

 

■昭和の時代の超広角レンズ

 今回の撮影は、絞り値をすべてF8に統一し、ピント合わせは目測で行いました。使用ボディはミラーレスのニコンZ7です。キヤノンはライカスクリューマウント、レビューノンはM42一眼レフ用レンズですが、同じボディで撮影できたのは、フランジバックの短いミラーレスならではのことで、F8という設定で通せたのは、撮影感度が自動的に変わるデジタルならではの特徴といえるでしょう。写真展ではA3に伸ばしてプリントしましたが、これといって問題ないシャープできれいなプリントに仕上がりました。 (^^♪

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