写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

クラシックカメラから作品まで「ペンタックスコレクション展」

 1967年に日本初の本格的なカメラ博物館としてスタートした港区西麻布の「ペンタックスギャラリー」はその後、新宿にペンタックスフォーラムができたことにより、1993年に栃木県の旭光学益子工場へ移転し「ペンタックスカメラ博物館」として再スタートしましたが、2009年には多くのカメラファンに惜しまれつつ閉館しました。そのペンタックスカメラ博物館の収蔵していた、カメラ、写真、文献・図書などがその後日本カメラ博物館にほとんどそのまま移譲されました。
 このたび日本カメラ博物館では『甦る ペンタックスカメラ博物館展』として11月1日(火)〜2月26日(日)の期間、主だった収蔵品のコレクション展を行っています。ペンタックスカメラコレクションの特徴は、初期のフランスやイギリスの木製暗箱カメラや南方仕様トロピカルタイプなどを多く収蔵していたことが知られていますが、このほかベストポケットコダックやパーレットを始め数々の歴史的なカメラが含まれています。

 これらカメラコレクションとは別にペンタックスの所蔵していた戦前の日本における芸術的写真である作品を展示した『中山岩太、安井中治、福原信三、福原路草 −ペンタックスギャラリー旧蔵品展−』も11月29日(火)〜12月25日(日)まで開かれています。今回の展示では、単に作品を展示するだけにと止まらず、それぞれの写真家が使っていたカメラの相当品、さらには当時発表された写真雑誌、グラフ誌なども展示して、日本カメラ博物館ならではの展示となっているところが特徴です。

 会期中の12月3日(土)の14:00〜16:00には『岩太・中治・信三・路草の写真』と題して美術評論家の光田由里氏とカメラ博物館運営委員の白山眞理氏によるトークショーも開かれます。
 当日は、日本カメラ博物館に入館(300円)された方は無料でトークショーに、トークショーに参加(300円)された方は無料でカメラ博物館を見学することができます。いま現在、席に余裕がありますので、興味のある方はぜひどうぞ。

 ところでペンタックスギャラリーは、僕にとっては大変思い出深いところです。初代館長であった北野邦雄さんには旭光学の松本三郎社長の命でカメラを集めたころのお話しをたっぷりと聞かせていただきましたし、館員の酒井修一さんにはさまざまなクラシックカメラの集いに誘われましたが、1970年代の毎年6月1日写真の日に銀座歩行者天国でカメラの虫干しを兼ねたクラシックカメラでの撮影会などは特に思い出深いものがあります。このほかお勉強会として「写真懇話会」、「古典カメラ研究会」などがペンタックスギャラリーで開かれていてときどき参加しましたが、現在も引き続き日本カメラ博物館のあるJCIIビルでこれらの会が開かれているのは特筆に値することでしょう。ペンタックスギャラリーの存在は、僕にとってクラシックカメラ研究の端緒であったことは、間違いないようです。