写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

ペンタックス645Dを使ってみました

HOYAペンタックスからデジタルの中判カメラ「645D」が6月10に発売されましたので、さっそく使ってみました。撮像素子はコダック製のCCDで44×33mmと大きく、約4,001万画素、画素ピッチ6.0μmというものです。ペンタックスの中判構想は古くからあり、何度か発表されていましたが、「CP+2010」で最終製品モデルのタッチアンドトライコーナーを設け、5月20日の発売予定でしたが、それを延期して、この時期ようやく発売にこぎ着けたというわけです。標準レンズは645D用に開発された「SMC PENTAX-D FA645 55mmF2.8 AL[IF]SDM AW」です。ずいぶん長々とした商品名ですが、SMCはご存じスーパーマルチコーティング、Dはデジタル用、IFはインナーフォーカス、ALは非球面、SDMは超音波モーター、AWは防塵・防滴のオールウエザーといったところでしょうか。そして55mmという焦点距離は、44×33mmの撮像素子に対し、フィルムの645判換算は約1.3倍で焦点距離71.5mm相当、35mm判換算では約0.8倍で焦点距離44mm相当の画角となります。仕様の説明はいくらスペースがあっても足りませんので、ペンタックスのサイトを参照してください。
ということで、早速使ってみた結果を報告をしましょう。645Dを箱からだし、セットアップし撮影態勢まで実にシンプルでした。ボディにレンズを装着し、ストラップとアイピースの保護ラバーを付け、K-7と共通だというバッテリーをフルチャージしてセット、SDカードを入れ、電源スイッチONすれば撮影OKなのです。ペンタックスユーザーのみならず、一眼レフカメラを使える人ならとまどいなく撮影できるでしょう。撮影は、いつものようにAFでプログラムAEで行いました。中判のカメラをプログラムで、しかもAFで?と疑問に思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、すべて自動でやってどこまで写るかを見るのが、最もそのカメラの実力を知ることができるのです。これはコンパクトもそうですが、デジタルの時代にあっては重要なポイントです。
さて撮影です。同じ中判でもライカS2の時は、モデルさんを撮影しましたが、ペンタックス645Dでは躊躇なく風景写真だと決めました。もともとフィルム時代の645は、ネイチャー系の人たちに圧倒的な支持を得ていたわけですから、そのように考えたわけです。そして高画素機ということで、手ブレを心配しましたが、あえてすべて手持ちで撮影しました。

◇建物にピント合わせ、ノーマルプログラムAE(F7.1・1/400秒)、AWB、JPEG:L、7264×5440ピクセル
撮影した結果は、上のとおりです。時間の関係でご近所ですませましたが、晴天でなかったのが残念です。そして掲載画面は、左右640ピクセルにしてありますので、元の画像の高解像さは見えていません。しかし、風景写真用のカメラとしてみたときに、画面全体の均質性もあり、緑の葉の発色は暗く落ち込むこともなく、かなりノーマルで、それぞれの樹木の葉の微妙な違いを表しており、湖面の発色を含めてナチュラルで、きわめて好感ある描写です。そしてピクセル等倍の解像はどうだろうかと示したのが右上の写真です。
さらにボケ具合はどうだろうかと試したのが、右下の写真です。ピントは手前のツツジに合わせてありますが、わずかながらの前ボケと大きくぼけた後ボケが見えるカットを選びました。ツツジの発色はご覧のようにすごく自然です。また、ボケ具合も、背後右の車のテールライトからしてもクセのない描写を示していることがわかります。F8と絞られた結果の描写ですが、中判ならでは描写特性といえるででしょう。
◇ノーマルプログラムAE(F8・1/500秒)、AWB、JPEG:L、7264×5440ピクセル
ところで44×33mm、7264×5440ピクセル、約4,001万画素の画像は、展開すると113.1Mというファイルになります。またリサイズしないで、A3の長辺方向に合わせてプリントすると約450dpi、A2でも約315dpiとなります。解像度的には必要充分であることはわかりますが、インクジェットプリンターではそのままの解像度が効いてきますので、かなりシャープなプリントが作れます。
ペンタックスデジタル一眼レフのラインナップは、K-7、K-xなどのAPS-Cとこの645Dの2系列で、35mm判フルサイズはありません。しかし最近では大きく重くなりすぎたフルサイズ一眼レフに、見直しの声もあがっています。そんな中、APS-Cで小型一眼レフの伝統を守り、もう一方で、1984年発売のペンタックス645、1997年発売のペンタックス645N、2001年の645II以来のユーザーもたくさんいるわけで、フィルムカメラとして2009年に645NIIは製造中止されましたが、その後もレンズを供給し続けてきたこともあるわけですから、645Dの発売はユーザーに対する企業としての責務だったと思うわけです。最後に、使っていて感じたのは、タングステン光下でのAWB撮影は、かなりライカM8、M9の発色に近い描写を示すことです。撮像板の製造メーカーが同じだとある条件下で同じような発色傾向を示すのでしょうか。時間をかけて使い込んで見たいものです。