写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ミース博士以後の写真技術史物語

 以前このブログで元小西六技術者の是松忍さんが翻訳した「ミース博士が語った写真技術史の研究開発物語」という本を紹介しましたが、今度は是松さんご自身が執筆された『ミース博士以後の写真技術史物語』という本が刊行され、是松さんが発刊と同時に持参されました。是松さんは1940年大分県に生まれ、1963年3月に九州大学工学部応用化学科を卒業し、同年4月に小西六写真工業に入社し、約36年間、写真技術者として勤務されました。1960年代、銀塩写真が全盛を迎えようとしていた時代には、多くの写真化学の技術者や研究者がC.E.Kミース著「From Dry Plate to Ektachrome Film --A Story of Photographic Research」の原本を求めて読みました。そしていま、僕の周りでは是松さんが翻訳した「ミース博士が語った写真技術史の研究開発物語」をこのブログを読んで買い求めた人が多かったのです。タイミングとしては、銀塩写真が1つの時代を終え、銀塩写真に愛着を持った方々が、それぞれ買い求めたのではないかと想像するのです。その後、本書の広告が朝日新聞の1面にでたあたりが、実際に売れた結果ではないかと思うわけです。そして今回続本の出版となりましたが、柳の下の泥鰌とはならないことを願うばかりです。
 『ミース博士以後の写真技術史物語』の内容は、第1章:ミースと銀塩写真の黄金時代、第2章:ランドとインスタント写真の世界、第3章:デジタルカメラの登場、第4章:カールソンと電子写真法、終章:「ミース博士の夢」は終わらない。それぞれの章には、菊池真一氏とEK社の関係、Dr.ランドと特許の推移など写真界の大御所への是松氏なりの分析がなされており、その写真の延長線上にデジタルカメラ、カールソンの電子写真法があるところがよくわかりますし、興味深い点です。
≪書名≫ミース博士以後の写真技術史物語 ≪体裁≫A5判・142ページ ≪出版元≫講談社エディトリアル(03-5319-2171) ≪著者≫是松忍 ≪定価≫本体3,000円(税別) ≪ISBNコード≫ISBN978-4-907514-12-9
☆「ミース博士が語った写真技術史の研究開発物語」と「ミース博士以後の写真技術史物語」は1月からJCIIライブラリーで閲覧することができます。